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31. 僕を知って欲しい
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Side ブレイブ
家に帰ると、髪をひとまとめにして、エプロン姿のティーナが待っていた。家の中には、料理のいい香りが漂っている。思わず笑みが溢れた。
「おかえりなさい、ブレイブ様。」
(好きだな。)
綺麗で、柔らかい。ティーナに初めて触れた日から、僕はティーナに触れたくてしょうがなかった。だが、僕は自分がリリーのことが好きだと噂されていることを知っている。リリーが僕に執着していることを知っている。それでも僕は、これまでリリーを放置して…さらにはリリーを勘違いさせる行動を取り続けていた。そこに理由があるとしても、ティーナを傷つけていることに変わりない。
だからこそ、いつも罪悪感が付きまとう。だって、ティーナには僕と結婚する以外に選択肢がなかった。好きとか、嫌いとか、彼女の感情は一切無視して。
「ブレイブ様?なにかあったのですか?」
「…そんなことないよ。」
「…いいえ。ブレイブ様のお顔がいつもと違います。…悲しいことがあったのでしょう。座ってください。暖かいものを用意しますから。」
そういうと、ティーナは僕の腕をとってソファーに座らせた。僕がぼんやりしている間に、ティーナは暖かいお茶をブレイブの手に持たせた。
「…飲んで、元気を出してください。なんでも聞きます。話したくなかったら、話さなくてもいいですから。」
ああ、昔みたいだ、と思う。
僕は、ティーナの肩に体を預けた。ティーナがびっくりしているのはわかっていたけれど、それでも動かなかった。その温もりに触れていたかった。ティーナは、この距離感を、僕に許している。
(僕を知って欲しい。)
「僕は…父と血が繋がっていない。いなくなった母が…愛人との間に作った子供が、僕なんだ。似てないだろ、僕と父。だから、僕は…この家を継いだらいけないと思ってた。だから、今まで…誰とも結婚しなかった。」
ガキみたいな理由。本当はもっと、ただ単純に、結婚するのが怖かった。
「…ブレイブ様。」
「恩返しのために、この家を守ろうと思っていたんだけど…どうやらそれが上手くいきそうになくて。」
恩返しなんて、綺麗な感情じゃなくて。家を継ぎたくなかったけど、捨てる勇気もなかった。だから、ヴィギルト家が犯罪組織に巻き込まれているかもしれないと知り、僕は調査を始めたんだ。…そして、父が犯罪にかかわっている証拠を見つけてしまったわけで。
「そう、だったんですね…私が力になれること、ありますか?」
「そばにいてくれると、幸せだよ。ティーナ。」
「傍に、います。ね、ブレイブ様。」
「なんだい?」
「昔、私が歌っていた、ブレイブ様を元気づけた曲の名前を教えてください。」
昔、僕が救われたあの曲。よく覚えている。曲の名前を伝えると、ティーナは小さく笑って息を吸った。
ティーナはブレイブの耳元で、鼻歌を歌った。かつて、ブレイブが聞いたあの歌のメロディを奏でる。途中、音が途切れる。それでも、ティーナは笑顔を絶やさずに、メロディを紡いだ。
ティーナは目を閉じている。その足の先と、手の指の先が、蛍がくっついているみたいに微かに光る。
(ティーナのの歌だ。僕の、僕だけのために…ティーナが歌ってくれたんだ!!)
光が少し大きくなった時、ティーナは少し顔をしかめて、歌を止めた。
「ありがとう、ティーナ。」
「いまは、これ以上は…歌えません。でも、絶対にまた、ブレイブ様のために歌いますから。」
大切な妻。僕は、どんな複雑な状況があろうと、ティーナの夫になれたことを嬉しく思った。手放すつもりはない。
愛しているよ、と言いたかった。だけど、今はまだティーナに伝えられないから。
「大切だよ。ありがとう、ティーナ。」
そう言ってティーナの頬に口付けをする。
(君が欲しいんだけど、ダメかな?)
家に帰ると、髪をひとまとめにして、エプロン姿のティーナが待っていた。家の中には、料理のいい香りが漂っている。思わず笑みが溢れた。
「おかえりなさい、ブレイブ様。」
(好きだな。)
綺麗で、柔らかい。ティーナに初めて触れた日から、僕はティーナに触れたくてしょうがなかった。だが、僕は自分がリリーのことが好きだと噂されていることを知っている。リリーが僕に執着していることを知っている。それでも僕は、これまでリリーを放置して…さらにはリリーを勘違いさせる行動を取り続けていた。そこに理由があるとしても、ティーナを傷つけていることに変わりない。
だからこそ、いつも罪悪感が付きまとう。だって、ティーナには僕と結婚する以外に選択肢がなかった。好きとか、嫌いとか、彼女の感情は一切無視して。
「ブレイブ様?なにかあったのですか?」
「…そんなことないよ。」
「…いいえ。ブレイブ様のお顔がいつもと違います。…悲しいことがあったのでしょう。座ってください。暖かいものを用意しますから。」
そういうと、ティーナは僕の腕をとってソファーに座らせた。僕がぼんやりしている間に、ティーナは暖かいお茶をブレイブの手に持たせた。
「…飲んで、元気を出してください。なんでも聞きます。話したくなかったら、話さなくてもいいですから。」
ああ、昔みたいだ、と思う。
僕は、ティーナの肩に体を預けた。ティーナがびっくりしているのはわかっていたけれど、それでも動かなかった。その温もりに触れていたかった。ティーナは、この距離感を、僕に許している。
(僕を知って欲しい。)
「僕は…父と血が繋がっていない。いなくなった母が…愛人との間に作った子供が、僕なんだ。似てないだろ、僕と父。だから、僕は…この家を継いだらいけないと思ってた。だから、今まで…誰とも結婚しなかった。」
ガキみたいな理由。本当はもっと、ただ単純に、結婚するのが怖かった。
「…ブレイブ様。」
「恩返しのために、この家を守ろうと思っていたんだけど…どうやらそれが上手くいきそうになくて。」
恩返しなんて、綺麗な感情じゃなくて。家を継ぎたくなかったけど、捨てる勇気もなかった。だから、ヴィギルト家が犯罪組織に巻き込まれているかもしれないと知り、僕は調査を始めたんだ。…そして、父が犯罪にかかわっている証拠を見つけてしまったわけで。
「そう、だったんですね…私が力になれること、ありますか?」
「そばにいてくれると、幸せだよ。ティーナ。」
「傍に、います。ね、ブレイブ様。」
「なんだい?」
「昔、私が歌っていた、ブレイブ様を元気づけた曲の名前を教えてください。」
昔、僕が救われたあの曲。よく覚えている。曲の名前を伝えると、ティーナは小さく笑って息を吸った。
ティーナはブレイブの耳元で、鼻歌を歌った。かつて、ブレイブが聞いたあの歌のメロディを奏でる。途中、音が途切れる。それでも、ティーナは笑顔を絶やさずに、メロディを紡いだ。
ティーナは目を閉じている。その足の先と、手の指の先が、蛍がくっついているみたいに微かに光る。
(ティーナのの歌だ。僕の、僕だけのために…ティーナが歌ってくれたんだ!!)
光が少し大きくなった時、ティーナは少し顔をしかめて、歌を止めた。
「ありがとう、ティーナ。」
「いまは、これ以上は…歌えません。でも、絶対にまた、ブレイブ様のために歌いますから。」
大切な妻。僕は、どんな複雑な状況があろうと、ティーナの夫になれたことを嬉しく思った。手放すつもりはない。
愛しているよ、と言いたかった。だけど、今はまだティーナに伝えられないから。
「大切だよ。ありがとう、ティーナ。」
そう言ってティーナの頬に口付けをする。
(君が欲しいんだけど、ダメかな?)
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