文化祭実行委員会、恋も友情も停電も!―桜陽高校ラブフェスティバル―

乾為天女

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第25話「フィナーレ、光の階段」

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 午後七時。気づけば、桜陽高校の空がすっかり夕闇に染まっていた。
 校庭の中央には、白い紙で包まれたランタンが整然と並び、ひとつひとつに想いを込めた生徒たちが灯りの点火を待っていた。百合香は、持ち場のチェックリストを握りしめながら、まっすぐな眼差しで最後の確認に走っていた。
「…あと六分。スイッチの確認、頼んだわよ」
 真緒は、LEDスカイランタンの電源ユニットを片手にうなずいた。
「OK、バッチリ。こっちは二重チェック済み」
 百合香は一度、大きく息を吸い込み、背後を振り返った。遥輝と希が中央付近の導線を整備しているのが見えた。互いにアイコンタクトを交わすと、遠くても空気が通じ合うような、不思議な安心感が胸に流れた。
 そのとき、スピーカーから優作の落ち着いた声が響いた。
「これより、フィナーレイベント『光の階段』を開始します。すべてのスカイランタンに電源を入れてください」
 全員の手元で、小さなスイッチが同時に押された。LEDの灯りが一斉に灯ると、ふわり、ふわりと夜空に浮かぶ紙の灯籠が、風に合わせてゆっくりと揺れ始める。
「わ……」
 無数の光が、空へ向かうように配置された階段のように立ち上がり、校舎を背景に幻想的な光景を作り出していた。歓声が自然とあがり、涙ぐむ生徒もちらほらといた。
 希は、ふと隣に立っていた遥輝の顔を見上げた。
「ねえ…遥輝」
「ん?」
「こういうの、…なんていうか……ズルいくらい綺麗」
 遥輝は少し目を細めてから、笑った。
「ズルいのは希のその顔だと思うけど」
「は?」
「泣きそうな顔なのに、怒ったような声出すんだもん」
「……別に、泣いてないし」
 そう言って視線を逸らす希の肩が、ほんの少し震えていた。それを見た遥輝は、そっとその肩に手を添えた。
「怒ってるなら、ちゃんと理由聞くよ。泣いてるなら、黙って隣にいる」
「…ずるい。どっちに転んでもあんた得じゃん」
「うん、得する方がいいでしょ?」
 希は小さく息を呑んだあと、ぽつりと呟いた。
「……あたしも、隣にいたいって思ってた。だから、ずるくてもいいやって、今は思ってる」
 その瞬間、百合香の声が校内に響いた。
「みんな!上を見て!」
 全員が一斉に空を見上げる。ランタンの光が、ゆっくりと空を登っていくように見える配置になっており、まるで夜空に向かって続く階段を昇っているかのような錯覚を覚える。中には、星型やハート型の光を演出したものもあり、生徒たちが自主的に工夫を凝らした結果が彩っていた。
 そのなかに、ひときわ輝くひとつのランタンがあった。中央に「ありがとう」と書かれたそれは、誰のものか、言わずとも皆がわかっていた。
 遥輝の目が細くなる。希も、それを見つめながら、笑った。
「……あたしたち、なんだかんだで、ちゃんとここまで来たんだね」
「ああ。希が引っ張ってくれたから」
「ちがう。……一緒に走ったから、でしょ?」
 二人の視線が重なる。
 その瞬間、暗がりの奥で俊介が音響を調整しながら、ぽつりと呟いた。
「……まったく、これが学園恋愛とかってやつかよ」
 隣で控えていた亮汰がニヤリと笑って言った。
「お前も明日から誰かに告白してみろよ」
「黙れ。そういうのはお前の専門だろ」
 真緒が、二人の会話を聞きつけてクスクスと笑う。百合香は、遠くからそのやりとりを見ていて、胸の内でつぶやいた。
(もうすぐ、終わる。でも、きっとここから始まる――)
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