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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

まおう抱悶、降臨 中 抱悶ちゃんからの提案

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「賊だっ! 女王陛下を守れっ!」
「魔導士撃て撃て!! 侵入者を撃て!!」
「騎士は女王陛下とセレネさまを囲め!!」

 一瞬の沈黙の後に見守る会場は騒然となった。しかし騒然と言っても、それぞれが家臣や武人に守られた一団の為に、現代の一般人の様に我先に逃げ出すというパニック状態にはならなかった。それぞれが警戒して壇上の状態を見守った。壇上では警備兵達がわらわらと飛び出して来てフルエレ女王とセレネを囲んで守っていた。
 バシッ!!
 早速魔法の一撃が抱悶にヒットするが、余りにも格に違いがあり過ぎて弾かれて煙の様に消えてしまう。

「何じゃ何じゃ騒がしいのぅ」

 魔法がヒットしても怒る風でも無く、抱悶だもんは腕を組んで呆れた。彼女も馬鹿では無いので、突然の侵入者に驚く皆が落ち着くを待っているのだった。

「違う! この子は敵じゃない!! 撃つな!!」

 スナコがいち早く飛び出し、ホワイトボードを忘れて地声で叫びながら抱悶を抱き締めてガードした。

「砂緒さま何故!?」

 雪乃フルエレの弟という事になっている砂緒の行動に警備隊長達が戸惑う。

「そうだ違う! 抱悶ちゃんは敵では無い!! 撃つな撃つな!! 賓客だぞ」

 一瞬唖然としていたセレネも砂緒の行動を見て、一時期一緒に旅をした抱悶ちゃんは敵では無い事を思い出して両手を振って攻撃を制止した。

「皆落ち着いて! セレネと砂緒の命令に従いなさい!! 下がりなさい」

 二人の声に冷静さを取り戻したフルエレは、慌てる事無く席に座り直した。

「抱悶ちゃん!? 来るなら来るで普通の入り方出来ませんか?」
「お主ナニモンじゃ? 姿は女の子なのに声が砂緒で気持ち悪いんじゃ! はようセレネも来い」

 戸惑う抱悶はセレネを呼んだ。

「大変お騒がせしました! この方は南のまおう軍の抱悶ちゃんです。我らが招待していた賓客です。皆さまお座り下さい」

 セレネは魔法マイクで謝罪したのち、砂緒のもとに走った。

「何だとまおうだと!?」
「連中は常に南から村々を攻めて来ておるのじゃないのか!?」

 人々が口々に騒いだ。

「何っ!? まおう軍のまおうだと!? 若君が聖帝陛下から調略を任されている当の抱悶が此処に?? うおーー若君は何してるの~~ちょっとちょっと!!」
「落ち着きたまえシューネ」

 慌てまくる貴城乃たかぎのシューネを猫弐矢ねこにゃは白い目で見ながら落ち着かせた。その当の若君はまだ地下で迷っていた……

「抱悶ちゃん、君は本当にまおう軍の首領だったのか? 半信半疑だったのだすまぬ。それと目の前の子は確かに砂緒だ! 今彼はスナコちゃんに化けているのだ」

 セレネは落ち着いた声で事態を鎮静化しようと必死に答えた。本当にこの子がまおう軍の首領かどうか半信半疑だったセレネも、一瞬翼を持つ魔ローダーらしき物が飛んで来たのを見て、彼女が並々ならぬ存在だと確信したのだった。

『そうよ、今はスナコちゃんよ』
「はぁ~スナコちゃんじゃと?? くんかくんか」

 抱悶ちゃんは目を閉じてスナコの上半身を中心に匂いを嗅いだ。

「うげっ本当に砂緒ではないかっ! 久しぶりに会いに来たら女の子になっとるという、なんというややこしい話じゃ!」
『ごめんなさい、これには深い深い個人的に深~い変態的な性癖があって」
「……言うたな今、只の趣味だったんかい?」

 どさくさ紛れに聞いた真意にセレネは呆れた。

「なんでも良いわい! 今日は同盟の新女王とやらが成立する其方らに、祝いの手土産を持って来てやったのじゃ、喜べ!!」

 突然やって来た、まおう軍の抱悶の思わぬ言葉に二人共驚いた。なにしろまおう軍は辺境の村々を襲うやっかいな連中という先入観があったからだ。セレネ等は南の安定を得る為に、新女王が雪乃フルエレに決まった後は彼女を何とか言いくるめて、南のまおう軍の地に先制して攻め入るつもりのくらいであった。

『でも抱悶ちゃん何も持ってないじゃない?』
「普通にしゃべれんのかややこしいのう?」
『新女王選挙に立候補しちゃったからしばらくこのままよ?』
「ややこしいのう」
「いいから抱悶ちゃん、こっちも急いでいる話を進めたい。一体本当に何用で来たのだ?」

 セレネが落ち着き始めた会場を横目にみつつ、少しイラつきながら聞いた。

「セレネよ、少し見ぬ間に偉そうになったのじゃ? まあ落ち着け。北部列国と中部小国群が新たな同盟を組んだ今、其方らが一番懸念するのは南のまおう軍との国境線の安全と安定であろう」

 え、私偉そう? 等と疑問に思いつつ、セレネは抱悶の話を聞いた。

「まさにその通りだ。正直に言えば最近ずっとその事を考えていた」
『抱悶ちゃんって、お菓子美味し~~キャハハハとか言ってるバカの子だと思ってた!!』
「ふざけるな! ぶちのめすのじゃ!」
「抱悶ちゃん、わたし雪乃フルエレよ、よろしくね。砂緒の言う事にいちいち反応しないで、お話して」

 フルエレが立ち上がって抱悶に頭を下げた。

「おう、お主がフルエレか。お主にも関わりのある事じゃ」
「で、抱悶ちゃんからの手土産とは??」

 セレネがやきもきして聞いた。

「うむ、担当直入に言うのじゃ! 手土産とは北部中部新同盟と南部まおう軍領との大同盟の提案じゃ!!」
「ナン・じゃとてーーーーー!?」
『北部・中部・南部大同盟??』
「やだっそれってもうセブンリーフ統一じゃないの?」

 最後に雪乃フルエレが思わず発した言葉が正鵠を得ていた。北部海峡列国と七葉後川流域中部小国群、それに謎に包まれているが実は人口が多いまおう軍の炎の国地域を除けば、盲目の女王とメドース・リガリァ遺臣達が逃亡したアリリァ湾西の入江地帯や中部東のセントイースト半島近辺のププッピ温泉地帯やコ・ウサ・コ神殿跡地域それに南東部の神聖連邦帝国の発祥地、最南部の二本の角地帯等、人口の過疎地や未開地ばかりで、先の三地域こそがセブンリーフの主要地と言えた。

「……だがしかし、抱悶ちゃんには聞きたい事がある」

 セレネは眉間にシワを寄せて抱悶を見た。

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