1 / 3
プロローグ
しおりを挟む
暗い、遠い、奥の国。
妖精たちの、花園。
―――――――――――――
妖精たちの国は深い森に囲まれ、更にその中央にも森がサークル状にある。
未だに彼らの存在がお伽噺とされるのは、国を囲む森の特殊な霧で余所者が侵入できないようにしているからである。
そして、妖精たちですら滅多に行かない内側の樹海を妖精の足で一週間歩けば辿り着くそこには、禁じられた城がある。
それは妖精が住むには聊か広すぎるが、人が住むには窮屈だ。
かつて人の王族の娘が妖精王に供物として捧げられた。少女は14歳。王と側室の間の子供であった。
少女の名はアリス。アリス・メチ・ティネンテ...彼女は、世にも珍しい黄緑の髪に金色の瞳を持つ”ファータ”だった。
”ファータ”とは、普通人が持つことのできない容姿や、不思議な力を宿した人間のことで、意味は「妖精」。
人は自分たちが彼らの存在によって脅かされるのではないかと恐れ、幾度も暗殺を繰り返してきた。そのため、20歳まで生き延びるものは全体の1割にも満たない。
そんな稀有な遺伝子は、いわゆる”突然変異”なのだが、それを知る者はいない。代わりに根付いたのは、”呪い”という解釈だった。
ただでさえこんな失礼極まりない状態だというのに、貴族、ましてや王族に生まれたとあっては、それは個人の問題ではなく国としての問題となる。他国に知られてはそれだけで危険分子と見なされ侵略の大義名分を与える羽目に...
それではまずい、と王とその忠臣らは考えた、考えて、考えた......
そうして、 出た結論は、彼らを妖精に捧げる供物だとでっち上げるというさらに馬鹿馬鹿しい物だった。
曰く、「彼らの力は即ち妖精の好んだモノの証。彼らの故郷は妖精の国も同義。妖精の怒りを買わぬため、彼らを祖国へ帰すのだ」
なるほど、妖精がかける呪い、さぞや恐ろしく、悪質なものであろう........
というのが、人間サイドの見方。
では、彼ら、゛ファータ゛は結局どうなったのか?
実際上層部は、妖精の存在など信じてはいない。ただ、国民を納得させるための理由がほしかっただけだ。
ファータは妖精の国へ送り出される際、護衛をつけて深夜静かに人目を避けるように国を出て、『妖精のもと』へ送り出されることになった。
... 表向きは、だ。
それ以外の、姿形は普通の能力持ちは、ファータの中でも周囲にバレずに一生を終えるものもいる。そういう者は親すら騙す。他のファータをそ知らぬ顔で無視し、堂々と結婚して子を産むこともある。
他に、自らの子がこれまたファータだったらと心配で独り身の者もいる。
反対に、容姿がらしい・・・と親がひた隠しにして家の中に閉じ込めたり、金を積んで静かな場所に療養と称して暮らさせ、護衛に口止めしたりだとか。
最悪の場合、親やその周囲が生まれてすぐに消すこともある。
また、嫌なことに、ファータは密かにある種のコレクターに人気で、消したと見せて商品にされる。生死はわからないが、地獄だろう。
では、『妖精のもと』とは、一体どこを指すのか?
それこそ、どの国にも共通して存在する森や砂漠という大自然が多い。
そこでファータを護衛が押し込めたりして放置。商人は待ち伏せするのが常だ。
一方の妖精サイドはというと、確かに容姿が綺麗な人間は好きだし、自分達に似ていたら更にお気に入りで、力あるものも同様に愛される...
こともない。彼らは気まぐれで、様々だ。
人間に好奇心で近づいたり、嫌ったり。イタズラしたり、無関心だったり。
基本的には妖精の国で暮らしているが、たまに人間の国に遊びに行く。
能力持ちの中には彼ら妖精の見える奴がいて、からかったり一緒に遊んだりする。
別段人間がいようがいまいが関係ない。だって大抵の奴はこちらが見えないし、だから害される心配はない。せいぜい暇潰し程度の相手としか考えられないのだ。
ヒトは弱くて残酷で、面白くてからかいがいがある。
ファータだからといって特別扱いはしない....
ーーーーーー
妖精王は、代替わりが激しい。
妖精王は人間の王程忙しい訳ではなく、妖精たちを守る霧の結界を維持するのに力を使うのだ。
勿論、結界のすべてを彼が担っているわけではなく、妖精の国の大地そのものが持つ力を上手く増幅し強固のものにするのだ。
それ故、妖精の寿命が長くて300年を越えるのに対し、王は150年と短く思える。かといって、長くても80年の人と比べるまでもなく、力の弱い妖精で90年程だから、妖精王がある程度ヒトより長寿というのは嘘ではない。
そして、その命の短さは、妖精王という大役がいかに過酷かを示している。
妖精の国は人間ほどではないが数は億を越える、決して小さなものではない。
性格も多種多様で、好戦的なものはヒトは厄災だ、滅ぼすべきだとのたまう奴もいるし、平和主義の、不可侵を強く主張する奴も。たまに王の世襲制を廃止し選挙で選ぶことを訴えるものも、人間と共存したいと抜かす甘過ぎるお馬鹿もいる。
そんな奴等を一編に従わせるなんて、重労働に違いない。何せ、妖精王の眉間のシワは年々増えているのだから。
でもま、大丈夫だろう。妖精は確かにごちゃごちゃと混在しているが、騙すと言っても美味しい団子と偽って泥団子を渡す位の、実にお茶目なものだから。
ときに、アリス・メチ・ティネンテが齡14を迎える年、彼... ユリウス・ヘラ・ゴルベット、我らが妖精王は45歳。ヒトの基準はわからぬが、聡明な美王であった。
妖精たちの、花園。
―――――――――――――
妖精たちの国は深い森に囲まれ、更にその中央にも森がサークル状にある。
未だに彼らの存在がお伽噺とされるのは、国を囲む森の特殊な霧で余所者が侵入できないようにしているからである。
そして、妖精たちですら滅多に行かない内側の樹海を妖精の足で一週間歩けば辿り着くそこには、禁じられた城がある。
それは妖精が住むには聊か広すぎるが、人が住むには窮屈だ。
かつて人の王族の娘が妖精王に供物として捧げられた。少女は14歳。王と側室の間の子供であった。
少女の名はアリス。アリス・メチ・ティネンテ...彼女は、世にも珍しい黄緑の髪に金色の瞳を持つ”ファータ”だった。
”ファータ”とは、普通人が持つことのできない容姿や、不思議な力を宿した人間のことで、意味は「妖精」。
人は自分たちが彼らの存在によって脅かされるのではないかと恐れ、幾度も暗殺を繰り返してきた。そのため、20歳まで生き延びるものは全体の1割にも満たない。
そんな稀有な遺伝子は、いわゆる”突然変異”なのだが、それを知る者はいない。代わりに根付いたのは、”呪い”という解釈だった。
ただでさえこんな失礼極まりない状態だというのに、貴族、ましてや王族に生まれたとあっては、それは個人の問題ではなく国としての問題となる。他国に知られてはそれだけで危険分子と見なされ侵略の大義名分を与える羽目に...
それではまずい、と王とその忠臣らは考えた、考えて、考えた......
そうして、 出た結論は、彼らを妖精に捧げる供物だとでっち上げるというさらに馬鹿馬鹿しい物だった。
曰く、「彼らの力は即ち妖精の好んだモノの証。彼らの故郷は妖精の国も同義。妖精の怒りを買わぬため、彼らを祖国へ帰すのだ」
なるほど、妖精がかける呪い、さぞや恐ろしく、悪質なものであろう........
というのが、人間サイドの見方。
では、彼ら、゛ファータ゛は結局どうなったのか?
実際上層部は、妖精の存在など信じてはいない。ただ、国民を納得させるための理由がほしかっただけだ。
ファータは妖精の国へ送り出される際、護衛をつけて深夜静かに人目を避けるように国を出て、『妖精のもと』へ送り出されることになった。
... 表向きは、だ。
それ以外の、姿形は普通の能力持ちは、ファータの中でも周囲にバレずに一生を終えるものもいる。そういう者は親すら騙す。他のファータをそ知らぬ顔で無視し、堂々と結婚して子を産むこともある。
他に、自らの子がこれまたファータだったらと心配で独り身の者もいる。
反対に、容姿がらしい・・・と親がひた隠しにして家の中に閉じ込めたり、金を積んで静かな場所に療養と称して暮らさせ、護衛に口止めしたりだとか。
最悪の場合、親やその周囲が生まれてすぐに消すこともある。
また、嫌なことに、ファータは密かにある種のコレクターに人気で、消したと見せて商品にされる。生死はわからないが、地獄だろう。
では、『妖精のもと』とは、一体どこを指すのか?
それこそ、どの国にも共通して存在する森や砂漠という大自然が多い。
そこでファータを護衛が押し込めたりして放置。商人は待ち伏せするのが常だ。
一方の妖精サイドはというと、確かに容姿が綺麗な人間は好きだし、自分達に似ていたら更にお気に入りで、力あるものも同様に愛される...
こともない。彼らは気まぐれで、様々だ。
人間に好奇心で近づいたり、嫌ったり。イタズラしたり、無関心だったり。
基本的には妖精の国で暮らしているが、たまに人間の国に遊びに行く。
能力持ちの中には彼ら妖精の見える奴がいて、からかったり一緒に遊んだりする。
別段人間がいようがいまいが関係ない。だって大抵の奴はこちらが見えないし、だから害される心配はない。せいぜい暇潰し程度の相手としか考えられないのだ。
ヒトは弱くて残酷で、面白くてからかいがいがある。
ファータだからといって特別扱いはしない....
ーーーーーー
妖精王は、代替わりが激しい。
妖精王は人間の王程忙しい訳ではなく、妖精たちを守る霧の結界を維持するのに力を使うのだ。
勿論、結界のすべてを彼が担っているわけではなく、妖精の国の大地そのものが持つ力を上手く増幅し強固のものにするのだ。
それ故、妖精の寿命が長くて300年を越えるのに対し、王は150年と短く思える。かといって、長くても80年の人と比べるまでもなく、力の弱い妖精で90年程だから、妖精王がある程度ヒトより長寿というのは嘘ではない。
そして、その命の短さは、妖精王という大役がいかに過酷かを示している。
妖精の国は人間ほどではないが数は億を越える、決して小さなものではない。
性格も多種多様で、好戦的なものはヒトは厄災だ、滅ぼすべきだとのたまう奴もいるし、平和主義の、不可侵を強く主張する奴も。たまに王の世襲制を廃止し選挙で選ぶことを訴えるものも、人間と共存したいと抜かす甘過ぎるお馬鹿もいる。
そんな奴等を一編に従わせるなんて、重労働に違いない。何せ、妖精王の眉間のシワは年々増えているのだから。
でもま、大丈夫だろう。妖精は確かにごちゃごちゃと混在しているが、騙すと言っても美味しい団子と偽って泥団子を渡す位の、実にお茶目なものだから。
ときに、アリス・メチ・ティネンテが齡14を迎える年、彼... ユリウス・ヘラ・ゴルベット、我らが妖精王は45歳。ヒトの基準はわからぬが、聡明な美王であった。
0
あなたにおすすめの小説
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる