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26.あなたをずっと誰よりも…
しおりを挟む10年前の火事。ステフが住んでいた東棟は全壊し、大きな被害出した前代未聞の大火事。
―――犯人がまだ当時10歳だったアリアだと…?
「ねぇ!!私を恨んでよ!私を恨みなさいよ!!ステフ!!」
そう叫ぶアリアの目は血走っている。火事の犯人がアリアだとは誰も疑っていなかった。だがアリアは、自ら罪を自白した。
ーーー何のために?
「なぜ…僕に恨まれたいんだ‥‥?」
「愛しているからよ!!ねぇ!ステフ!!あなたをずっと誰よりも愛しているからよ!!」
ステフは何も言わずにただ黙って、アリアを見つめた。
―――なぜ、気が付かなかったのか
誰かを愛する気持ちは、もっと純粋で美しいものであったはずなのに…いつからこんなにも醜く形を変えてしまったんだろう。
ただ黙って、ステフはアリアに背を向けた。
「ねぇ、ステフ!!」
きっとこれ以上話していても、アリアはココの居場所を決して明かすことはないだろう。ステフの心には、もはやアリアに対して恨みの感情しか湧いてこない。
アリアの部屋を調査していた兵士が、ステフの元にやってきて言った。
「ステフ様!ルカの足取りがつかめました!」
「ありがとう。すぐに行く。アリア・ボストールを捕らえて牢に連れていけ。彼女は人身取引補助の罪だけでなく…放火罪でについても訴えなくてはいけないようだ…。」
ステフは拳をぎゅっと握り締める。そうしていなければ、アリアへの怒りで声を荒げてしまいそうだったから。
「ねぇ!私を見てよ!ステフ!!」
後ろから、アリアの悲しい叫びが聞こえる。ステフは振り返らなかった。
◇◇◇
―――美しい‥な
ルカはぼんやりと、ココの顔を眺めていた。
小さく息をするココの顔は青白い。ルカが手刀でココの首の後ろを打ち、気絶させたのだ。
ココとルカが馬車に乗ってから、半日が経とうとしている。
―――もう少しだ
ココが気を失っているうちに、彼女を商人に引き渡す。それで、ルカの仕事は終わる。もう二度とココに会うことはない。
―――本当にそれでいいのか?
心臓がキリキリと音を立てる。
ルカの境遇を聞いたココは、ほろほろと涙を流した。
”なぜもっと早く言ってくれなかったの?”
”君に言っても何も変わらなかった。そうだろ?”
”いいえ。なんでもできるわ。だって私は…第二王子の婚約者よ”
誇りに満ちた表情で言ったココ。そんなココが眩しくて…憎くて、ルカはココの気を失わせた。
ドッドッドッドッドッドッドッド
どこからか馬のひづめの音が聞こえる。一頭ではない。なぜこんな場所に大群で…?
―――嫌な予感がする。
窓の外を見るとそこには…ミラント国軍の兵士。その先頭を率いるのは…ステフ・ミラント。
「正義のヒーローかよ…。」
◇◇◇
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