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29.レオは、レオナなの?

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その頃、オリビアはハリバート城の隠し通路の中にいた。

『この通路を進めば、外に出られる。』

カルク様はそう言って私を送り出してくれた。

カルク様の部屋から、誰にも見つからずに外に出られるらしい。

(絶対に、この手紙を皆に届けてみせます。カルク様。)

私はカルク様から預かった手紙達をぎゅっと強く抱きしめた。

隠し部屋が行き止まりはしごがかかっている。そこを登り扉を開けた。

(ここは、、、!)

そこは、ハリバート城裏の森。
大きくて青い湖が広がっていた。

2日ぶりの外の空気を大きく吸い込む。

(懐かしいなぁ。)

その湖は私とレオナの思い出の場所だった。

幼い頃、私はこの森に迷い込んだのだ。そして、そこでレオナに出会った。

(レオはレオナなんだろうか、、、。)

湖の隣を歩きながら、私は考える。

皇太子と、王様しか知らない隠し通路の先にある湖。

レオナはなぜ、この湖のそばにいたの?
どんなに探しても見つからなかったレオナ。

考えれば考えるほど、レオナはレオなんじゃないかと思えてくる。

私は首を振った。

(どっちだって関係ないよ。)

私は手紙を抱きしめ、街へと急いだ。


   ◇◇◇


「この手紙、伝書鳩で送ってください!!」

ハリバート国には、伝書鳩による伝達手段が発達している。伝書鳩を利用すれば、早ければ今日の夜までには手紙を届けることができる。

「良いけど、お嬢ちゃんお金持ってる?」

伝書鳩屋さんの店長が、頬杖をついたまま私に尋ねる。伝書鳩は便利だが、高額なのだ。

「これでお願いします!」

私はカルク様から配達代にと貰ってきた宝石を、店長に渡した。

「最速で届けてください!!」

「あ、ああ」


  ◇◇◇


それから私は印刷屋さんに向かった。この印刷屋さんも高額なのだが、このためにカルク様の宝石を残しておいたのだ。

「あの、これを5000枚印刷してください!!」

帽子を被った印刷屋のおじさんは、目を大きく見開いた。

「ご、五千枚?!」

私は大きく頷いた。

(五千枚でも足りないくらいだ。)

「お願いします!お金ならあるのです!」

印刷をお願いしたのは一枚の手紙。

(本当はこんなことしちゃいけないんだと思うんだけども。)

その手紙の送り主はカルクで宛先はレオ。

カルクからレオに当てた謝罪と愛情を示した手紙。

部屋を出る直前に、カルク様が渡してくれたものだった。

(これを読んだら、皆きっと信じてくれるはずよ、、、!)

大量の紙を荷車に載せてもらい、私は街を見渡した。

(問題はこれを、どうやって配るかってことなんだけど。)

あまり遅くなっては、レオに私がいないことを気づかれてしまう。

(とにかく、配るしかない!)

そう、覚悟を決めたとき。

「オリビア?」

振り返るとそこにはいたのは、

「皆!!」

大陸移動医療団の仲間。私の家族だった。

「オリビアーー!!!」

「また会えるなんて、、!オリビア!!」

皆は、元気な私の姿を見て泣いて喜んでくれた。

(そっか。私は死んだことになっていたんだものね。)

「皆、聞いて。」

再会を喜びたいところだけど、私にそんな時間はない。

「どうしても手伝ってほしいことがあるの!!」

私は医療団のメンバーを見渡した。

「なんだい?」

医療団のリーダーは優しく尋ねた。

「この手紙を街の人に届けたいの!!」

手紙を読んだリーダーは少し顔を歪めた。

「オリビア、これは、あまりにも危険な内容だよ。」

リーダーの顔は、手紙の内容を疑っているのだ。私が皇太子レオに騙されているのではないかと、心配になっている。

(私だって、レオ様に会う前は彼を恐ろしい人だって思ってた。だけど、、一回でも話をすればそんな人じゃないって分かるのに。)

「この手紙の内容は、本当よ!ねぇ、お願い。このままだと、レオ様はフローレンスに殺されちゃう!」

(しかもレオは、フローレンスから逃げる気がないんだもの。)

きっとあの頑固な男は戦いを望まず、逃げることもしない。

「レオ様をどうしても助けたいの!!」

私はリーダーに必死で訴えた。リーダーが了承しなければ、きっと皆に手伝って貰えない。

リーダーが腕を組んで、難しい顔をしたとき。

「オリビアの話は本当だぜ。リーダー。」

現れたのは、ルイスだった。

「皇太子レオは、噂に聞く残酷な男じゃない。あいつはさ、、、不器用で優しすぎる男だよ。」

「ルイス、、、!」

ルイスはリーダーを真っ直ぐ見て言った。

「俺も、あの皇太子を助けたい。」

リーダーは私とルイスを交互に見て、それからにっこり笑った。

「二人に頼まれちゃあ、できんとは言えないなぁ。さあ、皆。手紙を配ろう。

そして、レオ皇太子の無実を訴えるんだ。」



   ◇◇◇


    
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