水晶龍といっしょ ~ダンジョン巡って魔王の種もぎ~(仮題)

眠り草

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【第一章】一部

【呼び出されし者】17.ギュベリュマ戦

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ヴァァァァァァァァァァァァ
火炎を振り撒き特大の火球が投げ付けられ迫ってくる。

「玄武断空球!!」

発動と同時に視界は真っ暗になり、一瞬の浮遊感の後にゴンッという衝撃が足元から伝わってくると同時に遠くで鳴る雷鳴のようなくぐもった爆発音と振動が微かに伝わってくる。浮遊感は二重構造の隙間分落下したようだ。

ライトで明かりを取り、周囲に熱による変化が無いかを確認する。
玄武断空球は、玄武岩の珠を二重構造に展開してその2つの珠の合間を真空にして断熱するシェルター魔術だ。

内側の壁をペタペタ触ってみるがひんやりしているので断熱は成功しているようだ。
MP回復量を目安に経過時間を測る。

これで少し休めるな。
内側の壁は内部が直径2m岩の厚さが20cmでその外側に10cmの真空空間があり更に外に20cmの岩に包まれた直径3mの構造になっている。

魔力感知で外部の魔力が見れれば良いのだけど、自分の魔術で囲まれているからわからん。

「自分の魔術の魔力は除外してくれ」

淡い期待を込めて愚痴ってみる。

【魔力感知結果から自己発動魔術を除外します】

よし!
今まで一面自分のシェルターの魔力で埋まっていた視界から自分の魔力が消え周囲の地面らしき部分が赤黒い魔力で覆われているのが見える。ある意味透視しているようなものだ。ギュベリュマの膨大な魔力も見て取れる。
それでも最初の頃の荒れ狂うような膨大な魔力量ではなくなっている。

MPの回復量からしておおよそ3分程度で周囲の赤黒い魔力が地面から地下へと消えていく。

シェルターの外はマグマと化しているんだろう。

ギュベリュマの魔力の流れを観察しているが次の魔術を用意している様子はない。
それならここから出るか。

「アイスフィールド」

玄武断空球を解除する前に周囲の地面をアイスの魔術で冷却して、玄武断空球を解除する。

俺を中心とした周辺の半径5mは凍結して黒い冷えた溶岩になっているが、その外側は未だ赤く泡立つ赤熱したマグマが半径8mのドーナツ円を描いている。
アイスの領域と接するところから熱を奪われ黒い岩石へと変化していく。
なんとか助かった。


「流石は稀人。耐え忍んだようだな。それでこそ主への供物だ。
 さて我と貴公との格の違いは理解して頂いたと思うがまだ抗うかね?」

やれやれといった表情のギュベリュマをみやりながら、
ゆっくりと立ち上がりながら呟く

「アイスフィールド」

退路確保のため残っているマグマを冷やしておく。

俺の足元を中心にピキピキと音を立てて地表を氷が覆っていく。
マグマの処まで凍結が進むとジュワーと熱したフライパンに水を入れた時のような音を立ててそこから先は一気に暑い蒸気が吹き出し霧の壁を作り出す。周囲ではまだブスブスと熱を放出する音がしている。

ゆらりと体の向きをギュベリュマの方に向けながら、

「供物言われて、はい喜んで、とは言わないだろ。
 あー例えばだが、あんたが人間に捕らえれられて、お前を稀人を呼ぶ際の生け贄にする。どうだ嬉しいだろ?と言われて、はいと大人しく生け贄になるのか?」

「ふむ、尤もであるな。まあ我が人に捕まるというその前提が有り得ないことではあるがな」

「そうとも言い切れないんじゃないのか、な、っと!フォトンスフィア!!」
「なっ!?」

奴の体を直径10mの漆黒で満たした珠が包み込む。光なのに漆黒なのは光子フォトンを完全に閉じ込めて外に出さないからだ。

「フォトンスフィア!&圧縮!」

掛け声と共に漆黒の珠がどんどんと小さくなっていく。

「効か・グガァァァァ・・・・」

えっ?なんだって?
ニヤニヤと悪い笑顔で嗤ってやる。見えてるか分からないけど。
奴の苦悶の声が聞こえてくる。効いてる効いてる。

光を珠型に閉じ込め珠を圧縮するという無茶なことができるのは、過程をすっ飛ばして結果を得られる魔術ならではだ。

玄武断空球シェルターの中で奴の魔術が消えるのを待ちながら、対抗策の魔術を組んでいるたのだが、魔術式がエラーなく生成されたので光の圧縮ができることは確信はしていた。

が、俺の居た世界じゃ光に干渉できるのは大型のブラックホールのような超重力くらいしか知らない。(俺がそれしか知らないだけで他にも有るのかもしれないが)
そもそもその重力すらまだ解明されいない。何が重力を発生させているのかも確定されていないのだ。
だから少々不安ではあったのだが、想定した結果になり上手くいったようだ。

光の珠全体から白煙が大量に吹き出していてまるで圧力鍋の蒸気のように凄い勢いだ。
魔力感知でも奴の魔力をゴリゴリ削っているのが分かる。赤黒い魔力が霧散していっている。
アナライズ

ギュベリュマ(正式発音表記不可)
魔人族種(騎士級)
ダンジョンシード寄生
推定HP 117/280(270+10)
推定MP 369/1200(200+1000)
弱点 水 (光) 
超自己再生中
意識被支配
憑代強化
身体強化

ダンジョンシード
推定HP 2/10
推定MP 369/1000
弱点 光
超自己再生中
寄生中

自己再生が超が着いて奴のMPを更に削っていく。
このまま削り切れるか?脳裏に過る。

あ、なんてフラグを立ててしまったかも。

「うおおおおおおお」

パンッ!

乾いた音がすると同時に奴を包んでいた漆黒の珠が消え去ってしまった。
フラグ回収シマシタ

全身から白煙を上げて肩で息をしているギュベリュマ。次第にわなわなと肩を震わせながら、

「貴公を少々甘「氷柱槍アイシクルジャベリンマルチ!!」きゅっ!?」

ギュベリュマを囲むように周りに漂う無数の氷柱の槍達。その数24本、出現すると同時に奴に牙を剥く。

何か言いかけて不快に顔を歪めるギュベリュマへ氷柱槍の雨が降り注ぐ。

悠長にくっちゃべってる余裕なんてこっちにゃないんだよ。ここで一気に畳み掛けないと一撃一発逆転になる可能性高いからな。

意外なことにギュベリュマも流石に直撃する訳にもいかないらしく、先程と比べると随分小さな火珠を無数に生み出して氷柱槍を迎撃するが時既に遅く、半数は火球の迎撃が間に合わず脇をすり抜け直撃する。

「おのれ、小賢しい」

ギュベリュマは体のあちこちに氷柱が突き刺さった状態で此方を睨み、
そしてニヤリと嗤うと半身になり左手を俺に右手を俺とは反対方向へ向けて伸ばし掌から大量の小さな火球を放ちまくる。

狙いはダラ達!

その先にはオメガブラックの壁に隠れたダラ達が驚愕の表情を浮かべて固まっている。
あれだけの火球の数だ、壁横に逸れた火球の余波でシェルターとしては機能しないだろう。

強張る表情を浮かべるダラ達に無数の火球が殺到する。

・・・なんてね。「玄武珠」であっさり玄武岩に包まれるダラ達。想定済みだよ。


と、同時にギュベリュマが俺の方に翳していた左手に一際大きな火球を作り出して勝ちを確信した顔で嗤って撃ち出そうとしているところだった。


本命はここ!

「ナタルゥ!」(&鏃にロック!)

俺が叫ぶと、ヒュッと風切る音がギュベリュマの胸に吸い込まれトスッと音がする。
見事ギュベリュマの胸の大目玉に鉄の矢が突き刺さる。

ナタルゥは俺がダラ達の反対側に移動した後にダラ達の居るところから離れ十字砲火出来るところに気配を殺して移動して弓を構えていた。それを俺は目の端で捕らえていた。

ギョッと自分の胸を見下ろすギュベリュマ。が、しかし効かんとばかりにこちらを見るとニヤリと嗤う。

「無駄なこ「フォトンスフィア!!」」

間髪入れずにそう叫ぶと矢の刺さった胸の穴奥から光が漏れ出す。

「うぉぉ?うおぁぁぁああぁああああぁがあがぁがががががががが・・・」

今度こそ断末魔のような叫び声をあげる騎士級ギュベリュマ。

「どうだ、胸の中を直接光に照らされる気分てのはさ?
 さぞ晴れやかな気分なんだろ?

 ついでにお前さんの大好きなこれもやるよ。
 クリエイトウォーター!&圧力解放!」

クリエイトウォーターで魔力追加で高密度に生成した水をロックした鏃を中心に作り出し、そして密度を保つ圧力を解放する。
圧力を解放された水は一気に膨張し・・・

ギュベリュマの胸に矢が刺さった辺りを中心に一瞬膨らむと、
ボッという音と共に内側から多量の液体と肋骨を撒き散らしながら爆発し、胸に大穴を空ける。
吹き飛ばされた胸の目玉が宙に弧を描きボトリッと落ちてコロコロ転がって行く。

アナライズ

ギュベリュマ(正式発音表記不可)
魔人族種(騎士級)
推定HP 3/270
推定MP 12/200
弱点 水
自己再生中
身体強化

ダンジョンシード
推定HP 0/10
推定MP 13/1000
弱点 光
仮死

くっそ、まだ生きてるのかよ!
ともかくギュベリュマから剥がれ落ち転がって行くダンジョンシード目掛けて再度フォトンスフィアと氷柱槍を発動すると暫く眼球がのたうつ(?)と動かなくなった。




ダンジョンシード
推定HP 0/10
推定MP 0/1000
弱点 光
仮死

アナライズでHPMP共に0なのを確認。
大目玉ことダンジョンシードにそうっと恐る恐る歩みを進める。

あと2mくらいのところで、ゴロリと目玉が転がり目と目が合う。
見つめ合う俺とダンジョンシード・・・
その時、女性の声が響く。


「離れなさい!」

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