冷凍庫の奥には“夢”がある〜中学生が『働く』で気づいた、見えない価値と未来のバトン〜

乾為天女

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第十四話:やりがいって、どこにある?

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 師走の風が吹きつける週末の午後、地域の交流センターで「職業発見フェア」が開かれた。
  さまざまな職業の体験ブースが並び、小学生から中学生までの参加者たちでにぎわっている。
 雅也たち七人は、その中でも異色のブース──「中学生が語る“はたらく”」というコーナーを任されていた。
「こっちは企業じゃなくて、“働くことを体験した中学生”としての出展ってことね」
 恵美が配布用の資料を並べながら言う。
「いわば、“働くって何?”を考える人たちの目線だな」
 夏輝が壁に模造紙を貼りながら頷く。
 そこには、彼らのこれまでの活動がシンプルな言葉でまとめられていた。

【わたしたちの“はたらいた”経験】
 ・冷凍食品工場での袋詰め
 ・清掃センターでの資源分別と街のゴミ拾い
 ・高齢者宅での生活支援ボランティア
【そこで感じたこと】
 ・仕事には見えない成果がある
 ・「やらないと困る」を支える人がいる
 ・感謝されない仕事ほど、実は大切

 その内容に足を止めたのは、ある小学6年生の男の子だった。
「なんか……仕事って、けっこう地味?」
「そう思うかもしれない。でも、“地味だからこそすごい”ってこと、あるよ」
 雅也が笑って答えた。
「たとえば、ゴミを拾うのって目立たない。でもさ、
  そのゴミがなかったら、“気持ちよく歩ける”でしょ?
  “あたりまえ”を守る人がいるって、すごいことなんだよ」
「へぇ……じゃあ、“やりがい”って、どこにあるの?」
 その質問に、雅也は少し考え込んだ。



 少し沈黙ののち、雅也が言った。
「“やりがい”って、“気づいたとき”に出てくるものだと思う。
  仕事してるときは、しんどかったり、面倒だったりすることの方が多い。
  でも、“終わったあとに、自分が誰かのためになってた”って気づいたとき──
  そこに“やってよかった”って思える瞬間がある。たぶん、それが“やりがい”なんだと思う」
 男の子は、黙って頷いていた。
 そのやり取りを聞いていた別の保護者がつぶやいた。
「中学生に、そんなこと言われるなんて……。
  うちの職場の新人にも聞かせたいわね」
 
  イベント後の片づけ中。雅也たちは、折りたたみ机を運びながら話した。
「“やりがい”って、“先にあるゴール”だと思ってたけど、
  今日みたいに誰かの言葉で“自分の過去”が意味を持つときにも、生まれるんだな」
「“過去が未来に変わる瞬間”か。
  それって、すごく“仕事っぽい”感じ」
 華の言葉に、優花が静かに頷く。
「“評価されないこと”を続けるのって、大人でも難しい。
  でも、“意味があるかどうか”は、自分の中で決めていいって、私は思う」
 
  ふと、拓馬がぽんと手を打った。
「なぁ、“やりがい”って、“誰かと気持ちを共有したとき”に一番強く感じるんじゃない?
  冷凍庫での袋詰めも、公園清掃も、おじいちゃん宅での買い物も、
  一人でやってたらたぶん、つらくて終わってたかも」
「そうかも。“一緒にやってる誰か”がいたから、つながってたんだな」
 
  その夜、雅也は自分の部屋でノートを広げ、こう書いた。
 ──「やりがいは、だれかと“通じ合えた”ときに、生まれる。」
  ──「仕事は、誰かと同じ景色を見るチャンスでもある。」

(第十四話 了)

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