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第一部 嫉妬と情愛の狭間

第16話 湯殿 其の四★

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「……っ、ゃぁ……っ!」


 香彩かさいは痛みと、それ以上に襲って来る快感に、思わず竜紅人りゅこうとの腕に縋り付いた。
 尾の先端からとろりとしたものが、流れて行くのが分かる。それは神気を伴う媚薬のようなものだ。
 挿入されていく痛みは徐々に消えて、あとに残されたのはまるで酩酊するような、深い深い悦楽だった。

 啜り泣くような艶声を宥めるように、竜紅人りゅこうとは少し屈んで香彩かさいの耳に、触れるだけの接吻くちづけを何度も落とす。


「そういえばまだ洗ってなかったな。『尾を跨いで四つん這いになって、腰を高く上げて』かさい」
「──っ!」 


 耳元で囁かれる竜のこえとその内容に、いたたまれなくて恥ずかしくてかぶりを振った。
 何度かそういう体勢をとったことはある。だがそれは四つん這いまでだ。快楽に身を任せ極まって、気付けば腰を高く上げていたこともあったが、何もない状態で自分から腰を突き出すような体勢など、香彩かさいはとったことがなかった。
 だが羞恥の心とは裏腹に身体は、竜紅人りゅこうとの望む体勢へと、動いていく。


「……っ!」


 恥ずかしさで息を詰めながら、香彩かさいは尾を跨いで四つん這いになり、腰を高く上げた。
 熟れた白桃のような臀部が、竜紅人りゅこうとの目の前に晒される。
 ちゃぽん、と湯船の方から水音がした。
 何かと思って見てみると、竜紅人りゅこうとが片手で湯を掬っているところだった。


「あ……」


 温かい湯が尾ていの辺りから、後蕾にかけて落とされる。幾度かそれを繰り返しながら、竜紅人りゅこうとの形の良い指が胎内なかを引っ掻くようにして、熱を掻き出す。


「ん……」


 あらかた出切ったのか、竜紅人りゅこうとの指が抜かれて、香彩かさいはほっとしながら大きく息をついた。
 そんな少し力の抜けた香彩かさいたしなめるようにして、竜紅人りゅこうとは白くてまあるい香彩かさいの綺麗な臀部を、軽く手で打った。


「ひゃ……、ぁん」
「ここを打ったのは何年振りだろうなぁ……昔お前がいたずらした時以来か? まぁあの頃は人の手じゃなくて、幼竜の前肢だったけどなぁ……!」
「あ……!」


 もう一度軽く叩かれて、香彩かさいは艶声を上げながらも、望まれた体勢を保つ為に力を入れる。
 だが。


「……ぁっ待っ、……あ、ぁっ……んっ」


 温かくて、ぬめりとしたものを後蕾に感じて、かくんと力が抜けた。
 それが竜紅人りゅこうとの舌だと分かって、香彩かさいはいやいやと弱々しく叫びながら、頭を振った。だが身体は快楽に従順で、無意識の内に先程よりも腰を高くして、舌を求めている。
 

 舌は蕾の襞のひとつひとつを、確かめるようにして丁寧に舐め回した後、硬くした舌先が蕾の真ん中を突く。何度かそうされると蕾はひくついて、はくはくと動き出す。
 そんな卑猥な孔に舌を潜り込ませて、美味しそうに吸い上げられると、羞恥に苛まれそうだった。
 初めてではないのに、恥ずかしくて仕方がない。幾度かそうされたことがあるというのに、逃げ出したくなる。
 だが腰をしっかりと掴まれている為か、それも叶わない。挿入はいってくる舌の熱さに喘ぎ、とろっと中に落とされる唾液のぬめりに、香彩かさいは敷物を掻きむしる。


「……んんっ、…ぁっ、もう……おねが……」
「……お願い?」


 
 もう、どうにかしてほしい。
 腹の奥で出口を求めて彷徨い、ぐうるりと回るこの熱を。
 どうか。


「も……おね、がい……っ……れて」


 どうか。


「りゅ……の、おっき……いの……れてほし……!」


 吐き出させて欲しい。


 言うや否や、背中に竜紅人りゅこうとの重みがのしかかってくる。広い胸に押し潰されそうになって、その重さと熱さに眩暈がした。
 香彩かさいの胸が敷物に付いたと思いきや、ゆっくりと横向きにされて、反動で竜の尾がふるりと揺れる。
 鈴口より中の道に入り込んでいる、尾の先端の気持ち良さに、思わず声が上がった。
 気付けば組み敷かれて、足を大きく広げられて、熱いものが秘所に宛がわれる。
 蕾は何の抵抗もなく口を開いて、彼の雄を呑み込んだ。


「あ……、あ……っ」


 挿入はいってくる。
 そう思うだけで、堪らなくて香彩かさいは全身を震わせて、その悦びを受け入れる。
 待ち望んでいた熱い先端が、完全になかに収まると竜紅人りゅこうとは一度動きを止めた。
 大丈夫かと聞く竜紅人りゅこうとに、香彩かさいは無言でこくりと頷くと、竜紅人りゅこうとは再び腰を進めた。

 ゆっくり、ゆっくりと。

 やがて一番奥、結腸の蕾に当たったところで竜紅人りゅこうとは大きく息を吐いた。
 すがるように掴んでいた竜紅人りゅこうとの腕から手を離せば、彼がそれを手に取り、そっと口付ける。

 伽羅色の瞳と視線が合う。奥に情欲の焔を宿した目に捕らえられたまま、接吻くちづけを交わす。やがて深くなるそれに、繋がった場所から、甘くじんわりとした痺れが広がって、内側から溢れそうなくらい幸せな気分になる。
 きゅうと中が竜紅人りゅこうとを締め付けるのがわかった。
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