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終章 ゴーレムの王子は光の妖精の夢を見る
兄と弟
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配下たちが各自の仕事のために散ってから、俺はジュリアンに、エルシーと俺と二人分の旅支度を命じた。
「宝飾品は、ミス・リーン経由でバーナードの店に注文しているはずだ。リンドホルムからの列車は早朝に西駅に到着するから、そこから東駅に移動して、そのままビルツホルン行に乗る、なんてことになるかもしれない。――そうだな、東駅近くのホテル押えて、そこでミス・リーンと落ち合って、エルシーの衣装を受け取ろう」
「……カーティス大尉が仰る通り、ずいぶん、アクロバティックですね」
エルシーの持ち物は普段着ていた下着や寝間着の類だから、それほどの量にはならないはず。
「女性物は俺も自信がないので、明日、姉に伝えておきます」
続いて、俺のリンドホルム行の荷物を支度する。葬儀用の礼装と靴の他には、気楽なラウンジ・スーツ。カフリンクスも地味なものを選ぶ。
と、リンゴーンと呼び鈴が鳴った。
「誰でしょう、見てまいります」
「王宮の奴らだったら俺は昏睡状態だと言って追い払え」
「あまりに重病だと言うと、医者を呼ばれますよ」
ジュリアンが言いおいて玄関に向かう。そして――しばらくして戻ってきて、言った。
「とても追い払えない方でした。――王太子殿下ご自身が、おしのびでいっらしゃったのです」
「兄上が?」
ジュリアンは兄上を応接室に通したので、俺も慌ててウェストコートとジャケットを着て、応接室に向かう。
兄上はグレーのラウンジ・スーツを着て、応接室のソファからピアノを珍しそうに見ていた。
「――兄上、いったい……」
「いや、どうしてもお前とは話しておかねばならないと思って。体調はよさそうだな」
「いえ、実は二日酔いですし、今夜も浴びるほど飲む予定だから、王宮には数日行かれません」
「……まあ、来ない方がいいだろう。ろくな目に遭わないだろうから」
それから、兄上が言った。
「……私とブリジットに男児が生まれないことで、お前には迷惑をかけている。すまない」
頭を下げられ、俺は困惑する。
「子供のことは神の領域です。兄上や、まして義姉上のせいじゃない」
俺が言えば、兄上は困ったような表情で、俺を見た。
「……晩餐会の日、ステファニーとは少し話をしたんだ」
「兄上が?……なんて?」
「ステファニー自身は、やり直したいと思っていると」
「……やり直すも何も、俺はもともと、決められた婚約者だから尊重していただけで……」
ちょうど、ジュリアンがコーヒーを運んできた。ジュリアンが下がるの待ち、俺はブラックのままコーヒーに口をつける。兄上は砂糖とミルクを入れて混ぜてから、やはり一口飲んだ。
「ステファニーは、お前が母上から折檻を受けていることは知らなかったと……」
「そりゃ、俺は何も言っていないし、産みの母がわが子を虐待するなんて、想像もしないでしょうね。……彼女は末娘で家族に愛されて育った。世の中のすべては自分の思い通りになると考えていた。……まあ、一部は俺が何でも我儘を聞いてやったせいかもしれませんが」
「……アリスンは、お前に対する母上の態度が不自然だと気づいていたようだ。ステファニーの我儘が過ぎると。だが、お前が許しているならと、敢えて口を出さなかったと。アリスンがステファニーを窘めたが、自分のせいじゃない、知らなかった、と」
「まあ、そう言うでしょう。愚かと言えば愚かだけど、要するに子供だった」
俺が言えば、兄上は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「その……お前はもう、やり直すのは……」
「無理です」
「……そうだろうな……」
兄上ははため息をつく。
「……私もステファニーのことをとやかくは言えまい。母上がお前に冷たいのは知っていた。でも、現実を直視したくなかった。父と母は円満な、理想の夫婦だと思い込みたかった。ジョージが病に倒れて、どんどん、歪んでいく家族のことを見て見ぬ振りをした」
兄上はそれから、俺を見た。
「父上に、聞いたのだ。……マックス・アシュバートンと――お前の、産みの母親について」
俺は目を見開いた。……実を言えば、俺自身はローズのことを、父上から直接聞いたことはなかった。
「十二年前……お前が王宮の池に落ちたとは聞いていた。だが、その前後のことを、私は知らなかった。私はもう結婚もして、一人前の男で王太子で、何よりお前の兄だと言うのに、何もわかっていなかった。もっと目を凝らし、現実をちゃんと見据えていれば、お前の母の悲劇だって、防げたかもしれないのに……私は……」
兄上が両手で顔を覆う。
「すまなかった……あやまって、すむことではないが――」
「もう、いいのです。その件は、兄上のせいではない」
兄上は当時、結婚したばかりで、王都内の別の宮殿に住んでいた。俺の状況を知らなくても仕方がない。
「その件はいいのです。……俺が知りたいのは、もう一つの件です」
兄上が顔を上げる。
「……三年前、シャルローで俺は、マックス・アシュバートンに命を救われた。彼は俺の目の前で戦死した。なのに、なぜ、エルシー……娘の代襲相続が認められていないのか。それに俺は――」
俺はいつも胸ポケットに入れている、マックスの詔勅を思う。
父上は、俺とエルシーの結婚を一度は認めたはずだ。なぜ、それを覆したのか――。
「そのことだ。……私は、お前が戦地から父上に宛てた手紙を見せてもらった。マックス・アシュバートンの死と、娘との結婚を求める、あの手紙を。マックス・アシュバートンから写真を見せてもらったと書いてあったので、ステファニーにはそれを少しアレンジして伝えたが……十二年前にお前が死にかけて、リンドホルムで休養していたことも、私は今回、初めて知ったのだ。本当に兄として情けない」
「では、まだその手紙を、父上は――」
兄上は頷く。
「何度も読んだ形跡があって……その、お前の母親のことも……」
「ではなぜ――」
「父上は、言われた。……マックス・アシュバートンから娘とお前の婚姻を願われた時は、アイリ―ンが生まれる直前で、その時はお前をリンドホルムに返すつもりだった、と」
そう、三年前、ちょうどブリジット妃は第三子を懐妊中で、こんどこそ男児だろうと、みな思っていた。兄上に王子が生まれれば、俺はスペアの役割もお役御免になる。即位の可能性のなくなった第三王子で、しかも本当は庶子の俺は、王都を離れてリンドホルムあたりでのんびり過ごす方がいい――。立場の悪くなりかねない、俺を気遣ってのことだ。
「だが、結局、第三子のアイリーンも女児で、そうしてシャルローの事件があった。……マックスのおかげで命拾いしたお前を、王家は手放すわけにいかなくなった」
「そんな勝手な!」
「それに――マックス・アシュバートンに与えた詔勅の、副本が紛失していると」
「それは、聞きました。結婚を認めるものだけでなく、直系の子女への相続確約の詔勅の、副本まで消えている」
俺が、法務局の資料室に出向いた時のことを伝えれば、兄上が頷く。
「副本がなければ、父上から訴えることはできない。正本はマックス・アシュバートンとともに、消えたまま。……そこに、強引にステファニーとの再婚約を押し込まれ、父上の性格では拒絶できなかったのだ」
俺はしばらく考え込んだ。
「……つまりレコンフィールド公爵らは、父上がマックス・アシュバートンの娘と、俺との結婚を一度は認めたことを知り、副本を奪ってそれを握り潰し、ついでに彼女の相続までも潰した、と?」
「……おそらくは。だが、証拠はない」
俺は、目を閉じて想い出す。リンドホルムの美しい城と庭。薔薇の咲き乱れるローズの庭を。……奴ら、どこまで俺と、ローズの家族を踏みつけにすれば気が済むのだろうか。
「なぜです。なぜ、そこまで、俺とステファニーとの結婚にこだわるのです?」
「このまま、私に男児が生まれなければ、お前が国王になる。本当なら受け継がれるはずの、レコンフィールド公爵家出身の王妃の血が、一滴も流れないお前が。……だからせめて、お前にステファニーを娶らせ、次の代には――」
「バカバカしい!」
ガシャン、と俺がテーブルに拳を叩きつけ、カップが揺れて音を立てる。
「レコンフィールド公爵は、俺を、歪みの元だと言った。……そもそも、王妃が三人目の王子を生んでさえいれば、ローズが俺を生む必要だってなかった。たとえ生まれたとしても、庶子として闇に葬ることもできたはずなのに!」
「そのあたりの話し合いについては、父上は敢えて口を噤まれた。……王妃の子である、私に配慮なさったのだろう」
俺は兄上を見つめた。――兄上が、王太子として多くの責任を背負っているのは知っているし、この人の苦悩もわかる。でも――。
「兄上。俺はもう、スペアのゴーレムであることはやめたんです。王家の血筋がどうなろうと、俺の知ったことじゃない。俺は、エルシーと……マックス・アシュバートンの娘と結婚します。どうしても反対するならば、国外に出る」
「……マクガーニがそう言って、父上を脅して、ビルツホルン行を認めさせた。……その、彼女も伴うのかね?」
「王都に一人で置いていけるとでも?」
「そうだな。……安全は保障できかねる。大っぴらに守ることもできないし、連れていくしかないだろう」
兄上はそう言ってから、残りのコーヒーと飲み干し、立ち上がると俺に手を差し出した。
「どこまでやれるかはわからないが、彼女との結婚が認められるよう、できる限りの協力をしよう。だから、ギリギリまで亡命は待って欲しい。――私と、私の家族のために。我儘だとはわかっているが、私も愛する者たちを守りたいのだ」
俺は不承不承、兄上の手を握り返し、頷いた。
「宝飾品は、ミス・リーン経由でバーナードの店に注文しているはずだ。リンドホルムからの列車は早朝に西駅に到着するから、そこから東駅に移動して、そのままビルツホルン行に乗る、なんてことになるかもしれない。――そうだな、東駅近くのホテル押えて、そこでミス・リーンと落ち合って、エルシーの衣装を受け取ろう」
「……カーティス大尉が仰る通り、ずいぶん、アクロバティックですね」
エルシーの持ち物は普段着ていた下着や寝間着の類だから、それほどの量にはならないはず。
「女性物は俺も自信がないので、明日、姉に伝えておきます」
続いて、俺のリンドホルム行の荷物を支度する。葬儀用の礼装と靴の他には、気楽なラウンジ・スーツ。カフリンクスも地味なものを選ぶ。
と、リンゴーンと呼び鈴が鳴った。
「誰でしょう、見てまいります」
「王宮の奴らだったら俺は昏睡状態だと言って追い払え」
「あまりに重病だと言うと、医者を呼ばれますよ」
ジュリアンが言いおいて玄関に向かう。そして――しばらくして戻ってきて、言った。
「とても追い払えない方でした。――王太子殿下ご自身が、おしのびでいっらしゃったのです」
「兄上が?」
ジュリアンは兄上を応接室に通したので、俺も慌ててウェストコートとジャケットを着て、応接室に向かう。
兄上はグレーのラウンジ・スーツを着て、応接室のソファからピアノを珍しそうに見ていた。
「――兄上、いったい……」
「いや、どうしてもお前とは話しておかねばならないと思って。体調はよさそうだな」
「いえ、実は二日酔いですし、今夜も浴びるほど飲む予定だから、王宮には数日行かれません」
「……まあ、来ない方がいいだろう。ろくな目に遭わないだろうから」
それから、兄上が言った。
「……私とブリジットに男児が生まれないことで、お前には迷惑をかけている。すまない」
頭を下げられ、俺は困惑する。
「子供のことは神の領域です。兄上や、まして義姉上のせいじゃない」
俺が言えば、兄上は困ったような表情で、俺を見た。
「……晩餐会の日、ステファニーとは少し話をしたんだ」
「兄上が?……なんて?」
「ステファニー自身は、やり直したいと思っていると」
「……やり直すも何も、俺はもともと、決められた婚約者だから尊重していただけで……」
ちょうど、ジュリアンがコーヒーを運んできた。ジュリアンが下がるの待ち、俺はブラックのままコーヒーに口をつける。兄上は砂糖とミルクを入れて混ぜてから、やはり一口飲んだ。
「ステファニーは、お前が母上から折檻を受けていることは知らなかったと……」
「そりゃ、俺は何も言っていないし、産みの母がわが子を虐待するなんて、想像もしないでしょうね。……彼女は末娘で家族に愛されて育った。世の中のすべては自分の思い通りになると考えていた。……まあ、一部は俺が何でも我儘を聞いてやったせいかもしれませんが」
「……アリスンは、お前に対する母上の態度が不自然だと気づいていたようだ。ステファニーの我儘が過ぎると。だが、お前が許しているならと、敢えて口を出さなかったと。アリスンがステファニーを窘めたが、自分のせいじゃない、知らなかった、と」
「まあ、そう言うでしょう。愚かと言えば愚かだけど、要するに子供だった」
俺が言えば、兄上は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「その……お前はもう、やり直すのは……」
「無理です」
「……そうだろうな……」
兄上ははため息をつく。
「……私もステファニーのことをとやかくは言えまい。母上がお前に冷たいのは知っていた。でも、現実を直視したくなかった。父と母は円満な、理想の夫婦だと思い込みたかった。ジョージが病に倒れて、どんどん、歪んでいく家族のことを見て見ぬ振りをした」
兄上はそれから、俺を見た。
「父上に、聞いたのだ。……マックス・アシュバートンと――お前の、産みの母親について」
俺は目を見開いた。……実を言えば、俺自身はローズのことを、父上から直接聞いたことはなかった。
「十二年前……お前が王宮の池に落ちたとは聞いていた。だが、その前後のことを、私は知らなかった。私はもう結婚もして、一人前の男で王太子で、何よりお前の兄だと言うのに、何もわかっていなかった。もっと目を凝らし、現実をちゃんと見据えていれば、お前の母の悲劇だって、防げたかもしれないのに……私は……」
兄上が両手で顔を覆う。
「すまなかった……あやまって、すむことではないが――」
「もう、いいのです。その件は、兄上のせいではない」
兄上は当時、結婚したばかりで、王都内の別の宮殿に住んでいた。俺の状況を知らなくても仕方がない。
「その件はいいのです。……俺が知りたいのは、もう一つの件です」
兄上が顔を上げる。
「……三年前、シャルローで俺は、マックス・アシュバートンに命を救われた。彼は俺の目の前で戦死した。なのに、なぜ、エルシー……娘の代襲相続が認められていないのか。それに俺は――」
俺はいつも胸ポケットに入れている、マックスの詔勅を思う。
父上は、俺とエルシーの結婚を一度は認めたはずだ。なぜ、それを覆したのか――。
「そのことだ。……私は、お前が戦地から父上に宛てた手紙を見せてもらった。マックス・アシュバートンの死と、娘との結婚を求める、あの手紙を。マックス・アシュバートンから写真を見せてもらったと書いてあったので、ステファニーにはそれを少しアレンジして伝えたが……十二年前にお前が死にかけて、リンドホルムで休養していたことも、私は今回、初めて知ったのだ。本当に兄として情けない」
「では、まだその手紙を、父上は――」
兄上は頷く。
「何度も読んだ形跡があって……その、お前の母親のことも……」
「ではなぜ――」
「父上は、言われた。……マックス・アシュバートンから娘とお前の婚姻を願われた時は、アイリ―ンが生まれる直前で、その時はお前をリンドホルムに返すつもりだった、と」
そう、三年前、ちょうどブリジット妃は第三子を懐妊中で、こんどこそ男児だろうと、みな思っていた。兄上に王子が生まれれば、俺はスペアの役割もお役御免になる。即位の可能性のなくなった第三王子で、しかも本当は庶子の俺は、王都を離れてリンドホルムあたりでのんびり過ごす方がいい――。立場の悪くなりかねない、俺を気遣ってのことだ。
「だが、結局、第三子のアイリーンも女児で、そうしてシャルローの事件があった。……マックスのおかげで命拾いしたお前を、王家は手放すわけにいかなくなった」
「そんな勝手な!」
「それに――マックス・アシュバートンに与えた詔勅の、副本が紛失していると」
「それは、聞きました。結婚を認めるものだけでなく、直系の子女への相続確約の詔勅の、副本まで消えている」
俺が、法務局の資料室に出向いた時のことを伝えれば、兄上が頷く。
「副本がなければ、父上から訴えることはできない。正本はマックス・アシュバートンとともに、消えたまま。……そこに、強引にステファニーとの再婚約を押し込まれ、父上の性格では拒絶できなかったのだ」
俺はしばらく考え込んだ。
「……つまりレコンフィールド公爵らは、父上がマックス・アシュバートンの娘と、俺との結婚を一度は認めたことを知り、副本を奪ってそれを握り潰し、ついでに彼女の相続までも潰した、と?」
「……おそらくは。だが、証拠はない」
俺は、目を閉じて想い出す。リンドホルムの美しい城と庭。薔薇の咲き乱れるローズの庭を。……奴ら、どこまで俺と、ローズの家族を踏みつけにすれば気が済むのだろうか。
「なぜです。なぜ、そこまで、俺とステファニーとの結婚にこだわるのです?」
「このまま、私に男児が生まれなければ、お前が国王になる。本当なら受け継がれるはずの、レコンフィールド公爵家出身の王妃の血が、一滴も流れないお前が。……だからせめて、お前にステファニーを娶らせ、次の代には――」
「バカバカしい!」
ガシャン、と俺がテーブルに拳を叩きつけ、カップが揺れて音を立てる。
「レコンフィールド公爵は、俺を、歪みの元だと言った。……そもそも、王妃が三人目の王子を生んでさえいれば、ローズが俺を生む必要だってなかった。たとえ生まれたとしても、庶子として闇に葬ることもできたはずなのに!」
「そのあたりの話し合いについては、父上は敢えて口を噤まれた。……王妃の子である、私に配慮なさったのだろう」
俺は兄上を見つめた。――兄上が、王太子として多くの責任を背負っているのは知っているし、この人の苦悩もわかる。でも――。
「兄上。俺はもう、スペアのゴーレムであることはやめたんです。王家の血筋がどうなろうと、俺の知ったことじゃない。俺は、エルシーと……マックス・アシュバートンの娘と結婚します。どうしても反対するならば、国外に出る」
「……マクガーニがそう言って、父上を脅して、ビルツホルン行を認めさせた。……その、彼女も伴うのかね?」
「王都に一人で置いていけるとでも?」
「そうだな。……安全は保障できかねる。大っぴらに守ることもできないし、連れていくしかないだろう」
兄上はそう言ってから、残りのコーヒーと飲み干し、立ち上がると俺に手を差し出した。
「どこまでやれるかはわからないが、彼女との結婚が認められるよう、できる限りの協力をしよう。だから、ギリギリまで亡命は待って欲しい。――私と、私の家族のために。我儘だとはわかっているが、私も愛する者たちを守りたいのだ」
俺は不承不承、兄上の手を握り返し、頷いた。
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