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おまけ2 由貴哉の悩み~こんな快感知りたくなかった~
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※湊視点から途中、由貴哉視点に変わり、最後は湊視点に戻ります。
*********
雄大とのことが一段落して、浮かれてたある日。
そういえば由貴哉のやつに返信したのに、全然既読になんないんだよね。
大学でもあれ以来見掛けてないけど、やっぱ、あの時の乱交パーティで京ってやつに散々ヤられたよね。
その精神的ショックで引きこもってるとか?いやいや、まさか~…
とか考えながら廊下を歩いてた時だった。
ふいに後ろから羽交い締めにされて、
「ぐぇ」
ちょ、首!首が!
慌てて振り返ると、妙にやつれた由貴哉が俺の背中にしがみ付いてた。
「みなとぉ~…」
「ゆ、由貴哉ぁ!お前、どうしたんだよ?アプリに返事もしないでさぁ?」
「一週間未読スルーしたの、お前の方だろ!あ~もう、マジ、早く話聞いて欲しかったのにさあ…」
由貴哉のやつ、恨めしそうな顔で俺のこと睨んだけど、明らかに覇気がない。
ん~、これはやっぱりヤられちゃったの確定で、あんまり良くなかったってところかなあ。
「あ~…ええっと、やっぱ個人差あるとは思うし、いきなり最初から良くなれる奴って少ないみたいだしさ、でもイイとこ見付かったらヤバいくらい気持ち良くなれるし!大丈夫…んむぅっ!」
「ばかっ、やめろって!」
慰めてやろうと思ったのに、由貴哉は俺の口を手で塞ぐと、焦った顔で周りをきょろきょろして声をひそめた。
「おい、こんなとこで言うなよっ!つか、俺がヤられたって決めつけて話すなっ」
「え?ヤられなかったの?もしかして逆だった?へ~、あいつタチっぽかったのにネコなんだぁ」
「いや、そうじゃないけど…とにかく、こっち、こっち来て」
気まずそうに言い淀む由貴哉に引っ張られて、ひと気のない廊下の隅に連れてかれる。
「まあ、未読スルーしてたのは悪かったよ。俺もそれどころじゃなくてさぁ。で、結局、何話したかったわけ?」
「う、う~ん、あのさ、俺、ちょっと変なのかもって思ってさ。他にこんなの相談できる奴もいねーし、困ってるっつぅか、混乱してるっつぅか、そのー」
「何だよ、もじもじしちゃって、乙女なの?お前は。いいからさっさと話せよ」
呆れて突っつくと、由貴哉はますます顔を赤くして乙女になった。
「いや、そんなわけないと思うんだけど、俺、女の子すっげぇ好きだし、何かの間違いだとは思うんだけど…」
「はぁ?」
いつもの由貴哉らしくない、回りくどくて訳分かんない言い方に、俺は焦れた。
「もう、回りくどいなぁ!で、どうなの?結局、あのケイってやつにヤられたの?ヤられてないの?」
びしっと指を突き付けてやると、由貴哉はビクッとして目を泳がせながら話し出した。
「う…ぜ、絶対笑うなよ…」
「うんうん、大丈夫大丈夫。絶対笑わないってば」
「それがさ…」
☆☆☆
side由貴哉~由貴哉の回想~
あの夜。
控えめだけど、キラキラしたシャンデリアの灯りの下で、高そうな服を着たやつらが談笑する大人な空間に、俺はすっかりいい気分になってたんだよな。
あの後、まさかあんな事になるとか全然思ってもみねぇでさ…
「由貴哉、楽しい?」
「ああ、すっげぇ楽しいよ。誘ってくれてありがとな京!料理もみんな美味いしさ」
上機嫌でそう言うと、京も嬉しそうに笑った。
その顔を見て改めて思う。
こいつ、男なのにマジで綺麗な顔してるよな。モデルって言ってもおかしくないくらいだよ。
クラブで京に声掛けられた時、芸能関係かと思ったんだよな。
だから、こいつと仲良くなれたら可愛い女の子いっぱい紹介して貰えるかもって期待した俺は、すぐ連絡先交換して遊ぶ約束をしたんだ。
まあ、湊が言ったみたいに、最初はこんなイケメンがわざわざ男の俺に声掛けて来るって、ひょっとして何かの勧誘とかかな、って一瞬疑ったよ。
けど、色んな話する内に普通にいい奴だって分かったし、次に会った時には京の家だったんだけど、すげぇタワマンに一人暮らしだったし、それですっかり安心したんだよな。
家が厳しくて高校まで友達と遊ぶ事も出来なかったから、今、やっと羽目外してるんだって聞いて、金持ちも大変なんだなってちょっと同情したし。
「ふふ、喜んでくれて俺も嬉しい。ほら、このシャンパンも美味しいから飲んでみなよ」
「ん、さんきゅ」
京に渡されたグラスを受け取って飲むと、よく分かんねぇけど高級そうな味がした。
「んー!美味い…気がする!」
「付いてるよ」
京がクスッと笑いながら胸元のポケットからハンカチを出して、俺の口元を拭いてくれる。
「あっ、悪ぃ、さんきゅ」
京の奴は、今まで友達がいなかったからか、やたら距離が近い。
最初はちょっと戸惑ったけど、理由が分かったから今はそんなに気にならなくなった。
正直、これだけ見た目がいい奴に世話焼いて貰えるのも、なんか気分いいしさ。
「湊のやつ、どこにいんのかな?」
ふと、勝手にぷらぷらしてるって離れてった湊の事が気になって、周りをきょろきょろしてみたけど、どこにいるのか良く分からない。
「大丈夫だよ、彼は彼で楽しんでるんじゃない?それよりほら、もうすぐショーが始まるよ。もっとステージに近い方に行こう」
「んー、そうだな」
京に腕を取られて、俺はまあいっか、と思った。
それからショーを楽しんで、美味い料理や酒をいっぱいつまみ食いして、京とたわいない話をしていた時だった。
「――――え?うぉっ、何!?」
さっきまで普通に明るかった室内が急に暗くなって、クラブみたいな音楽が流れ始めたけど、最初はまた何かのアトラクションでも始まるのかと思った。
だけど、周りにいた奴らが次々に抱き合ったり、キスし始めて俺はビビった。
そういえば、よく見たら周りの奴ら全員男じゃん!?
てか、この会場、男しかいなくね!?
「ちょ、ちょっと、何、これ!?どういう事!?」
慌てまくって青くなって京にしがみ付いたら、京はニコッといつもの笑顔で言った。
「ごめんごめん。言うの忘れてたけど、今日のパーティは男同士の出会いの為のパーティなんだよね。でもほら、楽しかったでしょ?料理もお酒も美味しかったよね?」
「え、う、嘘だろ!?てか、ってことは京もそっちって事?」
「まあ、どっちかと言ったらそうかな」
びっくりはしたけど、何しろ身近に両刀(バイ)の湊なんて奴がいるんだから、その事自体は割とすぐ飲み込めた。
けど、問題はそこじゃねぇ。
「え?それじゃ、俺をここに連れて来たのは…」
ヤバいヤバいヤバい。
急に心臓がドキドキして、さっきまでがぶがぶ飲んでた酒が効いて来た気がした。
全身が熱くなって、足がガクガクする。
周りに目を走らせると、やっぱり何度見ても男同士でちゅっちゅしてる。
いや、ちゅっちゅとか、んな可愛いもんじゃねぇよ。
ベロベロ舌絡めた、とんでもねーディープなやつ、かましてんじゃん。
「あわわわ…」
「大丈夫?いっぱい飲んだもんね。力入らないんでしょ。ほら、上に部屋あるからそこで少し休もうか」
ひぃいいい!!!
妙に優しい笑顔で俺の体を抱き寄せる京に、ブルッと震えが来た。
「いや、あの、俺、もう帰るから」
なるべく、落ち着いた声を出そうとしたけど無理だった。
俺の言葉を聞いた京の腕にグッと力が入って、
「は?ダメだよ。こんな酔ってるのに危ないでしょ。今夜は泊ってゆっくりしてから、明日帰ればいいよ。俺も一緒に泊って介抱してあげるからね」
耳元で囁かれて全身ガクガクになった。
「か、かかか介抱って」
いやそれ、絶対なんかエッチなやつだよね?
お前、なんか狙ってるよね?
俺を見る京の目が肉食獣みたいにギラついてる事に、俺は気付いてしまった。
「大丈夫だよ、痛い事なんか絶対しないからさ。俺、上手いから安心して。いっぱい気持ち良くしてあげるからね」
「いや、俺、そっちの趣味はないっていうかさ、いやいやいや、無理無理無理ぃ!」
全身、変な汗でびっしょりになって抵抗したけど…
こいつ細いくせにどこにこんな力あるんだ、って驚いてる間に、俺はあれよあれよとスイートルームみたいな豪華な部屋に連れ込まれてしまった。
その後何をどうされたのか、正直あんまりはっきり言いたくない。
バスルームに引っ張られ、
「大丈夫大丈夫、任せて」
と言われながら、誰にも触られた事ない部分をアレコレされ、手早くバスローブを着せられてキングサイズのベッドに押し倒されたかと思うと、
「可愛いよ由貴哉」「ここ、気持ちいいでしょ」とか囁かれながらあっちこっち弄られまくった。
「はぁ、あ、だ、だめ、そんなことぉ」
「はは、もうこんなヌルヌルになってるよ?可愛いな…」
いや俺も、最初は抵抗したんだけど、京のやつ言うだけあってツボ押さえてるっていうか、ちん○の扱いが慣れてるっていうか、すげぇ上手くて…
あんまり気持ちいいからさ、恥ずかしいわ、怖いわ、で瞑ってた目をちょっと開けてみたら、京のやつ、綺麗な顔で俺のちん○美味そうに咥えてて。
それ見たら、男に襲われてるって恐怖より、こんなカッコいいヤツが俺の事すげぇ欲しがってる、って状況に優越感つぅか、ゾクッと来ちゃって。
つい、されるがままになったんだよな。
だけど、
なんかぬるぬるしたもの垂らされて気持ちいーな…なんて浸ってたら、京の指がずぶって、本来は出口の部分に入って来て一気に青褪めた。
「…あ!?あーーーっ!そんなとこ汚いって!や、やややめて」
「さっきバスルームで綺麗にしたから平気だよ。ほら、こっちも一緒にしてあげるから」
「えっ、わっ、ちょっ…!??」
ちん○一緒に扱かれると、ケツの中を動く指が気持ち悪いのに、気持ち良さが入り混じって来て、ヤバい。
「ここ、気持ちいいでしょ」
「あっ、あっああ」
楽しそうな京の声に、だんだんまともに返事も出来なくなってた。
う、うそだろ。気持ち悪いばっかりだったのに、突っ込まれてるのが段々…
何だこれ、もしかしてこれが、湊が言ってたやつ?
やば…なんか、来そう…
とか思ってたら、急に指が引き抜かれて肩透かしを喰らう。
「えっ…」
「ふふ、ごめんね。でも俺ももう我慢出来なくなって来ちゃったよ。今度はこれで気持ち良くしてあげるから挿入れていい?」
「!?」
目の前に突き出された、京の凶悪なエクスカリバーに一気に血の気が引く。
何だこれ。お前、そんなキレーな顔してるくせに、そこだけゴリラやん。
そんなもん入れられたら、俺のケツが死ぬ!
「やめてやめてやめて!無理無理無理rrーーー!」
「やだなあ、そんなに怯えないでよ。逆に興奮しちゃうからさ。あーやば。もう限界かも」
「…その後の事は言いたくない…」
はー、と溜息を付く俺に、湊は目をキラキラさせて食い下がった。
「なんだよぉ、そこが一番聞きたいところじゃん!ね、ね、どうだった?良かった?イけた?何回くらいヤッたの?」
「ノーコメント!」
言えるかよ。
突っ込まれた後、始めはただただ痛くて苦しいだけだったのに。
何か段々気持ち良くなっちゃって。
それに気付いた京に
「ほんと由貴哉は可愛いな。こっちの才能あるよ。今夜だけなんて嫌だな…ね、俺のものになってよ」とか甘い声で囁かれて、最後には女みたいにあんあん言いながら盛大にイッたとかさ。
しかも、イったあと京に優しく抱き締められてキスされて「好きだよ」なんて言われて、思わずキュンとしたとかさ、言えるわけない。
あの時の事を思い出して、ついボーっとしてたら、湊がニヤニヤしながら言う。
「まあいいや。で、結局何悩んでたの?お前の様子見てたら大体分かっちゃったけどさぁ」
「いやぁ…それはだから、あれだよ…」
うう、何て言ったらいいんだ。
結局あの日から、ほぼ毎日京と会っては、何かそういう事になっている。
最初は抵抗あったけど、俺も色んな女の子と遊んで来たわけだし?
「…京の奴はまぁ、顔も綺麗だしセレブだし、俺が望んでたようなラグジュアリーでレアな世界見せてくれるし、…エッチは気持ちいいし、男って事を除けば理想の相手なんだよな」
「うんうん」
あれっ、いつの間にか考えてる事が口に出てたっぽい。
まあ、いいか。湊の奴も茶化さず聞いてるし。
「それに、何かすげぇ大事にされてるし…ちょっと勘違いするっていうか、俺そういう趣味ねぇのに、甘やかされると何かキュンて来るんだよなぁ。あ、でも俺は女の子好きだし!京の事が好きとか、そういうんじゃねぇし!」
慌てて否定すると、湊は呆れた目で俺を見た。
「ったく、往生際が悪いなあ…甘やかしてくれて気持ち良くしてくれて、おまけにイケメンで金持ってるとかさ。それってもう由貴哉の玉の輿願望、叶ったってことじゃん。男だって問題なし!良かったね」
「うーん…そう、かなあ…?」
何か、湊にそう言われると、何の問題もないように思えて来た。
☆☆☆
side湊
「…うん、そうだな!別にあいつと恋人になるとか、そういうんじゃないしな。今楽しくて気持ち良ければいいよな。あー、なんかお前に話したら気が軽くなったぜ。さすが湊!じゃ、俺これから京が迎えに来るから行くわ」
急に吹っ切れたみたいに明るく言う由貴哉に、
「ふーん?まあ元気になったんなら良かったけどさ。あ、そこまで一緒に行っていい?」
って、俺も待ち合わせ場所に付いてった。
いや、ちょっとだけ興味が出たんだよね。あの時京のヤツ、俺のことすげぇ邪険にしてたし、乱パでヤッてからほぼ毎日由貴哉と会ってるって、それけっこうハマってるってことじゃん?
だから2人でいる時どんな感じなのかなーって、純粋な好奇心。
たわいない話しながら、大学の入口で待つ。
「あ、来た」
って由貴哉の声でそっちを見たら、雄大のみたいな高級そうな車が停まって、助手席側の窓が開いた。
「じゃな、湊」
「うん、またね」
手を振って車に近付いて行く由貴哉を眺めていると、運転席の京が俺をチラッと見た。
そして、助手席に座った由貴哉の頬を優しく撫でる。
え?由貴哉ってば。
あれだけ好きじゃないとか恋人じゃねぇしとか言ってたくせに、それ完全にメス顔でしょ。
あ~らら。ま、話聞いた時から分かってたけど、やっぱ抱かれたら、メスになっちゃったかぁ…そんなうっとりした顔で京のこと見てたらさぁ、どう思ってるかなんて丸わかりだよ?
呆れて見てたんだけど、京は俺を見てフフンって顔してる。
いやいや、俺はそいつのこと狙ってなんかないからね。けん制しないでよ。
なんとなく由貴哉が、蜘蛛の巣に掛かった蝶、いや由貴哉だからバッタか?みたいに思えて来たけど、
「…ま、頑張れよ由貴哉」
俺は走り去る車に、生温い笑顔で手を振ったのだった。
(終)
これにて、ビッチとクズ、完結です!最後まで読んで下さった方々、ありがとうございました~♡
*********
雄大とのことが一段落して、浮かれてたある日。
そういえば由貴哉のやつに返信したのに、全然既読になんないんだよね。
大学でもあれ以来見掛けてないけど、やっぱ、あの時の乱交パーティで京ってやつに散々ヤられたよね。
その精神的ショックで引きこもってるとか?いやいや、まさか~…
とか考えながら廊下を歩いてた時だった。
ふいに後ろから羽交い締めにされて、
「ぐぇ」
ちょ、首!首が!
慌てて振り返ると、妙にやつれた由貴哉が俺の背中にしがみ付いてた。
「みなとぉ~…」
「ゆ、由貴哉ぁ!お前、どうしたんだよ?アプリに返事もしないでさぁ?」
「一週間未読スルーしたの、お前の方だろ!あ~もう、マジ、早く話聞いて欲しかったのにさあ…」
由貴哉のやつ、恨めしそうな顔で俺のこと睨んだけど、明らかに覇気がない。
ん~、これはやっぱりヤられちゃったの確定で、あんまり良くなかったってところかなあ。
「あ~…ええっと、やっぱ個人差あるとは思うし、いきなり最初から良くなれる奴って少ないみたいだしさ、でもイイとこ見付かったらヤバいくらい気持ち良くなれるし!大丈夫…んむぅっ!」
「ばかっ、やめろって!」
慰めてやろうと思ったのに、由貴哉は俺の口を手で塞ぐと、焦った顔で周りをきょろきょろして声をひそめた。
「おい、こんなとこで言うなよっ!つか、俺がヤられたって決めつけて話すなっ」
「え?ヤられなかったの?もしかして逆だった?へ~、あいつタチっぽかったのにネコなんだぁ」
「いや、そうじゃないけど…とにかく、こっち、こっち来て」
気まずそうに言い淀む由貴哉に引っ張られて、ひと気のない廊下の隅に連れてかれる。
「まあ、未読スルーしてたのは悪かったよ。俺もそれどころじゃなくてさぁ。で、結局、何話したかったわけ?」
「う、う~ん、あのさ、俺、ちょっと変なのかもって思ってさ。他にこんなの相談できる奴もいねーし、困ってるっつぅか、混乱してるっつぅか、そのー」
「何だよ、もじもじしちゃって、乙女なの?お前は。いいからさっさと話せよ」
呆れて突っつくと、由貴哉はますます顔を赤くして乙女になった。
「いや、そんなわけないと思うんだけど、俺、女の子すっげぇ好きだし、何かの間違いだとは思うんだけど…」
「はぁ?」
いつもの由貴哉らしくない、回りくどくて訳分かんない言い方に、俺は焦れた。
「もう、回りくどいなぁ!で、どうなの?結局、あのケイってやつにヤられたの?ヤられてないの?」
びしっと指を突き付けてやると、由貴哉はビクッとして目を泳がせながら話し出した。
「う…ぜ、絶対笑うなよ…」
「うんうん、大丈夫大丈夫。絶対笑わないってば」
「それがさ…」
☆☆☆
side由貴哉~由貴哉の回想~
あの夜。
控えめだけど、キラキラしたシャンデリアの灯りの下で、高そうな服を着たやつらが談笑する大人な空間に、俺はすっかりいい気分になってたんだよな。
あの後、まさかあんな事になるとか全然思ってもみねぇでさ…
「由貴哉、楽しい?」
「ああ、すっげぇ楽しいよ。誘ってくれてありがとな京!料理もみんな美味いしさ」
上機嫌でそう言うと、京も嬉しそうに笑った。
その顔を見て改めて思う。
こいつ、男なのにマジで綺麗な顔してるよな。モデルって言ってもおかしくないくらいだよ。
クラブで京に声掛けられた時、芸能関係かと思ったんだよな。
だから、こいつと仲良くなれたら可愛い女の子いっぱい紹介して貰えるかもって期待した俺は、すぐ連絡先交換して遊ぶ約束をしたんだ。
まあ、湊が言ったみたいに、最初はこんなイケメンがわざわざ男の俺に声掛けて来るって、ひょっとして何かの勧誘とかかな、って一瞬疑ったよ。
けど、色んな話する内に普通にいい奴だって分かったし、次に会った時には京の家だったんだけど、すげぇタワマンに一人暮らしだったし、それですっかり安心したんだよな。
家が厳しくて高校まで友達と遊ぶ事も出来なかったから、今、やっと羽目外してるんだって聞いて、金持ちも大変なんだなってちょっと同情したし。
「ふふ、喜んでくれて俺も嬉しい。ほら、このシャンパンも美味しいから飲んでみなよ」
「ん、さんきゅ」
京に渡されたグラスを受け取って飲むと、よく分かんねぇけど高級そうな味がした。
「んー!美味い…気がする!」
「付いてるよ」
京がクスッと笑いながら胸元のポケットからハンカチを出して、俺の口元を拭いてくれる。
「あっ、悪ぃ、さんきゅ」
京の奴は、今まで友達がいなかったからか、やたら距離が近い。
最初はちょっと戸惑ったけど、理由が分かったから今はそんなに気にならなくなった。
正直、これだけ見た目がいい奴に世話焼いて貰えるのも、なんか気分いいしさ。
「湊のやつ、どこにいんのかな?」
ふと、勝手にぷらぷらしてるって離れてった湊の事が気になって、周りをきょろきょろしてみたけど、どこにいるのか良く分からない。
「大丈夫だよ、彼は彼で楽しんでるんじゃない?それよりほら、もうすぐショーが始まるよ。もっとステージに近い方に行こう」
「んー、そうだな」
京に腕を取られて、俺はまあいっか、と思った。
それからショーを楽しんで、美味い料理や酒をいっぱいつまみ食いして、京とたわいない話をしていた時だった。
「――――え?うぉっ、何!?」
さっきまで普通に明るかった室内が急に暗くなって、クラブみたいな音楽が流れ始めたけど、最初はまた何かのアトラクションでも始まるのかと思った。
だけど、周りにいた奴らが次々に抱き合ったり、キスし始めて俺はビビった。
そういえば、よく見たら周りの奴ら全員男じゃん!?
てか、この会場、男しかいなくね!?
「ちょ、ちょっと、何、これ!?どういう事!?」
慌てまくって青くなって京にしがみ付いたら、京はニコッといつもの笑顔で言った。
「ごめんごめん。言うの忘れてたけど、今日のパーティは男同士の出会いの為のパーティなんだよね。でもほら、楽しかったでしょ?料理もお酒も美味しかったよね?」
「え、う、嘘だろ!?てか、ってことは京もそっちって事?」
「まあ、どっちかと言ったらそうかな」
びっくりはしたけど、何しろ身近に両刀(バイ)の湊なんて奴がいるんだから、その事自体は割とすぐ飲み込めた。
けど、問題はそこじゃねぇ。
「え?それじゃ、俺をここに連れて来たのは…」
ヤバいヤバいヤバい。
急に心臓がドキドキして、さっきまでがぶがぶ飲んでた酒が効いて来た気がした。
全身が熱くなって、足がガクガクする。
周りに目を走らせると、やっぱり何度見ても男同士でちゅっちゅしてる。
いや、ちゅっちゅとか、んな可愛いもんじゃねぇよ。
ベロベロ舌絡めた、とんでもねーディープなやつ、かましてんじゃん。
「あわわわ…」
「大丈夫?いっぱい飲んだもんね。力入らないんでしょ。ほら、上に部屋あるからそこで少し休もうか」
ひぃいいい!!!
妙に優しい笑顔で俺の体を抱き寄せる京に、ブルッと震えが来た。
「いや、あの、俺、もう帰るから」
なるべく、落ち着いた声を出そうとしたけど無理だった。
俺の言葉を聞いた京の腕にグッと力が入って、
「は?ダメだよ。こんな酔ってるのに危ないでしょ。今夜は泊ってゆっくりしてから、明日帰ればいいよ。俺も一緒に泊って介抱してあげるからね」
耳元で囁かれて全身ガクガクになった。
「か、かかか介抱って」
いやそれ、絶対なんかエッチなやつだよね?
お前、なんか狙ってるよね?
俺を見る京の目が肉食獣みたいにギラついてる事に、俺は気付いてしまった。
「大丈夫だよ、痛い事なんか絶対しないからさ。俺、上手いから安心して。いっぱい気持ち良くしてあげるからね」
「いや、俺、そっちの趣味はないっていうかさ、いやいやいや、無理無理無理ぃ!」
全身、変な汗でびっしょりになって抵抗したけど…
こいつ細いくせにどこにこんな力あるんだ、って驚いてる間に、俺はあれよあれよとスイートルームみたいな豪華な部屋に連れ込まれてしまった。
その後何をどうされたのか、正直あんまりはっきり言いたくない。
バスルームに引っ張られ、
「大丈夫大丈夫、任せて」
と言われながら、誰にも触られた事ない部分をアレコレされ、手早くバスローブを着せられてキングサイズのベッドに押し倒されたかと思うと、
「可愛いよ由貴哉」「ここ、気持ちいいでしょ」とか囁かれながらあっちこっち弄られまくった。
「はぁ、あ、だ、だめ、そんなことぉ」
「はは、もうこんなヌルヌルになってるよ?可愛いな…」
いや俺も、最初は抵抗したんだけど、京のやつ言うだけあってツボ押さえてるっていうか、ちん○の扱いが慣れてるっていうか、すげぇ上手くて…
あんまり気持ちいいからさ、恥ずかしいわ、怖いわ、で瞑ってた目をちょっと開けてみたら、京のやつ、綺麗な顔で俺のちん○美味そうに咥えてて。
それ見たら、男に襲われてるって恐怖より、こんなカッコいいヤツが俺の事すげぇ欲しがってる、って状況に優越感つぅか、ゾクッと来ちゃって。
つい、されるがままになったんだよな。
だけど、
なんかぬるぬるしたもの垂らされて気持ちいーな…なんて浸ってたら、京の指がずぶって、本来は出口の部分に入って来て一気に青褪めた。
「…あ!?あーーーっ!そんなとこ汚いって!や、やややめて」
「さっきバスルームで綺麗にしたから平気だよ。ほら、こっちも一緒にしてあげるから」
「えっ、わっ、ちょっ…!??」
ちん○一緒に扱かれると、ケツの中を動く指が気持ち悪いのに、気持ち良さが入り混じって来て、ヤバい。
「ここ、気持ちいいでしょ」
「あっ、あっああ」
楽しそうな京の声に、だんだんまともに返事も出来なくなってた。
う、うそだろ。気持ち悪いばっかりだったのに、突っ込まれてるのが段々…
何だこれ、もしかしてこれが、湊が言ってたやつ?
やば…なんか、来そう…
とか思ってたら、急に指が引き抜かれて肩透かしを喰らう。
「えっ…」
「ふふ、ごめんね。でも俺ももう我慢出来なくなって来ちゃったよ。今度はこれで気持ち良くしてあげるから挿入れていい?」
「!?」
目の前に突き出された、京の凶悪なエクスカリバーに一気に血の気が引く。
何だこれ。お前、そんなキレーな顔してるくせに、そこだけゴリラやん。
そんなもん入れられたら、俺のケツが死ぬ!
「やめてやめてやめて!無理無理無理rrーーー!」
「やだなあ、そんなに怯えないでよ。逆に興奮しちゃうからさ。あーやば。もう限界かも」
「…その後の事は言いたくない…」
はー、と溜息を付く俺に、湊は目をキラキラさせて食い下がった。
「なんだよぉ、そこが一番聞きたいところじゃん!ね、ね、どうだった?良かった?イけた?何回くらいヤッたの?」
「ノーコメント!」
言えるかよ。
突っ込まれた後、始めはただただ痛くて苦しいだけだったのに。
何か段々気持ち良くなっちゃって。
それに気付いた京に
「ほんと由貴哉は可愛いな。こっちの才能あるよ。今夜だけなんて嫌だな…ね、俺のものになってよ」とか甘い声で囁かれて、最後には女みたいにあんあん言いながら盛大にイッたとかさ。
しかも、イったあと京に優しく抱き締められてキスされて「好きだよ」なんて言われて、思わずキュンとしたとかさ、言えるわけない。
あの時の事を思い出して、ついボーっとしてたら、湊がニヤニヤしながら言う。
「まあいいや。で、結局何悩んでたの?お前の様子見てたら大体分かっちゃったけどさぁ」
「いやぁ…それはだから、あれだよ…」
うう、何て言ったらいいんだ。
結局あの日から、ほぼ毎日京と会っては、何かそういう事になっている。
最初は抵抗あったけど、俺も色んな女の子と遊んで来たわけだし?
「…京の奴はまぁ、顔も綺麗だしセレブだし、俺が望んでたようなラグジュアリーでレアな世界見せてくれるし、…エッチは気持ちいいし、男って事を除けば理想の相手なんだよな」
「うんうん」
あれっ、いつの間にか考えてる事が口に出てたっぽい。
まあ、いいか。湊の奴も茶化さず聞いてるし。
「それに、何かすげぇ大事にされてるし…ちょっと勘違いするっていうか、俺そういう趣味ねぇのに、甘やかされると何かキュンて来るんだよなぁ。あ、でも俺は女の子好きだし!京の事が好きとか、そういうんじゃねぇし!」
慌てて否定すると、湊は呆れた目で俺を見た。
「ったく、往生際が悪いなあ…甘やかしてくれて気持ち良くしてくれて、おまけにイケメンで金持ってるとかさ。それってもう由貴哉の玉の輿願望、叶ったってことじゃん。男だって問題なし!良かったね」
「うーん…そう、かなあ…?」
何か、湊にそう言われると、何の問題もないように思えて来た。
☆☆☆
side湊
「…うん、そうだな!別にあいつと恋人になるとか、そういうんじゃないしな。今楽しくて気持ち良ければいいよな。あー、なんかお前に話したら気が軽くなったぜ。さすが湊!じゃ、俺これから京が迎えに来るから行くわ」
急に吹っ切れたみたいに明るく言う由貴哉に、
「ふーん?まあ元気になったんなら良かったけどさ。あ、そこまで一緒に行っていい?」
って、俺も待ち合わせ場所に付いてった。
いや、ちょっとだけ興味が出たんだよね。あの時京のヤツ、俺のことすげぇ邪険にしてたし、乱パでヤッてからほぼ毎日由貴哉と会ってるって、それけっこうハマってるってことじゃん?
だから2人でいる時どんな感じなのかなーって、純粋な好奇心。
たわいない話しながら、大学の入口で待つ。
「あ、来た」
って由貴哉の声でそっちを見たら、雄大のみたいな高級そうな車が停まって、助手席側の窓が開いた。
「じゃな、湊」
「うん、またね」
手を振って車に近付いて行く由貴哉を眺めていると、運転席の京が俺をチラッと見た。
そして、助手席に座った由貴哉の頬を優しく撫でる。
え?由貴哉ってば。
あれだけ好きじゃないとか恋人じゃねぇしとか言ってたくせに、それ完全にメス顔でしょ。
あ~らら。ま、話聞いた時から分かってたけど、やっぱ抱かれたら、メスになっちゃったかぁ…そんなうっとりした顔で京のこと見てたらさぁ、どう思ってるかなんて丸わかりだよ?
呆れて見てたんだけど、京は俺を見てフフンって顔してる。
いやいや、俺はそいつのこと狙ってなんかないからね。けん制しないでよ。
なんとなく由貴哉が、蜘蛛の巣に掛かった蝶、いや由貴哉だからバッタか?みたいに思えて来たけど、
「…ま、頑張れよ由貴哉」
俺は走り去る車に、生温い笑顔で手を振ったのだった。
(終)
これにて、ビッチとクズ、完結です!最後まで読んで下さった方々、ありがとうございました~♡
応援ありがとうございます!
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