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◆4 大体さぁ、こんなふうにいつまでも女同士でつるんでるから、私たち、彼氏ができないんじゃないの!?
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私たち、高山えりかと、新藤彩子、そして荒畑玲奈の女性三人が、山奥にある廃病院の手術室に閉じ込められてしまった。
四方を白い壁にかこまれた手術室は、中央の扉しか出入口がなかった。
みなで力一杯、何度も扉を押したり引いたりしても駄目だった。
一向に開く気配はない。
手術室は扉が閉じられている限りは完全な密室で、窓すらない。
しかも防音処置が施されているみたいで、やたら静かだった。
まるで外の様子がわからない。
今が晴れなのか、雨なのかすらもわからない。
幸い、みな、スマホを携帯し、腕時計を嵌めていたから、時間はわかる。
現在、夕方の六時十二分。
昨夜遅くに侵入してから、かれこれ十八、九時間は経過していた。
「ざけんじゃないわよ!」
私は何度もスマホで従業員たちと連絡を取ろうとした。
私は雇われとはいえ、店舗運営を任されている店長なのだ。
無断欠勤ができる立場ではなかった。
焦って、最後には叫んでいた。
「嘘でしょ!?
ここがいくら山の中といっても、車で来る途中、ナビも使えたし携帯も繋がってたわよ。どうしてーー!?」
この手術室が電波遮断する仕様になっているからなのか、そもそも山奥だからなのか、原因はわからないけど、とにかくアンテナが圏外のようで、誰にも電話がつながらない。
玲奈は半笑いの表情で、話題を変えた。
「そんなことよりさぁ、いったい誰が私たちを閉じ込めたわけ?
ここに来る間、ひとっこひとりいなかったじゃない?
誰もいなかったでしょ?
まさか幽霊かなにかが、いたっていうの?」
「もう! そんな非現実的な話は、どうでもいいじゃない。
とりあえず、ここから出ることが肝心ってことよ。
出られさえすれば、普段の日常生活に戻れるんだから!」
私は、ガンガンと扉を叩く。
が、よほど頑丈に造られているようで、びくともしない。
扉の銀色が黒ずむ。
私たち三人とも、今まで必死にドアを叩いたから、手の皮が剥けて血が滲み出ていた。
彩子が私の手を取って、首を振る。
「気持ちはわかるけど、えりかが一番、血が出てるんだから。
諦めて、手を洗って来なよ」
私は力無くうなずく。
幸い、手術室の隣に、お医者さんのための更衣室があって、そこの脇にトイレがあった。
用を足した後、手を洗う。
洗面台もあったので、水も飲める。
だから、密室に長時間閉じ込められても、お腹が空く以外は、健康なままでいられた。
「でも、おかしいと思わない?
ここ、どうして水道が通ってるわけ?
廃病院なんでしょ。
もう十年以上も営業していないはずよ」
「何だったって、良いじゃない。
おかげで、水が飲めるんだから」
「まっとうな水かどうかなんて、わかんないじゃない?
水道管なんか、錆びてたりしてさぁ……」
「うるさいわね。
とっとと、ここから出られれば、どうとでもなるでしょう?
出る方法、考えなよ!」
「だって、扉が一つしかないんだもん。
その扉がびくともしないんだから、どうにもならないんじゃない!」
「あぁ、こんな時、男手が一つでもあればなぁ」
「男がいたって一緒でしょ。
どうせ、自分は何にもしないくせに、腕を組んだままで、ガタガタ文句言うだけよ」
「そもそもさぁ、なんでこんなところに来たわけ?」
「彩子が連れてきたからじゃない?」
「私は連れてきてないわよ。
率先して車を運転したのは、えりかでしょ?」
「なに? 私が悪いってわけ!?」
私は頭に血が昇り、甲高い声を張り上げた。
「いつもいつも私にばっかり料理作らせたり、車も運転させて!
あなたたちが、私に何してくれたって言うのよ!
いつもお酒持ってきたり、つまみ持ってきたりするだけで、タダで歓待してあげてるコッチの身にもなってよね!」
玲奈が負けじと声を上げる。
「うっさいわね!
『接客の練習になるから』って、私たちをしょっちゅう招いてきたの、えりかでしょ!
私も付き合うの、いい加減、うんざりしてたのよね。
大体さぁ、こんなふうにいつまでも女同士でつるんでるから、私たち、彼氏ができないんじゃないの!?」
「彼氏がどうとか、この非常時に。
玲奈って、ほんと、いつもいつも……」
二人の視線が突き刺さる。
玲奈は慌てて怒りの矛先を変えようとする。
「思い出してみなよ。
こういった変なことがある時って、いつも率先して動いていくのって、彩子だよね?
中学の修学旅行で京都行った時だって、わざわざ遠い場所のお寺に行くって言って、私たちを振り回して、結局、ずっと歩きっぱなしだったじゃない?
結局、めんどくさいことに私たちがなっちゃうの、あんたのせいなのよ」
さすがに彩子も、カチンときたらしい。
眼鏡を掛け直して、言い返す。
「なによ、玲奈なんて、オトコに振られただの、惚れただのって、ガタガタ言うたびに、私がアリバイ作ってあげたじゃないの!?
おかげで玲奈のお母さんと私、お茶を飲むほどの仲になっちゃったじゃない。
あんたがズボラなんだから、もともとは単純なことを混乱させるのよ。
私はね、塾の生徒から聞いた話を元ネタに事件現場を見てみて、授業の合間に『先生も行ってきたわよ』って話がしたかっただけなのよ。
それが、そんなに悪いわけ?
あんたみたいにオトコを追っかけてるばっかりじゃなくて、私は仕事のこと、考えてんだよ。これでも!」
「そんなこと言ったら、私にだって仕事はあるわよ。
ディスカウントストアのレジもやってるけど、値札をつけたり、接客したり、いろいろこれでもやってるんだから。
会社員なんだよ、ワタシはこれでも。
塾の先生だからって、いつまでも威張らないでよ!
ーーそうそう、威張ってるって言ったら、えりかもだよね?」
玲奈は矛先を急に私に向け変えた。
言いすぎたってことを、彩子の表情を見て察したんだと思う。
だからって、私をディスる流れにするのはどうかと思うけど。
「店長になったからって偉そうに。
アンタ、店長って言っても、正社員じゃないんでしょ?
学生のバイターやフリーターと変わらない身分なんでしょ?
契約で雇われてるなんて、将来性ないわよ。
私が演劇に沼ってた時、『演劇なんかやっても無駄。将来性がない』って言って!
『将来性がない』っての、どっちよ?
ほんと、会社に使われてばっかで、先見の明がないんだから。
そんなんだから、いつまでたっても同じことやって店も持てないの、あんたじゃない!?」
私は玲奈の頬をバチンと平手打ちした。
「ほんとに、イライラするわね。
アンタ、いっつも一言、多いのよ!
ただでさえお腹も空いてるのに、今ここから抜け出すこと以外に考える必要、何かあるわけ?
私が店持ってるとか、持ってないとか、関係ないじゃない!」
私の視界が少しボヤける。
涙が溢れ出てしまったらしい。
彩子も同情してくれた。
「バカバカしい。
そもそも玲奈の口から、正社員だの契約社員だのって言われても、何の説得力もないんだから。
ほんとに玲奈は、アケスケに言ったらそれで良いって勘違いしてない?
本音をぶつけてるから、それで良いっていうことでもないのよ」
今度は玲奈が泣きそうな顔になる。
それを見て、彩子も急に矛を収める。
そして、私の方をマジマジと眺める。
「ーーでも、どうしてこんなところにまで来ちゃったんだろう。
運が悪過ぎるわ。
玲奈はわかるけど、どうしてえりかが反対してくれなかったの?」
私はびっくりして彩子を見返した。
それでも、彩子は澄まし顔で説教を始める。
「私は塾の生徒がしてた都市伝説の話をしたけど、まさか本当に事件現場にまで行っちゃうとは思わなかった。
だいたいね、えりかが夜食用意したり車を運転したり、そういうふうにサービスするもんだから、みんなが後に退けなくなっちゃうのよ。
えりかってさあ、世話を焼いたらそれで誰からも好かれるって勘違いしてない?
そうやってばかりだから、オトコに逃げられんのよ。
あんたは、オトコに尽くしてばかり。
学生時代付き合ってたマサトだってーー」
「関係ないでしょ、そんなの!」
私は金切り声をあげた。
「彩子自身が、ついさっき言ってたでしょ!
正しければ言って良いってことでもないのよ。
それに、今の状況に何の関係があるわけーー」
言い争いが加熱する。
今度は、玲奈までもが乗ってきた。
「そうよ。彩子のその口振り、昔から嫌いだった。
正論吐いてればそれで良いっていう、その態度。
あなたも他人に説教する暇があったら、自分で身体、動かしなさいよ。
典型的な頭でっかちの理屈倒れ。
真面目なのに、中途半端な学力でさ」
「なによ、なによ!」
今度こそ、彩子は泣き出した。
眼鏡を取って、涙を拭う。
それでも、玲奈は止まらない。
今度は私の方を向いて、指をさして断言する。
「えりかもね、真面目に頑張ってたら、必ず報われるっていう幼稚な考え、良い加減、捨てなよ。
最低、その考えを、私や他の人にまで押し付けるの、やめてくんない?
重いんだよ。『頑張ってる私を見て』っていうの。
そんなんじゃ、オトコは気が休まらない。逃げちゃうわよ!」
悪口の言い合いが、終わらない。
それなのに、私はなぜか次第に頭が冷えてきて、玲奈と彩子、二人の顔を正面から眺めていると、ストンと何かが抜け落ちた気がした。
そして、大きく息を吸い込んで、自らに言い聞かせた。
(ここは落ち着くのよ。
パニックに呑まれてはダメ。
ただでさえ非常事態なのに、神経が参っちゃう……)
私は二人に呼びかけた。
「誰かが閉めたのかもしれないけど、詮索しても仕方ない。
ここから出る方法だけを考えないと。
だからね、ここは初めにかえって考えてみて。
この廃病院の都市伝説では、閉じ込められた女性三人ともが全滅したってなってたけど、実際は違った。
一人は逃げ出せた。
そして、交番に駆け込んで、全員が助かったっていうんでしょ?
ね、彩子?」
彩子はうなずいた。
「ウチの塾の子がそう言ってた」
私は二人の手を取った。
「だから、助かる方法はあるはず。ね、考えよ?
まずは、その逃げ出せた一人になるのよ。その方法をーー」
「それで言うとーー使えるかもしれない蘊蓄はあるの。
その塾の子が言ってたんだ。
この廃病院があった場所、元はお城だったんだって。
戦国時代の」
彩子は眼鏡をハンカチで拭きながら言った。
四方を白い壁にかこまれた手術室は、中央の扉しか出入口がなかった。
みなで力一杯、何度も扉を押したり引いたりしても駄目だった。
一向に開く気配はない。
手術室は扉が閉じられている限りは完全な密室で、窓すらない。
しかも防音処置が施されているみたいで、やたら静かだった。
まるで外の様子がわからない。
今が晴れなのか、雨なのかすらもわからない。
幸い、みな、スマホを携帯し、腕時計を嵌めていたから、時間はわかる。
現在、夕方の六時十二分。
昨夜遅くに侵入してから、かれこれ十八、九時間は経過していた。
「ざけんじゃないわよ!」
私は何度もスマホで従業員たちと連絡を取ろうとした。
私は雇われとはいえ、店舗運営を任されている店長なのだ。
無断欠勤ができる立場ではなかった。
焦って、最後には叫んでいた。
「嘘でしょ!?
ここがいくら山の中といっても、車で来る途中、ナビも使えたし携帯も繋がってたわよ。どうしてーー!?」
この手術室が電波遮断する仕様になっているからなのか、そもそも山奥だからなのか、原因はわからないけど、とにかくアンテナが圏外のようで、誰にも電話がつながらない。
玲奈は半笑いの表情で、話題を変えた。
「そんなことよりさぁ、いったい誰が私たちを閉じ込めたわけ?
ここに来る間、ひとっこひとりいなかったじゃない?
誰もいなかったでしょ?
まさか幽霊かなにかが、いたっていうの?」
「もう! そんな非現実的な話は、どうでもいいじゃない。
とりあえず、ここから出ることが肝心ってことよ。
出られさえすれば、普段の日常生活に戻れるんだから!」
私は、ガンガンと扉を叩く。
が、よほど頑丈に造られているようで、びくともしない。
扉の銀色が黒ずむ。
私たち三人とも、今まで必死にドアを叩いたから、手の皮が剥けて血が滲み出ていた。
彩子が私の手を取って、首を振る。
「気持ちはわかるけど、えりかが一番、血が出てるんだから。
諦めて、手を洗って来なよ」
私は力無くうなずく。
幸い、手術室の隣に、お医者さんのための更衣室があって、そこの脇にトイレがあった。
用を足した後、手を洗う。
洗面台もあったので、水も飲める。
だから、密室に長時間閉じ込められても、お腹が空く以外は、健康なままでいられた。
「でも、おかしいと思わない?
ここ、どうして水道が通ってるわけ?
廃病院なんでしょ。
もう十年以上も営業していないはずよ」
「何だったって、良いじゃない。
おかげで、水が飲めるんだから」
「まっとうな水かどうかなんて、わかんないじゃない?
水道管なんか、錆びてたりしてさぁ……」
「うるさいわね。
とっとと、ここから出られれば、どうとでもなるでしょう?
出る方法、考えなよ!」
「だって、扉が一つしかないんだもん。
その扉がびくともしないんだから、どうにもならないんじゃない!」
「あぁ、こんな時、男手が一つでもあればなぁ」
「男がいたって一緒でしょ。
どうせ、自分は何にもしないくせに、腕を組んだままで、ガタガタ文句言うだけよ」
「そもそもさぁ、なんでこんなところに来たわけ?」
「彩子が連れてきたからじゃない?」
「私は連れてきてないわよ。
率先して車を運転したのは、えりかでしょ?」
「なに? 私が悪いってわけ!?」
私は頭に血が昇り、甲高い声を張り上げた。
「いつもいつも私にばっかり料理作らせたり、車も運転させて!
あなたたちが、私に何してくれたって言うのよ!
いつもお酒持ってきたり、つまみ持ってきたりするだけで、タダで歓待してあげてるコッチの身にもなってよね!」
玲奈が負けじと声を上げる。
「うっさいわね!
『接客の練習になるから』って、私たちをしょっちゅう招いてきたの、えりかでしょ!
私も付き合うの、いい加減、うんざりしてたのよね。
大体さぁ、こんなふうにいつまでも女同士でつるんでるから、私たち、彼氏ができないんじゃないの!?」
「彼氏がどうとか、この非常時に。
玲奈って、ほんと、いつもいつも……」
二人の視線が突き刺さる。
玲奈は慌てて怒りの矛先を変えようとする。
「思い出してみなよ。
こういった変なことがある時って、いつも率先して動いていくのって、彩子だよね?
中学の修学旅行で京都行った時だって、わざわざ遠い場所のお寺に行くって言って、私たちを振り回して、結局、ずっと歩きっぱなしだったじゃない?
結局、めんどくさいことに私たちがなっちゃうの、あんたのせいなのよ」
さすがに彩子も、カチンときたらしい。
眼鏡を掛け直して、言い返す。
「なによ、玲奈なんて、オトコに振られただの、惚れただのって、ガタガタ言うたびに、私がアリバイ作ってあげたじゃないの!?
おかげで玲奈のお母さんと私、お茶を飲むほどの仲になっちゃったじゃない。
あんたがズボラなんだから、もともとは単純なことを混乱させるのよ。
私はね、塾の生徒から聞いた話を元ネタに事件現場を見てみて、授業の合間に『先生も行ってきたわよ』って話がしたかっただけなのよ。
それが、そんなに悪いわけ?
あんたみたいにオトコを追っかけてるばっかりじゃなくて、私は仕事のこと、考えてんだよ。これでも!」
「そんなこと言ったら、私にだって仕事はあるわよ。
ディスカウントストアのレジもやってるけど、値札をつけたり、接客したり、いろいろこれでもやってるんだから。
会社員なんだよ、ワタシはこれでも。
塾の先生だからって、いつまでも威張らないでよ!
ーーそうそう、威張ってるって言ったら、えりかもだよね?」
玲奈は矛先を急に私に向け変えた。
言いすぎたってことを、彩子の表情を見て察したんだと思う。
だからって、私をディスる流れにするのはどうかと思うけど。
「店長になったからって偉そうに。
アンタ、店長って言っても、正社員じゃないんでしょ?
学生のバイターやフリーターと変わらない身分なんでしょ?
契約で雇われてるなんて、将来性ないわよ。
私が演劇に沼ってた時、『演劇なんかやっても無駄。将来性がない』って言って!
『将来性がない』っての、どっちよ?
ほんと、会社に使われてばっかで、先見の明がないんだから。
そんなんだから、いつまでたっても同じことやって店も持てないの、あんたじゃない!?」
私は玲奈の頬をバチンと平手打ちした。
「ほんとに、イライラするわね。
アンタ、いっつも一言、多いのよ!
ただでさえお腹も空いてるのに、今ここから抜け出すこと以外に考える必要、何かあるわけ?
私が店持ってるとか、持ってないとか、関係ないじゃない!」
私の視界が少しボヤける。
涙が溢れ出てしまったらしい。
彩子も同情してくれた。
「バカバカしい。
そもそも玲奈の口から、正社員だの契約社員だのって言われても、何の説得力もないんだから。
ほんとに玲奈は、アケスケに言ったらそれで良いって勘違いしてない?
本音をぶつけてるから、それで良いっていうことでもないのよ」
今度は玲奈が泣きそうな顔になる。
それを見て、彩子も急に矛を収める。
そして、私の方をマジマジと眺める。
「ーーでも、どうしてこんなところにまで来ちゃったんだろう。
運が悪過ぎるわ。
玲奈はわかるけど、どうしてえりかが反対してくれなかったの?」
私はびっくりして彩子を見返した。
それでも、彩子は澄まし顔で説教を始める。
「私は塾の生徒がしてた都市伝説の話をしたけど、まさか本当に事件現場にまで行っちゃうとは思わなかった。
だいたいね、えりかが夜食用意したり車を運転したり、そういうふうにサービスするもんだから、みんなが後に退けなくなっちゃうのよ。
えりかってさあ、世話を焼いたらそれで誰からも好かれるって勘違いしてない?
そうやってばかりだから、オトコに逃げられんのよ。
あんたは、オトコに尽くしてばかり。
学生時代付き合ってたマサトだってーー」
「関係ないでしょ、そんなの!」
私は金切り声をあげた。
「彩子自身が、ついさっき言ってたでしょ!
正しければ言って良いってことでもないのよ。
それに、今の状況に何の関係があるわけーー」
言い争いが加熱する。
今度は、玲奈までもが乗ってきた。
「そうよ。彩子のその口振り、昔から嫌いだった。
正論吐いてればそれで良いっていう、その態度。
あなたも他人に説教する暇があったら、自分で身体、動かしなさいよ。
典型的な頭でっかちの理屈倒れ。
真面目なのに、中途半端な学力でさ」
「なによ、なによ!」
今度こそ、彩子は泣き出した。
眼鏡を取って、涙を拭う。
それでも、玲奈は止まらない。
今度は私の方を向いて、指をさして断言する。
「えりかもね、真面目に頑張ってたら、必ず報われるっていう幼稚な考え、良い加減、捨てなよ。
最低、その考えを、私や他の人にまで押し付けるの、やめてくんない?
重いんだよ。『頑張ってる私を見て』っていうの。
そんなんじゃ、オトコは気が休まらない。逃げちゃうわよ!」
悪口の言い合いが、終わらない。
それなのに、私はなぜか次第に頭が冷えてきて、玲奈と彩子、二人の顔を正面から眺めていると、ストンと何かが抜け落ちた気がした。
そして、大きく息を吸い込んで、自らに言い聞かせた。
(ここは落ち着くのよ。
パニックに呑まれてはダメ。
ただでさえ非常事態なのに、神経が参っちゃう……)
私は二人に呼びかけた。
「誰かが閉めたのかもしれないけど、詮索しても仕方ない。
ここから出る方法だけを考えないと。
だからね、ここは初めにかえって考えてみて。
この廃病院の都市伝説では、閉じ込められた女性三人ともが全滅したってなってたけど、実際は違った。
一人は逃げ出せた。
そして、交番に駆け込んで、全員が助かったっていうんでしょ?
ね、彩子?」
彩子はうなずいた。
「ウチの塾の子がそう言ってた」
私は二人の手を取った。
「だから、助かる方法はあるはず。ね、考えよ?
まずは、その逃げ出せた一人になるのよ。その方法をーー」
「それで言うとーー使えるかもしれない蘊蓄はあるの。
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