僕たちの日常

かんだ

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8.誕生日プレゼントを作ろう

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 デュラン家と皇族は親戚関係に当たる上、長男のリアムと皇太子の三男は同い年になるため幼少期から交流をしている。
 その皇子が、来月に五歳を迎える。
 ということで、皇子から誕生日パーティーの招待状が届いた。一日目は子どもたちだけのパーティー、二日目は貴族などを招いた豪華絢爛なパーティーの予定らしい。
 直筆のそれには、心のこもった手作りのプレゼントが嬉しいという旨が記載されている。
 貴族のプレゼントと言うのは、家の財力等を見せ付けて相手に媚びを売ることを前提に物を選び贈っていると、テオが言っていた。故に、今までも皇子へのプレゼントは秘書がテオの許可を得て選び贈っていたとのことだ。
 だけど、今回は初めて『心のこもった手作り』を所望されている。見栄と媚びを前提に選ばれたプレゼントに飽きたのだろうか。
「テオ、これは本当に手作りで良いと思いますか? それとも、何かの暗喩」
「いや、言葉通りだろう。変に勘繰る必要はない」
 テオの後押しもあり、リアムと共に今年のプレゼントは手作りにしようと決めたは良いが、では何を作ろうかと頭を悩ませることになる。
 心のこもった手作りとは、親ではなく、友人である子どもたちが作ることを望んでいるはずだ。五歳児に出来る物はなんだろうか。
「テキトーで良いだろ。白紙におめでとうと絵を描いて渡せば良い」
 あまりにも悩んでいたからか、テオがいい加減なことを言い出す。おめでとうと絵でも十分良いとは思うが、五歳児ならもう少し高等なことが出来る。
 だが、リアムの意思が大事だ。リアムがそうしたいともし思っていたら、ここでテオを否定するのはまずい。
「リアムは絵も文字も上手だよね。どう?」
「プレゼントとお手紙をわたそうと思っていて、そこに絵もかこうかなって思っていました」
「それはいいね。じゃあプレゼントは違うの考えようか」
「はい」
 その後、テオは秘書官のマルタンに連れられ仕事に戻った。
 レオニーとリュカはお勉強中。
 僕はリアムと一緒にあれこれと案を出し合って考えた。
「僕、母さまが作ってくれたぬいぐるみがうれしかったんです」
「本当? リアムはすごく大切にしてくれているもんね」
 リアムに贈ったうさぎのぬいぐるみは高い頻度でリアムのそばにいる。持ち歩ける時は必ず抱っこして連れてくれているのだ。
 ちなみにレオニーとリュカもそう。
「だから、僕もエドに作ってあげたい」
「エドアルド皇子殿下、喜んでくれそう?」
 僕はエドアルド殿下を知らない。だから皇子の趣味も好みも知らない。我が家で一番皇子を知っているのはリアムだ。
 リアムはよーく考えてから笑顔で言った。
「うん。エド、絶対よろこんでくれます」
「そっか。じゃあ一緒に作ろうね。殿下は何の動物にする? あ、動物以外でも大丈夫だよ」
「耳がピンと立ったうさぎにします。僕が持っているのがたれみみだから」
「いいね~。仲良しだ」
「エドはかわいいんですよ」
 殿下は可愛い系なんだ。
 皇族とデュラン家は親戚関係にあたるので勝手にテオと似通っていると思っていた。テオは子ども時代が想像出来ないほど屈強で存在感がある。
 だが、五歳児なら誰でも可愛いに決まってるいる。
 二人がうさぎのぬいぐるみを持っている姿を想像すると可愛いしかない。
「じゃあ頑張って可愛いのを作ろうね」
 作るものが決まればあとは材料を選ぶ。
「母さまも作るんですか?」
「うん。テオに作ろうと思って」
「父さま? 父さまに似た動物ですか?」
「そうだよ。大きな狼にしようかなーって」
 大きくて力強いからゴリラかなと考えていたが、甘えてくるところは犬っぽいと思うので狼にした。
 だが、リアムは細い首を傾げる。
「父さまは、母さまに似た動物のぬいぐるみが嬉しいと思います」
「え、え? そうかな?」
「はい。絶対そうです。エドもそうです。だから、僕とエドのぬいぐるみを二つ作って渡します」
「あそうなんだ」
 二つ作るとは初知りだ。だから複数色の糸を買ったのか。
「僕に似た動物ってなんだろ」
「父さまに聞きにいきましょう」
 リアムはそう言うと僕の手を取って進み出す。仕事中のテオをくだらないことで尋ねることに抵抗があったが、「俺の中での最優先はリュシーだ」と常に言い張るテオを信じることにする。
「どうした?」
 テオは僕とリアムを招き入れ、応接ソファーへ座るよう促す。
 だが、長居するつもりはないため立ったまま用件を伝えた。
「あの、テオに、テオに似たぬいぐるみを作ろうと思っているんですが、リアムから僕に似た動物の方が良いのではと言われて」
「リュシーに似たぬいぐるみが嬉しいな。もちろん、君が作ってくれたものなら何でも嬉しいが」
 食い気味に答えられ、リアムはほらねと得意気な顔をした。
「……そうですか。では、僕に似た動物とは」
「白い子猫ちゃんだ」
 ……またしても食い気味だ。しかも、白い、子猫ちゃん。猫ではなく子猫。テオが自分をどう思っているかが分かるようだ。
 二十二歳の成人男性、しかも三児の親が、子猫に似ていると言われるのはあまり嬉しくはないかも知れない。
「リュシーはどこもかしこも白くて柔らかい。瞳は濃い紫の宝石を。いや、材料は俺が選んでおこう」
「自分で選びますよ」
「選びたいんだ」
 テオに腰を引き寄せられる。
「俺に似たぬいぐるみは俺が作るから、受け取ってくれるか?」
「え!? テオが作るんですか?」
 思わず声を上げてしまう。
「あぁ。俺は何の動物に似ていると思う?」
「黒い狼はどうでしょうか? 元々テオ用に大きくて黒い狼を作ろうと思っていたんです」
「狼か。良いな。じゃあ完成を楽しみにしてくれ。例え下手でも笑うなよ?」
「笑いませんよ。嬉しいです」
 まさかのテオと交換し合うことになるとは、思ってもいなかった。
 僕はその時を楽しみに、リアムと頑張ることを決めた。
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