レオン〜騎士道を知らずに騎士になった少年〜

国王さまからのプレゼント

　レオンがもらった物は、金貨だけではなかった。かつてエラが暮らしていたお屋敷が与えられ、そこに家族七人で暮らせることになったのだ。
　お屋敷だけではない。エラの父がかつて持っていたものの、失ってしまった物が与えられることになったのだ。すなわち、男爵という爵位とそれに伴う貴族の身分、そして領地と領民だ。
　翌日、国王さまの使者がやってきて、この嬉しい知らせを聞かせてくれたのだ。昨夜のレオンの敬虔なクリスチャンとしてのふるまいがエラの使者によって報告されたので、感銘を受けた国王さまがこの素晴らしい決定をしてくださったそうだ。
「まずは引っ越しを済ませ、城内で執り行われる爵位授与式と叙勲式で着用するための衣装をあつらえておくように」とのことだった。
　使者の説明によると、エラに対する虐待行為を知って激怒した国王さまは、エラのかつての家族たちを『未来の王太子妃への虐待罪』で処罰すると決定し、お屋敷から追い出したそうだ。
「屋敷には家財道具がほとんど残っている。それゆえ自分の家からは、絶対に必要な物だけを持って引っ越せばよい」とのことだった。
　レオン一家は貧しくて、そもそも家財道具などほとんど持ってなかった。荷馬車一台に家族全員の荷物を積み込めるから、すぐにどこへでも引っ越せる。
　テーブルと椅子は父さんが作った物で、家族の歴史が染みついてる。愛着があるから手放したくない。そうだ、お屋敷にあるテーブルと椅子は俺たちには必要ないから、売り払ってお金に変えよう。そのお金で式に必要な衣装をあつらえればちょうど良い……。