好きなだけじゃどうにもならないこともある。(譲れないのだからどうにかする)

かんだ

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19.画策と制約

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 制約魔法とは文字通り、制約を設け、反故した場合はペナルティを受ける高度魔法だ。複雑で緻密な式であること、多大な魔力量が必要なこと、双方の同意が必要なことなど、制約魔法を結ぶには多くの条件が必須となる上、失敗する可能性も高く、一度結ばれたそれは解くことが出来ない。そのため積極的に制約魔法を使う者はいないし、そもそも使える者もいない。
「どんな制約魔法を結んだんだ!」
「ミラヴェルとしか体を重ねない、情を交わさないという制約です」
「ペナルティは!?」
「この命です。そして制約魔法の期限はこの命が終わるまで。その二つが反故された瞬間、僕は死に至ります。あの女に種を注ぐ前に僕は死にます」
 皇帝はメリルの告白に驚愕と動揺を露わにする。いつも平静に物事を捉えられる皇帝にしては珍しい。もしかしたら言葉を失う姿は初めて見るかもしれない。
「陛下、殿下のお言葉は本当ですか?」
 そう問い掛けたのは宰相である。国を第一に考えられる男だ。
 皇帝は答える前に、震える声でメリルへと問う。
「メリル、それは、本当か?」
「はい。僕たちが皇帝陛下に嘘をつけないことはよくご存知でしょう?」
 この僕たち、とは魔法使いを指す。魔法使いは皇帝陛下に誠実でなければならない。それは皇族が、女神様が愛した人間の子孫だかららしい。だからこそ、魔法使いは帝国を離れることはないし、反乱を起こすこともない。皇族に対し誠実であるが故に、この帝国は常に豊かであるとも言える。
「……そうだな、そうだ。メリルの言うことは真実だ」
 皇帝は頭を抱えるように深く溜め息を吐いた。
「では、殿下は死ぬまで、妃殿下以外と体を重ねることも情を交わすことも出来ないと」
「そういうことだ。全く、何故そのような制約を……信じられん」
「そうでしょうか? 僕はミラヴェル以外に興味はないですし、これからもミラヴェル以外を愛することも抱くこともない。なら、結んだところで何の意味もないでしょう?」
「何故今まで言わなかった?」
「大事にされたら大変だと思って」
「お前はまだ若い。もし、万が一、心が変わることがあったらどうするつもりだ」
 メリルははっきりと答える。
「そのようなことは絶対にありません」
「この世に絶対などない」
「ではこの絶対を、生涯かけて証明いたしましょう」
「……もう良い。その話を続けたら叫び出しそうだ。どうせ解くことは出来ない。自分のためにも忘れたことにする」
 皇帝がそう話題を締めたところだった。トンっと音を立てて、祭事部門長が膝を折ったのは。彼はへたり込み、生気のない表情でメリルを見上げる。
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