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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議
まおう抱悶、降臨 上
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「んな、ちょっと、ちょっとだけ立ってみよかー」
瑠璃ィキャナリーはウェカ王子に煽られるまま、おずおずと立ち上がった。
「まあっなんてお美しい王女ですの!?」
「うむ、少し熟女ではあるがなかなかの美人ではあるな」
王族やご婦人方がいい加減に褒めちぎった。
「熟女ちゃうで、二十九やで」
瑠璃ィがなかなかの好感度なのを見て、貴城乃シューネは勢いに乗って続けた。
「彼女は決して美しい王女なだけではありません! こう見えて超一流の戦士であり魔ローダー操縦者であります。そしてあのメドース・リガリァ軍が新ニナルティナ港湾都市に攻め込んで来た時に、ラ・マッロカンプ王国ウェカ王子と共に敵魔ローダーを撃退した者こそ、何を隠そう瑠璃ィキャナリー王女なのです!」
さっき得た知識だっ。
「まあっなんて事ですの、あの噂の救世主が瑠璃ィ王女だったなんて!?」
「一刀のもとに敵機体を両断したとか……」
「これは立候補する権利がありますな」
シューネの言葉に王族たちが口々に賞賛したが、それを聞いていて猫呼は一気に暗く落ち込んだ。忘れようとしていた兄、猫名の悪行を思い出したからだ。しかし今その彼はまおう軍で仕出しの配送をしていた……
「いやあ~~恥ずかしいわぁ、あれは偶然なんやで~~」
瑠璃ィはまんざらでも無いという感じで頭を掻いた。
「瑠璃ィさん凄いじゃないですかっ!」
「ははっこの瑠璃ィはボクの家来だからなっ」
どこまでも朗らかなウェカ王子だった。
一方会場の地下。紅蓮アルフォードと美柑は雪乃フルエレを探し廻り、いつもの如く道に迷いまくっていた。
「絶対こっちじゃない!」
「こんな地下に雪乃フルエレが居る訳無いじゃない!」
掃除係姿の二人はひたすら地下道を迷って歩いた。
「待てっ! ナニヤツ!!」
「動くなっ」
「ひっ」
突然警備兵らしき集団に出くわし呼び止められる。
「すすす、すいません! 私達新人のお掃除係でして」
「ほほほ、本当です!! この地下道の出入り口を掃除してまして」
二人は本当にびっくりして慌てまくって答えた。
「この慌てよう、工作員等では無いだろう」
「ただのガキだな。何も見ていないな?」
警備兵は剣の柄に手を掛けて聞いた。紅蓮は警戒されぬ様その仕草を注意深く見た。
「へ、へい! 何も見ておりません」
「見て無い見て無い全く見てません!!」
二人は手と首を振りまくった。
「ふん、仕方が無いな、行け!!」
「へ、へい、ありがとうございやす」
二人は実力者とも思えぬ程卑屈に頭を下げて歩き出した。
「……と見せかけて後ろからズバァッッ!! ってあり?」
斬り掛かった警備兵が剣を振り下ろした先にはもう二人の姿は無かった。紅蓮は猛スピードで駆け、美柑は魔法で空を飛んで逃げた。
「びっくりしたね、何なんだろうね?」
「本当だね」
(奴らの持ってる剣が神聖連邦の制式剣だった……まさかシューネの手の者か? 何をするつもりなんだ?? 余計な事をするなよもう)
紅蓮は見た事を美柑に打ち明ける事無く、歩き出した。
―戻って地上。
瑠璃ィ人気フィーバーを打ち消す様に、セレネが叫んだ。
「そこまでだっ! だがしかし残念だがシューネとやら貴様の緊急動議は有意義かもしれんが、叶えられる事は無い」
「何故?」
シューネは冷静に聞き返した。
「ふっお主話をちゃんと聞いておらんのか? 今回の投票は魔法マークシート方式。最初から決められた枠内の候補者しか投票用紙が用意されていない。意義があるかどうか以前にシステム上叶わないのだ。不用意で申し訳ないな。はっはっはっ」
セレネは投票システムの仕様を盾にして勝ち誇ったが、実際その通りだった。
「心・配・御・無・用!!」
貴城乃シューネも何故か勝ち誇った様に腕を振って叫んだ。
「はあ? どうすると言うのだ??」
「こんな事もあろうかと、そちら側の候補者にさらに姫乃ソラーレ殿下と瑠璃ィキャナリー王女を足した新たなる魔法マークシート方式投票用紙を百枚プラス予備ご用意致しましたっ!! しかも貴方達が使用する魔法投票集計装置〇ザジにて実証試験済み!! これで何かご不満がありますかな?」
シューネは勝ち誇って言い切った。
「どうじゃろう、セレネ王女よ今回はこの男の顔を立ててみてくれんかのう? はっはっは」
シューネに続いてリュフミュラン王までセレネに圧力を掛けた。
(くっ……フルエレさんがこの男に魔呂で手刀を打ち込んだ気持ちが良く分かる!! 早めに消しておくべき男だった!!)
「セレネ、良いじゃない? 貴方の票読みではそれでも私が勝ってしまうのでしょう? あっ勝ちたいって意味じゃないのよ? もう慌てる必要無いじゃない」
怒りで二人を下から睨むセレネにフルエレが声を掛けた。
『セレネさん、私もそれで良いかと。フルエレに従いましょう』
「ふぅ、二人が言うならそれで良いでしょう。それにフルエレさんが言う通りアイツに勝ち目なんて無い。冷静になりました」
セレネは少し深呼吸してから真っすぐ前を向いた。
「くくっやりましたよ」
シューネは不敵に笑った。当然彼にも突然やって来て姫乃ソラーレに勝ち目があるとは到底思っていなかった。しかし当初リュフミュラン王に贈呈するつもりであった金銀財宝の内、余った物を出来る限りグラつきそうな者達に配っていて、ある程度投票を引っ掻き回す自信はあった。これで東の地の神聖連邦の存在感を示せれば良かったのだ。
バシーーーン!! バシーーーーン!! バリバリバリッッ!!
が、そんなやり取りの最中だった。突然会場のザ・イ・オサ新城を包む魔法の結界に強大な力が外から加わり、大きな振動が起こり巨大な音が鳴り響いた。
「きゃあっどうしたの、セレネ大丈夫なの?」
「フルエレさんあたしにも、何だこれは!?」
『セレネさんシューネの策謀かも?』
スナコの問にセレネがシューネを見ると、彼も驚いた顔で空を見上げていた。とっさの動きを見て、彼の起こした事では無いと判断した。
バシイイッッ!!
最後に巨大な音が鳴って、天井辺りの結界に大穴が開くと翼を持つ魔ローダーらしき影が去って行った。
「ちょっと待つのじゃーーーーーーーー!!!」
と、同時に天井の穴から舞い降りる影が。
「くるくるくるしゅたっ!! まおう抱悶参上じゃっ!! ワシを除け者にしてこんな重要な会議を開くなっ砂緒のバカッ!!」
セレネの立つ舞台上にふわりとミニスカをなびかせ、突然可愛いクマ耳を付けた真っ赤なほっぺの美少女まおう抱悶が降り立って、会場内はシーンと静まり返った。
瑠璃ィキャナリーはウェカ王子に煽られるまま、おずおずと立ち上がった。
「まあっなんてお美しい王女ですの!?」
「うむ、少し熟女ではあるがなかなかの美人ではあるな」
王族やご婦人方がいい加減に褒めちぎった。
「熟女ちゃうで、二十九やで」
瑠璃ィがなかなかの好感度なのを見て、貴城乃シューネは勢いに乗って続けた。
「彼女は決して美しい王女なだけではありません! こう見えて超一流の戦士であり魔ローダー操縦者であります。そしてあのメドース・リガリァ軍が新ニナルティナ港湾都市に攻め込んで来た時に、ラ・マッロカンプ王国ウェカ王子と共に敵魔ローダーを撃退した者こそ、何を隠そう瑠璃ィキャナリー王女なのです!」
さっき得た知識だっ。
「まあっなんて事ですの、あの噂の救世主が瑠璃ィ王女だったなんて!?」
「一刀のもとに敵機体を両断したとか……」
「これは立候補する権利がありますな」
シューネの言葉に王族たちが口々に賞賛したが、それを聞いていて猫呼は一気に暗く落ち込んだ。忘れようとしていた兄、猫名の悪行を思い出したからだ。しかし今その彼はまおう軍で仕出しの配送をしていた……
「いやあ~~恥ずかしいわぁ、あれは偶然なんやで~~」
瑠璃ィはまんざらでも無いという感じで頭を掻いた。
「瑠璃ィさん凄いじゃないですかっ!」
「ははっこの瑠璃ィはボクの家来だからなっ」
どこまでも朗らかなウェカ王子だった。
一方会場の地下。紅蓮アルフォードと美柑は雪乃フルエレを探し廻り、いつもの如く道に迷いまくっていた。
「絶対こっちじゃない!」
「こんな地下に雪乃フルエレが居る訳無いじゃない!」
掃除係姿の二人はひたすら地下道を迷って歩いた。
「待てっ! ナニヤツ!!」
「動くなっ」
「ひっ」
突然警備兵らしき集団に出くわし呼び止められる。
「すすす、すいません! 私達新人のお掃除係でして」
「ほほほ、本当です!! この地下道の出入り口を掃除してまして」
二人は本当にびっくりして慌てまくって答えた。
「この慌てよう、工作員等では無いだろう」
「ただのガキだな。何も見ていないな?」
警備兵は剣の柄に手を掛けて聞いた。紅蓮は警戒されぬ様その仕草を注意深く見た。
「へ、へい! 何も見ておりません」
「見て無い見て無い全く見てません!!」
二人は手と首を振りまくった。
「ふん、仕方が無いな、行け!!」
「へ、へい、ありがとうございやす」
二人は実力者とも思えぬ程卑屈に頭を下げて歩き出した。
「……と見せかけて後ろからズバァッッ!! ってあり?」
斬り掛かった警備兵が剣を振り下ろした先にはもう二人の姿は無かった。紅蓮は猛スピードで駆け、美柑は魔法で空を飛んで逃げた。
「びっくりしたね、何なんだろうね?」
「本当だね」
(奴らの持ってる剣が神聖連邦の制式剣だった……まさかシューネの手の者か? 何をするつもりなんだ?? 余計な事をするなよもう)
紅蓮は見た事を美柑に打ち明ける事無く、歩き出した。
―戻って地上。
瑠璃ィ人気フィーバーを打ち消す様に、セレネが叫んだ。
「そこまでだっ! だがしかし残念だがシューネとやら貴様の緊急動議は有意義かもしれんが、叶えられる事は無い」
「何故?」
シューネは冷静に聞き返した。
「ふっお主話をちゃんと聞いておらんのか? 今回の投票は魔法マークシート方式。最初から決められた枠内の候補者しか投票用紙が用意されていない。意義があるかどうか以前にシステム上叶わないのだ。不用意で申し訳ないな。はっはっはっ」
セレネは投票システムの仕様を盾にして勝ち誇ったが、実際その通りだった。
「心・配・御・無・用!!」
貴城乃シューネも何故か勝ち誇った様に腕を振って叫んだ。
「はあ? どうすると言うのだ??」
「こんな事もあろうかと、そちら側の候補者にさらに姫乃ソラーレ殿下と瑠璃ィキャナリー王女を足した新たなる魔法マークシート方式投票用紙を百枚プラス予備ご用意致しましたっ!! しかも貴方達が使用する魔法投票集計装置〇ザジにて実証試験済み!! これで何かご不満がありますかな?」
シューネは勝ち誇って言い切った。
「どうじゃろう、セレネ王女よ今回はこの男の顔を立ててみてくれんかのう? はっはっは」
シューネに続いてリュフミュラン王までセレネに圧力を掛けた。
(くっ……フルエレさんがこの男に魔呂で手刀を打ち込んだ気持ちが良く分かる!! 早めに消しておくべき男だった!!)
「セレネ、良いじゃない? 貴方の票読みではそれでも私が勝ってしまうのでしょう? あっ勝ちたいって意味じゃないのよ? もう慌てる必要無いじゃない」
怒りで二人を下から睨むセレネにフルエレが声を掛けた。
『セレネさん、私もそれで良いかと。フルエレに従いましょう』
「ふぅ、二人が言うならそれで良いでしょう。それにフルエレさんが言う通りアイツに勝ち目なんて無い。冷静になりました」
セレネは少し深呼吸してから真っすぐ前を向いた。
「くくっやりましたよ」
シューネは不敵に笑った。当然彼にも突然やって来て姫乃ソラーレに勝ち目があるとは到底思っていなかった。しかし当初リュフミュラン王に贈呈するつもりであった金銀財宝の内、余った物を出来る限りグラつきそうな者達に配っていて、ある程度投票を引っ掻き回す自信はあった。これで東の地の神聖連邦の存在感を示せれば良かったのだ。
バシーーーン!! バシーーーーン!! バリバリバリッッ!!
が、そんなやり取りの最中だった。突然会場のザ・イ・オサ新城を包む魔法の結界に強大な力が外から加わり、大きな振動が起こり巨大な音が鳴り響いた。
「きゃあっどうしたの、セレネ大丈夫なの?」
「フルエレさんあたしにも、何だこれは!?」
『セレネさんシューネの策謀かも?』
スナコの問にセレネがシューネを見ると、彼も驚いた顔で空を見上げていた。とっさの動きを見て、彼の起こした事では無いと判断した。
バシイイッッ!!
最後に巨大な音が鳴って、天井辺りの結界に大穴が開くと翼を持つ魔ローダーらしき影が去って行った。
「ちょっと待つのじゃーーーーーーーー!!!」
と、同時に天井の穴から舞い降りる影が。
「くるくるくるしゅたっ!! まおう抱悶参上じゃっ!! ワシを除け者にしてこんな重要な会議を開くなっ砂緒のバカッ!!」
セレネの立つ舞台上にふわりとミニスカをなびかせ、突然可愛いクマ耳を付けた真っ赤なほっぺの美少女まおう抱悶が降り立って、会場内はシーンと静まり返った。
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