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番外編
侍従官ジョナサン・カーティスの独白④
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アルバート殿下は、植物園の楓並木を散策中に、リードの外れた犬に追いかけられた小さなご令嬢を助けた。まだ三歳くらいの茶色い髪のかわいらしいご令嬢で、泡を食って追いかけてきた乳母と飼い主の老嬢、そしてご令嬢の母親に感謝されて、近所だという小さなご令嬢の邸でお茶をご馳走になったのが縁だ。
お屋敷はアディントン侯爵の別邸の一つで、侯爵の末娘がヘンダーソン子爵に嫁いで、現在は幼い娘と滞在しているということだった。
僕は何も思わなかったが、ジェラルドはヘンダーソン子爵と聞いて、思い当たる節があったらしい。
ヘンダーソン夫人はまだ二十歳そこそこで、ほっそりとした控えめな、でも芯の強そうな女性だった。小さなご令嬢はエリザベス――母親はエルシーと呼んでいた。
驚いたことに、殿下はその幼いエルシーに盛んに話しかけて膝に抱き上げ、ご令嬢の方もすっかり懐いてしまった。
「かわいいね、エルシー。……今度、チョコレートを買ってくるから、遊びにきてもいい?」
「ほんと?! チョコレート? わたし、チョコレート大好き!」
すっかり打ち解けてそんな約束を交わす殿下とエルシーを、ヘンダーソン子爵夫人は不安そうに見ていた。
――娘を助けてくれたのが、独身の王子なのはともかく、ヘンダーソン子爵自身も人妻だ。妙な噂を呼ばなければいいが――
エルシー嬢に出会ってから、殿下はかなり頻繁に、チョコレートや砂糖菓子、リボン、レースのハンカチ、時には大きな縫いぐるみなどを抱えて、せっせとヘンダーソン夫人のもとに通った。それが、噂にならないはずがない。
噂に詳しいジェラルドによれば、ヘンダーソン夫妻の夫婦仲はとても悪く、夫の子爵は領地で愛人を引き入れて、居づらくなった夫人は王都の、実家の別邸の一つに滞在しているそうだ。夫人が領地を出てもう、数か月になるのに、いまだに夫は様子を見に来ることすらないという。
愛人に夫を奪われた女――そんな曰く付きの子爵夫人と、まだ十代の独身の王子。夫人の歓心を買うために、夫人の愛娘にプレゼントを貢ぐけなげな王子だなんて噂が回るのも、あっと言う間だった。
「……殿下、噂になっています。少しは控えた方が――」
僕の忠告も、殿下は馬耳東風だった。
「別にエルシーに会いに行っているだけだし。何も問題はないだろう」
実際、殿下は夫人にはほぼ目もくれず、ただただ小さなご令嬢と遊んで時間を過ごしている。
「幼児性愛なのかな……」
ジェラルドが思わず心配するほど――そして、子爵夫人は露骨に疑っていて、絶対に殿下と小さなエルシーを二人きりにしないように気を配っていた――殿下のエルシー嬢への執着は明らかだった。
結局、交流は数年続いたけれど、当たり前だが子爵夫人と殿下の仲は何もなく、戦争が始まるころにヘンダーソン子爵が夫人と娘を迎えに来て、領地に帰っていった。愛人の件は誤解だったのか、夫が改心したのかは、僕はよく知らない。
当時は、殿下は本気で幼女が好きなのかと、僕もジェラルドも心配していたけれど、戦後、エルスペス嬢を殿下が「エルシー」と呼んでいるのを耳にして、僕はハッとした。
ロベルトも言っていた。
――殿下はエルスペス嬢に以前に出会っていて、でもエルスペス嬢はそれを知らないか、忘れているか――
殿下がエルスペス嬢に会ったのが十年以上前だとすると、エルスペス嬢は七、八歳の幼女。エルシーという愛称といい、殿下のあり得ないレベルの執着度合いといい、僕の内部で、小さなパズルの欠片がつながっていく。
何かの理由があって、殿下は十年以上昔、アシュバートン中佐の領地、リンドホルム城でエルスペス嬢に出会い、幼い彼女に恋をした。
王都に戻ってからも、エルスペス嬢のことを忘れず、戦争中、アシュバートン中佐にエルスペス嬢の写真を見せてもらい、結婚の許しを得る。
目のまえでアシュバートン中佐を失い、長い初恋を叶えるために王都に戻ってきたのに、待っていたのはステファニー嬢で、さらにエルスペス嬢は爵位も領地も失っていた。
僕は、アシュバートン中佐の遺体の胸ポケットから、殿下が遺品を回収した様子を思い出す。――そうか、あの時、何か重要なものを殿下は手に入れているのかもしれない。例えば、相続を確約する国王の詔勅のようなものを。
殿下は、エルスペス嬢が奪われたものを取り戻し、彼女を妻に迎えるための、何か、重要な切り札を持っているのだ。
僕は常夜灯の灯る個室で汽車に揺られながら、不意にそんなことを思う。
規則正しい揺れに、僕はやがて、眠りに落ちていた。
翌朝、身支度を整えで殿下を迎えに行くと、殿下の用意はすでに出来上がっていたが、エルスペス嬢は眠そうに化粧の最中だった。ジュリアンがさりげなく僕の目の前に立ち、エルスペス嬢を僕の視線から遮る。
まもなくエルスペス嬢の支度もできて、「お待たせしてしまって……」と恐縮そうに挨拶される。白いブラウスにグレーの二ットカーディガン、チャコールグレーの毛織のふわりとしたスカート。グレーのベレー帽を斜めにかぶり、髪は綺麗に巻かれている。もともとはあまり化粧っ気のないタイプらしいが、殿下と生活を共にするようになってからは、ほんのりと薄化粧はしているようだ。
少し冷たい印象のする美貌。ブルーグレーの瞳は理知的で、声はしっとりと低い。
十九歳という年齢の割には大人びていて、そして清潔な雰囲気の女性だ。――こんな女性でも、ベッドの上では甘い声を出すんだな……。
一瞬、昨夜のことを思い出し、僕は軽く咳払いして妄想を追い払う。
「では食堂に。朝食の時間は過ぎていますから」
僕が先に立ち、殿下がエルスペス嬢をエスコートして通廊を渡る。
殿下の腕に縋るエルスペス嬢と殿下との間には、確かな信頼の絆があるように見えた。
旅の間、僕はエルスペス嬢の護衛として張り付いていて、言ってはなんだが手持ち無沙汰な時間が長い。そのせいか、妙にいろいろなことを考えてしまう。特に、今まであまり縁のなかった女性全般について。
ビルツホルン行を家族に知らせた時に、母からシャーロットのことを言われたせいだ。すっかり忘れていたが、僕は出征前、デイジーの従妹のシャーロットと婚約させられていた。両親は僕が出征することに反対だったから、婚約によって、僕の出征を思いとどまらせようとした。当時、愛国心に燃えていた僕は、出征しないなんて考えられなかった。僕はシャーロットに特別な感情はなく、婚約にためらいもあった。ただ、シャーロットは非常に若く、多少、結婚を待たせても大丈夫だと思い、婚約することで両親の気が済むならと了承した。
出征中は、アルバート殿下の所在を秘密にする関係で、僕らは家族に送る手紙にも制限があり、シャーロットとは季節のカードを儀礼的に交換する程度だった。
戦争が終わり帰国はしたものの、僕は故郷のリーデンシャーには二日しか帰省できていない。いろんな親族に挨拶するだけで精一杯、シャーロットとまともに会話する時間もなかった。それで、近づく聖誕節の休暇には、シャーロットの方が王都に出てくるという。
婚約者と言っても、シャーロットとどんな話をしていいか、想像もつかなかった。婚約したときはまだ十五歳で、ずっと俯いていたし――。
と、そこまで考えて、四年前に十五歳ってことは、今は十九歳でエルスペス嬢とも同い年だと気づく。
そうか、エルスぺス嬢は十九歳、もう立派な大人なんだ……。
僕は食堂車の中で、老姉妹やアデレーンから乗車したご婦人との会話に興じるエルスペス嬢を見る。
薄化粧した横顔、洗練された仕草……初対面の相手にもにこやかに話を合わせられて、社交能力も高くて感心する。
父を失い、弟にも先立たれ、理不尽にも領地も財産も奪われて。なのに逆境にも折れず、しなやかに跳ね返していく勁さがある。
女性は勁い。
エルスペス嬢も、エルスペス嬢を守ってきた、レディ・アシュバートンも勁い。あの老姉妹もきっとしたたかだ。
そして……デイジーや、もしかしたらシャーロットも。
僕は腕時計を見て、時刻を計る。乗り換えステーションのリーデンでは九時間ほど停車するから、その間街に降り、有名な聖節市場を見て回りたいと、殿下が仰っていた。
おためごかしかもしれないけれど、シャーロットに何か土産でも買っていこうか。何を買ったらいいのか皆目見当もつかないけれど、それでも気は心というから。
僕は窓の外、進行方向に聳える青い山並みを見ながら、残りの旅程のことを考えた。
――それから、僕を含めた皆の未来についても。
お屋敷はアディントン侯爵の別邸の一つで、侯爵の末娘がヘンダーソン子爵に嫁いで、現在は幼い娘と滞在しているということだった。
僕は何も思わなかったが、ジェラルドはヘンダーソン子爵と聞いて、思い当たる節があったらしい。
ヘンダーソン夫人はまだ二十歳そこそこで、ほっそりとした控えめな、でも芯の強そうな女性だった。小さなご令嬢はエリザベス――母親はエルシーと呼んでいた。
驚いたことに、殿下はその幼いエルシーに盛んに話しかけて膝に抱き上げ、ご令嬢の方もすっかり懐いてしまった。
「かわいいね、エルシー。……今度、チョコレートを買ってくるから、遊びにきてもいい?」
「ほんと?! チョコレート? わたし、チョコレート大好き!」
すっかり打ち解けてそんな約束を交わす殿下とエルシーを、ヘンダーソン子爵夫人は不安そうに見ていた。
――娘を助けてくれたのが、独身の王子なのはともかく、ヘンダーソン子爵自身も人妻だ。妙な噂を呼ばなければいいが――
エルシー嬢に出会ってから、殿下はかなり頻繁に、チョコレートや砂糖菓子、リボン、レースのハンカチ、時には大きな縫いぐるみなどを抱えて、せっせとヘンダーソン夫人のもとに通った。それが、噂にならないはずがない。
噂に詳しいジェラルドによれば、ヘンダーソン夫妻の夫婦仲はとても悪く、夫の子爵は領地で愛人を引き入れて、居づらくなった夫人は王都の、実家の別邸の一つに滞在しているそうだ。夫人が領地を出てもう、数か月になるのに、いまだに夫は様子を見に来ることすらないという。
愛人に夫を奪われた女――そんな曰く付きの子爵夫人と、まだ十代の独身の王子。夫人の歓心を買うために、夫人の愛娘にプレゼントを貢ぐけなげな王子だなんて噂が回るのも、あっと言う間だった。
「……殿下、噂になっています。少しは控えた方が――」
僕の忠告も、殿下は馬耳東風だった。
「別にエルシーに会いに行っているだけだし。何も問題はないだろう」
実際、殿下は夫人にはほぼ目もくれず、ただただ小さなご令嬢と遊んで時間を過ごしている。
「幼児性愛なのかな……」
ジェラルドが思わず心配するほど――そして、子爵夫人は露骨に疑っていて、絶対に殿下と小さなエルシーを二人きりにしないように気を配っていた――殿下のエルシー嬢への執着は明らかだった。
結局、交流は数年続いたけれど、当たり前だが子爵夫人と殿下の仲は何もなく、戦争が始まるころにヘンダーソン子爵が夫人と娘を迎えに来て、領地に帰っていった。愛人の件は誤解だったのか、夫が改心したのかは、僕はよく知らない。
当時は、殿下は本気で幼女が好きなのかと、僕もジェラルドも心配していたけれど、戦後、エルスペス嬢を殿下が「エルシー」と呼んでいるのを耳にして、僕はハッとした。
ロベルトも言っていた。
――殿下はエルスペス嬢に以前に出会っていて、でもエルスペス嬢はそれを知らないか、忘れているか――
殿下がエルスペス嬢に会ったのが十年以上前だとすると、エルスペス嬢は七、八歳の幼女。エルシーという愛称といい、殿下のあり得ないレベルの執着度合いといい、僕の内部で、小さなパズルの欠片がつながっていく。
何かの理由があって、殿下は十年以上昔、アシュバートン中佐の領地、リンドホルム城でエルスペス嬢に出会い、幼い彼女に恋をした。
王都に戻ってからも、エルスペス嬢のことを忘れず、戦争中、アシュバートン中佐にエルスペス嬢の写真を見せてもらい、結婚の許しを得る。
目のまえでアシュバートン中佐を失い、長い初恋を叶えるために王都に戻ってきたのに、待っていたのはステファニー嬢で、さらにエルスペス嬢は爵位も領地も失っていた。
僕は、アシュバートン中佐の遺体の胸ポケットから、殿下が遺品を回収した様子を思い出す。――そうか、あの時、何か重要なものを殿下は手に入れているのかもしれない。例えば、相続を確約する国王の詔勅のようなものを。
殿下は、エルスペス嬢が奪われたものを取り戻し、彼女を妻に迎えるための、何か、重要な切り札を持っているのだ。
僕は常夜灯の灯る個室で汽車に揺られながら、不意にそんなことを思う。
規則正しい揺れに、僕はやがて、眠りに落ちていた。
翌朝、身支度を整えで殿下を迎えに行くと、殿下の用意はすでに出来上がっていたが、エルスペス嬢は眠そうに化粧の最中だった。ジュリアンがさりげなく僕の目の前に立ち、エルスペス嬢を僕の視線から遮る。
まもなくエルスペス嬢の支度もできて、「お待たせしてしまって……」と恐縮そうに挨拶される。白いブラウスにグレーの二ットカーディガン、チャコールグレーの毛織のふわりとしたスカート。グレーのベレー帽を斜めにかぶり、髪は綺麗に巻かれている。もともとはあまり化粧っ気のないタイプらしいが、殿下と生活を共にするようになってからは、ほんのりと薄化粧はしているようだ。
少し冷たい印象のする美貌。ブルーグレーの瞳は理知的で、声はしっとりと低い。
十九歳という年齢の割には大人びていて、そして清潔な雰囲気の女性だ。――こんな女性でも、ベッドの上では甘い声を出すんだな……。
一瞬、昨夜のことを思い出し、僕は軽く咳払いして妄想を追い払う。
「では食堂に。朝食の時間は過ぎていますから」
僕が先に立ち、殿下がエルスペス嬢をエスコートして通廊を渡る。
殿下の腕に縋るエルスペス嬢と殿下との間には、確かな信頼の絆があるように見えた。
旅の間、僕はエルスペス嬢の護衛として張り付いていて、言ってはなんだが手持ち無沙汰な時間が長い。そのせいか、妙にいろいろなことを考えてしまう。特に、今まであまり縁のなかった女性全般について。
ビルツホルン行を家族に知らせた時に、母からシャーロットのことを言われたせいだ。すっかり忘れていたが、僕は出征前、デイジーの従妹のシャーロットと婚約させられていた。両親は僕が出征することに反対だったから、婚約によって、僕の出征を思いとどまらせようとした。当時、愛国心に燃えていた僕は、出征しないなんて考えられなかった。僕はシャーロットに特別な感情はなく、婚約にためらいもあった。ただ、シャーロットは非常に若く、多少、結婚を待たせても大丈夫だと思い、婚約することで両親の気が済むならと了承した。
出征中は、アルバート殿下の所在を秘密にする関係で、僕らは家族に送る手紙にも制限があり、シャーロットとは季節のカードを儀礼的に交換する程度だった。
戦争が終わり帰国はしたものの、僕は故郷のリーデンシャーには二日しか帰省できていない。いろんな親族に挨拶するだけで精一杯、シャーロットとまともに会話する時間もなかった。それで、近づく聖誕節の休暇には、シャーロットの方が王都に出てくるという。
婚約者と言っても、シャーロットとどんな話をしていいか、想像もつかなかった。婚約したときはまだ十五歳で、ずっと俯いていたし――。
と、そこまで考えて、四年前に十五歳ってことは、今は十九歳でエルスペス嬢とも同い年だと気づく。
そうか、エルスぺス嬢は十九歳、もう立派な大人なんだ……。
僕は食堂車の中で、老姉妹やアデレーンから乗車したご婦人との会話に興じるエルスペス嬢を見る。
薄化粧した横顔、洗練された仕草……初対面の相手にもにこやかに話を合わせられて、社交能力も高くて感心する。
父を失い、弟にも先立たれ、理不尽にも領地も財産も奪われて。なのに逆境にも折れず、しなやかに跳ね返していく勁さがある。
女性は勁い。
エルスペス嬢も、エルスペス嬢を守ってきた、レディ・アシュバートンも勁い。あの老姉妹もきっとしたたかだ。
そして……デイジーや、もしかしたらシャーロットも。
僕は腕時計を見て、時刻を計る。乗り換えステーションのリーデンでは九時間ほど停車するから、その間街に降り、有名な聖節市場を見て回りたいと、殿下が仰っていた。
おためごかしかもしれないけれど、シャーロットに何か土産でも買っていこうか。何を買ったらいいのか皆目見当もつかないけれど、それでも気は心というから。
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実はロベルトも大好きです照。
感想ありがとうございます!
返信遅れて(>人<;)
ロベルトもあんなですがそこそこ有能設定です!
ステキな作品をありがとうございます!この作品に出合えたことに感謝です!
エルシー編は完結後に読み始めて一気に読み上げてしまいました。
気分はイギリス文学、情景描写や詳細な列車の旅の描写も素晴らしいです🎵
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感想ありがとうございます!
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リジーの駄犬ぶり、エルシーの迷推理、早くお届けできるようにがんばります(*´∀`*)
お返事早速ありがとうございます♪。飽きる事は絶対に無いです。自信を持って断言出来ます!笑。ただ描くのは作者様なので…負担になったり、計画と違うようでしたら読者の我儘になってしまうので…ご気分害されたらごめんなさい⤵︎。
とにかく私は大好きな作品なのでまだ続いてくれるだけでも幸せです。
リジーが、子供ぽかったりいきなりオラオライケメンになったり…とにかく最高です!
感想ありがとうございます!
私はもともとヒーロー視点で話を考えてしまうのですが、男性主人公の話はあまりウケないのですね笑。ウケるために書いているわけではないのですが、重複しすぎると蛇足感が出てしまうので…。
気分は害していないので、大丈夫ですよ(*´∀`*)リクエストありがとうございます(*゚∀゚*)
コレ以後のリジーの心情については時々番外編で補足する形にして、一旦完結にしたいと思います。
お読みいただきありがとうございました!