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第4章 学園祭

第62話 学園祭のこと

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 放課後、わたしはミーナちゃんと一緒にエルフリーデちゃんのサロンを訪れていた。

「パーティですか?」

「そう、昼休みに聞いたんだ。
学園祭の最終日にパーティがあるからパーティドレスが必要らしいね。
ドレスなんか持っていないのでどうしようかと思って。」


 エルフリーデちゃんに聞いたところ、お披露目前の貴族の子女は普通はパーティに出席することはないそうだ。
 お披露目は、十五歳の誕生日を迎えた最初の社交シーズンにするとのこと。
 学園のパーティはある意味特別で、同級生の親同士の交流を図るために子女も交えて行われるらしい。


「でも、親同士の交流が主目的なら、学園内でするパーティなんだし生徒は制服で良いんじゃないの。
 そもそも、わたしは親が来ないと思うから出席する必要もないのじゃないかと思っているんだけど。
欠席したらダメなの?」

 ミーナちゃんもあまり気乗りしないみたいだし、欠席でもいいよね。

「ドレスコードがないみたいですので、制服でも差し支えないとは思いますが目立ちますわよ。
 学園の生徒にとっては、お披露目の予行練習みたいになっていて、みなさんがドレスを着て出席するようなので制服ではかえって目立つと思います。
それと、出席は自由ですけどその日は寮に帰っても夕食がありませんわよ。
学園内にいる料理人が総出でパーティ料理を作るそうですから。」

 平民の父兄も貴族につてを作るためパーティに出席するので、当然その子女も出席する訳で、寮で食事をする子はいないわけだ。
 平民と言ってもクラーラちゃんの家みたいに貴族と結びつきの強い商人もいるからね。

 パーティは肩が凝りそうだけど、パーティ料理には興味がある。どんな美味しいモノがあるんだろう。
ミーナちゃんと二人で会場の隅で晩ご飯を食べていればいいか。

 悪目立ちしないように、適当なパーティドレスをあつらえた方がいいかな。
あとで、ソールさんに相談してみよう。
この間、ハンナちゃんの服を買った仕立て屋さんを呼んでも良いしね。


「ところで、みなさんはパーティドレスはもう用意したのですか?」

「ええ、私は夏休み中に領地の御用商人に仕立てさせましたわ。」

とエルフリーデちゃんは言ったが、他のみんなも用意は済んでいるそうだ。


 寮に帰ってソールさんにパーティのこととドレスのことを相談した。

すると、

「ティターニアお嬢様のドレスもミーナ様のドレスも既に用意してあります。
学園の行事は全て把握していますので。」

といって、ソールさんはわたしとミーナちゃんにお揃いのドレスを持ってきた。

 淡い水色のドレスで、子供らしい可愛い感じのドレスだ。
華美な装飾はないが、要所要所にフリルやレースがあしらわれていて非常に上品な感じだ。
何よりもこれって、精霊の森産のシルク生地を使っているよね。
これって大丈夫なの?絶対目立つよね。
いつの間に作ったの、っていうかサイズ測ったっけ?


     **********


 数日後、放課後の教室、ウートマン先生から学園祭と運動会の説明があった。

 その場で運動会の出場種目を決めていく、男の子はかけっこが好きだね、走る種目は男の子がどんどん立候補するのでスムーズに決まっていく。
 わたしは、運動が苦手なので玉入れとか全員参加の種目以外は出ないつもりだ。


 そして、最後に残ったのが障害物競走とストーンシューティング。

 障害物競走の走者の方は男子が立候補してすんなり決まったが、妨害役が誰も立候補しない。
 教室がシーンとしていて、誰もがやりたくないオーラを出している。

 するとフローラちゃんがわたしを見てニャっと笑った。
そして、

「先生、立候補者がいないみたいなので、私はティターニアさんを推薦します。
ティターニアさんは多様な魔法を巧みに使いこなすので、この役にピッタリだと思います。」

いきなりわたしを推薦した。あ、こら、裏切り者!

誰もやりたくないものだから、次々に賛成の声が上がる。
結局、わたしの意思は無視で、一番面倒な役を押し付けられてしまった。


 残るはストーンシューティング、土魔法で石を飛ばして的に当てる競技である。
要は的当てで、男の子が喜びそうな競技である。
 実際に、最初に競技を聞いたときはやりたい男の子が何人も挙手した。
しかし、ウートマン先生が競技の内容を説明していくうちにやりたい人がいなくなってしまった。


 そもそも、この国は攻撃魔法が使用禁止である。
攻撃魔法の練習のような競技をするわけがない。

 競技のキモその一、的は薄い紙と壊れ易い木の枠でできていて、紙を破いたり的を壊したりしたら失格。
 競技のキモその二、的の中心により近く当てた者が勝ち、ただし中心に近いかどうかの判断は外枠からの距離で測る。
 競技のキモその三、シューティングに使う石礫いしつぶては参加者が土魔法を用いて自分で作るか、ある石を魔法で加工して作る。


 つまりどういうことか、撃つ石礫が大きいとど真ん中に命中しても穴が大きいため外枠からの距離が測られるので中心からかなり離れたところに当たってことになってしまう。
 また、石礫が不整形であったり、大きかったりすると着弾して時に的がビリビリッと破れてしまう。

 競技に勝つためには、魔法で石礫を紡錘形にして、しかもそれを可能な限り細くした上で、できるだけ高速で打ち抜くか、逆に的にプチッと突き刺さるくらいゆっくりかつ柔らかく当てる必要があるとウートマン先生が説明してくれた。
 要は、離れた的の中心に当てるコントロール以外に、石を針のように細く整形する技術と速度のコントロールが求められる訳だ。

 
 これまた、帝国から留学してきた王子に喧嘩を売るようなルールだよね。
帝国の的当ては的を破壊した方がいいらしいから。


 結局この競技は、的当てとは言うけど、その実は細かい魔法制御を競うモノなんだね。
それで、みんなやりたくない訳で……。


 フローラちゃんがまたわたしを見たが、今度はわたしは前腕をバツの字に交差させて見せた。
そんな面倒な競技いくつもやらないよ!


 わたしがイヤッという意思表示をすると、フローラちゃんは今度はミーナちゃんを推薦した。
 控えめなミーナちゃんはやりたくないようだけど、フローラちゃんにイヤとは言える訳がなく、あえなくストーンシューティングに出場することになってしまった。

 南無……。





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