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四章 校外学習そして
かどわかし②
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商店街の裏側というので家が立ち並んでいる様なところかと思っていたのに、その空き家は離れた場所に一軒だけポツンとあった。
昔ながらの日本家屋って感じ。
それにしてもどうしてこの空き家なんだろう?
空き家なんだから誰かが住んでるってわけじゃないだろうし……。
いわゆる不良のたまり場ってやつなのかな?
でも不良や暴走族のたまり場ってどこかの倉庫ってイメージなんだけど……あれ? 私の気のせい? それともあれは漫画やドラマだけの話?
なんてどうでもいいことを考えながら、連れられるままに空き家の縁側の方へ回った。
「ん? どうした? お前今バイトじゃなかったか?」
そこには、どこかで見たことがある男の人が煙草を吸って座っていた。
「聞いてくださいよ杉沢さん! バイトしてたら日高がいたんです」
怒っている様な、それでいて嬉しそうな声で、お兄さんは杉沢さんという人に話した。
対する杉沢さんはそれを聞いてあからさまに眉を寄せる。
「またかよ。お前どんな腐れ縁持ってるわけ? で? まさか何か問題起こしてねぇだろうな?」
「大丈夫ですって、問題にならねぇように日高だけここに来るよう仕向けたんで」
「あ゛?……オイ、詳しく話せ」
嬉しそうに大丈夫だと言うお兄さんに、杉沢さんは凄んで事情を聴いていた。
お兄さん、これで問題にならないと本気で思ってるんだ……。
あのあと美智留ちゃんたちが先生に連絡してたら確実に問題になると思うんだけど。
呆れながら少し離れた場所で私は二人を見ていた。
あの杉沢さんって人、お兄さんがナンパしてた時に一緒にいた人だ。
お兄さん関連で記憶を掘り起こしたらすぐに思い出せた。
一度ちょっと見ただけだけど覚えている。
だって、あの人メイクしてたから。
私の周りでメイクしてる男の人っていなかったし、あの日は丁度陸斗くんにメイクをしようって日だったから。
イケメンでもあるけれど、私はメイクつながりで彼を覚えていた。
とはいえ、それをわざわざ言う必要もない。
そう思って黙って成り行きを見守っていた。
「はぁ⁉ 学校行事中の学生連れ去っておいて大丈夫なわけねぇだろ⁉ お前バカか⁉」
一通り話を聞いた杉沢さんが煙草の火を消しながら叫ぶ。
「ああ、馬鹿だったな。分かってた」
そしてすぐに冷静になりそう言ってため息を吐き項垂れた。
頭を上げると、彼は視線を私に向ける。
「で、この子が連れてきた日高の彼女?」
「……」
彼女、じゃないんだけどな。
「はい! 恋人つなぎで手ぇつないでたから間違いないっしょ!」
怒られたばかりなのに元気に答えるお兄さん。
本当にバカなのかもしれない。
「ふーん。あいつこんな地味な子が好みだったのか?」
杉沢さんはそう言って検分するように私を見ながら近付いて来る。
意識が私に向けられて、緊張してしまう。
でもお兄さんに怒ったくらいだから、変なことはされないよね……?
そんな希望を抱いていたけれど、途中で杉沢さんは何かに気付いたように一瞬足を止め、すぐに素早く私に近寄った。
え?
驚きと共に、勢いについ後退る。
でも、杉沢さんはお構いなしに私の顎を掴んで上向かせた。
そしてもう片方の手でメガネを取られる。
じっくりと私の素顔を見た彼は、「へぇ」と目を細めニィっと笑う。
蛇を連想させるようなその笑みにゾクリとした。
「この子、前にお前がナンパ失敗したときの子だ」
「え? マジっすか? あの美人さん? 嘘でしょ?」
言い当てた杉沢さんと、言われても信じられないお兄さん。
普通はお兄さんみたいに分からないと思う。
あんな少し顔を合わせただけの人なんて、記憶に残ることはほぼない。
私が杉沢さんを覚えていたみたいに、何か少しでも気になる部分があるなら有り得そうだけど……。
「間違いねぇよ。まあ、俺もこのアイメイクがなきゃ気付かなかったかもしれねぇけど」
そう言った杉沢さんはニヤニヤした顔を私に近付けてきた。
「あの時の君めっちゃ好みだったからさー。あいつに連れてこいってナンパさせたんだけど……日高の彼女だったとはねー」
そういえばあの時も日高が現れたんだっけ、と思い返している杉沢さん。
「……彼女じゃ、無いです」
私はこの場で初めて声を上げた。
彼女じゃないという事をちゃんと伝えておかなければ何をされるか分からないと思ったから。
私の言葉に杉沢さんは虚を突かれたように瞬きし、お兄さんは「嘘だろ⁉」と叫んだ。
「恋人つなぎしてたじゃねーか! あんなの友達同士じゃしねぇぞ⁉」
「うっ、それは……そうかもしれないけど……」
言葉に詰まる私に、杉沢さんは「ま、どっちでもいいけど」と嘆息する。
「どっちにしても日高に近しい人間ってことだろ」
そう言うとまた私の顔を舐めまわすように見る杉沢さん。
「何もせずに帰してやってもいいんだけど……。それも何かもったいない気がするなぁ……」
もったいなくないです!
何もしなくていいです!!
固まる私は内心そう叫んでいた。
「んー、あのときのメイク――ああ、アイツがナンパしたときな。あのメイクは自分でやったの?」
「……はい、そうですけど……」
何で今それを聞くのか分からなかったけれど、取り合えず答える。
すると杉沢さんは「ふーん」と少し考えてからニッコリと胡散臭い笑顔になった。
「じゃあ、俺にメイクしてみろよ」
「は?」
呆ける私の顎を離し、彼はもう一度言う。
「最近自分でやってみてるんだけど、人がやったメイクってのも見てみたいじゃん? 道具は一通り置いてあるし、今顔洗ってくるから」
「……メイク……」
本当にメイクをしてみて欲しいらしい。
思いがけず男性メイクが出来そうな状況に、私は場違いにも少しワクワクしてしまう。
陸斗くんに一度やってみただけだったからなぁ……。
いやいや、でもそんな事してる場合じゃないんじゃないの?
そんな葛藤を繰り返す。
「……ちなみに、メイクしなかったらどうなりますか?」
試しに聞いてみると。
「そうだな……イタズラしちゃうかな?」
と何だか良い笑顔で言われたので。
「メイクさせていただきます!!」
と私は即答した。
イタズラって何をされるのか。
分からなかったけれど、良い事では絶対にない事だけは分かった。
結局、私はメイクをするしかなかったみたい。
昔ながらの日本家屋って感じ。
それにしてもどうしてこの空き家なんだろう?
空き家なんだから誰かが住んでるってわけじゃないだろうし……。
いわゆる不良のたまり場ってやつなのかな?
でも不良や暴走族のたまり場ってどこかの倉庫ってイメージなんだけど……あれ? 私の気のせい? それともあれは漫画やドラマだけの話?
なんてどうでもいいことを考えながら、連れられるままに空き家の縁側の方へ回った。
「ん? どうした? お前今バイトじゃなかったか?」
そこには、どこかで見たことがある男の人が煙草を吸って座っていた。
「聞いてくださいよ杉沢さん! バイトしてたら日高がいたんです」
怒っている様な、それでいて嬉しそうな声で、お兄さんは杉沢さんという人に話した。
対する杉沢さんはそれを聞いてあからさまに眉を寄せる。
「またかよ。お前どんな腐れ縁持ってるわけ? で? まさか何か問題起こしてねぇだろうな?」
「大丈夫ですって、問題にならねぇように日高だけここに来るよう仕向けたんで」
「あ゛?……オイ、詳しく話せ」
嬉しそうに大丈夫だと言うお兄さんに、杉沢さんは凄んで事情を聴いていた。
お兄さん、これで問題にならないと本気で思ってるんだ……。
あのあと美智留ちゃんたちが先生に連絡してたら確実に問題になると思うんだけど。
呆れながら少し離れた場所で私は二人を見ていた。
あの杉沢さんって人、お兄さんがナンパしてた時に一緒にいた人だ。
お兄さん関連で記憶を掘り起こしたらすぐに思い出せた。
一度ちょっと見ただけだけど覚えている。
だって、あの人メイクしてたから。
私の周りでメイクしてる男の人っていなかったし、あの日は丁度陸斗くんにメイクをしようって日だったから。
イケメンでもあるけれど、私はメイクつながりで彼を覚えていた。
とはいえ、それをわざわざ言う必要もない。
そう思って黙って成り行きを見守っていた。
「はぁ⁉ 学校行事中の学生連れ去っておいて大丈夫なわけねぇだろ⁉ お前バカか⁉」
一通り話を聞いた杉沢さんが煙草の火を消しながら叫ぶ。
「ああ、馬鹿だったな。分かってた」
そしてすぐに冷静になりそう言ってため息を吐き項垂れた。
頭を上げると、彼は視線を私に向ける。
「で、この子が連れてきた日高の彼女?」
「……」
彼女、じゃないんだけどな。
「はい! 恋人つなぎで手ぇつないでたから間違いないっしょ!」
怒られたばかりなのに元気に答えるお兄さん。
本当にバカなのかもしれない。
「ふーん。あいつこんな地味な子が好みだったのか?」
杉沢さんはそう言って検分するように私を見ながら近付いて来る。
意識が私に向けられて、緊張してしまう。
でもお兄さんに怒ったくらいだから、変なことはされないよね……?
そんな希望を抱いていたけれど、途中で杉沢さんは何かに気付いたように一瞬足を止め、すぐに素早く私に近寄った。
え?
驚きと共に、勢いについ後退る。
でも、杉沢さんはお構いなしに私の顎を掴んで上向かせた。
そしてもう片方の手でメガネを取られる。
じっくりと私の素顔を見た彼は、「へぇ」と目を細めニィっと笑う。
蛇を連想させるようなその笑みにゾクリとした。
「この子、前にお前がナンパ失敗したときの子だ」
「え? マジっすか? あの美人さん? 嘘でしょ?」
言い当てた杉沢さんと、言われても信じられないお兄さん。
普通はお兄さんみたいに分からないと思う。
あんな少し顔を合わせただけの人なんて、記憶に残ることはほぼない。
私が杉沢さんを覚えていたみたいに、何か少しでも気になる部分があるなら有り得そうだけど……。
「間違いねぇよ。まあ、俺もこのアイメイクがなきゃ気付かなかったかもしれねぇけど」
そう言った杉沢さんはニヤニヤした顔を私に近付けてきた。
「あの時の君めっちゃ好みだったからさー。あいつに連れてこいってナンパさせたんだけど……日高の彼女だったとはねー」
そういえばあの時も日高が現れたんだっけ、と思い返している杉沢さん。
「……彼女じゃ、無いです」
私はこの場で初めて声を上げた。
彼女じゃないという事をちゃんと伝えておかなければ何をされるか分からないと思ったから。
私の言葉に杉沢さんは虚を突かれたように瞬きし、お兄さんは「嘘だろ⁉」と叫んだ。
「恋人つなぎしてたじゃねーか! あんなの友達同士じゃしねぇぞ⁉」
「うっ、それは……そうかもしれないけど……」
言葉に詰まる私に、杉沢さんは「ま、どっちでもいいけど」と嘆息する。
「どっちにしても日高に近しい人間ってことだろ」
そう言うとまた私の顔を舐めまわすように見る杉沢さん。
「何もせずに帰してやってもいいんだけど……。それも何かもったいない気がするなぁ……」
もったいなくないです!
何もしなくていいです!!
固まる私は内心そう叫んでいた。
「んー、あのときのメイク――ああ、アイツがナンパしたときな。あのメイクは自分でやったの?」
「……はい、そうですけど……」
何で今それを聞くのか分からなかったけれど、取り合えず答える。
すると杉沢さんは「ふーん」と少し考えてからニッコリと胡散臭い笑顔になった。
「じゃあ、俺にメイクしてみろよ」
「は?」
呆ける私の顎を離し、彼はもう一度言う。
「最近自分でやってみてるんだけど、人がやったメイクってのも見てみたいじゃん? 道具は一通り置いてあるし、今顔洗ってくるから」
「……メイク……」
本当にメイクをしてみて欲しいらしい。
思いがけず男性メイクが出来そうな状況に、私は場違いにも少しワクワクしてしまう。
陸斗くんに一度やってみただけだったからなぁ……。
いやいや、でもそんな事してる場合じゃないんじゃないの?
そんな葛藤を繰り返す。
「……ちなみに、メイクしなかったらどうなりますか?」
試しに聞いてみると。
「そうだな……イタズラしちゃうかな?」
と何だか良い笑顔で言われたので。
「メイクさせていただきます!!」
と私は即答した。
イタズラって何をされるのか。
分からなかったけれど、良い事では絶対にない事だけは分かった。
結局、私はメイクをするしかなかったみたい。
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