29 / 508
第2章 オストマルク王立学園
第28話 サロンに招かれたフローラちゃん
しおりを挟む
放課後、フローラちゃんとわたし達二人は、エルフリーデちゃんの招きでサロンを訪れた。
「これなのですね、お母様が憧れた学園生活というのは。
同じ年頃の女の子とこうしてお茶を飲みながらお喋りするなんて新鮮ですわ。」
フローラちゃんは大はしゃぎである。
いままで、臥せりがちであまり外にも出ず、貴族とのお茶会にも顔出ししなかったから、同じ年頃の子と話す機会があんまりなかったんだろうね。
「そういえば、皇太子妃様も治癒術をお使いになられたのですね。
全く存じ上げませんでしたわ。
しかも、先日精霊神殿の前で披露された術は、高齢の殿方から羨望の的と聞き及んでいますわ。」
マイヤーちゃんはミルト皇太子妃の術に関心を持ったようだ。
あ、あのハゲを治す術ね。あれはわたしも初めて知った。
というより、基本的にわたしの周囲は女性だけだから、ハゲって初めて実物をみたんだ。
だから、ハゲを治そうなんて思いもしなかったよ。
「ええ、お母様も今まで魔法が使えなくて肩身が狭い思いをしていたんです。
でも、ターニャちゃん達が、私の治療をしてくれたとき、私やお母様が魔法が使えない訳を教えてくれて、私達にあった術の使い方を指導してくれたのです。
おかげで、私もこうして学園に通えるようになったのですわ。」
「まあ、そうでしたの。
わたくし達もターニャちゃんから教えてもらうまで、全く別の術の系統があるとは思いも寄りませんでしたわ。
ターニャちゃんやミーナちゃんの使う術を見ていると、自分達の術が使えないことを基準に偏見の目で見ていたことを浅慮だったと反省してますわ。」
エルフリーデちゃんの言葉をフローラちゃんが庇うように言った。
「仕方がないことだと思いますわ。
ターニャちゃんの話では、この術を使えるのはここにいる三人とお母様だけとの事ですもの。
魔法が使えないと何かと不便なので、神の恩寵がないと心無いことを言う方が出てくるのでしょう。」
そう言いつつフローラちゃんの表情は心なしか悲しげであった。
「ところで聞きましたか?皇太子妃様に髪の毛を生やしていただいた創世教の司祭の話。」
「ボク、知ってるよ。『精霊様の奇跡は実在する、王家に精霊様の加護はあったんだ。』って教会内で触れ回って破門になったんでしょ。」
ルーナちゃんがあの司祭のその後を教えてくれた。あの司祭、完全に精霊の信奉者になったね。
そういえば、創世教って精霊の存在を王家が作ったお伽話とけなしていたものな、その司祭が声高々に精霊の存在を肯定したら問題になるだろうね。
「そういえば、髪の毛の不自由な貴族の方々が、皇太子妃様に奇跡の行使の陳情に訪れているという噂も耳にしたのですが、本当なのですか?」
「それは、本当のことでしてよ。
お母様が、王家の威信を取り戻すチャンスと息巻いていましたわ。」
「まあ、それは無償で施すのですか?」
「王家が、その程度のことで謝礼を要求したりなどいたしませんわ。
ただし、完全な無償ということではないのです。
施術は精霊神殿の中で行い、施術を受けた方には礼拝堂で精霊に感謝の祈りを捧げてもらうと共に幾ばくかの寄付をお願いすることにしました。
この機会に精霊神殿の威光を高めようということになったのです。」
ミルト皇太子妃が、ノリノリになっている姿が目に浮かぶようだ。
あの人、創世教に大分ネチネチとやられたみたいなので意趣返しのつもりなんだろうな。
話題の中心がハゲ治療のことになってしまった気がするが、ひとしきり話が盛り上がった後良い時間になったので、解散することになった。
「楽しかったですわ。
こうしてみなさんとお茶の飲みながら他愛のないお話ができるなんて、今まで思いも寄りせんでした。
きっと、お母様はこんな雰囲気を私に経験して欲しかったのですね。
よろしかったらまた誘ってくださいね。」
**********
みんなで、サロンスペースからエントランスまで一緒に歩いて行く途中でフローラちゃんが、
「私、一度ターニャちゃんの魔導車に乗せていただきたかったのですけど、今日ご一緒させていただけませんか?」
と尋ねてきた。まあ、スペースは余裕だから「いいよ」と答えた瞬間、
「「「「「私も!」」」」」
と声が返ってきてしまった。
今使っている魔導車は、三人掛けソファーの前にローテーブル、ローテーブルの両脇に一人掛けソファーという配置で、定員五人だ。
流石に八人は厳しいと答えると、あと二人誰が乗るかという雰囲気になってきた。
こんなことで、喧嘩しても馬鹿みたいなので、今度八人乗りにしておくとして、五人にはお断りした。
「凄い!ソファーが柔らかい、全然揺れなし、凄い静か。
こんな魔導車に乗ったの初めてだわ。」
「そうなの?わたしは、他の魔導車に乗ったことないから分からないの。
ただ、この魔導車は、魔導王国の最終型で未使用品だったらしいから、その関係かも。」
「え、そうなの?未使用品って要は新品って事だよね。良くそんなのあったわね。
そういえば、ターニャちゃんってどこから来たの?
精霊の森って、精霊がたくさんいる森って意味で特定の森のことじゃないよね。
うちの王宮の裏の森も精霊の森と言われているし。」
「あー、そうだね、詳しく言ってなかったね。
話すと長くなるし、寮に着いたらわたし達の部屋に寄ってお話していく?
ミーナちゃんもいいよね?」
ミーナちゃんは肯いて、フローラちゃんが寄って行くことを許してくれた。
「いいのですか!ぜひ!」
フローラちゃんが私たちの部屋を訪れる最初のお客さんとなった。
「これなのですね、お母様が憧れた学園生活というのは。
同じ年頃の女の子とこうしてお茶を飲みながらお喋りするなんて新鮮ですわ。」
フローラちゃんは大はしゃぎである。
いままで、臥せりがちであまり外にも出ず、貴族とのお茶会にも顔出ししなかったから、同じ年頃の子と話す機会があんまりなかったんだろうね。
「そういえば、皇太子妃様も治癒術をお使いになられたのですね。
全く存じ上げませんでしたわ。
しかも、先日精霊神殿の前で披露された術は、高齢の殿方から羨望の的と聞き及んでいますわ。」
マイヤーちゃんはミルト皇太子妃の術に関心を持ったようだ。
あ、あのハゲを治す術ね。あれはわたしも初めて知った。
というより、基本的にわたしの周囲は女性だけだから、ハゲって初めて実物をみたんだ。
だから、ハゲを治そうなんて思いもしなかったよ。
「ええ、お母様も今まで魔法が使えなくて肩身が狭い思いをしていたんです。
でも、ターニャちゃん達が、私の治療をしてくれたとき、私やお母様が魔法が使えない訳を教えてくれて、私達にあった術の使い方を指導してくれたのです。
おかげで、私もこうして学園に通えるようになったのですわ。」
「まあ、そうでしたの。
わたくし達もターニャちゃんから教えてもらうまで、全く別の術の系統があるとは思いも寄りませんでしたわ。
ターニャちゃんやミーナちゃんの使う術を見ていると、自分達の術が使えないことを基準に偏見の目で見ていたことを浅慮だったと反省してますわ。」
エルフリーデちゃんの言葉をフローラちゃんが庇うように言った。
「仕方がないことだと思いますわ。
ターニャちゃんの話では、この術を使えるのはここにいる三人とお母様だけとの事ですもの。
魔法が使えないと何かと不便なので、神の恩寵がないと心無いことを言う方が出てくるのでしょう。」
そう言いつつフローラちゃんの表情は心なしか悲しげであった。
「ところで聞きましたか?皇太子妃様に髪の毛を生やしていただいた創世教の司祭の話。」
「ボク、知ってるよ。『精霊様の奇跡は実在する、王家に精霊様の加護はあったんだ。』って教会内で触れ回って破門になったんでしょ。」
ルーナちゃんがあの司祭のその後を教えてくれた。あの司祭、完全に精霊の信奉者になったね。
そういえば、創世教って精霊の存在を王家が作ったお伽話とけなしていたものな、その司祭が声高々に精霊の存在を肯定したら問題になるだろうね。
「そういえば、髪の毛の不自由な貴族の方々が、皇太子妃様に奇跡の行使の陳情に訪れているという噂も耳にしたのですが、本当なのですか?」
「それは、本当のことでしてよ。
お母様が、王家の威信を取り戻すチャンスと息巻いていましたわ。」
「まあ、それは無償で施すのですか?」
「王家が、その程度のことで謝礼を要求したりなどいたしませんわ。
ただし、完全な無償ということではないのです。
施術は精霊神殿の中で行い、施術を受けた方には礼拝堂で精霊に感謝の祈りを捧げてもらうと共に幾ばくかの寄付をお願いすることにしました。
この機会に精霊神殿の威光を高めようということになったのです。」
ミルト皇太子妃が、ノリノリになっている姿が目に浮かぶようだ。
あの人、創世教に大分ネチネチとやられたみたいなので意趣返しのつもりなんだろうな。
話題の中心がハゲ治療のことになってしまった気がするが、ひとしきり話が盛り上がった後良い時間になったので、解散することになった。
「楽しかったですわ。
こうしてみなさんとお茶の飲みながら他愛のないお話ができるなんて、今まで思いも寄りせんでした。
きっと、お母様はこんな雰囲気を私に経験して欲しかったのですね。
よろしかったらまた誘ってくださいね。」
**********
みんなで、サロンスペースからエントランスまで一緒に歩いて行く途中でフローラちゃんが、
「私、一度ターニャちゃんの魔導車に乗せていただきたかったのですけど、今日ご一緒させていただけませんか?」
と尋ねてきた。まあ、スペースは余裕だから「いいよ」と答えた瞬間、
「「「「「私も!」」」」」
と声が返ってきてしまった。
今使っている魔導車は、三人掛けソファーの前にローテーブル、ローテーブルの両脇に一人掛けソファーという配置で、定員五人だ。
流石に八人は厳しいと答えると、あと二人誰が乗るかという雰囲気になってきた。
こんなことで、喧嘩しても馬鹿みたいなので、今度八人乗りにしておくとして、五人にはお断りした。
「凄い!ソファーが柔らかい、全然揺れなし、凄い静か。
こんな魔導車に乗ったの初めてだわ。」
「そうなの?わたしは、他の魔導車に乗ったことないから分からないの。
ただ、この魔導車は、魔導王国の最終型で未使用品だったらしいから、その関係かも。」
「え、そうなの?未使用品って要は新品って事だよね。良くそんなのあったわね。
そういえば、ターニャちゃんってどこから来たの?
精霊の森って、精霊がたくさんいる森って意味で特定の森のことじゃないよね。
うちの王宮の裏の森も精霊の森と言われているし。」
「あー、そうだね、詳しく言ってなかったね。
話すと長くなるし、寮に着いたらわたし達の部屋に寄ってお話していく?
ミーナちゃんもいいよね?」
ミーナちゃんは肯いて、フローラちゃんが寄って行くことを許してくれた。
「いいのですか!ぜひ!」
フローラちゃんが私たちの部屋を訪れる最初のお客さんとなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,255
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる