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27. 逃げないでよ。寂しいじゃん
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Side ティーナ
王子アドルフに初めて会ってから、一週間がたった頃。今日は、私とブレイブの新婚旅行だ。
新調してもらった服に、綺麗なネックレス。豪華な馬車が家の前に停まっていた。
天気はあいにくの曇り空だけれど、そんなの関係なかった。式もできなかったから、旅行は豪華にしたいな、とブレイブは言っていた。
「私と旅行なんて、、、申し訳ないです。いいのですか?」と、尋ねると
「僕がティーナと旅行したいんだよ」
と、ブレイブはいつものように笑った。
わくわくしている自分の気持ちを否定できなかった。今日は新婚旅行。正真正銘2人きり。
「私、こうやって旅行するの、人生で初めてです。」
歌手としての仕事として泊まりに行くことはあった。だけど、仕事に関わらず、"旅行"という形でどこかに一泊するという経験がない。
「それ、ほんとうか?」
「嘘はつきませんよ。」
「それは、、、嬉しいなぁ」
「どうしてですか?」
「だって、ティーナの初めてじゃないか。とびきり、楽しもうな。」
「は、はい!」
意気込みすぎて、声が裏返った。
「さあ、ティーナ、行こう!」
ブレイブは私に手を差し出した。その手をそっと掴む。暖かくて、大きな手。彼と手を繋ぐといつだって、私の心は温かくなる。
馬車に揺られてたどり着いたのは、湖の辺りにある大きな建物だった。真っ白のお城のような建物。木のいい香りがしてとても居心地がよかった。別荘の入り口には、大きなオルガンが置いてある。ブレイブは慣れた様子で、ホテルの従業員と挨拶していた。
「幼い頃からよくきていたホテルなんだ。ご飯がとても美味しいんだよ。」
私はどんな顔をしたらいいかわからなくて、両手をぎゅっと握って、ただブレイブを見ていた。
(どうしてこの人は、こんなにも良くしてくれるんだろう?)
私は大きく頭を下げる。心が躍る。ふかふかの絨毯も、高いシャンデリアも、この世のものとは思えないほど美しくて。今にも泣いてしまいそうになる自分がいる。笑うブレイブ様は、私を好きではない。
「なぜ?」
(あなたが好きなのは、私じゃないのにどうして?)
私はそんな言葉を心の中で飲み込む。この人は、この結婚が偽装結婚だと知らないのだろうか。いやいやまさかそんなはず…。
「ん?」
「どうして、こんなによくしてくださるのですか?」
「僕らは夫婦だ。そんな寂しくなること、言わないでくれ。」
(時が来たら、終わりが来るのに?)
そんなことを思いながら、繋ぐ手はやっぱり暖かい。ブレイブは私の肩を抱き寄せた。
その日の夜、予想外のことが起きた。ハルトンの天気は基本的に晴れているのだが、今日は違った。雷と竜巻。ひどい嵐が吹き荒れる。今日は一歩も外に出られそうもない。このひどい嵐のせいで、今日のディナーに届くはずだったお魚が届かなかったらしい。
(私が楽しみにしているときはいつもそうだ。雨ばかり降る。)
「私、雨女なんです。雨がこんなに降ったのは私のせいかもしれません。」
「そんなわけない。僕が天気を見誤った。こんなに雨が降るなんてな。」
ブレイブはのんびりと呟く。
「ブレイブ様は、雨が嫌いじゃないのですか?」
「うーん、雨は好きじゃないよ。」
「でも、なんだか楽しそうに見えます。」
「だってさ、もしも今日このまま雨が止まなかったら、明日も首都に帰らずここにいられるじゃないか。」
「確かに、、そうですね。」
「ティーナもそう思うかい?」
「ええ。」
「じゃあ、最高じゃないか。」
外に出られず、予定されていたご飯すら出ない夜に、ブレイブは最高だと言って笑う。ブレイブ様には、底知れないポジティブさがある。
「ブレイブ様は、、、綺麗です。」
「へ?綺麗?」
「最強ってことです。」
そう言ってブレイブの手に触れると、ブレイブは私から、顔を逸らした。
(いけない、図々しかったかな。)
そう思った私が手を引くと、ブレイブは私の手を捕まえた。
「逃げないでよ。寂しいじゃん。」
***
王子アドルフに初めて会ってから、一週間がたった頃。今日は、私とブレイブの新婚旅行だ。
新調してもらった服に、綺麗なネックレス。豪華な馬車が家の前に停まっていた。
天気はあいにくの曇り空だけれど、そんなの関係なかった。式もできなかったから、旅行は豪華にしたいな、とブレイブは言っていた。
「私と旅行なんて、、、申し訳ないです。いいのですか?」と、尋ねると
「僕がティーナと旅行したいんだよ」
と、ブレイブはいつものように笑った。
わくわくしている自分の気持ちを否定できなかった。今日は新婚旅行。正真正銘2人きり。
「私、こうやって旅行するの、人生で初めてです。」
歌手としての仕事として泊まりに行くことはあった。だけど、仕事に関わらず、"旅行"という形でどこかに一泊するという経験がない。
「それ、ほんとうか?」
「嘘はつきませんよ。」
「それは、、、嬉しいなぁ」
「どうしてですか?」
「だって、ティーナの初めてじゃないか。とびきり、楽しもうな。」
「は、はい!」
意気込みすぎて、声が裏返った。
「さあ、ティーナ、行こう!」
ブレイブは私に手を差し出した。その手をそっと掴む。暖かくて、大きな手。彼と手を繋ぐといつだって、私の心は温かくなる。
馬車に揺られてたどり着いたのは、湖の辺りにある大きな建物だった。真っ白のお城のような建物。木のいい香りがしてとても居心地がよかった。別荘の入り口には、大きなオルガンが置いてある。ブレイブは慣れた様子で、ホテルの従業員と挨拶していた。
「幼い頃からよくきていたホテルなんだ。ご飯がとても美味しいんだよ。」
私はどんな顔をしたらいいかわからなくて、両手をぎゅっと握って、ただブレイブを見ていた。
(どうしてこの人は、こんなにも良くしてくれるんだろう?)
私は大きく頭を下げる。心が躍る。ふかふかの絨毯も、高いシャンデリアも、この世のものとは思えないほど美しくて。今にも泣いてしまいそうになる自分がいる。笑うブレイブ様は、私を好きではない。
「なぜ?」
(あなたが好きなのは、私じゃないのにどうして?)
私はそんな言葉を心の中で飲み込む。この人は、この結婚が偽装結婚だと知らないのだろうか。いやいやまさかそんなはず…。
「ん?」
「どうして、こんなによくしてくださるのですか?」
「僕らは夫婦だ。そんな寂しくなること、言わないでくれ。」
(時が来たら、終わりが来るのに?)
そんなことを思いながら、繋ぐ手はやっぱり暖かい。ブレイブは私の肩を抱き寄せた。
その日の夜、予想外のことが起きた。ハルトンの天気は基本的に晴れているのだが、今日は違った。雷と竜巻。ひどい嵐が吹き荒れる。今日は一歩も外に出られそうもない。このひどい嵐のせいで、今日のディナーに届くはずだったお魚が届かなかったらしい。
(私が楽しみにしているときはいつもそうだ。雨ばかり降る。)
「私、雨女なんです。雨がこんなに降ったのは私のせいかもしれません。」
「そんなわけない。僕が天気を見誤った。こんなに雨が降るなんてな。」
ブレイブはのんびりと呟く。
「ブレイブ様は、雨が嫌いじゃないのですか?」
「うーん、雨は好きじゃないよ。」
「でも、なんだか楽しそうに見えます。」
「だってさ、もしも今日このまま雨が止まなかったら、明日も首都に帰らずここにいられるじゃないか。」
「確かに、、そうですね。」
「ティーナもそう思うかい?」
「ええ。」
「じゃあ、最高じゃないか。」
外に出られず、予定されていたご飯すら出ない夜に、ブレイブは最高だと言って笑う。ブレイブ様には、底知れないポジティブさがある。
「ブレイブ様は、、、綺麗です。」
「へ?綺麗?」
「最強ってことです。」
そう言ってブレイブの手に触れると、ブレイブは私から、顔を逸らした。
(いけない、図々しかったかな。)
そう思った私が手を引くと、ブレイブは私の手を捕まえた。
「逃げないでよ。寂しいじゃん。」
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