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第二部 ライバル登場?
危険な「荷物持ち」
しおりを挟む今日は匠真さんに連れられて某H大学の化学研究室にやってきていた。
H大学と言えば、細胞の研究が盛んであちこち大量のデータを管理している。こともあろうに、その一台がウィルスに感染して多大な被害を受けているらしい。
そのウィルス実態調査と、出来れば最新版のスキャンを入れて欲しいという申し出があったらしい。
しかし……どうして匠真さんにそういう依頼が来るのだろう。大学も関係ないからはっきり言うと部外者だ。
「どうした? 綾人」
「いえ、何でもありません。今日の依頼主はどちらですか?」
「化学研究室の教授なんだけど、あの人会議と学会で忙しいみたいで、パソコンの場所だけ言っていっちゃったんだよねえ」
勝手知ったる様子で匠真さんはカードキーを使って教授のプライベートルームへと侵入した。
カードキーって普通簡単に借りられないんじゃなかったっけ?
っていうか、ここって最先端の研究をしてる場所なのに、俺みたいな一般人が入って大丈夫なんだろうか。
おろおろしていると匠真さんが早く来いと急かしてきたので慌てて後ろをついていく。
白基調で固められている教授の部屋には5台のパソコンと、所狭しと並べられている研究資料とディスクが大量にならべられていた。
そこを掻き分けるように入っていき、問題のパソコンを開き、匠真さんがプログラムデータを並べていく。
「はー、この程度ね」
画面を流れる文字を見て、何が原因かわかったらしい匠真さんは自分のノートパソコンを開いて誰かと通信をしはじめた。
何かのデータを送るように指示しているらしい。次の瞬間、送られてきたデータがそのまま無線LANを通じて教授のパソコンにインストールされていった。
魔法のような手際に、感動してしまう。
匠真さんはただのプログラマーでは無さそうだ。多分、聞いてもトップシークレットレベルで教えてくれなさそうだけど。
匠真が真面目に仕事をしている姿を見るのは好きだった。俺の視線を感じたのか、匠真がちらりとこちらを見てにこりと微笑む。
そういう不意打ちの笑顔とか思わずどきりとするからやめてほしい!
「何、俺の仕事っぷりが格好いいって見惚れてたの?」
「あーそうですね、否定しません」
「素直じゃないなぁ綾人。格好いいと思ってたんだろ、俺のウィルスキラーソフト」
ソフトをインストールしている間はやることが無い。しかし完全にウィルスが消えたことを確認するまではここから出ることもできない。
手持ち無沙汰でウロウロしていると教授の研究している棚にぶつかってしまった。
「うわっ!?」
バラバラと大量の資料が頭上から落ちてきたが、その資料の間に大切そうにしまわれているDVDが入っていた。
「これって、研究のDVDですかね?」
「あー……これかあ。何、綾人みたいの?」
匠真がにやにやしながらそのDVDを手に取り笑っている。
教授と一体どういう関係なのかさっぱりわからないが、この分厚い資料の間に隠していたことも知っていたのだろうか。
「え? 匠真さん、中身知ってるんですか?」
「うん。見たいんだったら再生してあげるよ」
返事を聞く前にそのDVDを起動したばかりの別のPCに突っ込み、綾人の耳にヘッドフォンを当てる。
何が始まるのかさっぱりわからない。しかもPC画面には何も表示されず、ざぁーっという雑音しか聞こえなかった。
「匠真さん、これ……」
「はい、目隠しな?」
「なっ……ちょっと……」
黒いタオルを目に当てられ背後からそっと抱きしめられる。
俺の着ているスーツのネクタイを外し、襟元のボタンを3つ程外したところでヘッドフォンに手をかけてきた。
「俺にもちょっと半分聞かせてな、コレ」
「ちょ……匠真さ……んんっ」
ヘッドフォンの片耳側だけ外し、匠真は空いた方の耳をぺろりと舐めてきた。
視界が遮られているので何をされるかわからないし、生暖かい舌の感触に背筋が粟立つ。
数秒後にヘッドフォンから女の甘い声と、教師が何かささやいている声が聞こえてきた。
「これな、教授の大好きなAV女優のDVDなんだけど、やっぱ職場でこういうの聞いてたらまずいっしょ? だから画像なしで声だけ」
「はぁ…!? って……だからってどうして匠真さんがこんなもの…」
「ここが、好きなんだろう、お前は」
シャツの上から少し張りつめている乳首を撫でられる。耳にかかる吐息と甘い囁き声にゾクゾクした。
視界がないのと、ヘッドフォンの方から何度も甘い喘ぎ声が聞こえているからその所為で変な気分になる。
「もうパンツぐしょぐしょにして──やらしいなあ、綾人。こんなストイックにエロイスーツなんか着て」
「な、なっ……そんな」
「あちこち触って欲しいんだろ、ほら──足開いて」
あーそうか、この女喘ぎ声に便乗して教授の研究室でエッチするって魂胆か。そうはいくか。
背後から拘束してくる腕を引きはがそうと身じろぐが、びくともしない。それどころか俺が身じろいだことに若干腹を立てた匠真さんが本気でシャツの中に手を入れてきた。
「何、逃げようとしてんだよ……したいんだろ?」
「違う……こ、こんなとこで……」
「こっちの口は嫌がってないんですけど?」
「あ……あぁっ!! ちょ、ちょっと匠真さんっ」
視界が見えないからどういう状況なのかさっぱりわからない。でもスーツの中に侵入してきた手は間違いなく股間を触っている。
ゆるゆると形を確かめるように伝っていく指先の動きが脳内で再生される。
「匠真、さ……ん」
もじもじと足を閉じていたら足の間から入って来た手がスーツのズボンを下ろし、少しだけ先走りで濡れた先端をぎゅっと掴んできた。
必死に抑えていた反応を知られて躰が羞恥に熱くなる。
「ほーら、やっぱりしたかったんだろ綾人。涼しい顔してこんなエロい格好して……大丈夫だよ、教授は夕方まで帰ってこないし」
あちこちキスされまくって簡単に絆された躰は、防音の効いた教授の特別室で散々喘がされた。
耳から女の喘ぎ声、そしてそれに同調するかのように喘がされる俺。
もしかして、匠真さんはこのDVDの内容もタイミングも知っているのだろうか。
「た、匠真さんっ……もう……やめ──」
ソフトインストールとウィルススキャンが終わっても匠真は開放してくれず、結局こんな場所で2回も昇天させられてしまった。
匠真さんの「荷物持ち」は本当に危険すぎる。
今度は護身用の何か探してこようと本気で思う綾人であった。
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