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心を重ねて※
しおりを挟む痛いかもとか、怖いかもとか、そんなの考えられないくらい凌河と一つになりたかった。
ただ物凄く緊張したし、恥ずかしかったけど、凌河はどこまでも優しくてただただ好きだなって思った。
初めての刺激も、初めての射精も、気持ち良すぎて頭がぼんやりしたけれど、凌河に与えられるものは何だって嬉しい。
それが例え、逃げ出したくほど恥ずかしい事だとしても。
「んっ、んん…っ」
「痛くない?」
「…たく、ない…っ」
「もう一本増やすね」
「……っ、ぁ、ぅ…んっ」
七瀬は今、人生で一番恥ずかしい格好をしている。
うつ伏せで腰だけを上げているのだが、そのせいで身体の中で最も人に見せない場所を凌河に晒している上、今ではもう指を三本も入れられていた。
七瀬が達した後、寝室内の棚をあさってていた凌河は手にオイルを持って戻ってきてから七瀬をうつ伏せにさせた。
オイルをたっぷり使って時間を掛けて解されたおかげで最初の違和感や圧迫感はないが、その分奥がヒクヒクし始めてもどかしい。
指が出し入れされるたびに聞こえる音にも反応してしまい、無意識に腰が揺れてしまう。
「…どこかな…」
「んっ、ゃ、ぁ、あ……」
三本の指が何かを探すように入り口近くを擦る。ある一箇所に触れられた瞬間七瀬の身体がビクリと跳ねた。
「ひぁっ、あっ、や、そこやだ…っ」
「ここだ」
「んんっ、ゃ、あっ、あっ」
「気持ちいい?」
「わ、わかんな…っ…ひぁ、あ、ぁん…っ」
身体が勝手に震えて甘えた声が止まらない。
七瀬の陰茎からはポタポタと精液混じりの先走りが零れシーツに溜まり始める。そこを大きな手で包まれた。
「もう一回イっとこうか」
「や、触っちゃや…っ、あっんっ、やぁ、あ、──っ、んんっ」
前を擦られ、指の抜き差しも早くされあっという間に昇り詰めた七瀬は指を締め付けながら果てる。足がガクガクして腰に力が入らない。
指が引き抜かれ仰向けにされると、足を開かされた間に凌河が入ってきた。少しだけゴソゴソした後、膝に口付けられる。
「ほんとはうつ伏せの方が楽らしいんだけど、七瀬の顔みたいから…」
「……りょ、が…さん…」
「挿れるよ」
「ん…」
尻たぶが開かれヒクつく場所へ熱いものが宛てがわれる。ぐぐっと先が押し込まれその質量に喉が喘いだ。
「…や…ぁ、おっき…ぃ…」
「…っ…七瀬、そういう事は言わないよ」
「な、んで………っあ!」
ゆっくりとだった挿入が言った瞬間少しだけ強引にされる。凌河が笑った気配がして見上げると、普段よりも色気を纏った綺麗な顔が優しく微笑んでいた。
「こういう事になるから」
「ん、ん…っ」
少し引いて進めるを繰り返される事数回、本当はすぐにでも収めたいだろうに七瀬を気遣ってゆっくりしてくれていた凌河が長く息を吐いた。汗で濡れた前髪を掻き上げる姿が格好良すぎて思わず締め付けると、一瞬眉根を寄せて苦笑する。
「危ないよ、七瀬」
「ぁ…だって……凌河さん、カッコイイ、から…」
「七瀬は可愛いね。……全部入ったの分かる?」
シーツを掴んでいた七瀬の手を凌河が引き結合部へ持っていかれる。触れた場所にはみっちりと太い楔が刺さりほぼ隙間がないほど凌河と密着していた。
「…入ってる…凌河さんの………嬉しい…」
「っ…ごめん七瀬、動く」
「…っん、あ、あっ」
凌河の腰がゆっくりと前後し始める。腸壁が動きに合わせて蠢き意識すればするほど中にいる凌河を締め付けてしまう。
「…七瀬、ちょっと力抜ける……?」
「あ、あ、出来な…や、んっ」
何もかも初めてでどうすればいいかなんて分からない。
七瀬はふるふると首を振り縋るように凌河の腕を掴んだ。凌河は緩やかに勃つ中心を握ると少しだけ上下させる。
おかげで今度は前に意識がいき後ろが緩んだが、瞬間凌河の動きが早くなった。
「ひぁ、あっ、や、やぁっ」
「ごめんね…俺も、限界…」
「そこやだ…っ、あ、んっ、んん…っ」
ベッドが軋むほどの激しさは七瀬の想定外だ。初心者にはキツすぎる。
だが、涙が滲む目で見た凌河の表情が切なくて苦しそうで、七瀬は重怠い腕を持ち上げた。
気付いた凌河が吐息だけで笑い身を屈めくれたその首に抱き着く。
「あ、あ、凌河さ…っ、ん…すき……っ…凌河さんが、好き……っ」
「うん……俺も七瀬が好きだよ…」
「あっ、だ、ダメっ、触っちゃ、また…っ」
「…っ、…一緒にイこうな…」
前立腺と奥と前を同時に刺激され頭の中がぐるぐるする。目の奥がチカチカして腰が戦慄いた。
「やぁっ、あっ、も、出ちゃ…っ…ん、あ、あ…っ…─ッひ、ぁあっ!」
「……っ…」
首に回した腕が無意識に背中へと爪を立て七瀬は果てる。その締め付けで凌河も吐精すれば、七瀬の力がふっと抜けベッドに沈み込んだ。
肩で息をしながら顔を見るとどうやら気を失ったようで、凌河はやり過ぎたかと苦笑してしまう。
だが、心は落ち着いていた。
兄のように、際限なく恋人を貪りたいとは思わないでもないが、それでも理性は働いている。
凌河は七瀬の中から自身を抜きゴムを外して下だけを身に付けると、寝息を立て始めた七瀬を抱き上げ寝室を出た。
浴室で七瀬を洗い、凌河は汗を流す程度で入浴を終えると拭くのもそこそこに、逆にしっかり拭いた七瀬をソファに寝かせて寝室へ戻った。
汚れたシーツを取り替えれば再び七瀬と共にベッドへ入る。
今日一日で心身共に疲れてしまった七瀬は、身動ぎ一つせず熟睡しているため明日の朝まで起きないだろう。
凌河はあどけない表情で眠る七瀬を腕に抱き込み、久しぶりの穏やかな眠りに落ちていった。
遠くで何か音が聞こえる。
隣にあった温もりが離れ、僅かな揺れとともにいなくなり、七瀬はぼんやりと目を開けた。
最初に思ったのはベッドの柔らかさ、全方位から香るムスクは七瀬が大好きなものだ。そうしてやっと昨夜の事を思い出す。
「……!」
そうだ、昨日やっと、本当の意味で凌河のものになれた。
ずっとずっと望んでいた事が叶い、七瀬は改めて嬉しくなる。
背中を丸めて幸せを噛み締めていると、ベッドの軋みと共に頭を撫でられた。
「七瀬、起きた?」
「…はい、おはようございます」
「おはよ。身体は? 気分は悪くない?」
言われてた起き上がろうとする。しかし腰の鈍い痛みと怠さに敢えなく撃沈し再びベッドに沈んだ。
その様子に凌河は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん、最後手加減出来なかった」
「いえ、そんな、大丈夫です…!」
すべて合意の上だし、手加減が出来なくなるほど求めてくれたならそれはそれで嬉しい。
七瀬は眉尻を下げる姿にどうしたものかと考え、ふと昨日進から聞かされた事を思い出した。目を伏せた姿が、今なら彼に重なる。
「俺が三年前に手当てしたの、凌河さんだったんですね」
「…思い出したの?」
「進さんに言われて、改めてよく考えたんです。凌河さんの顔見た事ある気がするのに、どこで見たとか全然思い出せなくて。三年前って言われてピンと来ました。そうだ、あの人だって」
「あの時は傷だらけだったし、雨でずぶ濡れになってたからね」
「ずっと、探しててくれたんですか?」
「……探してた。どれだけ時間がかかっても絶対見付けたいって、そう思ってたから」
長い指が頬を撫で擽ったさに目を閉じる。
影が出来た事に気付いて開けると、真上から見下ろされていた。
「やっと見付けて、俺のものに出来た。……七瀬、これからも俺の傍にいてくれる?」
こめかみ、目元、頬に唇が押し当てられ青い目が至近距離で七瀬を見つめて問い掛ける。
夏の澄んだ空のように綺麗な瞳にはしっかりと七瀬が映り、泣きたくなるほど嬉しくなった。
あと少しで唇が触れる。
「はい、います。ずっとずっと傍にいます。約束です」
「七瀬との約束、どんどん増えるね」
「全部叶えましょうね」
「ん。七瀬が望むなら何だって叶えてあげる」
「凌河さんがいてくれるなら、全部叶ったようなものです」
「無欲だなぁ」
笑う彼の吐息が唇にかかる。
七瀬は目を閉じて少しだけ喉を反らした。
「……愛してるよ」
触れる直前の甘い愛の言葉はしっかりと七瀬の耳から全身に染み渡り、あの頃よりも成長した少年は花が咲き誇るように変わらない笑顔で笑った。
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