地味男はイケメン元総長

緋村燐

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二章 互いの秘密

仲間②

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 お昼になり、私は教室から出ていつもの場所に行くためにお弁当を持って立ち上がる。
 初めの頃は教室で一人で食べていて、それに気付いた子達が誘ってくれたんだけど……。
 その子達の話題はアイドルの事が中心で、たまに出る他の話も先生の愚痴ぐちだったり誰々がカッコイイだったりと、私には入っていけない話題だった。
 だから相槌を打つばかりでろくに会話に混ざれなかったんだけど……。

『倉木さん、何でここで一緒に食べてるの?』

 ついにはそんなことを言われてしまった。
 そう言った彼女の言い方も悪いんじゃないかとは思ったけれど、私も会話に混ざれるような努力はしていなかったからこっちも悪かったんだと思う。
 歌番組やドラマでも見れば少しは話に入れたかも知れないけれど、私は美容関係の番組しか見なかったし、それ以外はメイクの勉強したりネットでメイク用品のチェックをしたりしていた。
 分かってはいても、時間は有限だからどうしてもドラマとか見る気にはなれなかったんだ。
 だから、次の日から「私は他のクラスの子と一緒に食べるね」と言ってそのグループとは別れたんだ。

 といってもそれは嘘だし、それがバレると面倒なので人気のないところに行って一人で食べていた。
 ……多分バレてはいるんだろうけどね。私が学校で仲良くしている子がいないのは見れば分かるだろうから。
 まあ、自業自得なところもあるからそこは気にしない様にしてるけど。
 ただ逆に彼女たちが気にしてないかな、と少し心配はした。
 でも「いなくなってお昼が楽しくなったよ」「気遣わなくていいしね」という会話が聞こえたこともあって……。
 まあ、誰がとは言っていなかったけれど……。
 そんなこともあっていつもは教室を出て階段の人が少なそうなところで食べている。
 でも今日は、教室を出る前に呼び止められた。

「あ、灯里待って。良かったら一緒にお昼食べない?」
 美智留ちゃんが三人固まっている場所から手招きしていた。
「え、良いの?」
 近付きながら聞くと、「当たり前でしょ」とさくらちゃんにも言われ、私はありがたくお昼をご一緒することにする。

 すると、また別の場所から声が掛けられた。
「あれ? そっちも皆で食べるんだ? なら一緒に食べよっか?」
 目を向けるとそれは工藤くんだった。
 そっちもいつもの二人組に日高くんが入っている。
「なあ、お前らも良いよな?」
 そう同意を求めると花田くんは快く了承し、日高くんはダルそうに「まあ、いいけど」と返していた。
 こっちの女子も反対意見は無い。
 むしろさくらちゃんのことを考えると願ったり叶ったりと言ったところだ。

 そうして何だか大所帯になったけれど、他の子の机を借りたり自分の椅子を持ってきたりして一つの輪になる。
 女子チームがこっそり奮闘し、さくらちゃんは無事花田くんの隣の位置に座ることが出来た。
 ただ、何故かその反対側。
 男女隣り合わせになるもう一つの位置に私と日高くんが座ることになった。
 別に嫌というわけじゃないんだけど、何だか自然にそうなるようにされたって感じがして何とも言えない。
 何か、お前ら仲良いよなぁって思われてる感がある。

 仲、良いのかな?

 秘密の共有者で、基本的には私がおせっかいしてるだけって感じなんだけれど。
 まあ、学校では日高くんも特定の友達とかいないからそうなっちゃうのかな?
 でもまさかさくらちゃん達みたいにくっつけようとしてるわけじゃないよね?
 流石にそれは考え過ぎか。

「一昨日は楽しかったよなー」
「そうだけど、あんたは一人ででさっさとアトラクションに向かってたじゃない。花田が止めなきゃ一人だけで行動してたんじゃないの?」
 向かい合わせの美智留ちゃんと工藤くんが色んな話題で盛り上がっている。
 さくらちゃんと花田くんも落ち着いた感じで何か会話をしていた。
 私と日高くんは特に会話もせずみんなのそんな様子を見ながら黙々と食べていたんだけれど……。

 一つだけ、どうしても日高くんに聞きたいことがあった。
 言うべきかどうか迷っていたけれど、意を決して質問する。
「ねえ日高くん。……お昼、それだけ?」
 日高くんの目の前に置かれたのは紙パックのコーヒー牛乳とメロンパンだけ。
 良質のたんぱく質は? ビタミン、ミネラルは⁉
 明らかにコンビニで買ってきた感じだけど、せめてサンドイッチにしようよ!
 何でよりによって菓子パン!
「菓子パンは食事扱いにならないよ?」
 言いたいことは沢山あったけれど、それは心の中に留めて控えめに言った。

「別にいいじゃん。俺が何食べたって」
「……せめてたんぱく質を」
「少ない小遣いで買ってるからこれ以上買うのは無理」
「うぐぐぐぐ……」
 そうなるとこれ以上は言えない。

 自分で作れば? と言えればいいんだろうけれど、私も自分で作ってないんだから偉そうにそんな事言えない。
 でも食事は大事なんだよー!
 若いからって油断してたら色んな所に不調が出るんだから!
 迷った末、私は苦渋の決断をする。
「私の卵焼きあげるから取りあえずこれだけでも食べて」
「は? いらねぇよ」
 食いついて来る私にウンザリしてきたのか、口調が少し戻っている。

 でも私はめげなかった。
「私がまた校則違反しでかさないように、お願いだから食べて」
 卵焼きを食べないだけで校則違反するなんておかしなことを言っている自覚はある。
 でも朝の様子を知ってるんだから少しは理解してくれるはずだ。
「私の好物あげるんだから食べて」
「……分かったよ」
 理解してくれた、というよりは食べないといつまでも食いついて来ると思ったんだろう。
 諦めたという様子で了承してくれる。

 日高くんが卵焼きをしっかりと咀嚼そしゃくするのを見て、私は満足げに他のおかずを口に入れた。
 それをもぐもぐと食べていると、周りのみんなの会話が止まっていることに気付く。
 ん? と顔を上げて皆を見てみると、揃ってこっちを見ていた。
 軽く驚いている顔や、何故かニヤニヤしている顔。
 それらに見られているのに気付いて、今食べているものを喉に詰まらせそうになる。

「んぐっごほっ……。皆、なんでこっち見てるの?」
 聞くと、最初に答えたのは工藤くんだ。
「いやぁ、やっぱりお前ら急に仲良くなったよな?」
「そうだね。それに倉木さんって結構押しが強いんだね」
 意外、と続けたのは花田くん。
 それを聞いて、今のやり取りを見られていたことを知った。
 しかも美智留ちゃんがとんでもないことを言う。
「何? あんた達、いつの間にか付き合ってたとか?」

『それは無い!!』

 即座に否定した言葉が日高くんとハモる。
 そんな様子に美智留ちゃんが「うん、やっぱり仲良いね」とまとめる。
 その後はからかわれつつ、確かに日高くんのお昼ご飯は少ないよねー何て話をして盛り上がった。

 そんな盛り上がりの中、さくらちゃんが「ちょっと羨ましいなぁ」なんて呟いたのを私は聞き逃さない。
 そしてチラリと隣の花田くんを見上げるのを見て、やっぱり応援してあげたいなぁとホンワカした気持ちで思った。
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