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終わり?
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「え?どういうこと?藤崎さん、別に雄大とそういう関係じゃないでしょ」
エントランスホールで藤崎さんに捕まって、『話がある』って強引に近くのカラオケボックスに連れて来られたんだけどさ、いきなり『雄大と別れろ』って迫られてる。
「私と雄大は家同士の決めた婚約者よ」
「え、ええ~!?婚約者ぁ!?」
おい、聞いてないよ雄大。
でも婚約者だったら、あんな氷河期みたいなやり取りする?
「もし婚約者っていうのがホントだとしたらさぁ、なんでハウスキーパーなんかやってんの?」
冷静に突っ込むと、
「花嫁修業よ」
座った目で返して来る。
ヤバい。
こんな美人が変態なわけないって思ったけど、やっぱりさっき見た枕ダイブも含めて、この人おかしい人かもしんない。
「で、でもさぁ、藤崎さん、明らかに雄大に嫌われてると思うよ?それにさ、まあ、俺のこと、嫌いなんだろうなあとは思ってたけど、藤崎さんにそんなこと言われる筋合いも、言いなりになるつもりもないよ、俺。雄大本人に言われるならともかくさ」
あ、やべ。藤崎さん、俺のことマジで殺したいって目で睨んでんじゃん。
「いやほらさ、藤崎さん綺麗なんだから、雄大みたいなクズで性格悪いやつはやめといた方がいいよ?もっといい男いっぱいいるし、良かったら俺、イケメンの知り合いいっぱいいるから紹介してもいいよ」
慌てて取り繕ったけど、藤崎さんはテーブルの上に置いてたスマホを操作して、俺に画面を見せて来た。
「えっ!?な、なんで、それっ!?」
しまった、思わず反応しちゃった。知らないふりしてりゃ良かったのに。
「この子、花音ちゃんだっけ?溺愛してるあんたの妹なんだってね。○○幼稚園に行ってるんでしょ?可愛いわよねぇ、そりゃ夢中になるのも分かるわ」
意地悪い顔で微笑む藤崎さん、いや藤崎は心底楽しそうに言った。
「この子に何かあったら、きっと悔やむんじゃない?」
「お前、犯罪だぞ、それ!」
クッソ!マジで最悪!マジでこいつ、クソ!
「何で?私は何もしないわよ。そういえば最近はSNSとかに載せた写真から、住所特定されたりするんだってね。気を付けなきゃよね」
「・・・・・・」
人間って、あまりにも衝撃受けたら何も喋れなくなるんだ。俺、いま初めて知った。
「この写真どうしようかな。可愛いから私のインスタに載せちゃおうか。あ、でも、みなとクンが、メッセージアプリで雄大の事ブロックして、二度と連絡とらないし会わないって約束してくれるんなら、今すぐ画像消してもいいかも」
マジで手が震えるってこと、あるんだ。
俺が震える手でスマホを取り出したら、藤崎が俺のスマホを取ってテーブルの真ん中に置いた。そして、花音が幼稚園の前でうちの母親と歩いてる画像を表示した自分のスマホも隣に置く。
「ほら、ちゃんと私の目の前でブロックして。電話番号も入れてるなら消して見せて。そうしたらすぐこの画像消してあげるから。ほら見て。私の画像フォルダ、クラウドに同期してないの。だからこれ消せば他にバックアップは取ってないよ」
藤崎が自分の言ったことを証明してたけど、正直頭がグルグルして全然入って来ない。
ウソだろ。
藤崎の言う通りにしたら、俺、もう二度と雄大に会えないってこと?
「あ、言っておくけど雄大のマンションに行くのも勿論禁止ね。約束破ったら、私、何するか分かんないなあ。みなとクンちの住所も知ってるし。○○市の○○町○ー○でしょ?」
畳み掛けられて、口がカラカラになる。
マジでこいつ、俺んちまで調べてる。
ダメだ・・・俺一人なら何があっても俺の責任だからいいけど、花音とか親まで巻き込むのはダメだよ・・・
「ちゃんと、マジで俺の目の前で画像、消せよ」
掠れた声を絞り出すと、藤崎は嬉しそうな声を上げる。
「もちろんよ、じゃあほら、早く消して?」
クソ。
もっと早く一人暮らししてれば良かった。
もっと早く、雄大に俺の家の住所教えてれば良かった。
アプリと電話消して、マンションにも来れなくなったら、俺から雄大にコンタクト取る方法はなくなる。
でももし、あいつが俺のこと自分から探してくれたら。大学に来てくれたら、また繋がれるかもしれない。
・・・ペット以上の愛情を本当に持ってくれてたら、だけど・・・
「ほら、早くしなさいよ。私、気が長い方じゃないんだよね」
苛々と低い声で言われて、震える指先で雄大の名前をスライドして、ブロックした。
電話番号も。
『削除』の赤い文字をタップした。
抜かりなく、電話の履歴もクリアさせられた。
それを見届けると、びっくりするくらいあっさり、藤崎も花音の画像を削除した。
「じゃあね。もう二度と会う事ないけど」
楽しそうに弾むような足取りで藤崎が出てっても、体がおもりになったみたいに、全然動かなかった。
雄大・・・もっと真剣に、お前のこと大好きだって、愛してるって言っておけば良かったよ。
エントランスホールで藤崎さんに捕まって、『話がある』って強引に近くのカラオケボックスに連れて来られたんだけどさ、いきなり『雄大と別れろ』って迫られてる。
「私と雄大は家同士の決めた婚約者よ」
「え、ええ~!?婚約者ぁ!?」
おい、聞いてないよ雄大。
でも婚約者だったら、あんな氷河期みたいなやり取りする?
「もし婚約者っていうのがホントだとしたらさぁ、なんでハウスキーパーなんかやってんの?」
冷静に突っ込むと、
「花嫁修業よ」
座った目で返して来る。
ヤバい。
こんな美人が変態なわけないって思ったけど、やっぱりさっき見た枕ダイブも含めて、この人おかしい人かもしんない。
「で、でもさぁ、藤崎さん、明らかに雄大に嫌われてると思うよ?それにさ、まあ、俺のこと、嫌いなんだろうなあとは思ってたけど、藤崎さんにそんなこと言われる筋合いも、言いなりになるつもりもないよ、俺。雄大本人に言われるならともかくさ」
あ、やべ。藤崎さん、俺のことマジで殺したいって目で睨んでんじゃん。
「いやほらさ、藤崎さん綺麗なんだから、雄大みたいなクズで性格悪いやつはやめといた方がいいよ?もっといい男いっぱいいるし、良かったら俺、イケメンの知り合いいっぱいいるから紹介してもいいよ」
慌てて取り繕ったけど、藤崎さんはテーブルの上に置いてたスマホを操作して、俺に画面を見せて来た。
「えっ!?な、なんで、それっ!?」
しまった、思わず反応しちゃった。知らないふりしてりゃ良かったのに。
「この子、花音ちゃんだっけ?溺愛してるあんたの妹なんだってね。○○幼稚園に行ってるんでしょ?可愛いわよねぇ、そりゃ夢中になるのも分かるわ」
意地悪い顔で微笑む藤崎さん、いや藤崎は心底楽しそうに言った。
「この子に何かあったら、きっと悔やむんじゃない?」
「お前、犯罪だぞ、それ!」
クッソ!マジで最悪!マジでこいつ、クソ!
「何で?私は何もしないわよ。そういえば最近はSNSとかに載せた写真から、住所特定されたりするんだってね。気を付けなきゃよね」
「・・・・・・」
人間って、あまりにも衝撃受けたら何も喋れなくなるんだ。俺、いま初めて知った。
「この写真どうしようかな。可愛いから私のインスタに載せちゃおうか。あ、でも、みなとクンが、メッセージアプリで雄大の事ブロックして、二度と連絡とらないし会わないって約束してくれるんなら、今すぐ画像消してもいいかも」
マジで手が震えるってこと、あるんだ。
俺が震える手でスマホを取り出したら、藤崎が俺のスマホを取ってテーブルの真ん中に置いた。そして、花音が幼稚園の前でうちの母親と歩いてる画像を表示した自分のスマホも隣に置く。
「ほら、ちゃんと私の目の前でブロックして。電話番号も入れてるなら消して見せて。そうしたらすぐこの画像消してあげるから。ほら見て。私の画像フォルダ、クラウドに同期してないの。だからこれ消せば他にバックアップは取ってないよ」
藤崎が自分の言ったことを証明してたけど、正直頭がグルグルして全然入って来ない。
ウソだろ。
藤崎の言う通りにしたら、俺、もう二度と雄大に会えないってこと?
「あ、言っておくけど雄大のマンションに行くのも勿論禁止ね。約束破ったら、私、何するか分かんないなあ。みなとクンちの住所も知ってるし。○○市の○○町○ー○でしょ?」
畳み掛けられて、口がカラカラになる。
マジでこいつ、俺んちまで調べてる。
ダメだ・・・俺一人なら何があっても俺の責任だからいいけど、花音とか親まで巻き込むのはダメだよ・・・
「ちゃんと、マジで俺の目の前で画像、消せよ」
掠れた声を絞り出すと、藤崎は嬉しそうな声を上げる。
「もちろんよ、じゃあほら、早く消して?」
クソ。
もっと早く一人暮らししてれば良かった。
もっと早く、雄大に俺の家の住所教えてれば良かった。
アプリと電話消して、マンションにも来れなくなったら、俺から雄大にコンタクト取る方法はなくなる。
でももし、あいつが俺のこと自分から探してくれたら。大学に来てくれたら、また繋がれるかもしれない。
・・・ペット以上の愛情を本当に持ってくれてたら、だけど・・・
「ほら、早くしなさいよ。私、気が長い方じゃないんだよね」
苛々と低い声で言われて、震える指先で雄大の名前をスライドして、ブロックした。
電話番号も。
『削除』の赤い文字をタップした。
抜かりなく、電話の履歴もクリアさせられた。
それを見届けると、びっくりするくらいあっさり、藤崎も花音の画像を削除した。
「じゃあね。もう二度と会う事ないけど」
楽しそうに弾むような足取りで藤崎が出てっても、体がおもりになったみたいに、全然動かなかった。
雄大・・・もっと真剣に、お前のこと大好きだって、愛してるって言っておけば良かったよ。
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