冷凍庫の奥には“夢”がある〜中学生が『働く』で気づいた、見えない価値と未来のバトン〜

乾為天女

文字の大きさ
15 / 20

第十五話:ちいさな「できる」が、未来を変える

しおりを挟む
 冬休みを前にしたある放課後、図書館の学習室にて。
  雅也たちは“これまでの活動を、次の誰かにどう伝えるか”というテーマで話し合っていた。
「“働く”っていう言葉、重いよな。
  中学生の自分たちが、それを語るってどうなんだろう」
 雅也がぽつりと言うと、大河がゆっくりうなずいた。
「でも、“始まりの一歩”は、自分たちが踏み出したことに変わりはないよ。
  “できることから始めた”っていう事実が、意外と大事なんじゃないかな」
 優花が頷く。
「“できること”が少しでもあると、自信になる。
  そしてそれが、また次の“誰か”に伝わっていく──そういう循環、作れたらいいな」
 すると、恵美が手帳をめくりながら提案した。
「じゃあ、“ちいさなできる”をテーマに、中学校で“職業ミニ講話”やらない?」
「……中学生が中学生に“働く”を話すってこと?」
「うん。“おしごと”って、大人の話ばかりじゃなくてもいい。
  “同じ目線の人の言葉”だから、伝わることがあると思う」
「やる!」
 真っ先に手を挙げたのは拓馬だった。
「先生たちに頼んで、“総合学習”の時間を少しもらおう! “未来の自分”を考える授業ってことで!」
 その勢いに、大河も静かに笑った。
「よし、じゃあ“自分たちのやってきたこと”を全部振り返ろう。
  冷凍工場、清掃センター、ボランティア……それぞれの中で、何を“できるようになった”かを」



 数日後。教頭先生の許可も得て、「未来を考える特別授業」の開催が決まった。
  講師は──中学一年A組、雅也たち7人。
 会場の多目的ホールに、全学年の生徒が集まる。
  舞台の上、緊張しながらも立つ雅也は、マイクを握って深呼吸した。
「こんにちは。僕たちは、この数ヶ月“働くことって何だろう?”を体験しながら考えてきました。
  今日は、“働いたことがない中学生”なりの視点から、“仕事ってなんだろう”を伝えたいと思います」
 スライドが映し出される。冷凍工場の袋詰め作業の様子。
「初めての仕事は、“同じ作業のくり返し”でした。
  でも、そこには“時間との勝負”も“誰かとの連携”もあって、“簡単”じゃありませんでした」
「“目立たない仕事”にこそ、“誰かを支えてる実感”があるって、初めて知りました」
 次に映されたのは、清掃センターでの写真。街のゴミ拾い。分別。
「この仕事は、“やってる人が見えにくい”です。
  でも、ゴミがなかったら、街は歩きにくいし、景色も変わってしまう。
  “ない”っていう状態を守る仕事があるって、気づきました」
 さらに、高齢者支援ボランティアの様子が映る。
「“働く”って、お金のことだけじゃありませんでした。
  “誰かのために、自分の時間を使う”っていう行動そのものが、
  “おしごと”になるって、僕たちは体で感じました」
 
  最後に、恵美が語りかけた。
「仕事って、“すごいこと”じゃなくてもいい。
  “ちょっとしたできる”が、誰かの役に立つこともあります。
  たとえば、“買い物メモを読む力”も、“道を覚える力”も、“相手の目を見て話せる”ことも──」
「その全部が、“誰かの未来を支える力”になります」
 
  発表が終わると、ホールにはしばしの静寂が広がり──やがて、大きな拍手が湧き起こった。
 舞台袖に戻った雅也が、小さな声でつぶやく。
「なんか……やっと、自分の“できること”が、ちょっとだけ“意味のあるもの”に見えた気がする」
「うん、“未来”って、もう始まってるのかもね」
 恵美の言葉に、雅也は照れくさそうに笑った。

(第十五話 了)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

ゆずことまほうのてがみ

結崎悠菜@w@
絵本
ゆずこはおかあさんもおとうさんもだいすきです。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

処理中です...