実話怪談・短編集◆とほかみ◆

茶房の幽霊店主

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◆なまなり◆

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※(店主と職場の元先輩の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)



【六条御息所】


ずっと昔の話なのですが、職場の先輩からここ数カ月、異常な倦怠感、眠気、 目覚めた朝も滝のように汗が流れている。

病院へ行っても検査結果に異常はなく、いたって健康であると言われ、原因不明の体調不良が続いている。そういった内容で相談を受けました。

『体調不良の原因』は超常的ものなのか、違うのか、そして『対処法』はあるのかを聞きたかったのだと思います。

当時の彼氏と付き合い始めてから不調がでてくるようになり、日常的に口喧嘩が絶えなかったので、単なるストレスからだと思って放置していたそうですが、日を追うごとに体の重さと日中の眠気が強くなって 不安を感じていると。

『もしかしたら、生霊(いきりょう)を飛ばしているかもしれない』

本人に心当たりがある様子。
数日後、先輩は原付で彼氏に会いにいく途中、縁石へ乗り上げて土手まで吹っ飛び、右手を骨折し 両足を捻挫。

しばらく出勤できなくなったのですが、電話での相談は続いていました。


※※※※※


『とにかく、彼と話しているとイライラする。向こうから告白されて付き合いはじめたのだけれど、彼の言葉が何もかも気に入らない。憎いとさえ思う。言い争っている時の自分が自分ではないような、ものすごい暴言を吐いてしまう』

そこまで相性が悪いのになぜ交際を続けるのか。

『別れたほうがいいのはわかっているのに、いざ、別れるを切り出そうとすると寂しくなる』

何かしら因縁ある相手 かもしれませんし、本人同士は関係なく切れてしまう縁もあります。

もう一つの可能性として、彼氏が以前 お付き合いしていた人がいたのなら、原因は先輩と彼氏だけではないかもしれません。
今のところ、不運なのは先輩だけで、彼氏の方は特に何も起こっていなかったからです。

病院では健康体であるとの結果でしたから、この時点で仏神に関わる方への相談とお清めを勧めています。

『お祓いするまでもない気がする。男女関係でおおごとにしたくない』

祓われたくない。 そんな、頑なさを感じました。


※※※※※


怪我の療養中でもありますし、それを押して神社仏閣へ行けと強いるのはなかなか言えないものです。

ひとつの方法を先輩に試していただき、数日ようすをみてもらうことにしました。
間が少し空き、報告がありました。

『彼とは別れた。やっぱり私が生霊を飛ばしていたわ。……他もあったみたい』

夜、自宅で寝ていると、なぜか彼氏の家の中だったそうで、天井へ自分が貼りつて寝ている彼氏を見下ろしていた。
じっと見ていると彼が目を覚まし、天井の先輩に気が付いてパニックになる姿を、ただ、無感情のまま観察していたそうです。

そして、 彼氏の部屋の隅へ女性が立っていたのを見つけた時、元彼女も生霊になっているのだと確信したのだとか。

翌日、彼氏から電話があり

『天井におまえが貼りついて凄い目で睨んでいた。(先輩の名前)が体調が悪くなったり事故したりで色々怖い。俺から付き合ってくれと告白したけど。ごめん、別れよう』

夢うつつの中で、部屋の隅へ女性が立っていたのを話すと

『以前、幼なじみと付き合っていたけど、きちんと別れた。でも、幼なじみは納得していない感じだった』

その後の先輩は、体調も良くなり怪我も治って復帰。生気のある晴々した表情でした。

『生霊同士で彼氏を取り合っていたとは思わなかった。そこまで好きでもなかったのに、なぜ付き合ったのか。自分でもよくわからないんだ。 本当、さっさと別れればよかったわ』

元彼氏は元彼女とよりを戻し、先輩は別の男性と結婚しました。


※※※※※


※(ここからは【なまなり】の考察です)

付き合ったひととの相性が悪いな。と、感じたら、早めにお別れするのをお勧めします。

男女のお付き合い以外でも 対面した際、最初の違和感は無視しない方が身のためです。
この先輩は自分で≪生霊≫を飛ばしていると自覚しながら彼氏と別れることができず、 果ては、健康被害や事故にまで遭われています。

人を怨んで呪うと結局は自分へ返ってくるものです。
恐らくですが、 彼氏さんは元彼女さんと隠れて会っていて、先輩は薄々感づいていたのではないでしょうか。

自分が侮辱されていると心の底ではわかっていたかも。
そして、元彼女さんの方も、先輩の≪生霊≫に気が付いていたのではないかと。

≪生霊≫を飛ばす方もかなり疲れるそうで、女性二人が、自分の命を削りながら互いを怨むような、そんな価値のある相手だったのか?と、疑問に思うばかりです。

多少の念から身を守る方法を伝えた程度で、相談者がご自分で納得して解決された件ではございましたが、違和感を覚えた時は無理をしないで、そっと離れるほうが良さそうですね。
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