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第零章

第玖話 届いて!この思い!!

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「してその議とは?」

安達泰盛は竹崎季長に問う。

「それがしは異国との戦にて出陣し、敵の首を取ることは叶いませなんだか先懸をし申した。」

やはりなと泰盛は鼻で笑う。

「して証人は誰だ?」

「証人は総大将 少弐景資でございます。
他にも白石殿など証人はおります。」

季長は応える。

「しかし、ここには書かれてはいない。」

泰盛は指摘する。

「それはあちらの不手際でござろう。
総大将に文を送ってくだされ。
真でなければこの首を差し出す所存。」

首を差し出されてもなぁ
文を出したフリをしても届くまでこの鎌倉にずっと居座るだろうな

泰盛は苦い顔をする。

「しかし真であったとしてもおいそれと土地を与えるわけにもいかん。」

「おいは褒美目当てで来たのではござらん。」

季長は反論する。

ん?褒美欲しいからではないのか?

「おいは先懸の功を認めて欲しいが故この鎌倉まで来た。」

泰盛は鳩が豆鉄砲を食らった顔をする。
今まで褒美を出せと訴える御家人は山ほどいたが功を認めよと訴える御家人は初めてだ。

「だがな、功を認めようにも異国との戦の先例がない故判断が難しい。」

泰盛は反論する。
季長は泰盛の顔を睨みながら口を開く。

でござる。先例がないと言い訳にされてはかないませぬ。」

泰盛は言葉に詰まる。
季長は続ける。

「功を認めてもらえぬのなら、この先どう戦で活躍できましょうか。」

泰盛は感嘆な声を上げる。

なかなかの胆力だな
鎌倉ではなかなか見ない気骨のある武士だ。
此奴、なかなか頭が良いではないか
もしかしたら使えるかもしれないな

「其方の言い分、よう分かった。おって沙汰を渡す。暫し、鎌倉で待たれよ。」

その言葉を聞いた季長はパーっと明るい笑顔を見せ首を垂れる。

可愛らしいところもあるではないか

泰盛は微笑む。
泰盛が部屋を出る際、季長はあっと声を上げる。

「なんだ?まだ何かあるのか。」

「それがしが先懸出来たのは国崎季長という武士でございます。あの者がいなければ討ち死にしておりました。
もしあの者がここに来たのであれば、どうか良いように便宜を図っていただけないでしょうか。
おいにとっては恩のある方じゃ。」

「そうか、覚えておこう。」

泰盛は部屋を出る。




泰盛は竹崎季長とのやり取りを思い出す。

「おお、其方が先懸の肥後武者を助けた者か!」

国崎季長は泰盛の態度が急に変わったため
戸惑う。

「その者から良き計らいをしてくれと頼まれておる。」

なんだかよく分からないがこれは締めた。

「では、功を認めてもらえるので?」

「しかしなぁ、、、」

泰盛は言葉を濁す。

「首を二つ取ったというが大将ではなかろう?」

季長は唸る。
確かに季長が討ち取った者は雑兵の首。
大将でもなんでもない首でした。

「他にも同じような御家人もおる。其方だけ褒美をやっては示しがつかぬ。だが、肥後の武者からたのまれておるからのぉ。
少し席を外す。待たれよ。」

泰盛はそう言い残し、部屋を出る。
季長は一人部屋に残される。
外から話し声が聞こえる。
なにやら部屋の外で誰かと相談しているのようだ。
しばらくすると泰盛が戻ってきた。

「喜べ。褒美の土地をやろう。」

「真でございますか!」

急な展開に驚くも喜びの気持ちの方が勝っていた。
季長は立ち上がって喜びそうになるが泰盛の前であるためここは抑える。

「ただし、やってもらいたいことがある。」

「ええ、何なりとおっしゃってください。」

その言葉を聞いた泰盛はニヤリと笑う。



          続
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