家政夫は大変です

蒼龍葵

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第二部 ライバル登場?

堕天使と患者さんごっこ

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堕天使と患者さんごっこ


「綾人、今日は麻痺の患者さんになって?」
「はぃ? えぇっとよくわからないんですけど……」

 現在正看護師3年目の渉さんは大学病院で働く『白衣の天使』だ。
 顔もベビーフェイスで可愛くて、守ってあげたいと思えるような風貌なのだが、この久住家ではド淫乱の渉ちゃんと呼ばれている。
 見た目に相反する絶倫の性欲と、止まることを知らないあの可愛い唇で行われるフェラ……あ、いやいや。それはおいといて。

「で、どんな患者さんになればいいですか?」

 後輩が出来てから、病棟で看護学生を指導するということが稀にあるらしい。
 現在混合病棟に勤めている渉のところにはメイン病棟に入院出来なかった本科ではない患者さん

 今回渉の病棟に入院してきたのは脳梗塞で右半身麻痺の患者らしい。
 特別室と呼ばれる超高い個室は渉の病棟しか空いてなかったので入院したとか。かと言ってその患者はプライドが高くお偉いさんなので対応も面倒くさいらしい。

「うん、だから、綾人の右半身ちょっと縛らせて。それで、どういうことが不便で、どういう体勢だと楽だとか知りたいんだ」
「ええ……そういうことでしたら協力します」

 縛らせてというのが気になったが、事実元気なまま患者になれと言われても実感が沸かない。
 嬉しそうに右手右足を麻縄で縛ってくる渉の手つきが相変わらず看護師らしからぬ手際の良さで怖い。
 そういえば、精神科病棟の患者さんは暴れることが多いので、それを押さえる為に渉さんは拘束技術が巧みだった気がする。
 ま、まぁこれは仕事で必要なことだから、あまり変なこと考えるな俺……っ!

「──きつい? 綾人」
「いいえ、大丈夫ですよ。でもこれでお役に立てますかね」

 右手右足を縛られた状態の俺は変な感覚に陥っていた。
 しかも、シチュエーションが大事なのか、渉も仕事用の白衣を着て目の前に立っている。

「うん、色々勉強させて欲しいんだ。まずは服を脱いでみて?」
「はい」
「あっ! 綾人、脱ぐ時は動く方の手から脱がないとダメだから左手側から脱いで?」

 そう言われてもボタンの服であれば何とかなりそうだが、今着用しているニットでは拘束された右手が引っかかり上手くできなかった。

「難しいもんですね、不便です」
「そーだよねえ、じゃあボタン式の服にしてもらうっと……で、ズボンだったら出来そう?」

 途中まで脱いだニットは首の辺りで引っかかってしまっていたので、渉に途中から介助してもらって脱いだ。
 ズボンもと言われたので左手でジッパーを下げて腰を上げるとズボンを脱ぐことくらいは半分動けなくても何とかなった。

「そうですね、ジッパーは下げれますし、これくらいだったら左手で何とかなりますよ」
「うん。そうだね……じゃあズボンは大丈夫か」

 何だろう……患者さんの気持ちはこんな感じなのか。綺麗な看護師さんに一糸纏わぬ姿を見られるのは恥ずかしい。
 渉さんは白衣だから、完全に仕事モードでこの依頼をしているのに何で俺だけこんな──。

「綾人、どうしたの」
「い、いえ……あの、もう服着てもいいですか?」
「まだだーめ。今度はそのままお風呂行って。どこまで一人で洗えるのか知りたいんだ」
「えぇえ!? で、でも、洗うのなんて左手で何とか……」

 出来るんじゃないか……と言おうとした瞬間、渉がものすごく悲しそうな顔をしていたので思い切って最後の言葉を呑み込んだ。
 そうだよ、渉さんはこれからの未来を担う看護学生の実習指導者になる。
 学生を指導する為に身近に症例に近い存在がいると勉強になるだろう。そんなすごいことに、俺を実験台に使ってくれてるんだ。家政夫冥利に尽きる。

 下着を慣れない左手だけで下げる姿まで余すところなく見つめられ、恥ずかしくて死にそうだったけど、もう俺は完璧な患者の役になりきろうと腹を括った。

「ドアは開けられる、シャワーも左手で何なく出来る。力は弱いけど頭も左手で何とか洗える……ふんふん」

 やはり渉はいつもと違い真剣な表情で俺の一挙一動を見つめ何かにメモしていた。
 浴槽に入ろうとした瞬間、縛られた右足をどうやって入れようか悩んで躊躇する。

「どっちから入るのが正解なんでしょうか?」
「うん、右半身が麻痺だから、まず淵に座って左足で浴槽を跨いで……それで中に入れるかな」
「あ、できました」

 渉にそっと腰を支えられ、バスタブの淵に座らされて左足から浴槽に入ると問題なく入れた。
しかし、今はフリなだけなので浴槽に湯を張っているわけでもなく冷たいバスタブが肌をざわつかせる。
 どうせ裸になってたんだから、きちんとシャワーでタイルやバスタブを温めるべきだったと今更ながら後悔した。

「あ、渉さん……そろそろ、服着てもいいですか…?」

 寒いしそろそろ患者さん役をやめたいと哀願すると、目の前にいる白衣の天使が頬を赤らめて少し興奮していた。

「ごめんね、綾人……そのまま、左手だけでオナニーしてるの見せて」
「絶対嫌ですっ!! それは患者さんのすることじゃないでしょっ!!」

 はあ……こういう時に限って匠真さんが外出してていないんだよ。匠真さんが居ないと渉さんを止められない。
 しかも縄で右半身を縛られているせいで、華奢な渉さんを突き放すことも出来ない。

「だってえ……綾人可愛すぎるんだもん。後、食事介助と、パジャマ交換と、綾人の大事なトコ洗わせてね」

 ね? と天使のような笑顔で言われると流石にノーとは言えない。
 白衣を着た堕天使に俺はそのまま泣く泣く手コキを披露することになり、挙句中途半端にイけなかった残骸を堕天使に吸い尽くされてしまった。

 こんな……こんな淫乱な看護師さんは嫌だ。
 渉さんに教わる看護学生が、全員女性であることを心から願いたい……。
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