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千秋 琉星
四人目
しおりを挟む氷崎先輩と別れた後、私は陽向にLINEで『今、どこにいる?』と送信した。
時間は12時41分だ。昼休みが始まってから約20分、五時間目が始まる13時15分まで30分以上の余裕がある。氷崎先輩の報告もしたいし、もう一度集合するべきだろう。
『陽向くんに私の気持ちを伝えるかどうかはあなたが決めていいわ』
氷崎先輩は最後にとても大切な役目を私に与えていた。
氷崎先輩からはもう自分の気持ちを陽向に伝えるつもりがないのだろう。
私がこのまま黙っていても誰にも文句は言われない。でもそんなの、なんだか卑怯だ。
陽向に会ったら、氷崎先輩から聞いたことを包み隠さず全て話そうと私は決めた。
普段だったら腹ぺこのはずなのに、今は何故か食べる気がしない。
校舎の裏側から表側にぐるっと歩いて来たら、途中から強い日差しに肌を焼かれ始めた。太陽がほとんど真上に来ていて逃げ場所もない。
……覚悟をしなきゃ。
本当の地獄はこれからだ。
容疑者は、残り二人。
やがてメールの通知音がして、陽向からの返事が来た。
『四人目と連絡取れた。体育館倉庫で待ち合わせてるから昴も来て』
四人目は確か、陽向に手作りマフィンをくれた友達だったっけ。
陽向が事件前に食べ物や飲み物を口にしたのはそれが最後だ。
考えてみれば、一番怪しいと言える。
マフィンだったら薬を生地の中に練り込んでしまえるから、見た目には絶対分からない。前日からそれを仕込んでいたのだとすれば、これは計画的犯行ということになる。
そんなマフィンを陽向にプレゼントしたのはいったいどんな人なんだろう。
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