609 / 698
2-プロローグ~EX夢部分
EX22 何を言っているの?
しおりを挟む『強硬派達が今か今かと【海と山と国】の降伏を待っている。今や姉上ですら抑え込むのに苦労しているよ』
突然魔ローダーの外部魔法スピーカーから大音響で声が響く。依世やセレネの思った通り、声の主は紅蓮アルフォードであった。
「いやお前話聞けやー!! 剣返せーーーボケーー!」
それを遮りセレネがいきり立って叫びまくる。
『……こんな物があるから美柑達の決心が付かないんだよ! 破壊しなくちゃ!!』
ビュンッガシャンッ!!
言うや否や紅蓮は白鳥號が持つ巨大な魔法剣で無造作に結界魔法器をぶち壊した。
この剣は元々セレネと砂緒が荒涼回廊から持ち帰った希少金属をクラウディア王国で鍛え、その後千岐大蛇に飲み込まれて失っていた物を偶然紅蓮が入手した強力な魔法剣である。
その経緯からセレネの怒りは倍増していた。
ボボボッドボーン、ガーーン!!
複雑で精巧な作りの古より存在する巨大な結界魔法器が、あちこち誘爆して崩壊して行く……
ガシャーン、ガラガラガラ……
「何てこと!?」
「危ないっ!」
セレネは思わず依世元女王を庇った。
依世は元々紅蓮と冒険を共にしていた元S級冒険者であり、こんな爆発など魔法防御を張って耐えられるのだが、いつまでもセレネにとっての『女王』である雪乃フルエレが魔法が使えず結構ポンコツだったので癖で庇ってしまった。
「ずっとずっと我が国を守って来た結界が……なんて事なの!?」
依世は悲しみで足がすくんだ。
『父上がまおう軍の矢を受けて重症を負い、陣中崩御されたよ……僕は白鳥號の魔ローダーチャーム回復(超)を必死で掛け続けたけど、蘇られる事は無かった……』
紅蓮はどこまでもマイペースだ。一人で何かを語り出した。
「話聞けーーーーーっ!!」
『……あの時アルベルトさんの魂を呼んだり、灰になった加耶クリソベリルさんを蘇らせる事が出来たのは、全て偉大なフルエレちゃん雪乃フルエレ女王の力だったんだ。それで僕は気付いたんだ、早く美柑とセレネちゃんと一つにならなきゃって……』
「紅蓮貴方、何を言っているの?」
かつて美柑と名乗って紅蓮と冒険していた依世が怪訝な顔をした。もう途中から彼も依世と呼んでいたはずなのだが……
『僕と美柑とセレネちゃん、三人で結婚しよう! 三人で一緒になって暮らす事がそれがつまり神聖連邦帝国とセブンリーファの融和でもあるんだ』
「意味判らんわ!!」
セレネが叫んだ。
バシャッ!
白鳥號のハッチが開けられ、片手を伸ばす紅蓮の姿が見えた。
『恥ずかしがる事は無いよ、一つのベッドで僕と美柑とセレネちゃんの三人で睦み合って和合しよう!』
一瞬依世とセレネは意味が分からなくてあっけにとられたが、紅蓮の表情と言葉には淀みも無く邪念も感じられず、その目は清水の様に澄み切っていた。だがそれが二人には底知れぬ恐怖を与え、ゾゾゾッと背筋に寒い物を感じさせた。
「おま、和合とか恥ずかしい言葉よく平気で言えんな……三人で睦み合うって……本気か?」
「お断りするわ……私はお母さまともセレネ達仲間の皆とも話し合って、国と国同士の外交として解決するつもりよ、私と紅蓮とのセンチメンタルな過去も思い出話も1Nミリももう関係無いのよ」
「んだんだ!」
依世はキッパリと言い切った。
『そう、分かってもらえないなら仕方が無いね』
等と言いながら紅蓮は白鳥號の片手を、にゅっと伸ばして依世を捕まえようとした。
グイイイーン
「我が女王に何をするかっ!?」
「セレネ!」
セレネは興奮して依世が先日母親に女王位を譲った事を忘れて叫び、剣を抜いて魔呂の腕に飛び掛かった。
ギィイイイイイイイインン!!
セレネの剣攻撃を何と紅蓮は白鳥號の魔法剣で受け止めた。結果的に、むしろ白鳥號がセレネに斬り掛かり、それをセレネが受け止める形勢になった。
「くっ」
ギリギリギリ
思い切り魔呂の力をセーブした物でも、それでも凄い力でセレネに圧し掛かる白鳥號の魔法剣。
20代後半とは言え女子高生時代と全く変わらぬスタイルの、か細いセレネの腰と脚が弓なりに曲がって反り返って行く。
「ぐぎっぎぎぎっ」
それでも彼女は意地で押し返し続ける。
「何て事するの!? 離して上げて!!」
『もし僕が魔法剣を発動させたら、セレネちゃんは一瞬で蒸発するよ……しないけどね』
魔法剣とは言っても、今はその刀身に魔法を帯同させる事は無く、ただの巨剣として使用しているだけだ。それでも不気味な脅しであった。
「てめーーーー」
強気で叫ぶが、セレネの腕力ではそろそろ限界であった……
『若君危ない! この野蛮人女めがっ!!』
「!?」
ヒュンヒュンシュババッカカカカッ!!
突然声がしたかと思うと、天井から夜でも青白く光る物体が数本飛んで来て床に突き刺さった。
スカカカカカッ
バッッ!!
『むっ』
「金輪っ!?」
光の剣が床に突き刺さって消える前に、セレネと白鳥號は同時にいち早く後ろに引いていた。
『……シューネ、今まさに僕がセレネちゃんを捕獲しようとしてたのに……何するんだい?』
『ややっそうでありましたか、てっきり若君が押されていると誤認しました……申し訳ありませぬ』
突然飛来して来た貴城乃シューネが搭乗する四旗機の魔ローダー金輪は、着地するとすぐにうやうやしく跪いた。
そしてその機体は一緒に乗る美しく成長したフゥーが無言で操縦していた……
「……」
0
あなたにおすすめの小説
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる