昼休みは紙月堂で――元会社員と元同僚がつくる、ひと息つける文具店

乾為天女

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第8話 「しごと雑貨」の棚づくり

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 日曜日の午前中、星見商店街のアーケードは、平日とは違うゆるい空気に包まれていた。


 パン屋からは焼きたての食パンの甘い匂いが流れてきて、八百屋の店先には色の濃いトマトが山のように積まれている。家族連れがスーパーの袋を片手に歩き、子どもがアイスをかじりながら親の手を引っ張っていく。


 その端で、紙月堂のガラス戸には、今日も「準備中」の札がかかっていた。


 ただし、いつもと違うのは、店の真ん中にそびえ立つ棚のまわりに、段ボールと紙袋が積み上がっていることだった。


 「……なんで、こうなったんだっけ」


 悠之介は、棚の前で腕を組んだまま、深いため息をついた。


 祖父の代から使っている木の棚。キャスター付きで動かしやすいのが取り柄だが、今はその棚が、バラバラに集められたノートやペン、付箋やタイマー、マグカップ、メモスタンドに占拠されている。


 棚のいちばん上には、紗菜の字で書かれた紙が一枚貼ってある。


 『しごと雑貨コーナー 検討中』


 検討中、という言葉が、すでに長居している気配を漂わせていた。


 「検討中のまま店を開けるわけにもいかないからな……」


 悠之介が、棚の端を指でつついていると、ガラス戸の外から軽いノックの音がした。


 「おっはよー、棚会議参加者、ただいま参上!」


 勢いよく戸を開けて入ってきたのは臣全だった。肩には自分の店のロゴが入ったトートバッグ、手には紙月堂の図面らしき紙束を抱えている。


 「会議って言うな。ただの棚の整理だ」


 「いやいや、『ただの棚の整理』って呼ぶと誰も来なくなるよ? ちゃんと名前付けないと。今日これから決めるのは、『星見商店街・働く人向けのベースキャンプ棚』だよ。ほら、ちょっとワクワクしてこない?」


 「長いし、余計分かりづらい」


 悠之介が顔をしかめていると、ガラス戸がもう一度開いた。


 「失礼します。差し入れ持ってきました」


 亜友が、白い紙箱を抱えて立っていた。箱の上には、小さなシールで「きなこぼー」の文字。


 「きなこ棒?」


 「仕込みの合間に作った、仕事中でも片手で食べられるやつです。『しごと雑貨』の棚づくりに、エネルギーは必要だと思って」


 いつものエプロン姿のまま、亜友は棚の近くのテーブルに箱を置いた。きなこの香りがふわりと広がる。


 「お菓子があるなら、とりあえずがんばれそうな気がしてきました」


 紗菜がカウンターの奥から現れた。すでにノートと色ペンを片手に持ち、やる気だけは十分に見える。


 「靖治は?」


 「……今、来ました」


 少し遅れて、靖治がエプロンを片手に頭をかきながら入ってきた。肩から下げたリュックのファスナーが半分開いていて、中から教科書らしきものが見えている。


 「棚づくりって聞いたんですけど、筋トレ量はどのくらいです?」


 「筋トレ前提にするな」


 悠之介は、あきれながらも笑ってしまう。


 「今日は、重い段ボールを動かすのは最初だけ。あとは頭の方を筋トレしてもらう」


 「頭の筋トレ……それはそれで嫌な予感しかしないですね」


 靖治は、しぶしぶエプロンを身につけた。


 「よし、じゃあ全員そろったところで」


 紗菜が、真ん中の棚の前に立つ。


 「改めて、この棚をどう使うか、考え直したいと思います」


 「今のままでもいいんじゃない?」


 臣全が、棚の中段を指さす。


 そこには、ノートや付箋、ホッチキス、ペンが、見事に雑多に並んでいる。祖父の時代から売れ残っていたものと、最近入れた新しい商品が混ざり合い、買う側からすると選びにくいことこの上ない状態だった。


 「『これください』って言われたら、店長が棚の前で固まるやつだよね」


 「固まってない。ちょっと探してるだけだ」


 「それを固まるって言うんだよ」


 言い合いになりかけたところで、紗菜がノートの表紙をぱん、と叩いた。


 「はいはい。いったん、この棚に何を置きたいか、全部書き出してみようか」


 紗菜は、大きめのノートを棚の前の小さなテーブルに広げた。


 「『しごと雑貨』って、つまり『仕事をするときに役に立つもの』だよね。でも、その中にも種類があるはずだから」


 「種類?」


 「うん。たとえば、『新人さん向け』『忙しい人向け』『休憩下手な人向け』とか」


 紗菜の言葉に、亜友がそっと目を細める。


 「『新人さん向け』って、具体的に言うと?」


 「職種ごとに、『この仕事を始めたときに持ってたらちょっと安心するセット』を考えたいんだ」


 紗菜は、ページにさっと線を引き、「営業さん」「看護師さん」「事務」「飲食」などの文字を書き込んでいく。


 「営業さんには、日付入りのノートと、タフそうなボールペンと、名刺を仮置きできるメモスタンド。看護師さんには、防水のメモ帳と、胸ポケットに刺しても落ちにくいペンとか」


 「……昨日の看護師さん、思い出した?」


 悠之介が、少しだけ声を落として尋ねた。


 紗菜は、短くうなずく。


 「ここに来る人の仕事、全部を知るのは無理だけど、『こういう道具があるよ』って見えるだけでも、少し安心するかなって」


 「新人さん向けコーナー……」


 亜友が、紙の端に小さく「新人」と書き添えた。


 「うちの店にも、初めて包丁を握る子が来るときは、『これ一本だけでいいよ』ってすすめる包丁があるんです。全部そろえなくてもいいから、まずはここからって言える物があると、相手もこちらも少し楽になります」


 「おお、それ、いいね」


 臣全が身を乗り出した。


 「じゃあ俺は、『売れ筋ベスト5』コーナーやりたい!」


 さっそく手を挙げる。


 「ランキング表をドーンと貼って、『人気ナンバーワンのノートはこちら!』みたいな。数字出ると分かりやすいし、見栄えもするし、何より、『俺が仕事してる感』が出る」


 「自分の仕事アピール優先か」


 「いやいや、お客さんも『みんなが使ってるなら』って安心するって。うちの店でも、ランキングボード出したら売上伸びたし」


 たしかに、臣全の店の前には、いつも「人気ベスト3」が手書きで掲示されている。あのボード目当てで足を止める人が多いのも、悠之介は知っていた。


 「ランキングはあってもいいけど」


 紗菜がペンをくるくる回しながら言う。


 「『人気があるから』だけで選ぶと、『自分には合わないけど、まあいっか』って道具も増えそうで、ちょっと心配かな」


 「じゃあ、『新人さん向け』の中でのランキングってのは?」


 「それはありかもね」


 ノートの上に、「新人セット内ランキング」という謎の文字が追加される。


 「で、俺の案は?」


 靖治が、机の端に肘をついていた頭を上げた。


 「『やる気が出ない日の棚』」


 「名前からして、暗くない?」


 「いや、逆です。やる気が出ないのは前提として認めた上で、『それでも最低限ここまでやれば今日を終えられる』って道具をまとめるんです」


 靖治は、指を折りながら挙げていく。


 「締め切りまであと一週間あるのに、今日どうしても手が動かない日用の、チェックリストメモとか。『今日一個だけやること』を書いて壁に貼る付箋とか。あと、『今日の仕事はここまで』って線を引くペン」


 「線を引くペン?」


 「ノートのページの途中に、『ここまでやった』って線を引くためのペンです。色がはっきりしてて、あとで見返したときに、『あの日、この線まではがんばったんだな』って分かる」


 説明を聞いているうちに、誰も笑わなくなっていた。


 「……それ、いいかもしれない」


 悠之介は、思わずメモ帳に「ここまでペン」と書き込む。


 「在庫に、赤いラインマーカーがあったはずだな」


 「名前の付け方だけで、印象変わりそうですね」


 亜友が、小さく頷く。


 「『やる気がない人向け』じゃなくて、『今日ここまでやれた人向け』とか」


 「言葉の筋トレですね」


 靖治がぼそっと言う。


 「静かな筋トレ、ここにもあったか」


 紗菜が笑い、場の空気が少し和らいだ。


 「で」


 ここまでの意見を聞いていた亜友が、そっと手を挙げた。


 「棚の一部を、『休憩の時間をつくる道具』としてまとめてみるのはどうでしょう」


 「休憩の時間を、つくる?」


 悠之介が、言葉を繰り返す。


 「はい」


 亜友は、エプロンのポケットから小さなタイマーを取り出した。


 「うちの店では、仕込みの途中に必ず十五分の休憩を二回入れています。さっきお話しした通り、順番を決めておかないと、忙しくなると一番最初に休憩が削られてしまうから」


 タイマーの背面には、油のしみが少し残っている。


 「このタイマーは、『休むために鳴る』んです。生地を寝かせる時間と、私が腰を伸ばす時間を、両方守ってくれる道具」


 そう言って、タイマーをテーブルの上に置いた。


 「同じように、仕事をしている人にも、『休む時間を守る道具』があっていいと思うんです。好きなマグカップでもいいし、『ここで一度ペンを置く』ためのしおりでもいい」


 「『ここで一度ペンを置くしおり』?」


 「はい。ノートのページに挟んでおいて、『このしおりが見えたら、五分だけ席を立つ』みたいな」


 言葉に合わせて、亜友はメモ用紙の端を折り、即席のしおりを作ってみせる。


 「休憩って、『空いた時間』じゃなくて、『つくる時間』なんだな」


 悠之介は、小さく呟いた。


 祖父の帳簿のページを思い出す。数字の列の途中に、ときどき不自然な空白があった。そこが、きっと休憩の時間だったのだろうと、今になって気づく。


 「『休憩の時間をつくる道具』か……」


 悠之介は、ノートにそう書き込み、その文字を囲むように線を引いた。


 「この言葉は、棚のどこかに残したいな」


 「じゃあ整理すると」


 紗菜が、ノートのページを新しくめくった。


 「この棚を、大きく三つに分けるのはどう?」


 ペン先で、ページの中を三等分する。


 「一つ目は、『考えをまとめる道具』。ノート、付箋、ペン、チェックリスト」


 「二つ目は?」


 「『人に伝える道具』。封筒、名刺ケース、メモスタンド、提出用のきれいなノートとか」


 「三つ目が、『休憩の時間をつくる道具』」


 亜友が、そっと言葉を重ねる。


 「マグカップ、タイマー、しおり、甘い飴」


 「甘い飴も、棚に置くのか?」


 「『亜友堂と紙月堂の共同企画』ってシールを貼れば、きっとそれっぽくなりますよ」


 「企画って言葉はさらっと出てくるのに」


 悠之介が苦笑する。


 「まあ、飴は置くとして」


 臣全が、ページを覗き込みながら言う。


 「ランキングは、この三つの中にそれぞれ作ればいいんじゃない? 『考えをまとめる道具ベスト3』『人に伝える道具ベスト3』『休憩をつくる道具ベスト3』って」


 「欲張りだな」


 「棚が三段あるから、ちょうどいいでしょ」


 言われてみれば、その通りだった。


 いちばん上の段には、「考えをまとめる道具」。目線の高さに「人に伝える道具」。しゃがんだ位置に「休憩の時間をつくる道具」。


 「休憩の道具、いちばん下なんですね」


 靖治が、少し不満そうに言う。


 「下向いて立ち止まってもらえるから、案外目立つかもよ」


 紗菜が言う。


 「それに、しゃがむと自然と息も深くなるから」


 亜友のその一言に、全員が「なるほど」とうなずいた。


 「じゃあ、具体的に置いていこうか」


 そこからは、棚の模様替えが本格的に始まった。


 靖治は、段ボールからノートを取り出して、「考えをまとめる道具」の段に整然と並べていく。表紙の色が隣同士で喧嘩しないように、グラデーションを意識しているあたり、妙にセンスが良い。


 「このノート、『新人さん向け』って札を付けるなら、どこに置く?」


 「目線の高さより、少し下じゃないかな」


 紗菜が、札用の小さなカードに「新人さんの最初の一冊」と書き込む。


 「目線より少し下だと、『自分で選んだ感』が出るから」


 「名札の位置みたいですね」


 亜友が、くすりと笑う。


 臣全は、売上データを見ながら、「ベスト3」の札をせっせと作っていく。


 「ホッチキス、意外と売れてるな」


 「一回切らすと困るから、みんなまとめて買っていくからね」


 「じゃあ、ホッチキスは『人に伝える道具』の段の真ん中に」


 札には、「会議前に焦らないホッチキス」と、なぜか余計な一言が添えられた。


 「そのキャッチコピー、誰向けだ」


 「昔の店長向け」


 紗菜がさらっと言って、悠之介は言葉に詰まる。


 「……否定できない」


 しゃがんだ先の棚では、亜友と靖治が「休憩の時間をつくる道具」を並べていた。


 「このマグカップ、『三十分休憩』って書くのはちょっと重いですよね」


 「そうですね。『休憩の合図』くらいにしておきましょうか」


 札には、「ここで一口、お茶をどうぞ」と控えめな文字が並んだ。


 「タイマーには?」


 「『休むために鳴ります』」


 亜友の提案に、靖治が笑う。


 「仕事再開の合図じゃなくて?」


 「両方です。でも、この棚に置くときは、『休むため』って書きたいなと思って」


 しゃがんだ姿勢のまま、亜友はタイマーの横に小さな札を立てた。


 棚が少しずつ埋まっていくにつれ、店の真ん中の空気も変わっていく。


 バラバラに積まれていた段ボールが片付き、代わりに小さな札と整った配置が目に入るようになった。


 「……だいぶ、店らしくなってきたな」


 悠之介は、少し離れた場所から棚全体を眺めた。


 上の段には、「考えをまとめる道具」と書かれた札。その下に、リングノートや付箋、色分けされたペン。


 真ん中の段には、「人に伝える道具」。封筒、ホッチキス、名刺ケース。右端には、小さく「新人さん向け」の札がぶら下がっている。


 いちばん下の段には、「休憩の時間をつくる道具」。マグカップ、タイマー、しおり、そして小さな飴の瓶。棚の端には、「亜友堂・紙月堂 ひと息セット」と書かれた札が貼られていた。


 「店長」


 紗菜が、隣に立ちながら言う。


 「さっきメモしてた言葉、どこかに出しておく?」


 「『休憩の時間をつくる道具』か?」


 「うん」


 悠之介は、ポケットから小さなメモ帳を取り出し、さきほど囲んだ言葉のページを開いた。


 「……この棚のいちばん上に、小さく貼ろう」


 カウンターの中から取り出した細長い紙に、丁寧な字でその言葉を書き込む。


 『ここにあるのは、仕事の時間と、休憩の時間をつくる道具です』


 それを、棚のいちばん上の縁にテープで貼り付けた。


 「説明書きとしては、ちょっと長いかな」


 臣全が首をかしげる。


 「でも、悪くないよ」


 紗菜が、しっかりとした声で言った。


 「ここに来る人が、自分の仕事を思い浮かべながら読んでくれたら、それで十分」


 「読んだ瞬間、『あ、今休憩してないな』って気づかれるかもしれませんね」


 亜友が、やわらかく笑う。


 「そのときのために、きなこ棒をここに」


 靖治が、亜友堂からの差し入れの箱を棚の下段に持っていこうとして、慌てて止められた。


 「それは売り物じゃないから」


 「ですよね」


 きなこ棒は、結局、棚づくりメンバーのおやつとしてテーブルに戻された。


 ひととおり棚が整ったころ、店の外から、おそるおそる覗き込む視線があった。


 仕事帰りらしい女性が、紙月堂の中を眺めている。ショルダーバッグの肩紐が食い込み、手には薄い資料の束。


 彼女の視線は、「新人さんの最初の一冊」と書かれた札のあたりで止まった。


 「まだ開店前ですよ」


 悠之介がガラス戸を少し開けて声をかけると、女性ははっとして頭を下げた。


 「すみません。通りかかっただけで」


 「仕事、始まったばかりですか?」


 紗菜が、何気ないように尋ねる。


 「はい。今年の春からで……」


 言いかけて、女性は棚の札をもう一度見た。


 「開店したら、また来てもいいですか」


 「もちろん」


 悠之介は、静かにうなずいた。


 「そのときまでに、この棚の筋トレを終わらせておきます」


 冗談めかして言うと、女性は少しだけ笑った。


 ガラス戸が閉まり、再び「準備中」の札だけが揺れる。


 「……筋トレって言葉、だんだん店の口癖になってきましたね」


 靖治が、きなこ棒をかじりながら言った。


 「まあ、重いものを持ち上げるだけが筋トレじゃないってことだ」


 悠之介は、棚の前に立ち、もう一度ゆっくりと全体を眺めた。


 仕事の時間と、休憩の時間。


 その両方を支える道具たちが、ひとまとめに並んでいる。


 この棚の前で、誰かが自分の働き方をほんの少しでも考え直してくれたら。


 その願いを、悠之介は言葉にはせず、棚の木の感触にそっと手のひらを預けた。
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