15 / 23
第15話 カトレア覚醒
しおりを挟む
「カトレア!」
そこにいたのはフィオナ王国王子オレンストだった。
「……オレンスト」
心底侮蔑するようにオレンストを見つめるカトレア。
「カトレア、彼が?」
「はい、私を公開刑にした男です」
「教えろ、お前にパーフェクトヒールを使った者は誰だ?それを教えれば側妃に迎えんことも無い」
あまりに傲岸不遜な言いように唖然とするカトレア、レンヤは一周周って逆に滑稽に見えたか思わず吹き出しそうになってしまった。
オレンストは実のところ、さっきからカトレアに見惚れていた。
元々美女だったのに悪疾で顔が崩れたカトレア、それが消えれば、誰もが美女と称える女である。
「お前、こんなに美しかったのか…」
「吐き気がする」
「よっ、よし!俺の愛が欲しくて努力したのだな。よくやった。側妃として迎えよう」
「はあ?」
「今宵の伽を命ずる!ありがたいと思え!」
カトレアはもちろん、レンヤも唖然とするが、彼自身前世で読んだライトノベルの影響か王子と云うものは、だいたいこんなものだと思ってはいた。親友のカールが特別であったのかもしれない。
「オベントウ殿下、彼女にパーフェクトヒールを施したのは私ですが」
「なに?」
「術者が私として何か用ですかな?」
「ふんっ、私の婚約者イライザを殺そうとした女を治したということは貴様も国家反逆罪だ。だが、今後パーフェクトヒールの行使権を私に一任すれば何もかも許してやる」
…こいつは本物だとレンヤは思った。こんな馬鹿本当にいたのかと。
「…感心しませんね。女の顔など病や加齢でいかようにも変化するもの。変わらぬのは心の美しさ、それにも気づかず、顔が崩れたのを理由に婚約破棄したあげく、冤罪をなすりつけて公開刑。それが後に王となる者のやりようか?」
「あ?」
「顔が崩れても婚約を解消せず、そのまま娶り愛し続ければ、女はおろか、男からも称賛される。つまり民衆は貴方を支持する。後世に語られるほどの王となったでしょう。貴方は間違えた」
「無礼者!」
王子は剣を抜いてレンヤを斬った。左肩から入ったがめり込みもしなかった。身体強化をあらかじめ施してあった。
「ちっ、お前ら、こいつを殺してカトレアを奪え」
取り巻きに指示するオレンスト。
「もはや盗賊だな『睡眠』」
オレンストと取り巻きはそのまま眠りに落ちた。
「カトレア、明日、自宅とアトリエ工房を売却し、孤児院を周って寄付をする」
「はい」
「明後日の朝にこの国を出ていく。準備をしておいてくれ」
「承知しました、ご主人様」
「長くないな、この国は…。いや、王室は」
いつもの散歩道である湖畔、そこでスケッチをする若き絵師がいなくなった。
老爺は、かつて若者が立っていた場所に立ち、彼が描いていた風景をそのまま悲しそうに見つめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ガタゴトガタゴト
馬車に乗って湖の対岸にある町へと移動していたレンヤとカトレア。
そこにはフェインゼの町という王族貴族が存在しない農業の町があるらしい。湖から用水路をひき、果樹や野菜、麦なども育てている。牧畜も盛んだそうだ。レンヤとカトレアはその町に拠点を移すことにした。
馭者台に並んで座り、湖畔からの景色を楽しんでいる。
「ご主人様、私はフィオナを出たことが無かったのですが…角度を変えてみるとフィオナ湖とは、こんなに美しいものだったのですね」
「そうだなぁ…。この付近に村でもあれば宿泊して、このあたりの風景も描いたのに」
飛行魔法を使えばすぐなのに、あえて馬車を購入しての旅としたのは、ずばりカトレアとエッチするため。
幌がついた立派な馬車内はフカフカの布団が敷かれているだけ。あとの荷物は収納魔法内だ。カトレアも初めてのセックス以来、レンヤとの閨房に蕩けている。夜まで待ちきれず迫ってくることも。
「ご主人様ぁ…。昼食のあと…したいです」
「男の事情からすると、食事前にしたいよ。空腹が満たされると性欲が後退するらしい」
的外れの話ではないが、この男には論外の話だろう。
「それはいけませんね。では今すぐに」
湖畔に馬車を繋いで、幌をくぐり馬車内に。無振動、遮音、そして周囲警戒などの魔法を施して、いざプレイ。正常位でカトレアを貫くレンヤ。
「ああっ、ご主人様ぁっ!」
「カトレアのここ、本当に気持ちいいよ…」
「私もご主人様のご立派様大好きですっ!気持ちいい!気持ちいいですっ!」
双方、艶々となりランチタイムになった。湖畔から釣竿を垂らして、ポンポンと魚を釣りあげていくレンヤ、カトレアは獲った魚を木の枝に刺して塩を塗って焼く。
「ご主人様は骨も残さず食べるのですね。すごい顎です」
「生き物を食べるわけだから残すわけにもいかないよ。ああカトレアは真似しちゃダメだぞ。骨が喉に刺さる」
「真似できませんよ。ふふっ」
ガタゴトガタゴト
馬車は揺れる。さすがはレンヤ自身がバイカル湖くらいデカいと言っただけあって、目的地の町まで、まだまだだ。朝昼晩とセックス三昧の乱れ旅は続く。馭者台でイチャつく二人。
「ところでご主人様、目的地のフェインゼの町に着いたら、どうするんですか?」
「芸術ギルドが無かったら、本当に絵と陶芸は趣味範囲だな。診療所を開設しようと思う」
「診療所ですか…。私もご主人様のような治癒魔法が使えたらと思うのですが…」
「カトレア、君は使えるぞ、治癒魔法」
「え?」
「君が知らないだけだ。さすがにパーフェクトヒールは無理だがハイヒールまでは出来る」
「わ、私がですか?」
「今夜のセックス、合体した時にその潜在能力を引き出してみようか?」
本当は手を繋ぐ程度で魔力の誘発、そして解放は出来るが、この男はよほどカトレアのミミズ千匹に蕩けているらしい。ぐわしとレンヤの腕を掴んで馬を止めたカトレア。
「ご主人様、いますぐです」
「いいよーん♪」
そして合体
「君の中に眠る魔力を解放す…」
「そんなこといいですから腰を使ってください!焦らされるのイヤア!」
「おっ、おう…」
普通のセックスになってしまった。前戯を濃密にしすぎたらしい。
し終わって
「実を言うと手を握るだけで出来るんだな、これが…。カトレアとしたくてさ」
「そんなことじゃないかと思いました。私の胸を見ながら言うのですもの」
レンヤ特製のメイド服は胸を強調するよう作られている。この世界にはないブラジャーで整っているバストラインは男を夢中にさせるに十分だ。
「手じゃなくて、君のオッパイに触れて魔力誘発したいな」
「もう、ご主人様のエッチ」
そう言いつつ、あらわになっている乳房をレンヤの前に。
レンヤは舌なめずりしながら両の手でカトレアの乳房に触れて
「『魔力解放』」
「ん…ああ……。何か体が温かいです……」
そしてカトレアは感じた。体の内部から今まで経験したことのない何かが湧きあがってくることを。
「これが魔力…!」
「そう、君は治癒と水の魔法が使えるよ」
「水魔法!?」
「そう、清水を魔力で出せるようになる。戦いでは氷の礫や矢を敵にぶつけることが出来るし、熱湯を浴びせることも可能だ」
「すっ、すごい!私、ご主人様の戦闘にも役立てるのですね!」
「いや、戦闘の機会なんてないよ。俺は冒険者にならないし……」
目をキラキラさせているカトレア、聞いていない。
「じゃ、じゃあ、一応身を守るため水魔法の戦い方を教えるよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そりゃあ!ウォーターソード!」
「「ぎゃあああああ!」」
「行けえ!ウォーターキャノン!」
「「ぎょええええ!」」
「ふんっ!」
「…………」
数日後の夜、野営中を襲ってきた山賊を一人で瞬殺してしまったカトレア。
死体はグロい。PTSDになるかもと思ったが、どこかの女ムエタイ使いの決め台詞。
「ふんっ、情けない!」
をドヤ顔で発していた。PTSD?何それ美味しいの状態だ。
ウォーターソードは消防の高圧放水銃『ウォーターカッター』を基にしてレンヤが発想したものだ。凄まじい水圧は岩をも切り裂く。ウォーターキャノンは水球を弾丸のように飛ばす。水魔法では一般的なものだ。20名以上いた山賊が手籠めにしようとしていた美人メイドに皆殺しにされた。
「…出番なし」
「ああっ、ごめんなさい、ご主人様!私ったらご主人様の見せ場を!」
「あ、いや、いいよ、あははははは!」
しかし、レンヤはカトレアの魔力を解放したことを後々まで後悔することになる。
レンヤの根幹的な仕事と言えば武人でも芸術家でもなく治癒師だ。だから次の町でもその仕事に就くつもりだ。すでに伴侶とも言えるカトレアが治癒魔法を使えるに越したことはなく、ヒトが生きるに欠かせない水、しかも飲料に適した清水を自在に出せるとなれば治癒師レンヤにとって最適のパートナーだ。そう思ってレンヤも奴隷商から買ったのだ。
カトレアは美女だ。当然悪しき心を持った男に狙われる。いつもレンヤが守ってやれるとは限らない。そう思って水魔法を武器とする戦い方を教えたのだが、それがとんでもない事態を引き起こすことになるとは思わなかった。
レンヤは気づかなかった。見落とした。虐げられ、裏切られた者の悔しさ、怒りを甘く見た。いつもと変わらない笑顔であったから。
魔力が体内に解放されて間もなく、カトレアは気づいてしまった。レンヤの精を胎内に受けると魔力量が上がり、経口摂取すると武力が上がる。カトレアはレンヤの欲望に応える従順なメイドとして、口と秘所から、どん欲にレンヤの精を搾り取っていく。
レンヤは気づかない。当然だろう、レンヤの精を体内に入れてチカラが上がるという現象を体験したのは、このカトレアが初めてで、そしてそれをレンヤに言わなかったカトレア。
しばらくして魔力と武力の上昇の頭打ちが訪れたが、この時のカトレアには主人レンヤと同等の魔力と戦闘力を持つに至る。
頭打ちが訪れた日の夜、激しい情事のあと、レンヤが寝静まったのを見てカトレアは馬車から出た。地に立った時、カトレアは青白い魔力を体中に帯び、目は鋭く光り、口元はニィと笑っていた。
「ごめんなさい、ご主人様…。これにてお別れです。この身を美しい体に戻していただけたこと、たくさん私を愛して下されたこと忘れません。お元気で…」
レンヤの眠る馬車に深々と頭を垂れたあと、カトレアは走った。故郷フィオナ王国に。
そこにいたのはフィオナ王国王子オレンストだった。
「……オレンスト」
心底侮蔑するようにオレンストを見つめるカトレア。
「カトレア、彼が?」
「はい、私を公開刑にした男です」
「教えろ、お前にパーフェクトヒールを使った者は誰だ?それを教えれば側妃に迎えんことも無い」
あまりに傲岸不遜な言いように唖然とするカトレア、レンヤは一周周って逆に滑稽に見えたか思わず吹き出しそうになってしまった。
オレンストは実のところ、さっきからカトレアに見惚れていた。
元々美女だったのに悪疾で顔が崩れたカトレア、それが消えれば、誰もが美女と称える女である。
「お前、こんなに美しかったのか…」
「吐き気がする」
「よっ、よし!俺の愛が欲しくて努力したのだな。よくやった。側妃として迎えよう」
「はあ?」
「今宵の伽を命ずる!ありがたいと思え!」
カトレアはもちろん、レンヤも唖然とするが、彼自身前世で読んだライトノベルの影響か王子と云うものは、だいたいこんなものだと思ってはいた。親友のカールが特別であったのかもしれない。
「オベントウ殿下、彼女にパーフェクトヒールを施したのは私ですが」
「なに?」
「術者が私として何か用ですかな?」
「ふんっ、私の婚約者イライザを殺そうとした女を治したということは貴様も国家反逆罪だ。だが、今後パーフェクトヒールの行使権を私に一任すれば何もかも許してやる」
…こいつは本物だとレンヤは思った。こんな馬鹿本当にいたのかと。
「…感心しませんね。女の顔など病や加齢でいかようにも変化するもの。変わらぬのは心の美しさ、それにも気づかず、顔が崩れたのを理由に婚約破棄したあげく、冤罪をなすりつけて公開刑。それが後に王となる者のやりようか?」
「あ?」
「顔が崩れても婚約を解消せず、そのまま娶り愛し続ければ、女はおろか、男からも称賛される。つまり民衆は貴方を支持する。後世に語られるほどの王となったでしょう。貴方は間違えた」
「無礼者!」
王子は剣を抜いてレンヤを斬った。左肩から入ったがめり込みもしなかった。身体強化をあらかじめ施してあった。
「ちっ、お前ら、こいつを殺してカトレアを奪え」
取り巻きに指示するオレンスト。
「もはや盗賊だな『睡眠』」
オレンストと取り巻きはそのまま眠りに落ちた。
「カトレア、明日、自宅とアトリエ工房を売却し、孤児院を周って寄付をする」
「はい」
「明後日の朝にこの国を出ていく。準備をしておいてくれ」
「承知しました、ご主人様」
「長くないな、この国は…。いや、王室は」
いつもの散歩道である湖畔、そこでスケッチをする若き絵師がいなくなった。
老爺は、かつて若者が立っていた場所に立ち、彼が描いていた風景をそのまま悲しそうに見つめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ガタゴトガタゴト
馬車に乗って湖の対岸にある町へと移動していたレンヤとカトレア。
そこにはフェインゼの町という王族貴族が存在しない農業の町があるらしい。湖から用水路をひき、果樹や野菜、麦なども育てている。牧畜も盛んだそうだ。レンヤとカトレアはその町に拠点を移すことにした。
馭者台に並んで座り、湖畔からの景色を楽しんでいる。
「ご主人様、私はフィオナを出たことが無かったのですが…角度を変えてみるとフィオナ湖とは、こんなに美しいものだったのですね」
「そうだなぁ…。この付近に村でもあれば宿泊して、このあたりの風景も描いたのに」
飛行魔法を使えばすぐなのに、あえて馬車を購入しての旅としたのは、ずばりカトレアとエッチするため。
幌がついた立派な馬車内はフカフカの布団が敷かれているだけ。あとの荷物は収納魔法内だ。カトレアも初めてのセックス以来、レンヤとの閨房に蕩けている。夜まで待ちきれず迫ってくることも。
「ご主人様ぁ…。昼食のあと…したいです」
「男の事情からすると、食事前にしたいよ。空腹が満たされると性欲が後退するらしい」
的外れの話ではないが、この男には論外の話だろう。
「それはいけませんね。では今すぐに」
湖畔に馬車を繋いで、幌をくぐり馬車内に。無振動、遮音、そして周囲警戒などの魔法を施して、いざプレイ。正常位でカトレアを貫くレンヤ。
「ああっ、ご主人様ぁっ!」
「カトレアのここ、本当に気持ちいいよ…」
「私もご主人様のご立派様大好きですっ!気持ちいい!気持ちいいですっ!」
双方、艶々となりランチタイムになった。湖畔から釣竿を垂らして、ポンポンと魚を釣りあげていくレンヤ、カトレアは獲った魚を木の枝に刺して塩を塗って焼く。
「ご主人様は骨も残さず食べるのですね。すごい顎です」
「生き物を食べるわけだから残すわけにもいかないよ。ああカトレアは真似しちゃダメだぞ。骨が喉に刺さる」
「真似できませんよ。ふふっ」
ガタゴトガタゴト
馬車は揺れる。さすがはレンヤ自身がバイカル湖くらいデカいと言っただけあって、目的地の町まで、まだまだだ。朝昼晩とセックス三昧の乱れ旅は続く。馭者台でイチャつく二人。
「ところでご主人様、目的地のフェインゼの町に着いたら、どうするんですか?」
「芸術ギルドが無かったら、本当に絵と陶芸は趣味範囲だな。診療所を開設しようと思う」
「診療所ですか…。私もご主人様のような治癒魔法が使えたらと思うのですが…」
「カトレア、君は使えるぞ、治癒魔法」
「え?」
「君が知らないだけだ。さすがにパーフェクトヒールは無理だがハイヒールまでは出来る」
「わ、私がですか?」
「今夜のセックス、合体した時にその潜在能力を引き出してみようか?」
本当は手を繋ぐ程度で魔力の誘発、そして解放は出来るが、この男はよほどカトレアのミミズ千匹に蕩けているらしい。ぐわしとレンヤの腕を掴んで馬を止めたカトレア。
「ご主人様、いますぐです」
「いいよーん♪」
そして合体
「君の中に眠る魔力を解放す…」
「そんなこといいですから腰を使ってください!焦らされるのイヤア!」
「おっ、おう…」
普通のセックスになってしまった。前戯を濃密にしすぎたらしい。
し終わって
「実を言うと手を握るだけで出来るんだな、これが…。カトレアとしたくてさ」
「そんなことじゃないかと思いました。私の胸を見ながら言うのですもの」
レンヤ特製のメイド服は胸を強調するよう作られている。この世界にはないブラジャーで整っているバストラインは男を夢中にさせるに十分だ。
「手じゃなくて、君のオッパイに触れて魔力誘発したいな」
「もう、ご主人様のエッチ」
そう言いつつ、あらわになっている乳房をレンヤの前に。
レンヤは舌なめずりしながら両の手でカトレアの乳房に触れて
「『魔力解放』」
「ん…ああ……。何か体が温かいです……」
そしてカトレアは感じた。体の内部から今まで経験したことのない何かが湧きあがってくることを。
「これが魔力…!」
「そう、君は治癒と水の魔法が使えるよ」
「水魔法!?」
「そう、清水を魔力で出せるようになる。戦いでは氷の礫や矢を敵にぶつけることが出来るし、熱湯を浴びせることも可能だ」
「すっ、すごい!私、ご主人様の戦闘にも役立てるのですね!」
「いや、戦闘の機会なんてないよ。俺は冒険者にならないし……」
目をキラキラさせているカトレア、聞いていない。
「じゃ、じゃあ、一応身を守るため水魔法の戦い方を教えるよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そりゃあ!ウォーターソード!」
「「ぎゃあああああ!」」
「行けえ!ウォーターキャノン!」
「「ぎょええええ!」」
「ふんっ!」
「…………」
数日後の夜、野営中を襲ってきた山賊を一人で瞬殺してしまったカトレア。
死体はグロい。PTSDになるかもと思ったが、どこかの女ムエタイ使いの決め台詞。
「ふんっ、情けない!」
をドヤ顔で発していた。PTSD?何それ美味しいの状態だ。
ウォーターソードは消防の高圧放水銃『ウォーターカッター』を基にしてレンヤが発想したものだ。凄まじい水圧は岩をも切り裂く。ウォーターキャノンは水球を弾丸のように飛ばす。水魔法では一般的なものだ。20名以上いた山賊が手籠めにしようとしていた美人メイドに皆殺しにされた。
「…出番なし」
「ああっ、ごめんなさい、ご主人様!私ったらご主人様の見せ場を!」
「あ、いや、いいよ、あははははは!」
しかし、レンヤはカトレアの魔力を解放したことを後々まで後悔することになる。
レンヤの根幹的な仕事と言えば武人でも芸術家でもなく治癒師だ。だから次の町でもその仕事に就くつもりだ。すでに伴侶とも言えるカトレアが治癒魔法を使えるに越したことはなく、ヒトが生きるに欠かせない水、しかも飲料に適した清水を自在に出せるとなれば治癒師レンヤにとって最適のパートナーだ。そう思ってレンヤも奴隷商から買ったのだ。
カトレアは美女だ。当然悪しき心を持った男に狙われる。いつもレンヤが守ってやれるとは限らない。そう思って水魔法を武器とする戦い方を教えたのだが、それがとんでもない事態を引き起こすことになるとは思わなかった。
レンヤは気づかなかった。見落とした。虐げられ、裏切られた者の悔しさ、怒りを甘く見た。いつもと変わらない笑顔であったから。
魔力が体内に解放されて間もなく、カトレアは気づいてしまった。レンヤの精を胎内に受けると魔力量が上がり、経口摂取すると武力が上がる。カトレアはレンヤの欲望に応える従順なメイドとして、口と秘所から、どん欲にレンヤの精を搾り取っていく。
レンヤは気づかない。当然だろう、レンヤの精を体内に入れてチカラが上がるという現象を体験したのは、このカトレアが初めてで、そしてそれをレンヤに言わなかったカトレア。
しばらくして魔力と武力の上昇の頭打ちが訪れたが、この時のカトレアには主人レンヤと同等の魔力と戦闘力を持つに至る。
頭打ちが訪れた日の夜、激しい情事のあと、レンヤが寝静まったのを見てカトレアは馬車から出た。地に立った時、カトレアは青白い魔力を体中に帯び、目は鋭く光り、口元はニィと笑っていた。
「ごめんなさい、ご主人様…。これにてお別れです。この身を美しい体に戻していただけたこと、たくさん私を愛して下されたこと忘れません。お元気で…」
レンヤの眠る馬車に深々と頭を垂れたあと、カトレアは走った。故郷フィオナ王国に。
1
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる