43 / 60
42. ブレイブ様、今は私といましょう?
しおりを挟む
Side ティーナ
「二人でどっか行っちまったぞ?」
レオンが呆れたように呟く。その声に、私は静かに頷いた。
「そうだね。」
気まずい沈黙が流れる中、レオンが不意に口を開いた。
「・・・てかさ、そもそもなんであいつと結婚したんだ?」
その質問に、私は一瞬だけ言葉を詰まらせた。私自身、その答え胃を持っていない。あの時に戻れるなら、私はどんな選択をとっていたんだろう?
「ブレイブ様は、私を助けてくれたから。」
「そんなの、気まぐれだ。」
レオンの声には、棘がある。けれど、間違いなくそれが事実だ。
「ブレイブは、リリーのことが好きなんだろ?」
「うん・・・」
「こんな関係、虚しいだけだ。」
レオンはいつも、正直だった。愚直に、思った事をまっすぐに言う。そんな彼の性格は、私は昔から好ましく思っている。
「わかってるけど・・・。」
自分の声が、どこか遠くで響いているように感じる。嫌いなのは、中途半端で曖昧な自分だけだ。
「俺は、こんなの馬鹿だと思う。」
「わかってるよ。」
分かってるのに、分かりたくない。多分それは、分からないよりずっと馬鹿だ。
「でも、私だってどうしたらいいか分からないし・・・なんでこの選択を取ったのか、自分でも分かってないの。」
「くだらない。」
「知ってるよ。」
私は小さく呟く。レオンは、眉間にしわを寄せて私を見た。怒っている様に見えるけれど、その実怒っているわけではない。多分、レオンは私の事を心配してくれているだけだ。
「大丈夫だよ。なにもしなくたって、終わりは近いよ。」
「は?」
私は、肩をすくめてレオンに笑ってみせた。そういえば,今日の私の役目は、”ブレイブ様の妻”として、リリーとの疑惑を払拭する事じゃなかったっけ。このままではその役目を果たすことができない。
「ブレイブ様を・・・探してくるね。」
そう言って、私はレオンに背を向けた。
「おいっ。」
レオンは私をとめていたけれど、気にはとめなかった。考えるべきは、この世に生まれてしまった小さな命のことだけだ。
****
パーティ会場の建物の隅、華やかな音楽が遠くから聞こえる中で、ブレイブとリリーが何やら話している。そこを通る人々が、時折二人に気づいてちらちらと見ている。
私は大きく息をすった。口元に笑顔を固定させる。それから、二人に近づいた。
「ブレイブ様、今は私といましょう?」
「ティーナ!」
私はブレイブに後ろから声をかけると、ブレイブが驚いた様子で、勢いよく私を振り返った。リリーは一瞬、険しい表情を浮かべたが、すぐに意地悪く笑って、こちらを見た。
「関わってこないでくれる?」
「だめです。」
私は冷静に言い返した。いつ裏切られるかも分からない、形骸化したブレイブの父との契約。そんなものをなんで私は律儀に守っているんだろう?多分私は、ただ単純にブレイブを守りたいだけなんだ。
「ここでは、私とブレイブ様は夫婦なのです。怪しまれる行動はお控えください。」
その言葉に、ブレイブがハッとした顔をする。リリーの目が一瞬大きく見開かれたが、すぐに怒りの色に変わった。
「ティーナの言うとおりだ。」
ブレイブはリリーを静かに見つめ、きっぱりと言い切った。
「行こう。」
ブレイブが私の手を軽く引き、歩き出す。後ろで、リリーが苛立ち混じりに叫ぶ声が追いかけてくる。
「この浮気者!」
パーティ会場の廊下を歩きながら、ブレイブがふと立ち止まり、私を見つめた。
「ティーナ、信じて貰えないかもしれないけど・・・やっぱり伝えたい。」
「何でしょう?」
ブレイブは、まっすぐに私の目を見つめた。
「あの日のあれは・・・僕の意思ではない。」
私は目を伏せた。リリーとのキスのことを話しているのだとすぐに分かった。
「信じて貰えないかもしれないけど、上手くよけられなかったんだ。やましいことは一切ない。ティーナと結婚してから・・・僕はティーナ以外、見ていない。」
「・・・」
黙ってブレイブを見つめる私に、彼はさらに言葉を重ねた。
「信じて貰えないのは分かってる。それでも、どうしても言いたかったんだ。」
その言葉に、私は小さく笑った。ブレイブの言葉は本当かもしれない、と思った。だけど、多分あの日の出来事はそれほど問題ではない。
”リリーとの仲を守るための契約”とか、”元婚約者との約束”とか、”ブレイブの父との約束”とか、そういう隠し事を見ない振りして、本当の夫婦のふりして、曖昧に過ごしていた日々が、間違ってたんだと思う。
「ブレイブ様は、嘘つきです。」
その言葉を口にしたとき、ブレイブは酷く悲しい顔をした。そして、何かを言おうと口を開いたが、私は先に続けた。
「でも・・・私も嘘つきですから。」
いつまでも、ここにいるわけにはいかないと分かっているのだから、終わらせる準備をしなくてはいけないのだ。
「二人でどっか行っちまったぞ?」
レオンが呆れたように呟く。その声に、私は静かに頷いた。
「そうだね。」
気まずい沈黙が流れる中、レオンが不意に口を開いた。
「・・・てかさ、そもそもなんであいつと結婚したんだ?」
その質問に、私は一瞬だけ言葉を詰まらせた。私自身、その答え胃を持っていない。あの時に戻れるなら、私はどんな選択をとっていたんだろう?
「ブレイブ様は、私を助けてくれたから。」
「そんなの、気まぐれだ。」
レオンの声には、棘がある。けれど、間違いなくそれが事実だ。
「ブレイブは、リリーのことが好きなんだろ?」
「うん・・・」
「こんな関係、虚しいだけだ。」
レオンはいつも、正直だった。愚直に、思った事をまっすぐに言う。そんな彼の性格は、私は昔から好ましく思っている。
「わかってるけど・・・。」
自分の声が、どこか遠くで響いているように感じる。嫌いなのは、中途半端で曖昧な自分だけだ。
「俺は、こんなの馬鹿だと思う。」
「わかってるよ。」
分かってるのに、分かりたくない。多分それは、分からないよりずっと馬鹿だ。
「でも、私だってどうしたらいいか分からないし・・・なんでこの選択を取ったのか、自分でも分かってないの。」
「くだらない。」
「知ってるよ。」
私は小さく呟く。レオンは、眉間にしわを寄せて私を見た。怒っている様に見えるけれど、その実怒っているわけではない。多分、レオンは私の事を心配してくれているだけだ。
「大丈夫だよ。なにもしなくたって、終わりは近いよ。」
「は?」
私は、肩をすくめてレオンに笑ってみせた。そういえば,今日の私の役目は、”ブレイブ様の妻”として、リリーとの疑惑を払拭する事じゃなかったっけ。このままではその役目を果たすことができない。
「ブレイブ様を・・・探してくるね。」
そう言って、私はレオンに背を向けた。
「おいっ。」
レオンは私をとめていたけれど、気にはとめなかった。考えるべきは、この世に生まれてしまった小さな命のことだけだ。
****
パーティ会場の建物の隅、華やかな音楽が遠くから聞こえる中で、ブレイブとリリーが何やら話している。そこを通る人々が、時折二人に気づいてちらちらと見ている。
私は大きく息をすった。口元に笑顔を固定させる。それから、二人に近づいた。
「ブレイブ様、今は私といましょう?」
「ティーナ!」
私はブレイブに後ろから声をかけると、ブレイブが驚いた様子で、勢いよく私を振り返った。リリーは一瞬、険しい表情を浮かべたが、すぐに意地悪く笑って、こちらを見た。
「関わってこないでくれる?」
「だめです。」
私は冷静に言い返した。いつ裏切られるかも分からない、形骸化したブレイブの父との契約。そんなものをなんで私は律儀に守っているんだろう?多分私は、ただ単純にブレイブを守りたいだけなんだ。
「ここでは、私とブレイブ様は夫婦なのです。怪しまれる行動はお控えください。」
その言葉に、ブレイブがハッとした顔をする。リリーの目が一瞬大きく見開かれたが、すぐに怒りの色に変わった。
「ティーナの言うとおりだ。」
ブレイブはリリーを静かに見つめ、きっぱりと言い切った。
「行こう。」
ブレイブが私の手を軽く引き、歩き出す。後ろで、リリーが苛立ち混じりに叫ぶ声が追いかけてくる。
「この浮気者!」
パーティ会場の廊下を歩きながら、ブレイブがふと立ち止まり、私を見つめた。
「ティーナ、信じて貰えないかもしれないけど・・・やっぱり伝えたい。」
「何でしょう?」
ブレイブは、まっすぐに私の目を見つめた。
「あの日のあれは・・・僕の意思ではない。」
私は目を伏せた。リリーとのキスのことを話しているのだとすぐに分かった。
「信じて貰えないかもしれないけど、上手くよけられなかったんだ。やましいことは一切ない。ティーナと結婚してから・・・僕はティーナ以外、見ていない。」
「・・・」
黙ってブレイブを見つめる私に、彼はさらに言葉を重ねた。
「信じて貰えないのは分かってる。それでも、どうしても言いたかったんだ。」
その言葉に、私は小さく笑った。ブレイブの言葉は本当かもしれない、と思った。だけど、多分あの日の出来事はそれほど問題ではない。
”リリーとの仲を守るための契約”とか、”元婚約者との約束”とか、”ブレイブの父との約束”とか、そういう隠し事を見ない振りして、本当の夫婦のふりして、曖昧に過ごしていた日々が、間違ってたんだと思う。
「ブレイブ様は、嘘つきです。」
その言葉を口にしたとき、ブレイブは酷く悲しい顔をした。そして、何かを言おうと口を開いたが、私は先に続けた。
「でも・・・私も嘘つきですから。」
いつまでも、ここにいるわけにはいかないと分かっているのだから、終わらせる準備をしなくてはいけないのだ。
246
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる