魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

文字の大きさ
504 / 698
Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

カガチ⑧ ヌ様起動! Ⅲ 行くよっ

しおりを挟む
「……」

 フゥーは涙で一杯の目のまま背後の山々に振り返った。

「フゥーくんおいで」
「あっ」

 猫弐矢ねこにゃはそっとフゥーの肩を抱き寄せて同じ様に背後の山を見た。大切なパートナー加耶カヤクリソベリルが行方不明になった直後である、もちろんよこしまな気持ちからでは無くて、単純に励ましたい気持ちと背後の山から感じる微妙な揺れからフゥーを守る為だ。しかし以前に砂緒とセレネと一緒に感じた時と同じ様に、今回の揺れもすぐに収まるだろうと思っていた。
 がっがっがっがっ

「わーーー?」
「え?」

 しかし猫弐矢達がいる周辺のみで起こっている揺れなのだが、少し大きくなった。
 ガラガラガラガラ……
さらに猫弐矢達が見ている目の前で山肌が崩れ出した。

「もしかしてヌ様が復活される? フゥーくんの涙がヌ様を呼び起こしたのかもしれない」
「山が崩れるの!?」
「伝説通りの大きさなら、山からボコッと全高十Nキロのヌ様が出て来られるはずだっ!!」
「う、嬉しいですが、ちょっとした大災害では!?」

 先程の慟哭から一転、唇の端っこがひきつりながらも少し笑顔になったフゥーは、もはや猫弐矢に抱かれたまま推移を見守った。
 がががっががっがっがららがらら……
 局地的な揺れが一段と大きくなった。

「遂に出るぞ……」

 ボコッ
 最後の揺れの後、目の前のとても低い位置の山肌が割れ、中から透明な球体が出て来た……

「え?」
「あれ……球体?? だけ」

 二人はふわりと飛んで来て目の前に着地した球体を近くで覗き込んだ。

「あの猫弐矢さま、球体の中心に魔ローダーの操縦席らしき物とコンソールと操縦桿がありますが」
「確かにあるね。それに操縦席を取り囲む様に数本の線がぐるっとある、鳥かごみたいな変な形状だな」

 もちろん猫弐矢達は見た事が無いが、天球儀の様な感じで操縦席の周囲を数本の金属の帯が囲っていた。

「透明だけど不思議な素材……」

 フゥーが思わず球体に触った瞬間だった。
 シュンッ
二人は一瞬で球体の中に取り込まれてしまった。

「うわっ!? 吸い込まれたけど……」
「座ってみます」

 フゥーは猫弐矢の手を離すと、導かれる様に操縦席に座った。
 ピピピ……
 シューーーーン ヒューーーン
すぐに魔法コンソールが反応し、あちこちからPCの駆動音の様な物が聞こえ始めた。

「飛んだっ! うわーー飛んだっ」

 後ろで立っている猫弐矢がよろめきながら叫んだ様に、二人を乗せた球体は再びフワリと浮くと、そのまま海に向かって飛び出した。

「この球体がヌ様と何か関係が? あっ海水に浸かります!!」

 ボチャッという音と共に、丁度アクティビティのウォーターバルーンが如く二人を乗せた球体は海水面に達した。
 ゴーーーーーーッ
 今度は球体の周囲の海面から何本もの水柱が立ち、球体に迫って来る。

「何だこれは!? どういう事なんだ??」
「……分かりました。何故だか分かりませんが分かりました。これがヌ様です……」

 猫弐矢が前に回りこんでフゥーの顔を見ると、再び泣いていた。自分の能力が嘘じゃないと分かったからか、それとも単にホッとしたからか恐怖からか良く分からない涙だった。

「ヌ様? 何処が??」
「見て……下さい」

 何本もの水柱が次々に二人が乗る球体に接近すると、ぐいんとバネの玩具、ス〇ンキーの様に球体に向けて曲がりくっついて行く。そしてくっつくと同時に単なる水流だった物が骨格や筋肉ぽい形状に変化して行った。

「まさか……これがヌ様の身体に?」
「はい、ヌ様は山から現れるのじゃなくて、水の中から生まれるそうです」
「水の中から生まれる?」

 二人が言っている間にも単なる海水の流れが次々に巨大な魔ローダー・ヌの身体を形成して行く……
 
 そして数十分が経った……
 
「見てごらん、ヌ様が現れたよ……というか僕達からは見えないけど」
「そうですね、透明の球体もすっかり魔ローダーの操縦室という風情になりました。けど魔法モニターは天井から床にまで貼ってあって視界が広い」

 二人はほぼ360度スクリーンの魔法モニターの画面をまじまじと見た。巨大な手足と遥か下の地上の景色が見える……ハズだが。

「なんかーーあれだね、十Nキロって感じでも無いねタハハ」

 猫弐矢はフゥーを傷付け無い様に感じていた事を遂にぼそっと言った。

「うっ実は私も感じてました。三百Nメートルくらい?? 私飛んだ事ないから分かりませんけど」
「確かに! アッハハハ」
「うふふ」

 猫弐矢自身はコンテナに運ばれて飛んだ事があるが、二人は笑い合った。

「でも、敵も丁度三百Nメートル、ならこれで充分だっ! フゥーくん君は本物のヌ様のドルイダスだっ! 誇って良いよ」
「はい……有難う御座います! お母さんも見守ってくれてると思います、早速動かしてみますっ!」
「うん」

 フゥーはいつもの調子で動かそうとした。

(うっ重い)

 フゥーはわずか三百Nメートル級のヌで異常な魔力の消費を感じた。

「どうしたんだい?」
「いえ、何でもありません。行けます。動かせます!」

 フゥーが叫んだ瞬間、ヌの両目がビカッと光った。

「よし仮宮殿に急ごう」
「行くよっヌッ様!!!」

 巨大な魔ローダー・ヌはゆっくりと歩みを始めた。その時既に夕方になっていた。


 ―クラウディア元王国仮宮殿。

 フィーーンフィーーン。
 それまで静まり返っていた宮殿内にけたたましいサイレンの音が鳴り響く。避難している住民達は不安気に顔を見合わせた。

「第一観測用魔戦車から報告! チマタノカガチが活動を再開!! こちらに北上して来ました!」

 急遽配属されたオペレーターのメイドさんが、髪を振り乱し椅子ごと体を振り返って、切羽詰まった顔で貴城乃たかぎのシューネに報告した。

「遂に動き出したか。総員第一種戦闘配置だ。観測用魔戦車は第一防衛ラインまで後退」
「観測用魔戦車は第一まで後退、総員第一種戦闘配置です!」

 可愛い声のメイドさんが復唱する。椅子に座ったままのシューネが冷静に指令を出した。

「まだ夕方ですよ!? カガチは活動が活発になっているのか?? 猫弐矢殿達はどうなっているのですかっ」

 座るシューネの真後ろに立っていた夜叛やはんモズが、少し身を屈めてシューネの顔を見ながら言った。

「夜叛モズ、桃伝説ももでんせつの出撃を頼む」
「ああ、分かりましたよ」

 モズはシューネに促されて魔ローダー駐機場に向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ
ファンタジー
無才・貧乏・底辺高校生の稲生アキラ(イナセアキラ)にゲームの悪役貴族が憑依した。 悪役貴族がアキラに話しかける。 「そうか、お前、魂の片割れだな? はははははは!喜べ!魂が1つになれば強さも、女も、名声も思うがままだ!」 アキラは悪役貴族を警戒するがあらゆる事件を通してお互いの境遇を知り、魂が融合し力を手に入れていく。 ある時はモンスターを無双し、ある時は配信で人気を得て、ヒロインとパーティーを組み、アキラの人生は好転し、自分の人生を切り開いていく。

処理中です...