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第一章 異世界人?何それ?

第9話 目指せ!マイホーム!

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*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 スキルの話は、おっしゃんにとって相当面白くない事だったみたい。
 おっしゃんは、すっかり拗ねちゃったよ。

 不貞腐れて、やる気なさそうな態度のおっしゃん。
 そんな、おっしゃんに、にっぽん爺は厳しい現実を突き付けたんだ。

「うーん、でも、君、たぶん、日本へは帰れないよ。
 これから、どうするつもりなんだい。
 寝床とか、食事とか。
 私は、この通りの老いぼれだ。
 情報は提供できても、生活の面倒までは見られんよ。
 まあ、同郷のよしみで、自立するまでの宿くらいは貸してあげるけど。」

 にっぽん爺に生活の面倒までは見られんと言われて焦ったおっしゃん。

「待て、待て、それじゃあ、俺はどうやって生きて行けば良いんだよ。
 こんな世界で金を稼ぐ方法なんて知らないぜ。」

 いや、だから、さっきにっぽん爺が言ってじゃない。
 スライム捕まえるか、シューティング・ビーンズを狩れって。

「一番簡単なのはスライムを捕る事だな。
 町のスライム屋に持って行くと良い。
 一匹当たり銅貨一枚で引き取ってくれる。
 だいたい、銅貨一枚が日本円で十円くらいの感覚だな。
 その辺の屋台で買い食いをすれば、銅貨五十枚もあれば腹一杯だ。
 一日二食で我慢すれば銅貨百枚あれば食費が足りる。
 これで、スライム百匹だ。」

「けっ、スライム捕りだって、めんどくさっ。
 百匹捕って、やっと一日のメシ代かよ…、しょぼっ。
 スライムをメシ代以上にいっぱい獲って、スキルの実を買う金を貯めろと言うのか。」

 おっしゃん、ホント、態度わるっ!
 スライム狩りを馬鹿にしてるけど。
 この町じゃ、それで生活してる人沢山いるんだよ。

「いやいや、スキルの実を買うのはもっと後だよ。
 まずは、住むところを見つけんとな。
 何時までも、私の所にいる訳にもいくまい。
 君は若い盛りなんだ、色々溜まるだろう。
 何時までも、こんな爺と同じ部屋なんて嫌だろうが。」

「住むところか。
 やっぱり、宿を借りるのか?
 じゃあ、宿代分も多くスライムを捕らんとダメなのか…。」

「おっしゃん、おっしゃん、この町に宿なんか無いよ。」

 宿ってのは旅の途中、一日、二日泊まるところだよね。
 おいらも、もっと小っちゃい頃、父ちゃんと一緒に泊まったことあるよ。
 この町まで旅してくる途中で。

 でも、この町、宿が無いんだ。
 町に着いた時、父ちゃんビックリしてたよ。
 ド田舎のこの町には、宿屋で食ってけるほどの旅人が来ないんだって。

「なんだそりゃ、じゃあ商人とかどうすんだよ。
 他の町から何か運んで来たら、何処に泊まるんだ。」

「この町には流しの行商人なんか来んよ。
 大概、この町の商人に依頼されたモノを持ってくるだけだ。
 だから、泊りは配達先の商人のところさ。」

   ********

「この町で生きていくつもりなら。
 一番良いのは、頑張って家を買う事だ。」

「家を買う?
 家ってのは、三十過ぎてから三十年くらいのローンを組んで買うもんだろう。
 俺みたいな子供が買えるもんなのか?
 それとも誰か金を貸してくれる奴がいるんか?」

「この町にはまともな金貸しなんかおらんよ。
 見たこと無いが、いるとしたらヤバ筋の高利貸くらいだろう。
 私が住んでいるこの家だがな。
 役場に行けば、同じ間取りの家を銀貨千枚で売ってくれるぞ。」

 そうなんだ、この隣にある私の家も広さ、間取り共に全く同じなんだ。
 格安で買えたって、父ちゃんが喜んでた。
 おかげで、天涯孤独の身になっても、子供一人で生きてこられたんだ。
 父ちゃんがいなくなっても、住む場所を失わないで済んだから。

「なあ、銀貨千枚って、高いのか、安いのか、良く分かんねえよ。」

「さっき言っただろう。
 銅貨一枚が大体日本円で十円くらいの感覚だよ。
 銀貨一枚が銅貨百枚だから、銀貨千枚だと百万円くらい感覚だね。
 なあに、心配する事もない。
 スライムを一日に千百匹ずつ捕まえれば、三ヶ月で買えるよ。」

「げっ、朝から晩までずっとスライムを捕れってか。
 百匹分がメシ代で、残りが家を買う貯金ということか…。
 まあ、仕方ねえか。
 何時までも爺さんの世話になる訳にもいかねえからな。
 でも、なんでそんなに安いんだ?
 家って何千万円もするもんじゃないのか?」

「この辺り、この家とそっくり同じ家が千件ほど建っている。
 かつてはこの近くに鉱山があって、その鉱夫の住宅だったらしい。
 鉱山が閉鎖されて、鉱夫が町を離れたらこのありさまでね。
 今、人が住んでいるのは半分にも満たんだろう。
 要するに、家が有り余っているんだよ。
 領主としても、少しでも人を増やして税を取りたいのさ。」

 おいらの父ちゃんも、この町に流れ着いた口だから、見た事はないって言ってたけど。
 昔は、この町も人がいっぱいいたんだって。
 きっと、その頃は普通に宿屋なんかもあったんだろうね。

 今はすっかり寂れちゃって、この辺は空き家ばっかりだよ。
 でも、良いこともあるんだ。
 にっぽん爺がチラッと言ってるようにこの町は税がないんだ。
 おいらは大助かり。
 一人で食べて行くのがやっとなのに、税なんか取られたら堪らないよ。

 なんで、税がかからないかと言うと…。

「なあ、爺さん。
 何掘ってたかは知らんけど。
 鉱山が閉鎖されたって掘り尽くしちまったのか?」

 おっしゃんがそんな事を尋ねると。
 にっぽん爺の顔から笑いが消えて、マジ顔になったよ。

「いいや、鉱山はまだ掘れるかも知れんな。
 なにせ、誰も近寄れんから分らんのだよ。
 鉱山が閉鎖になったのは、魔物のスタンピードがあったからと聞く。
 今でも、鉱山周辺は強い魔物がうようよいて近寄れんらしいよ。」

 スタンピード、魔物の大量暴走。
 幸い、この町までは来なかったらしいけど。
 この町を支えていた鉱山は、魔物の大群に襲われたんだって。
 その時、鉱山にいた人は全滅。
 その後、鉱山の近くに魔物の巣窟が出きたって 。

「スタンピードって…。
 そりゃあ、ラノベなんかじゃ、お約束みたいに起こるけど。
 ずいぶんと物騒なこった。」

「そうなんだ、当時鉱山は三交代制でな、鉱夫全体の三分の一くらいが犠牲になったらしい。
 残った鉱夫とその家族は、鉱山の閉鎖と共にこの町を去って行った。
 それからは、スタンピードを恐れて住民が入ってこないんだ。
 下手に税金なんか取った日には、住民がいなくなるんじゃないかともっぱらの噂だ。
 それを恐れて、領主は税を免除したり、家を安く売ったりしてるんだな。」

 おいらも、本音を言うとこの町に住んでるのが怖いんだけど。
 父ちゃんが残してくれた家があるし、他の町で暮らしていけるか分かんないもんね。
 町によっては、税がバカ高いらしいからね。

「スタンピードか、これはフラグじゃねえか。
 俺がこの町へ来たのは、スタンビードから町を守るためとか?
 その時、俺は覚醒して勇者になるってか。
 なんか、やる気出て来た。
 よーし、頑張って家を買うぞ!」
 
 フラグ? また変な事を言い出したよ、おっしゃん。
 でも、おっしゃん、勇者になるみたいなことを言ってるね。
 変なの、勇者って言われのは、凄く恥ずかしい事だと聞いたんだけど。

 勇者ってあれだよね、この町の肉屋の親父さん。
 凄いデブで不細工のくせに、町一番の娼婦のお姉さんに求婚プロポーズしたっていう。
 町のみんなから、『あいつ、勇者だな。』って言われて笑い者になってるよ。
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