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13話 決戦!ミスティ・ヒドラ!
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【インクリース・オール】【バリア・オール】【シールド・スフィア】
全能力アップ、全属性カットの魔法をソニア様が子爵以外に掛け、更に狭い範囲を半球状の防御魔法で保護する。
これが一家のスタートアップルーチンだ。
「わ、ワシは…?」
「これ、疲れますのよ。」
「そ、そうか…」
命の危機であると理解しているのか、それ以上は噛み付かない。
ここはもうヒガン一家の狩場。戦えない人間は大人しくしているべきである。私のように。
『ギャアアアオオオオ!!』
耳障りな咆哮をあげたと思った瞬間、違う首が薙ぎ払おうとしてくる。
【水天】
その首は根元から断ち切られ、あらぬ方向へと飛んでいく。
ハルカ様の方は、空中を横倒しでかっ飛びながら納刀動作をしていた。いつ見ても、ゲームのバグみたいな動きである。
「あ、あれが〈白閃法剣〉の…」
北部では〈四肢斬り〉という悪名の方が知られているはずだが、子爵は魔王陛下から賜った方で呼ぶ。
「まだ2割ですわ。本気を出したら地域を隔てる山脈だって断ち切りますわよ。」
「…大げさな話でもなさそうだ。」
共に成長し、最も近くで最も長い時間見てきたソニア様が自慢気に言う。
「そーれっ!」
【ハードインパクト】
次はアズサ様が、パリィが成立するであろうタイミングで、違う首の一撃を大きな金槌を片手で振って打ち返す。
衝撃力強化の魔法が体格差を覆す一撃を生み出した。
「簡単には通さないかんねー」
ドワーフ特有の頑丈さで耐えられるのも強みだが、アズサ様はとにかく打撃をさばくのが上手い。それでいて、130cmくらいしかないからなのか、とにかくピョンピョンと動き回るのだ。
壁役は重装ゆえに余り動けず、後衛はその近くで陣取るのがセオリー。だが、アズサ様はライトクラフトや身体能力の高さを活かして広い範囲を身一つで守り切れる。
特にこういう大型ボス戦ではその技術が輝く。
【ハードインパクト】
怯んだところへソニア様が棒で追撃の容赦ない一突き。
食らった首はおかしな形にねじれ、動かなくなった。
ソニア様はとにかく立ち回りが上手い。支援とは補助、回復だけでなく、火力も出せてこそというのを体現する方である。
リリ様も同じくらいなんでもできるが、ソニア様はより前衛側のなんでも屋と言った方が正しいかも。
魔法が得意ということもあり、単純な一撃はアズサ様よりソニア様の方がずっと重かった。
【水天】
そうこうしていると、ハルカ様がもう一本首を取って戻ってきたが、今度はちゃんと頭が上向きである。
抜刀技で180度向きを変えるのもだが、必須の納刀動作が長いのも特徴的だ。
このゆっくりとした動作にも意味があり、これをしないと体内の余剰魔力が放出されず、過負荷状態となって戦闘不能になってしまう。
その放出される魔力が舞い散る羽根のようだと評する方もいるが、今の状態だとそこまでではない。
いや、そう見える時はどんな状態でどんな相手だというのか。恐ろしい!
過負荷状態なんて魔力制御に慣れてきたらまず陥らないし、初心者でも頭痛程度で済むのだが、過去に陥った旦那様とハルカ様の扱う魔力量は尋常ではない。どれだけステータスが高かろうと、肉体には限界があるのだとお二人がその身で証明してくれた。
「手応えが薄い。きっと隠し玉があるよ。」
「だねー」
百戦錬磨のハルカ様アズサ様の意見が一致する。
「ヒドラですし、首が生え変わったり」
今ほど私の悪癖を恨んだことはない。
口走った通り、首が再び生えてきた!
「お、おい!切り落とした方の首が!」
「胴体が生えましたわね…」
厄介そうにソニア様が言う。
いやいや、この人数でこれは非常にまずいのではないでしょうか!?
まったく、後ろで震えている古狸はなんてことをしてくれたのか!
「古狸で悪かったな!お前たちのような魔力量の輩が、荷物配達なんて受けるとは思わんだろうが!」
口に出てたし、ごもっともでもある。
旦那様は率先してこういう依頼を消化している節がある。戻ったら理由を聞いておかないと。
「アッシュ、コバルトくん、そして、エメラルドちゃん、セレステちゃん出番だよ。」
ハルカ様がそう言うと、影から巨大な灰色の狼、大きな古傷だらけの怖いシロクマ、風、氷の美しいエレメンタルが出て来た。
「こ、こんな数を、道具無しで使役するだと…!?」
これでもまだ一部であり、特に大型相手に戦えるのを出したというだけだろう。
特に魔獣に好かれやすいハルカ様は、どちらかというとテイマーとかの方が天職ではないのか?
などと考えている内に、アッシュとコバルト『様』の2体が単独で動き出した首にそれぞれ体当たりをする。
どちらも下手なボスより強いこともあり、1/6割れ程度は軽く弾き飛ばした。
この分なら大丈夫。きっとそう。
だが、事態は容易く私の楽観を打ち砕いてくれた。
「離れてー!第2段階に入るー!」
アズサ様がそう警告すると同時に、捻じ伏せていた2匹が離れる。
再び衝撃波が放たれると、防御魔法まで削られる感覚が伝わってきた。
いったい、どんだけ厄介な相手なのだ!
第2段階に入ったミスティ・ヒドラは霧感が減り、よりヒドラに近い見た目になる。
それは切り落とされた首だけでなく、変な形に捩れていた首もだ。ソニア様の一撃でダメになったが、形態移行で復活してしまっている!
「魔力を使い切らせないと、トドメも刺せないからねー!」
「わかった。」
短い返事をしたハルカ様が駆け出すが、第2形態は甘くない。
アグレッシブさと耐久力が増し、更に自身の首や尻尾を容赦なくぶん回す。
「こんっのーっ!」
【ハードインパクト】
アズサ様は盾で受けるのではなく、盾で弾き飛ばす方を選ぶ。
打撃を瞬間強化する魔法をガードに使う人は稀だ。現代の壁役はだいぶ魔法や魔力に依存するようになったが、それでも耐久力重視な人は多い。
だが、アズサ様は様々な戦闘を経て、技術をより磨く方に路線変更している。
より長く耐えるのが壁役の使命なら、より少ないダメージに抑えるべきだよねー、ということのようだ。
だが、アズサ様は魔法の構築が遅い。
その隙をヒドラの首は逃さず、逆から弾こうと首が振るわれる。
【ハードインパクト】
ソニア様の一撃が隙を狙った一撃を潰した。
首が2本、もんどり打ったようになるが、首はまだ4本ある。
【波濤】
背にハルカ様の放った強烈な魔力と闘気の塊がぶち当てられ、ヒドラの巨体が前に倒れてきた!
『せーのっ!』
【【ハードインパクト】】
胴体のど真ん中に2人が同時に強烈な一撃を叩き込むと、巨体が浮かび上がり、大きな音を立てて仰向けで倒れた。
その向こうでは刀を振りかざすハルカ様の姿が見える。
ちょっと待って欲しい!その位置は
【鳴神】
轟音と共に振り下ろされる強烈な一太刀。
魔力と闘気の刃が私の半歩前まで地を斬り裂いた!
「は、〈白閃法剣〉は、ふ、ふざけているのか!?」
後ろで子爵が喚くが、私は一歩も動けない…ちょっと漏れたかも…
「ソニちゃん!」
「トドメですわ!」
ライトクラフトを使い、露わになった核のようなもの目掛けてソニア様が飛んでいく。
【ハードインパクト】
渾身の一撃が核を打ち砕く!
「くっ!?」
と、思ったが、弾き飛ばされたのはソニア様の方。
力を核の保護に回したのか、再び身体が霧状に戻っていた。
「なにこれー?ちょっと勝手が違うなぁ…」
ゲームと同じようで違うのは今更だが、ボヤきたくなる気持ちはよく分かる。
特に私もアズサ様も戦闘はそこまで好きじゃないので、仕様と異なるのは遠慮したい…
『ギャアアアオオオオオ!!』
再びの咆哮でついに防御魔法に亀裂が入る!
これ以上は私と子爵が危うい!
「まずっいっ!」
3つの首からの連撃を盾で防ぎ、アズサ様の身体が弾かれてしまう。
信じられないことに首が全部離れ、独立して動き始めていたのだ!
最初に切り落とされた方は霧散しているが、それでも数が多い!
「やらせない!」
ハルカ様が一匹の頭を蹴り飛ばすと、更に一匹に刀の柄を打ち当てて鈍い音を立てる。
そのまま痛がるように暴れる2匹を間引くように、ハルカ様が離れていった。
ホント、見事なヘイトコントロールである。引き連れながら蹴ったり殴ったりもしている。
アズサ様とソニア様が孤立する形で1匹ずつ、テイムモンスターズが1匹、計5匹私たちから離れた訳だが…
『グゥゥルルル…』
もう1匹、舌舐めずりするのが目の前にいる!
唯一、腕が生えているのでこれが本体になるのだろうか?
「おい、まずいんじゃないか!?」
子爵がそう言うと、首をぶち当ててついに防御魔法が壊れてしまった!
「まずいです!だいぶまずいですよ!」
私も大慌てでライトクラフトを身に着け、『得物』のスケッチブックを取り出す。
「お、おい!そんなもので」
「こ、これしかないんですよっ!」
子爵を掴んで飛び、一噛みを避ける。
あんなの連れて逃げまわれないし、噛まれなどしたら2人揃ってオダブツだ!
なんとか距離を取り、目的のページを開いて心を落ち着ける。
なんとか、私がなんとかするしかない!
「子爵様、覚悟してください。」
「くそうっ!こんなことになるなら田舎者の挑発に乗るんじゃなかった!」
半ば投げやりに子爵はその場でドシンと座り込んだ。
いや、そうされると私も動けないのですが…まあいい!
「あたしだってヒガン一家!戦えないわけじゃない!」
気合いを入れ、切り札を出す。
【絵画召喚・オーディン】
スケッチブックに魔力を込め、アリス様がデザインした服とマント、アズサ様がデザインした甲冑を纏う、8本足の馬に跨った男性を呼び出す。
顔はボロボロのとんがり帽子で隠れているが、描いてないので恐らくのっぺらぼう。その左手には長い杖が握られていた。
「お、オーディン…だと…?」
後ろの子爵の声に困惑と畏怖がうかがえる。
これこそがあたしに出せる最高の一手。
あたしたちの命運は1枚の絵に託すことになった。
全能力アップ、全属性カットの魔法をソニア様が子爵以外に掛け、更に狭い範囲を半球状の防御魔法で保護する。
これが一家のスタートアップルーチンだ。
「わ、ワシは…?」
「これ、疲れますのよ。」
「そ、そうか…」
命の危機であると理解しているのか、それ以上は噛み付かない。
ここはもうヒガン一家の狩場。戦えない人間は大人しくしているべきである。私のように。
『ギャアアアオオオオ!!』
耳障りな咆哮をあげたと思った瞬間、違う首が薙ぎ払おうとしてくる。
【水天】
その首は根元から断ち切られ、あらぬ方向へと飛んでいく。
ハルカ様の方は、空中を横倒しでかっ飛びながら納刀動作をしていた。いつ見ても、ゲームのバグみたいな動きである。
「あ、あれが〈白閃法剣〉の…」
北部では〈四肢斬り〉という悪名の方が知られているはずだが、子爵は魔王陛下から賜った方で呼ぶ。
「まだ2割ですわ。本気を出したら地域を隔てる山脈だって断ち切りますわよ。」
「…大げさな話でもなさそうだ。」
共に成長し、最も近くで最も長い時間見てきたソニア様が自慢気に言う。
「そーれっ!」
【ハードインパクト】
次はアズサ様が、パリィが成立するであろうタイミングで、違う首の一撃を大きな金槌を片手で振って打ち返す。
衝撃力強化の魔法が体格差を覆す一撃を生み出した。
「簡単には通さないかんねー」
ドワーフ特有の頑丈さで耐えられるのも強みだが、アズサ様はとにかく打撃をさばくのが上手い。それでいて、130cmくらいしかないからなのか、とにかくピョンピョンと動き回るのだ。
壁役は重装ゆえに余り動けず、後衛はその近くで陣取るのがセオリー。だが、アズサ様はライトクラフトや身体能力の高さを活かして広い範囲を身一つで守り切れる。
特にこういう大型ボス戦ではその技術が輝く。
【ハードインパクト】
怯んだところへソニア様が棒で追撃の容赦ない一突き。
食らった首はおかしな形にねじれ、動かなくなった。
ソニア様はとにかく立ち回りが上手い。支援とは補助、回復だけでなく、火力も出せてこそというのを体現する方である。
リリ様も同じくらいなんでもできるが、ソニア様はより前衛側のなんでも屋と言った方が正しいかも。
魔法が得意ということもあり、単純な一撃はアズサ様よりソニア様の方がずっと重かった。
【水天】
そうこうしていると、ハルカ様がもう一本首を取って戻ってきたが、今度はちゃんと頭が上向きである。
抜刀技で180度向きを変えるのもだが、必須の納刀動作が長いのも特徴的だ。
このゆっくりとした動作にも意味があり、これをしないと体内の余剰魔力が放出されず、過負荷状態となって戦闘不能になってしまう。
その放出される魔力が舞い散る羽根のようだと評する方もいるが、今の状態だとそこまでではない。
いや、そう見える時はどんな状態でどんな相手だというのか。恐ろしい!
過負荷状態なんて魔力制御に慣れてきたらまず陥らないし、初心者でも頭痛程度で済むのだが、過去に陥った旦那様とハルカ様の扱う魔力量は尋常ではない。どれだけステータスが高かろうと、肉体には限界があるのだとお二人がその身で証明してくれた。
「手応えが薄い。きっと隠し玉があるよ。」
「だねー」
百戦錬磨のハルカ様アズサ様の意見が一致する。
「ヒドラですし、首が生え変わったり」
今ほど私の悪癖を恨んだことはない。
口走った通り、首が再び生えてきた!
「お、おい!切り落とした方の首が!」
「胴体が生えましたわね…」
厄介そうにソニア様が言う。
いやいや、この人数でこれは非常にまずいのではないでしょうか!?
まったく、後ろで震えている古狸はなんてことをしてくれたのか!
「古狸で悪かったな!お前たちのような魔力量の輩が、荷物配達なんて受けるとは思わんだろうが!」
口に出てたし、ごもっともでもある。
旦那様は率先してこういう依頼を消化している節がある。戻ったら理由を聞いておかないと。
「アッシュ、コバルトくん、そして、エメラルドちゃん、セレステちゃん出番だよ。」
ハルカ様がそう言うと、影から巨大な灰色の狼、大きな古傷だらけの怖いシロクマ、風、氷の美しいエレメンタルが出て来た。
「こ、こんな数を、道具無しで使役するだと…!?」
これでもまだ一部であり、特に大型相手に戦えるのを出したというだけだろう。
特に魔獣に好かれやすいハルカ様は、どちらかというとテイマーとかの方が天職ではないのか?
などと考えている内に、アッシュとコバルト『様』の2体が単独で動き出した首にそれぞれ体当たりをする。
どちらも下手なボスより強いこともあり、1/6割れ程度は軽く弾き飛ばした。
この分なら大丈夫。きっとそう。
だが、事態は容易く私の楽観を打ち砕いてくれた。
「離れてー!第2段階に入るー!」
アズサ様がそう警告すると同時に、捻じ伏せていた2匹が離れる。
再び衝撃波が放たれると、防御魔法まで削られる感覚が伝わってきた。
いったい、どんだけ厄介な相手なのだ!
第2段階に入ったミスティ・ヒドラは霧感が減り、よりヒドラに近い見た目になる。
それは切り落とされた首だけでなく、変な形に捩れていた首もだ。ソニア様の一撃でダメになったが、形態移行で復活してしまっている!
「魔力を使い切らせないと、トドメも刺せないからねー!」
「わかった。」
短い返事をしたハルカ様が駆け出すが、第2形態は甘くない。
アグレッシブさと耐久力が増し、更に自身の首や尻尾を容赦なくぶん回す。
「こんっのーっ!」
【ハードインパクト】
アズサ様は盾で受けるのではなく、盾で弾き飛ばす方を選ぶ。
打撃を瞬間強化する魔法をガードに使う人は稀だ。現代の壁役はだいぶ魔法や魔力に依存するようになったが、それでも耐久力重視な人は多い。
だが、アズサ様は様々な戦闘を経て、技術をより磨く方に路線変更している。
より長く耐えるのが壁役の使命なら、より少ないダメージに抑えるべきだよねー、ということのようだ。
だが、アズサ様は魔法の構築が遅い。
その隙をヒドラの首は逃さず、逆から弾こうと首が振るわれる。
【ハードインパクト】
ソニア様の一撃が隙を狙った一撃を潰した。
首が2本、もんどり打ったようになるが、首はまだ4本ある。
【波濤】
背にハルカ様の放った強烈な魔力と闘気の塊がぶち当てられ、ヒドラの巨体が前に倒れてきた!
『せーのっ!』
【【ハードインパクト】】
胴体のど真ん中に2人が同時に強烈な一撃を叩き込むと、巨体が浮かび上がり、大きな音を立てて仰向けで倒れた。
その向こうでは刀を振りかざすハルカ様の姿が見える。
ちょっと待って欲しい!その位置は
【鳴神】
轟音と共に振り下ろされる強烈な一太刀。
魔力と闘気の刃が私の半歩前まで地を斬り裂いた!
「は、〈白閃法剣〉は、ふ、ふざけているのか!?」
後ろで子爵が喚くが、私は一歩も動けない…ちょっと漏れたかも…
「ソニちゃん!」
「トドメですわ!」
ライトクラフトを使い、露わになった核のようなもの目掛けてソニア様が飛んでいく。
【ハードインパクト】
渾身の一撃が核を打ち砕く!
「くっ!?」
と、思ったが、弾き飛ばされたのはソニア様の方。
力を核の保護に回したのか、再び身体が霧状に戻っていた。
「なにこれー?ちょっと勝手が違うなぁ…」
ゲームと同じようで違うのは今更だが、ボヤきたくなる気持ちはよく分かる。
特に私もアズサ様も戦闘はそこまで好きじゃないので、仕様と異なるのは遠慮したい…
『ギャアアアオオオオオ!!』
再びの咆哮でついに防御魔法に亀裂が入る!
これ以上は私と子爵が危うい!
「まずっいっ!」
3つの首からの連撃を盾で防ぎ、アズサ様の身体が弾かれてしまう。
信じられないことに首が全部離れ、独立して動き始めていたのだ!
最初に切り落とされた方は霧散しているが、それでも数が多い!
「やらせない!」
ハルカ様が一匹の頭を蹴り飛ばすと、更に一匹に刀の柄を打ち当てて鈍い音を立てる。
そのまま痛がるように暴れる2匹を間引くように、ハルカ様が離れていった。
ホント、見事なヘイトコントロールである。引き連れながら蹴ったり殴ったりもしている。
アズサ様とソニア様が孤立する形で1匹ずつ、テイムモンスターズが1匹、計5匹私たちから離れた訳だが…
『グゥゥルルル…』
もう1匹、舌舐めずりするのが目の前にいる!
唯一、腕が生えているのでこれが本体になるのだろうか?
「おい、まずいんじゃないか!?」
子爵がそう言うと、首をぶち当ててついに防御魔法が壊れてしまった!
「まずいです!だいぶまずいですよ!」
私も大慌てでライトクラフトを身に着け、『得物』のスケッチブックを取り出す。
「お、おい!そんなもので」
「こ、これしかないんですよっ!」
子爵を掴んで飛び、一噛みを避ける。
あんなの連れて逃げまわれないし、噛まれなどしたら2人揃ってオダブツだ!
なんとか距離を取り、目的のページを開いて心を落ち着ける。
なんとか、私がなんとかするしかない!
「子爵様、覚悟してください。」
「くそうっ!こんなことになるなら田舎者の挑発に乗るんじゃなかった!」
半ば投げやりに子爵はその場でドシンと座り込んだ。
いや、そうされると私も動けないのですが…まあいい!
「あたしだってヒガン一家!戦えないわけじゃない!」
気合いを入れ、切り札を出す。
【絵画召喚・オーディン】
スケッチブックに魔力を込め、アリス様がデザインした服とマント、アズサ様がデザインした甲冑を纏う、8本足の馬に跨った男性を呼び出す。
顔はボロボロのとんがり帽子で隠れているが、描いてないので恐らくのっぺらぼう。その左手には長い杖が握られていた。
「お、オーディン…だと…?」
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