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2-プロローグ~EX夢部分
EX21 破れる天井……
しおりを挟む「おい貴様は猫呼先輩のボディーガードでは無かったか?」
セレネが涙を拭いて尋ねた。
「いんや、猫呼さまの回りには今も腕の立つ闇のギルド員達が沢山いるし大丈夫さ。それよりも今は俺は依世ちゃん一筋なんだよ! 命に代えても依世ちゃんの事は俺が守るぜっ!」
突然シャルは依世の真ん前に立って宣言した。
「お前は昔の砂緒くらいに気が多いんだな」
「ま、良いんじゃない」
「良く無いです!」
突然ナリがむすっとした顔で襟を正した。
「バブー?」
「依世様の事は、このボクが命に代えてもお守りしますから!」
多少頬を赤らめたナリがシャルを押しのけて言った。
「あ、ありがと! 二人とも頼もしいわ!!」
突然取り合いの対象となった依世は冷や汗を流して苦笑いをした。セレネはこういう事は無視していたが、ミラ&ジーノ達は羨ましがった。
「いいですなあ人気がある子は」
「羨ましいわ」
「バブー」
等と言いつつ猫呼と兎幸の送別は終わった。
セレネの悲しみもシャルが居残ってくれたお陰で、多少軽減した事にセレネは気付いていない。シャルはそんな事は決して言わないが、セレネの事も考慮に入れての残留であった。彼もどんどん頼もしい男達が消えて行って、彼なりに皆を守って行く決意に目覚めていたのだった。
(フルエレさんの妹とセレネさんは俺が守るぜ砂緒よ……)
―深夜
ガランとして誰も居なくなった喫茶猫呼スペースにセレネは一人居た。一瞬だけ楽しかった昼間の出来事の余韻を感じているのだった。
カチャッ
一人カップを置いたり銀盆をいじったりして昔を懐かしむ。
「いらっしゃいませ、何に致しますか?」
「ぎょっ」
突然背中から声を掛けられ、セレネは背中がトゲトゲに飛び上がった。
「そこまでビックリする?」
「ハ~イ」
「赤ちゃんはいいのかよ?」
セレネが振り返ると、依世とメランが居た。
「赤ちゃんはメイドに任せてるわ」
「ダメな親だな」
「息抜きは必要よ~」
本当は夜はダメなのだが、どうせ眠れ無いからと依世はセレネにインスタントコーヒーを淹れてあげた……
コポコポコポ
「済まぬ」
セレネはカップを手に取る。
「いいのよ。昔砂緒さんが七葉後川流域の攻略戦をしている時に、厳しき戦場の中で一座建立の境地で敵味方区別無くコーヒーを淹れて上げて、見事一国の城を開城せしめたっていう逸話を聞いてね、いつかセレネにもコーヒーを淹れて上げたくて、タイミングを……」
セレネの目がジトッと細目になる。
「そんなん120%嘘に決まってるでしょ」
「えっそうなの!?」
「それに近い事はあった様な無かった様な……まー奴の言う事はほぼ信用しない方がいいな」
「でも! 私達は今、厳しき戦場の最中で一座建立なのよね!?」
「はぁ、よう分らんが……」
何故か一座建立に拘りまくる依世であった。
「ふぅ~~しみじみするわねえ」
「そうか?」
等と言っている時であった。
ガガガガッガガガッガガガ
突然と激しい振動が起こるが、地震等下からでは無く、天井やもっと上から感じる振動であった。
「なになになに!?」
「夜襲なの!? 相手姫乃さんだと油断してた……」
メランと依世はそわそわして立ち上がり、セレネは目をつぶったままコーヒーを飲み続ける。
ガシィーーーーーン! バシィーーーーーーン!!
「きゃーーーーーっ!?」
「何事だっ!!」
今度は突然空から轟音が起こり、侍女や家臣達が天井を見て慌てふためき出した。
「依世これはただ事じゃないな? 様子を見よう!」
「そうねセレネ!」
「ラジャーッ」
セレネもカップを置くとようやく立ち上がった。
スタタッガチャッ
そこへ丁度良く新たな家臣が慌てふためいて部屋に飛び込んで来る。
「ああ、依世さまセレネさまお探ししました!」
「どうした、簡潔に述べよ」
依世は元女王の顔になって問い質した。
「は、はい物見によれば、突然深夜にも関わらず月明りか何かでぼうっと真っ白に光る魔ローダーが一機で飛んで来て、魔法結界のドームをばんばんと叩きまくっております!!」
二人の脳裏に共通する、ある男の顔が浮かんだ。
「真っ白に光る魔ローダーが単騎で??」
「それはもう、奴だろう」
「紅蓮の奴……許せないわ」
ズダァーーーーーーーーーン!!
依世が憤って言った直後、何かが大きく弾ける破壊音がした。
「バカな、魔法結界のドームは強化してあるのに、こんな簡単にっ!?」
ガッガッガッ、ガラガラガラガラ……
続けて今度はさらに激しく、城が崩れてしまう様な振動が起こり、依世はぐらっとよろけてセレネに助け支えられる。
「ヤツめ結界を破っただけじゃ無く、直接城に入って来たのか? イカン、城中の魔法結界発生器が狙われてるぞっ!」
「ええっ!? 行きましょう」
三人は慌てふためく人々で、てんやわんやの城内を必死に急いで走り、かつて雪乃フルエレ女王が魔力を注入した事もある、城中央の結界魔法器の大部屋に辿り着いた……
「何て事……」
二人は衝撃でドアがどこかに飛び去った結界装置部屋に入った。
中はもはや高かった天井は崩れて無くなり、ガラガラと石材が落ちて転がっている。その広い聖堂の様な構造だった部屋の中央に、魔ローダー白鳥號が不気味に降り立って居た。その白鳥號は今まさに光る剣を逆手に持ち、結界魔器を突き刺して壊す寸前であった。
くわっ
「てめーーっあたしと砂緒の魔法剣返せーーーっ!!!」
セレネは血相を変えて叫んだ。
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