魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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2-プロローグ~EX夢部分

EX28 降伏の条件

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依世いよさん、どうしたのです?」

 女摂政姫乃ひめのソラーレは力なく降伏文書を落とした依世を見て、恐怖と失意と緊張の余り脱力したのだなと思い声を掛けたが、そんな敵からの心配りにも依世は心此処にあらずであった。

「ヌハハハハどうした、今日はいつもの暴力女の護衛は居ないのか? 一人ではさぞ不安であろう」
「控えなさいシューネ!」

 と、姫乃に叱られた貴城乃たかぎのシューネは高笑いしながら挑発チックな事を述べてはいるが、表面的な笑顔とは裏腹にその目は決して笑っておらず、あたかもセレネの事を探し求めているかの様であった。

「……なんて事なの……」

 依世がぽつりと呟いて降伏文書を拾いながらフゥーを見ると、彼女は暗い顔をして俯いて視線を逸らした。それでようやく鈍感なシューネがハッとして振り返った。

「フゥーよ、控室に戻りなさい」
「はい……」

 フゥーは静かに部屋から消えて行った。
 あの沖ノ神殿乃小島での彼女とは、全く別人の様になって個性を殺されてしまっている様に見えた……


「どうしたのですか依世さん、大切な国と国の命運を決める瞬間ですよ?」
「……申し訳ありません。私なりに色々と趣向を考えて来ました。我が命などどうなっても良いから家臣や民の事だけは救って欲しいだとか……逆に大胆な事を言って懐に飛び込む策だとか……」
「何を言っているのですか?」

 ぶつぶつ言いながら少しづつ姫乃に歩み寄る依世に、衛兵も家臣達も姫乃自身も不審に思った。当然皆薄っすらと暗殺を警戒する。

「でも……全て吹き飛びました。これをどうぞ……我が母、セブンリーファ大同盟第四代女王からの降伏の文で御座います」

 所が警戒を他所に素直に降伏しようとする依世に姫乃は安堵した。

(下手な事をしてはダメよ依世ちゃん)
「そう……良かったわ」

 姫乃が目で合図をすると、近習の美少年が降伏文書を受け取ろうとする。
 カサッ!
 しかし美少年が文書を受け取ろうとした瞬間、依世が子供同士の遊びの様にサッと引いて渡さなかった。


「この娘乱心したか?」
「どうした? ふざけておるのか??」

 家臣達がざわざわとざわめき始める。先程と違いシューネは訝しい顔をして黙ったままだ。

「ボクが折檻してあげようか?」

 等と貴濠乃たかみずのヌヌノノが言った直後、依世が姫乃に訴えた。

「もはや小細工は致しません、この降伏文書をお渡しします。しかし一つだけ降伏には条件があります」

 シィーン
 この期に及んで条件等と言い出す依世に、やはり不信感が募る家臣達は少女を睨んだ。
 ざわっ

「不遜な!」

 だが姫乃はそんな家臣達をサッと手で静止する。

「なんですか?」
「その様な小娘の言う事など無視して無理やり降伏を迫れば良いのです!」

 それでもシューネが一人叫んだ。

「シューネお黙りなさい、降伏の条件は何ですか? 依世さん言ってみなさい」

 姫乃は何故だか俄然興味が出て来ていた。此処まで新聖帝紅蓮は発言は無くじっと見ている。

「はい包み隠さず言えば降伏する条件とは、わたくしとそこにいらっしゃる貴城乃シューネ様と二人で密室で会談させて欲しいのです。ただそれだけ……それでその後に文書はお渡しして【海と山とに挟まれた小さき王国】は完全に神聖連邦帝国に降伏致しましょう」

 言い終わると依世は跪いて深々と頭を下げた。


「なんですかそれは!? 何故重臣の私がこんな小娘と会談などと!!」
「先程からお黙りなさい! 面白い……シューネと会談するだけで良いのね?」
「はい……」

 何故だか乗り気な姫乃を見て、シューネがさらに叫ぶ。

「この娘は私の命を狙うつもりでありましょう! 降伏する代わりに私と刺し違える気です、危険で御座います!!」
「何を取り乱しているのですか? あの砂緒すなおを一騎打ちで倒した貴方が、何を依世さんを怖がるのですか?」
「怖がってなぞ……」

 何故かシューネの目は泳いだ。

「魔力封じの首輪でも何でも付けて下さって結構ですので」

 依世は毅然とシューネを見ながら言った。

「それ面白いね……シューネ、二人きりで会ってみてよ」

 この場で初めて新聖帝となっている紅蓮アルフォードが口を開いた。
 それで全ては決定した。女摂政姫乃には口ごたえ出来ても、聖帝の最終決断の言葉には誰も従う他無かった。

「ははっ聖帝陛下のお命じのままに」

 シューネは胸に手を当てて頭を下げた。


 ー会談は一時中断した。

 コツーンコツーン
 真面目な姫乃の配慮により、本当に奥まった密室に二人は案内された。
 周囲には人が近付かない様に警備兵に厳重に警備させている念の入り様である。本来なら女性の方が不安がる場面で、終始シューネは嫌そうな表情を隠さなかった。むしろ本当にシューネが討たれても仕方ない場面がセッティングされつつあった。
 
「では、ごゆるりと」

 依世に続いてシューネが渋々部屋に入り近習の美少年が静かにドアを閉めた。
 シィーン
 しばらく重苦しい沈黙が続く。

「……何だ? 色仕掛けか? 降伏後の海と山と国の処遇については私一人の一存では……」

 ふぁさっ!
 等とシューネがぶつくさ言い掛けた所で、突然依世がシューネの胸に飛び込んで来た。
 途端にシューネの鼻腔に甘い香りが襲い掛かる。まさに言葉通りの色仕掛け的展開であった。

「……貴方砂緒さんでしょう!」
「何を言う……離れなさい、本当に色仕掛けとは一国の元女王がはしたないですぞ」

 依世の思い掛けない行動にシューネはうろたえた様に見え、いつものイヤミなポーズは影を潜めてしまった。 
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