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こんな人達が先輩なんですか?

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ガタガタッ…



今日から2週間限定で王宮で働くことになったのはいいんだけど…

迎えの馬車の中の空気が物凄く気まずい!!


一緒に侍女としてクロムハート家から派遣された2人と馬車を共にしているんだけど…
1人は顔にそばかすがあるのが特徴的で、綺麗な赤毛が癖っ毛ぎみの短い髪型をしてる
もう1人は茶色の長いウェーブのかかった髪の毛をポニーテールで纏めた、少し切長な目をした人だ

この2人に馬車に乗る前に挨拶して名前を名乗ったのに無視された

しかも何やらさっきから険しい顔でジロジロとこちらを見てくる


「あ、あの…どうかしましたか?」


流石に視線と空気に耐えられなくなって話しかけてみる


「ちっ…あんたさぁ、ちょっと王太子様に目をかけてもらえたからって調子に乗ってない?」

「へ?」


今舌打ちされた!?
それに、調子に乗ってるとは…?


「他の先輩侍女達を差し置いて、なんであんたみたいなトロい新人が王宮で働くのよ!
そこは先輩方に仕事を譲りなさいよ!」


えぇ…そんな事言われても困るというか、そもそも指名してきたのは王子様本人なんですが!?


「でも、王宮で働くなんて2度とない機会なので、お給料も良いし、どうしても行きたかったんです!」

「とか何とか言って、本当は王宮で男漁りに行くんでしょ!
王宮で働いてる人なら将来安泰だもんね?
でも、あんたみたいな醜いブスに寄ってくる男なんか身体目当ての碌でもない奴ばっかりよ、すぐ捨てられて終わるのが落ちだわ!」


きゃはははと2人の笑い声が聞こえる


私はただお金を稼ぎたいだけだし、ラブマジにも出てくるお城が見たかっただけなのに…
なんでここまで失礼なこと言われなきゃいけないんだろ
こんな人達が先輩だなんて…

なんか、理不尽すぎてだんだんムカついてきた!!


「私が醜いブスなのは認めます…」

「ふんっ…物分かりがいいじゃない」

「でも、王宮の人達も馬鹿にしたような発言をして、王宮に勤めてるんだからそんな変な人は居ないと思いますし、挨拶もまともに返してくれないような礼儀知らずな先輩を持った覚えはないです!!」


私が言い返すと思ってなかったのか、驚いてぽかーんと口をあけてる2人


「あ……あんた、生意気よ!!」


バッと向かい側から手を挙げられる


やばい、叩かれるー!!
ぎゅっと目を瞑った瞬間……


キィイイイー、ガタンッ


「ひゃっ!?」「ぎゃっ!?」「きゃっ!?」


馬車がいきなり勢いよく止まった



コンコンッ



「城前に到着しました、ここからはしばらく歩いて下さい」


外から馬車を動かしてくれていた騎士の人の声が聞こえる


「すぐ行きます!!」


2人はそそくさと先に降りて行ってしまった


た、助かった…
もうちょっとでビンタされちゃうとこだった…

脱力感で馬車の中でだらけた状態になる


「大丈夫か?」

「へ…?」


声がした方を見ると、昨日手土産を渡してくれた騎士さんがいた


「ほら…」


スッと手を差し出される


「あ、ありがとうございます…」


凄い無表情だけど私なんかにも手を貸してくれて、良い人だな…

手に捕まって、そのまま馬車を降ろしてもらった


「意外と言うんだな」

「へ?」


あ、もしかしてさっきの馬車の中の会話聞こえてたのかな?


「泣くかと思った」

「あ…あんまりにも散々な言いようだったので、泣くよりも怒りで口の方が先に出ちゃいましたね」  

「そうか、強いな」


そっと頭を手で撫でられる 

えええ!?
これって…慰めてくれてるのかな?

あ…
今一瞬だけど、エメラルドみたいな綺麗な色した瞳が優しくなった気がする


「あ…あの?」


ちょっと待って、いつまで撫でてるんだろ…
流石に顔が熱くなってきたし、恥ずかしいんですが!?


「は…すまない」

「あ…いえ…」

「妹に…雰囲気が似てたからつい…」


な、なるほど、妹さんか!
確かに、私も前世では妹の優奈が大好きだったし、ひっついたり、撫でまわしたくなる気持ちはわかる!

あぁ…優奈はちゃんと元気にやってるかな?
もう会えないけど、思い出したら会いたくなってきちゃった…


「あははっ、妹さんに似てたなら仕方ないですね!」

「あぁ、すまない…」


あ、ちょっと口元が上がった気が…
無表情かと思ったけど、よく見ればわかりやすい人だな


「マナちゃん!!」


少し遠くから私を呼ぶ声が聞こえる


「え…シャ、シャルさん!?」


なんでお城にシャルさんが!?


「あんまりにも遅いから呼びにきちゃったよ」

「なんでここにシャルさんが居るんですか?」


あれ?
そう言えばここしばらくシャルさんの姿を屋敷でも見てなかった気がする…


「何故イシャー…がっ」

「な、何してるんですか!?」


ちょ、ちょっと待って!?
なんで騎士さんの口をシャルさんが手で塞いでるの!?
しかも私に聞こえないように、耳元でなんかヒソヒソ囁いてるし…


「殿下が待ちくたびれてるから早く行こ!」

「へ…きゃっ!?」


ぐいぐい手を引っ張られながら私はシャルさんに連れて行かれました















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