離婚前提の仮面結婚のはずが、妊娠してしまったのですが…?〜夫は最初から私じゃない誰かを愛していました。〜

五月ふう

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26.おかえりなさい

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Side ティーナ
 
 疲れた顔でブレイブが帰ってきた。ブレイブは「ただいま」といつものように笑った。
「おかえりなさい」と言って私は頭を下げる。

 頭の中には、同じ疑問がぐるぐると回る。

 (どうしてこの人は、私と結婚したんだろう。断ればいいだけの話なのに。どうしてこの人は私のそばで笑っていてくれるんだろう。)

「今日は約束していたのにごめんな。」
 
ブレイブは、すぐに頭を下げた。

「いいんです。」
「そのお詫びに、ティーナにおみやげがあるんだ。」
「おみやげ?」
「ああ。」
 
ブレイブがくれたのは、オルゴールだった。ねじると美しい音が鳴る。綺麗な花の装飾が施されていて、光が当たると金色にキラキラ光る。とても可愛らしくて、高価なものに見えた。おそらく、昼間ブレイブがリリーに買い与えたものより、ずっと高いだろう。

「とても、、、素敵です。こんな素敵なものを買ってきてくださったのですか。」
「綺麗な音だから。ティーナにも聴かせたくて。」
「ありがとう、ございます。とても綺麗、です。なんとお礼をしたらいいか、、、。」
「僕がティーナに渡したかっただけだ。気にしないでくれ。」
 
 ブレイブが、穏やかに笑う。私はオルゴールをギュッと抱きしめた。オルゴールの美しい音色が、私の心の痛みを癒すようだ。

 晩御飯を食べながら、ブレイブが私に尋ねる。
「その、、、殿下がティーナをパーティに招待したいと言っていた。もしも嫌なら断っておくが、、、」
 ブレイブの言葉に私は慌てて首を振る。
「殿下の誘いを断るなんてとんでもないです!もちろん、お誘いをお受けいたします!」
「そ、、か。じゃあそう伝えておく。」

 ブレイブが俯いたまま答えた。浮かない顔をしている。いつも穏やかな笑顔を浮かべているブレイブには、珍しいことだ。

「どうしたのですか?」
「いいや。なんでもない。殿下から貰った花、どうした?」
「花瓶に挿して飾っています。枯れてしまう前に、ドライフラワーにしようかと思っています。」
「そうか。きっと、殿下も喜ぶ。」
「そうでしょうか?」
 
 きっと今頃、私の名前自体覚えていないんじゃなかろうか?と思う。
 
「アドルフが女性に花を渡すなんて珍しい。」
「そう、なのですか。」
 
 私はなんと言っていいか分からず、視線を巡らす。ブレイブははっとした顔を浮かべた後、笑顔をつくった。

「まあ、ともかく、パーティついて日にちがわかったら、伝えるよ。もちろん、僕も一緒に行くから。」
「はい。楽しみです。」
 
 そういうと、ブレイブはまた曖昧な顔をした。余計なことを言っただろうか。

 なんとくだが、殿下は私に興味があるのではなく、ブレイブをからかいたかったのではないかと思う。リリーのことも知っているようだったし、私とブレイブの複雑な関係についても、思うところがあるのかもしれない。そう思ったが、ブレイブにその事を言えるわけもない。

 代わりに、ブレイブに尋ねる。
 
「ブレイブ様と殿下はお知り合いになられて長いのですか?ずいぶんブレイブ様と殿下は、親しみ深い関係のように見られましたので。」
 
 慎重に言葉を選ぶ。まるで2人は仲のよい友人のように見えた。途中、ブレイブは殿下を呼び捨てしていたし。

「そうだよ。殿下、、、アドルフは学生時代からの親友なんだ。」
「まあ、素敵です。」
「今の俺があるのは、全部アドルフのおかけだ。間違いなく。」
「そうなのですか!お茶会で、なにをお持ちすればいいでしょう……」
 
ますます、失礼をはたらくわけにはいかない。

「あまり、気にしなくてだいじょうぶだ。何も渡す必要はない。」
「えっでもそんなわけには、、、。」
「じゃあ、僕が選んでおく。」
 
そういうと、ブレイブはオルゴールを捻った。綺麗な音がリビングに響く。

「ブレイブ様、本当にありがとうございます。とても綺麗で、その泣いてしまいそうになる程です。」
「いつでも泣きなよ。」
「私は……ブレイブ様の前で泣いてばかりです。」
「泣いてるティーナのそばにいたくて、僕は君と結婚したんだよ。」

 そう言って、ブレイブは私の頭を撫でる。この時間が永遠に続けばいい…そう思った。もちろん、そうはならなかったけど。
 
 
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