上 下
8 / 809
第一章 異世界人?何それ?

第8話 スキルって、ホント、不思議・・・

しおりを挟む
 
「君、人の話をよく聞かないで、失敗するタイプだね。
 ものの見事に異世界に順応できないタイプの若者が来たもんだ。
 あんまり、残酷な事は言いたくないが、…。
 今の軽はずみな行動で、君は貴重なスキルを一つ、無駄にしてしまったよ。」

 おっしゃんが落ち着くの待って、にっぽん爺はそんな言葉を口にした。

「何だよ。
 あんなくそ不味い実を、たった一かじりしただけで大袈裟な。」

「君は、自分の能力値の見方は分かるかな?」

「おう、さっき、そこのガキんちょから、聞いたぜ。」

「そこにあるスキルの欄を見てみなさい。
 何か、書いてあるだろう。」

 にっぽん爺の呆れを帯びた言葉を聞いても、悪びれた様子もないおっしゃん。
 そんなおっしゃんに、にっぽん爺はスキルを確認するように言ったの。

「おおっ!
 スキルがあるじゃん、『クリティカル発生率アップ』だって。
 カッコいいじゃん。」

 スキルを見て、そんな風に喜んだおっしゃん。
 おいらはにっぽん爺と顔を見合わせて肩を落としたよ。

「なあ、君、そのスキルは、この世界で一番のゴミスキルと言われているモノだ。」

「なんでだよ!
 格上の敵に挑むなら重宝するスキルだろ、『クリティカル』。
 その発生率が上がるんだ、何がゴミだよ!」

 スキルをゴミとけなされたおっしゃん。
 にっぽん爺の話を遮り、食って掛かったの。
 ほら、また、最期まで話を聞かない…。

「そうカッカとしなさんな。
 君のそのスキル、レベル一だから一%アップとなっているだろう。
 それは、クリティカルの発生率に一%加算される訳では無いぞ。」

 にっぽん爺がその言葉に続いて説明してくれたのは。
 剣の達人と言われている人でも、クリティカルが出るのは千回の剣戟で一回くらいなんだって。
 おいらには、良く分からないけど、これを0・一%と言うそうなんだけど。
 『クリティカル発生率アップ』の一%と言うのは、発生率が一・一%になるんじゃなくて。
 0・一%の発生率が一%増えるんだって、にっぽん爺の説明じゃ、0・一0一%。

「という訳で、クリティカルの発生率なんて本当に微々たるものだ。
 それな、レベル十まであげて三百%アップと言われてるが。
 剣の達人でも0・四%と言う事だ、いわんや素人なんてどうなる事やら。」

 この『クリティカル発生率アップ』だけど、レベル十まで上げたと言う記録が図書館にもないんだって。
 余りのバカバカしさに、誰も上げようとしなかったんじゃないかって。にっぽん爺は言ってた。
 だから、三百%アップというは、他のレベルの上がり方から予想したものだって。

 にっぽん爺の言葉を聞いておっしゃんは顔を青くしているけど…。
 本当に拙いのはこれからだよ。

「でだ、ゲームのように幾らでもスキルを増やせるのなら。
 ゴミスキルの一つや二つあっても良いのでだけどね。
 この世界では、人が身に付けることが出来るスキルは生涯で最大四つ。
 しかも、一度身に付けたスキルは取り消しが利かないときている。
 君は貴重なスキルを一つ無駄にしてしまったのだよ。」

「マジかよ…。」

 そんな呟きを漏らして、項垂れてしまったおっしゃん。
 自分の軽はずみな行動で、取り消しの付かない事になったのがやっとわかったみたい。

「まあ、そんなに暗くなりなさんな。
 まだ、三つもスキルを覚える余地があるじゃないか。
 その三つを有意義なスキルで揃えれば良い。」

 そんな励ましの言葉を掛けられたおっしゃん。
 
「そうだな、失敗の一つくらいでくよくよしてもしょうがないもんな。
 あと三つ、スゲースキルを揃えて、挽回して見せるぜ!」

 顔を上げてそんな気勢を上げたよ。
 立ち直り早いな…。
 くよくよしないのは良いけど、少しは反省しないと同じ失敗を繰り返すよ。

    ********

 気勢を上げるおっしゃんに、にっぽん爺は申し訳なさそうに言ったの。

「それなんだがな…。
 スキル自体にランクはないんだが…。
 巷ではやはり格付けがあって、有用なスキルの実はとても高いのだ。
 そして、そういう実ほどレベルの高い魔物がドロップするんだよ。
 とてもレベルゼロの一般人には倒せないような魔物がね。
 特に戦闘系のスキルは手に入らないと思うよ。」

 それは、おいらも知ってる。
 スキルの実は、おいらが持っているゴミスキルと言われる物以外はお店で買うの。
 一番安い『食物採集能力アップ』の実でも、銀貨三枚くらいするんだ。
 おいらの稼ぎではとても買えないよ。

 因みに、おいらの持っているスキルは、全部『ゴミスキル』だよ。
 シューティング・ビーンズが落とした『スキルの実」ばっかり食べてたから。
 タダで食べ物が手に入るんだもの、食べないと勿体ないじゃない。
 苦いだろうって?
 ふ・ふ・う・ん、そこは工夫次第だよ。
 
 戦闘系のスキルなんて、バカ高いらしくて。
 こんな田舎町では売ってないって、にっぽん爺が言ってた。
 そう言えば、おいらもお目に掛ったことないよ。どんなスキルがあるんだろう?

 しかも、スキルの実って曲者で…。
 スキルレベルを上げる毎に、必要な数が三倍になってくの。
 レベル一を獲得する時は一つ食べれば良いけど。
 レベル二にするには三つ、レベル三にするには九つ食べないといけないの。
 スキルレベルを上げるのに必要なお金はどんどん増えて行くんだ。

「なんだよ、その廃課金仕様。
 スキルレベルを上げるためには、課金しろってか。
 なあ、本当に自分で魔物を倒して、スキルの実を取る事は出来ないのか。」

「課金って…、いい加減そのゲーム脳的な考えは捨てなさい。
 いいかい、一番安いスキルを落とすのはトレントと言われている魔物だが。
 レベル三くらいの強さだと言われている。
 それなりの冒険者が十人掛かりでやっと倒せる魔物だよ。
 それを君が倒せるのかい。」

 あっ、トレントより弱い魔物がスキルの実を落とさない訳では無いよ。
 ただ、落とす実が、シューティング・ビーンズ同様、ゴミスキルばっかりと言うだけ。

「ちぇ、マジかよ…。
 あー、つまんねー。萎えるわー。」

 そんな言葉を吐いてふてくされちゃったよ、おっしゃん。
 別に、採集系のスキルでも役立つんだったら良いじゃない。
 何で、そんなに戦いたのかな…。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

姫は用心棒に守られて執着される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:596pt お気に入り:137

「ちょっと待った」コールをしたのはヒロインでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:255

離婚届は寝室に置いておきました。暴かれる夫の執着愛

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,391pt お気に入り:1,219

【完結】貴方の瞳に映るのは

恋愛 / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:647

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:4,134

悪女は愛する人を手放さない。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:866pt お気に入り:2,043

どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:72,492pt お気に入り:4,091

婚約者の王子が危険すぎるから、奪おうと目論んでいた妹に譲ります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,476pt お気に入り:5,292

少し、黙ってていただけますか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,308pt お気に入り:190

処理中です...