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さよなら俺のバックバージン2※

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 先程の会話で大分むしゃくしゃしていた郁人は目の前に立ちはだかったホテルに半ばヤケクソに入った。先にナオにシャワーを譲ると「逃げないでね」と言われたので「そっちこそ」と言い返した。何か馬鹿にされているような気がしたから。シャワーを終えたナオは、備え付けのテレビを見ていた俺を見つけて、本当に驚いている様子だった。大方、俺が怖気づいて帰るとでも思ったのだろう。やけにシャワーが長かったのは、逃げても良いんだぞというナオからの施しだったのだろうか。それはそれで癪に障る。
 さっさと準備を済まそうと自分もシャワールームへ向かう。男同士のセックスにおいて必要不可欠な洗浄を行う。解しながら自らローションを仕込んでいると、次第に不安を感じてきた。危ない状況なのも、オカシイ状況なのも分かっている。こんなことで自分の所謂処女を失って良いものか。それでも、今まで何度も想像してきた行為への憧れと好きな人と瓜二つの男への欲望は拭いきれない。長いこと、自分の身体を一人で慰めてきた。つまり、郁人の身体はそれなりにというわけだ。

 シャワーが終わると、もしかしたらナオはもう居ないんじゃないか、と不安になった。
 いや、別に居なくなっていたら帰ればいいだけだ︙。
 気にすることじゃない。

 緊張を紛らわそうと丹念に髪を乾かしていると、背後に気配を感じた。驚いて振り向こうとすると、身体に腕が回ってきた。それから、そっとドライヤーを止められ奪われる。鏡越しに映るナオがこちらを睨んでいた︙︙、ような気がする。目が合うと、ナオはにっこりと笑って見せた。

「お兄さん、遅い。もしかして緊張してるの?」
「別に︙、準備してただけです。」

なんかまた、馬鹿にされたような気がして郁人はムスッと言った。
 緊張してないわけがない、はじめてなんだぞ。
 分かってて言ってるのか、この人は。

「じゅんび~?」
「時間掛かるんですよ、どうしても。
 分かってるでしょ、ナオさんなら。」

 この人の口ぶりからして相当遊び歩いているだろう。誘い方も、挑発も、煽るのも、何もかもが慣れている。

「まぁ、いいけどね。そんなことより、早くお兄さんの処女ちょうだい?」

 可愛らしくねだるようにナオは郁人の腕に絡みつき、囁いた。あけすけな誘いが今の郁人には丁度いい。そんなことまで、ナオは分かっているのだろうと郁人は思った。大きめのベッドと趣味の悪い派手な照明、シャワールームから戻ってくるとテレビは消されていた。導かれるまま郁人は、そっと硬いベッドに腰掛ける。すると、ナオの顔が近づいてきて、唇が重なった。

「︙んっ、ふ︙。」

 唇を舌でなぞられ、恐る恐る口を開き、ゆっくりと深くなっていくキスに応える。水の濡れるような卑猥な音が室内に響く。はじめてのキスにしてはあまりに官能的だ。背中をゾクゾクとしたものが駆け抜けて、力が入らなくなる。とろりと蕩けた郁人は、ゆったりとベッドに押し倒されるまま沈んだ。

 気持ち︙、良すぎる︙。

「かわいいね、お兄さん。」
「かわっ︙、男に言う事じゃないですよ。」

 欲を含んだ微笑みに、ついあたるを思い出して、脳がおかしな錯覚を起こす。危ない危ないと、郁人はナオから視線を逸らした。すると、突然甘やかな刺激が走り郁人は思わず小さな悲鳴を上げた。

「︙へぇ、乳首気持ちいいんだ?」
「なっ、ちがっ、あぅっ!」

 羞恥心に耐えられず、咄嗟に違うと言えばやや強くぎゅっと乳首を抓られた。涙目で睨むと、ナオはクスクスと笑って左の乳首に舌を宛てがいチロチロと舐めはじめた。

「はぁっ︙、それだめ、。」

 先程もちらっと言ったが、俺は開発済み処女だ。その開発には、そりゃもちろん、乳首も含まれるわけで︙。快楽とエロへの探究心に抗えなかった俺の乳首は敏感だ。しかも、左が特に。

「あっ、あ、舐めちゃっ。」
 正直、夢にまで見た感覚だった。

「なんか、随分感じやすいね。」

 ナオが冷たく言った。
 快楽に流されていた意識が少し戻ってくる。
 ナオの視線が何故か怒りを含んでいる。

「どうか、した、か?」

 まさか、開発済みなのが不満だったのではないだろうか。もしかして処女厨︙、初な反応を好むタイプだったのか?不安になり、ぐるぐるとアホなことを考える。

「うぁっ!」

 途端に後孔に触れられた。先程解していたそこは、すんなりとナオの指を受け入れる。じわりとローションが溢れ出た。

「︙︙、経験ないんじゃなかったの?」
「︙っ、な、ない。」

 やはり開発済みではダメだったのか⁉
 ナオの剣呑な眼差しに、しどろもどろになる。実際に男とセックスをするのは今日が初めてだ。でも、自分の中に何も入れたことが無いわけじゃない。それなりに立派な玩具を詰め込んできたし、前立腺で快感を得ることも得意になっている。

 玩具といえど、尻を開通させてしまった俺は、もはや処女じゃないのか︙?

「やっぱ、処女厨だった︙?」

 俺の一言にナオがキレた。
 指が一気に入り込み、やや雑に拡げられた。これでも処女だと抗議しようと思ったのも束の間、目に入り込んできたのは、とんでもない凶器だった。雄々しいそれは、今まで挿れてきたどんなディルドよりも大きくグロテスクだった。

 怖気づいた俺は、ベッドの上で逃げた。
 
 その逃げる俺の腰を掴んで、ナオは一気に奥まで入り込んできた。その質量感に息ができなくなって。それからは、もう意識が飛びそうになるくらい激しく抱かれた。



「いやぁっ︙、もう、おわッてぇっ! ああっ!」
 
 腰を打ち付ける卑猥な音がやたらと派手な照明のホテルの一室に響き渡る。
 なんでこんなことになってるんだっけ?

「終わって? お兄さん慣れてるくせに。今までの男、全員童貞だったんじゃない?」
「はっ、ち、ちがうっああっ。」
 男となんてセックスしたこと無い。
 そもそもセックスそのものがはじめてだ。

 ナオは郁人の言葉を無視して腰を動かし続けた。きっと、自分の言葉なんてただの言い訳だと思っているのだろう。

 ただひたすら、抉られるみたいなセックスに涙を流しながら必死に快楽を追った。そうでもしてないと、怖くて、不安で、それから酷く罪悪感に駆られた。処女厨疑惑のナオにではなく、この場にはいないあたるにだ。だって、ナオの苛立った顔があたるに似ていたから。涙で濡れる視界と快楽で乱れる思考で、目の前で自分を抱く男がどうしてもあたるに見えてしまう。

 ごめん、ごめんなさい。
 好きでごめん。

 気を抜けば名前を呼んでしまいそうだった。罪悪感がせり上がってきて、苦しかった。ふざけた思考なんてとっくに消えて、長年ただの幼馴染という面で騙し続けているあたるに申し訳なくなった。

 お前に似てる人を見つけて、セックスしてる俺ってどうしようもないな︙。

 だんだん涙ばかり溢れてきて、ズビズビ泣いているとナオが一瞬だけ少し優しく頬に触れてくれた。それが無性に嬉しくて、ふっと笑ってから郁人は意識を手放した。


    
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