地味男はイケメン元総長

緋村燐

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二章 互いの秘密

昼食改善

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 何とか無事に今日の学校生活を乗り越えた私は、またうっかり化粧用品を持ち込まないようにと気持ちを引き締めた。
 それと一緒に、お昼のことも思い出す。
 日高くんの食事、あれもどうにかしなければ……。
 きっと今日に限らずいつもあんな感じの昼食なんだろう。
 朝晩も好き嫌いせずにちゃんと食べているのか不安になるけれど、流石にそこまでは口も手も出せない。
 でも、だからこそお昼だけは何とかしなければ。

 帰り道、一人で歩きながら考える。
 私がお弁当を作れば、とも思ったけどすぐに却下した。
 今も自分のお弁当すら作っていないのに、早起きして作り続けるとか無理な話だ。
 それにそんなことをしたら愛妻弁当だとか言われてからかわれるのが目に見えている。
 どうすればいいだろう?
 せめて、足りない栄養素を補給出来るように……。

「あ、そうだ」
 足りないものだけをと考えたら良い事を思いついた。
「それにこの方法ならみんなで食べようってなるから日高くんのためなんて分からないよね」
 呟いて言葉にすると、尚良い案に思える。
 私はそれを実行するため、まずは材料集めのためスーパーへ寄っていくことにした。

 そして家に帰ったら早速始める。
 用意したのはブロッコリー、卵、小麦粉、ベーキングパウダー、パルメザンチーズ、そして牛乳と砂糖だ。
 これでビタミンCと脂質、たんぱく質が取れるマフィンを作る。
 一人にいきわたる量は軽食程度になるだろうから気休めでしかないかもしれないけれど、まったくないよりは断然いいはずだ。

 レシピサイトを見ながら作っていく。
 手作りの良いところはアレンジがきくところだ。
 砂糖の量を好みで調節したり、上白糖以外のものに代用したりと健康面にも配慮出来る。
 市販のものは美味しいけれど、その分砂糖が沢山入っていたりするからね。
 ブロッコリーは茹でないでレンジで蒸す。
 その方が美味しいし栄養素が無くならないから。
 パルメザンチーズの量は少し迷ったけれど少な目にした。
 チーズの香りが強いと苦手な人もいるし。
 食べてもらわないと意味がないからね。
 そんな感じで出来上がったものを味見してみる。
「うん、まあまあかな? あとはちゃんと食べてくれればいいんだけど……」
 そんな不安を呟きながら、冷ましたマフィンを保存容器にいれた。

 翌日は朝からドキドキだった。
 持ってきたものの、皆食べてくれるだろうか。
 やっぱりいきなり手作り持ってくるとか引かれるかな?
 昨日は勢いで作っちゃったけれど、やめた方が良かったのか……。
 いや、今日も日高くんのあの昼食を見たら絶対何か食べさせなきゃって思うだろうから、持ってくるのは間違っていないはず!
 でも、やっぱり食べてくれるかどうか……。

 と、何度も悩んでいるうちにお昼になった。

 昨日と同じように皆で座って、いつ出そうかと悶々もんもんとしていたけれど。
 そんな悩みも日高くんの食事を見たら吹っ飛んだ。
 今日の彼の昼食はコーヒー牛乳と焼きそばパン。

「……」

 菓子パンじゃなきゃ良いってわけじゃなーーーーい!!

 大体焼きそばパンって炭水化物に炭水化物はさんだだけでしょう!
 しかも焼きそばの方に野菜はほとんど入っていないし!
 私が焼きそばパンを凝視ぎょうしして小刻みに震えていることに気付いたんだろう。
 大変面倒臭そうに「今日は卵焼きは食べないぞ」と言われた。

 いや食えよ!

 という言葉を飲み込んで、昨日作ったマフィンを出した。
「これ食べて」
「……何だこれ?」
 別で何かを持ってきたことで日高くんの嫌そうな顔が少し普通に戻った。
 もしかしたら私のお弁当から分けて貰ったから嫌だったのかな?
 まあ、それはそれとして。

「ブロッコリーとパルメザンチーズのマフィン。少ないけれど、ビタミンCと脂質とたんぱく質も取れるから」
「……まさか作ったのか?」
 驚愕という言葉が顔に書いてありそうな表情で言われた。
 そこまで驚くことかな?

「なになに? 手作り? 倉木ってこういうの作るんだ?」
 真っ先に反応したのは工藤くんだ。
「うん、みんなで食べようかと思って。どうかな?」
「いいの? じゃあ一つ頂き!」
 そう言って一番初めに工藤くんが食べてくれた。
「うん、普通に美味しい。軽食って感じ」
 その言葉にホッとする。
 お世辞だとしても良かったと思う。
 表情を見ても、そこまで不味いとまでは思われていなそうだから。

「何々ー? へーじゃあ私も貰いっ」
 次に美智留ちゃんが手に取って、他の皆も食べてくれた。
「凄いなぁ。私、お菓子しか作ったことないよ」
 さくらちゃんにも褒められて、最早嬉しいより照れくさくなってくる。
「さくらちゃんのお菓子も食べてみたいなぁ」
 照れ隠しもあってそう言ってみた。食べてみたいのも本当だけど。

「うん、宮野さんのお菓子も食べてみたいね。いつでもいいから、作って来てよ」
 私のマフィンを食べながら花田くんがそう言うと、さくらちゃんは「う、うん!」とそれはそれは嬉しそうに頷く。
 近くで美智留ちゃんが私に向けてこっそり親指を立てていた。
 グッジョブ灯里! と言っている気がする。
 狙って言ったわけじゃないけれど、良い感じにアシスト出来たみたいだ。

 何だかんだでみんなが食べてくれて良かった。
 そんな風に嬉しく思っていると、最後に日高くんがマフィンに手を伸ばす。
「……何で俺に作って来たものを他の奴が先に食べるんだよ」
「え? でもそこまで食べたそうにはしてなかったよね?」
 聞くと、「そうだけどよ……」と何故か拗ねた様に言われた。

 良く分からないけれど、日高くんはそのままマフィンを食べてくれる。
「まあ、美味いんじゃね?」
 ぶっきらぼうな言い方だったけれど、一番食べて欲しい人が食べてくれて美味いと言ってくれた。
 それが一番嬉しかった。

「良かった」
 心の底から安堵して笑顔でそう言うと、日高くんが私をじっと見て固まる。
「どうしたの?」
「いや、何でも……」
 何でもって感じじゃ無かったよね? と首をひねっていると、食べ終えた日高くんに聞かれた。
「明日も何か作って来てくれるんだよな?」
「……」

 作って来てくれるか? じゃなくて、くれるんだよな? ですか。
 それはつまり。
「自分の食事を改めるつもりはない、と?」
「やだね、面倒臭い」
「うぐぐ」
「で? 作らねぇの?」
 ニヤニヤした顔で聞かれて腹が立ったけれど、毎日あのメニューを見せられれば作ってでも食べさせなきゃと思うのは分かり切っていた。

「作るわよ! だからちゃんと食べてよね!」
 正直毎日作るのはちょっと、と思っていたけれど仕方がない。
 私の精神安定の面で見てもこれは必要なことだった。
 幸いなのは、このやり取りを見ていた花田くんが気を使って「俺たちの分は毎日じゃなくて良いからな?」と言ってくれた事だろうか。
 一人分ならそこまで大変ではないかな?
 そんな感じで、私は毎日日高くんに栄養のあるものを作ってくることになってしまった。

 良かったのか悪かったのか。
 それは良く分からないけれど……。
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