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王太子と影の苦悩
しおりを挟む「殿下が本気で笑ってるとこ久々に見たわ」
「そうかな?」
馬車の中で向かい側に座りながら私に軽口を叩くイシャール
確かに、こんなに笑ったのは久しぶりだな…
さっきのマナの頬は真っ赤なトマトみたいだった、きっと素顔が見えていたらもっと可愛いかったと思う
初めてイシャールから怪しいと言われていた姿を見たけど、すぐにマナだと分かったし、寧ろあれぐらいの見目の方が変な虫が寄りつかなくて良いと思った
「セバスチャンだけでよかったね、頬だとしてもヴィヴィアンヌお嬢様に見られてたら、マナちゃん今頃殺られちゃってるよ…」
「だから見送りはセバスチャンだけでいいと言っておいただろ」
「ハンカチも態とマナちゃんに見える位置に置いたでしょ」
「さぁね…」
「おー怖っ、全部計算かよ」
「うるさいぞ、イシャール」
「しかも強引にマナちゃんを王宮の侍女にしちゃって」
「嘘は言ってないし、侍女が足りてないのも本当だよ」
「めちゃくちゃ2人に反対されてたけどね」
そう、まさかマナがそんなにドジな子だとは思ってなかった
アルディスは兎も角、ヴィヴィアンヌ嬢にまであんなに反対されるなんて…
そこだけが予想外だった
セバスチャンが口添えしてくれなかったら危なかったな…
「てか仕事は片付いたんじゃなかったの?
方向が城とは別だけどこれからどこ行くわけ?」
「マナの侍女服を一式オーダーで作らせたんだ
それをこれから取りに行く」
「はぁ!?
ちょ、え、オーダーって…殿下何考えてんの…」
「国庫には手をつけてないし、私のポケットマネーから出してるから安心して」
この間、隣国との取引で私が作らせたシルク生地が高値で売れたからね
「いや、そう言う問題じゃなくてさ…」
何故か呆れた顔をするイシャール
キィイイイーッ、ガタンッ
「着いたみたいだね」
護衛騎士を残し、イシャールと共に王室御用達の仕立て屋に入る
「これはこれは第二王太子殿下、お待ちしておりました」
「挨拶は不用だ、頼んでいたやつは全部できてる?」
「はい、奥に用意がございますのでご確認をお願いします」
奥にはオーダーしていた侍女服が4着並んでいた
「ちょっと待った、こっちの3着は王宮の侍女達のやつと一緒だけど…
この1番端のえらく丈が短い胸元がかなりあいた厭らしい衣装は何なの?」
「あぁ、3着のやつは洗い替え用と、デザインは同じに作らせたが、生地が上質で普通の王宮の侍女服とはちょっとちがうんだ
その端のは友人のルージリアン王太子から侍女に評判が良いと教えてもらったからね」
「あの侍女にまで手を出して、ハレムで妾を90人も作ってる女好きのヤリチン王太子か、うちの殿下に何吹き込んでんだよ…」
「おい、口が悪いぞイシャール
彼の女好きは否定できないが、ハレムに関してはあちらの国の文化だからね…」
「とにかく、こんな破廉恥な衣装マナちゃんに絶対引かれるからダメだって!!」
「まぁ確かに少し露出しすぎだとは思うけど…」
どうせ私しか見ないし、これを着たマナをちょっと見てみたい…
「殿下今厭らしい事考えてるでしょ…
マナちゃんに嫌われちゃってもいいならどうぞ、俺はもう知~らない!」
「はぁ…せっかく無理を言って1週間で作らせたのに…」
でもマナに嫌われるのは困るな…
一応その衣装も持って帰りつつ、私達は城へと帰った
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