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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第180話 怪我をした女の子 ②
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怪我を治してあげた女の子を乗せて別荘へ帰る魔導車の中、眠っている女の子に膝枕をする形でソファーに座る侍女が言った。
「この度は危ないところを助けていただき有り難うございました。
私はゲヴィッセン子爵家に仕えるエラと申します。今眠られているのが子爵家のカリーナお嬢様です。」
エラさん、王族のフローラちゃんを前にガチガチに緊張しているよ、可哀想に…。
「気にしないで良いわ。
ゲヴィッセン子爵は王宮の主計官でしたね、勤勉で忠義に厚い者と父から聞いております。
忠臣の家族が困っているのを見過ごすことは出来ません、当然のことをしたまでです。
あなたもそんなに緊張しないでいいわよ、少し楽にして。」
エラさんの感謝の言葉にフローラちゃんはそう答えた。
凄いね、貴族の名前と仕事の内容まで覚えているんだ。王族っていったいどういう教育しているんだろう…。
ちなみに、ゲヴィッセン子爵家の一行は馬車数台だったけど、壊れた馬車をさっきの街で修理に出すらしくエラさんとカリーナちゃん以外は街の宿屋に泊まるみたいよ。
「ところで、カリーナちゃんは王都から一人でここに避暑に来ていたの?
身内の者は一緒ではないの?」
フローラちゃんの疑問はもっともだとわたしも思う、馬車で一ヶ月も掛かる所にこんな小さな子一人で旅するなんて普通しないよね。いくら身の回りの世話をする人が付いていると言っても。
するとエラさんは少し言い難そうにして、
「こちらにはカリーナ様お一人でいらしてます。
少々事情がございまして、侍女の私からは何とも申し上げられないのですが…。」
と言葉を濁した。
「そうなのね、それならば詮索はしないことにしましょう。
もし困ったことがあれば、父に相談するように子爵に伝えてください。
忠臣の私事に関わる困り事であれば、父は無碍には扱わないと思いますから。」
そう言ってフローラちゃんはこれ以上詮索しないことにしたようだ。
まあ、あんまりプライベートなことを聞くのも良くないからね。
「ところで、カリーナちゃんは歳はいくつなの?」
話題を変えるようにフローラちゃんは尋ねた。
「はい、カリーナお嬢様は先日六歳になられました。」
「六歳ならここにいるハンナちゃんと同じ歳ですわね。友達になれると良のですけど。」
フローラちゃんはカリーナちゃんにハンナちゃんの友達になってもらえないかを匂わせた。
別荘に着いたフローラちゃんは、エラさんに客室の一つを与え、カリーナちゃんをベッドに寝かせておくように言った。
**********
ハンナちゃんはカリーナちゃんの様子が気になるらしくて、別荘に戻ってもソワソワしていた。
やがて我慢できなくなったようで、カリーナちゃんの様子を見に行きたいと言ってきた。
エラさんの許しを得てカリーナちゃんの眠る寝室に入るとハンナちゃんはベッドの縁に手を掛けカリーナちゃんの寝顔を心配そうに覗き込んだ。
その姿勢のまましばらくハンナちゃんがカリーナちゃんをみているとカリーナちゃんが目を覚ましたようだ。
「だいじょうぶ?もう、いたくない?」
目を開いたカリーナちゃんにハンナちゃんが尋ねた。
「…天使さま?…」
「天使じゃないよ、ハンナだよ。」
ハンナちゃんの声ではっきりと覚醒したようで、カリーナちゃんは周りを見て言った。
「ここはどこ?」
「ここはフローラおねえちゃん、うーんとね、ひめさまのべっそーだよ。」
ハンナちゃんはフローラお姉ちゃんではカリーナちゃんには伝われないと思ったようで姫様と言い直していたが、それでも要領を得ないようだった。
「カリーナお嬢様、お目覚めになりましたか。どこか痛い所はございませんか?」
「ああ、エラ、ここはどこかしら、私はどうしていたの?」
ハンナちゃんの脇から声をかけてエラさんにカリーナちゃんは状況の説明を求めた。
「ここは王家の別荘です。カリーナお嬢様は馬車の事故で怪我をなされて意識を失っていたのですよ。
こちらにいるハンナさんがカリーナお嬢様を治療してくださったのです。
フローラ姫様がハンナさんと一緒におられてこの別荘の部屋を提供してくださったのですよ。」
「まあ、そうですの。
ハンナさん、助けてくださって有り難うございました。
わたしと同じくらいの歳に見えるのに凄い治癒術師なのですね。」
カリーナちゃんはハンナちゃんに向かってきちんとお礼を言った、礼儀正しく躾けられているみたいだね。
「どういたしまして。それで、もう痛いところはないかな?」
「ええ、どこも痛いところはありませんわ。」
「そう、よかった!」
カリーナちゃんの言葉を聞いたハンナちゃんは安心したように笑った。
ちょうどのその時フローラちゃんが部屋に入ってきた。
「あ、目が覚めたのね、よかったわ。
かなり酷い怪我だったみたいなので、ここでゆっくり休んでいけばいいわよ。」
話しぶりから、相手がフローラちゃんだとわかったのだろう。カリーナちゃんは姿勢を正して言った。
「フローラ姫様、この度は大変お世話になってしまったようで有り難うございました。
おかげさまですっかり体の具合も良くなりました。」
六歳なのにこんなにしっかりした話し方をするんだ。貴族の教育って凄い…。
「そう、それは良かったわ。
それと、そう緊張しなくていいから、ここはプライベートな場所なのでもっと気楽にして貰っていいわよ。」
結局このままカリーナちゃんはわたし達と一緒に別荘に滞在することになった。
「この度は危ないところを助けていただき有り難うございました。
私はゲヴィッセン子爵家に仕えるエラと申します。今眠られているのが子爵家のカリーナお嬢様です。」
エラさん、王族のフローラちゃんを前にガチガチに緊張しているよ、可哀想に…。
「気にしないで良いわ。
ゲヴィッセン子爵は王宮の主計官でしたね、勤勉で忠義に厚い者と父から聞いております。
忠臣の家族が困っているのを見過ごすことは出来ません、当然のことをしたまでです。
あなたもそんなに緊張しないでいいわよ、少し楽にして。」
エラさんの感謝の言葉にフローラちゃんはそう答えた。
凄いね、貴族の名前と仕事の内容まで覚えているんだ。王族っていったいどういう教育しているんだろう…。
ちなみに、ゲヴィッセン子爵家の一行は馬車数台だったけど、壊れた馬車をさっきの街で修理に出すらしくエラさんとカリーナちゃん以外は街の宿屋に泊まるみたいよ。
「ところで、カリーナちゃんは王都から一人でここに避暑に来ていたの?
身内の者は一緒ではないの?」
フローラちゃんの疑問はもっともだとわたしも思う、馬車で一ヶ月も掛かる所にこんな小さな子一人で旅するなんて普通しないよね。いくら身の回りの世話をする人が付いていると言っても。
するとエラさんは少し言い難そうにして、
「こちらにはカリーナ様お一人でいらしてます。
少々事情がございまして、侍女の私からは何とも申し上げられないのですが…。」
と言葉を濁した。
「そうなのね、それならば詮索はしないことにしましょう。
もし困ったことがあれば、父に相談するように子爵に伝えてください。
忠臣の私事に関わる困り事であれば、父は無碍には扱わないと思いますから。」
そう言ってフローラちゃんはこれ以上詮索しないことにしたようだ。
まあ、あんまりプライベートなことを聞くのも良くないからね。
「ところで、カリーナちゃんは歳はいくつなの?」
話題を変えるようにフローラちゃんは尋ねた。
「はい、カリーナお嬢様は先日六歳になられました。」
「六歳ならここにいるハンナちゃんと同じ歳ですわね。友達になれると良のですけど。」
フローラちゃんはカリーナちゃんにハンナちゃんの友達になってもらえないかを匂わせた。
別荘に着いたフローラちゃんは、エラさんに客室の一つを与え、カリーナちゃんをベッドに寝かせておくように言った。
**********
ハンナちゃんはカリーナちゃんの様子が気になるらしくて、別荘に戻ってもソワソワしていた。
やがて我慢できなくなったようで、カリーナちゃんの様子を見に行きたいと言ってきた。
エラさんの許しを得てカリーナちゃんの眠る寝室に入るとハンナちゃんはベッドの縁に手を掛けカリーナちゃんの寝顔を心配そうに覗き込んだ。
その姿勢のまましばらくハンナちゃんがカリーナちゃんをみているとカリーナちゃんが目を覚ましたようだ。
「だいじょうぶ?もう、いたくない?」
目を開いたカリーナちゃんにハンナちゃんが尋ねた。
「…天使さま?…」
「天使じゃないよ、ハンナだよ。」
ハンナちゃんの声ではっきりと覚醒したようで、カリーナちゃんは周りを見て言った。
「ここはどこ?」
「ここはフローラおねえちゃん、うーんとね、ひめさまのべっそーだよ。」
ハンナちゃんはフローラお姉ちゃんではカリーナちゃんには伝われないと思ったようで姫様と言い直していたが、それでも要領を得ないようだった。
「カリーナお嬢様、お目覚めになりましたか。どこか痛い所はございませんか?」
「ああ、エラ、ここはどこかしら、私はどうしていたの?」
ハンナちゃんの脇から声をかけてエラさんにカリーナちゃんは状況の説明を求めた。
「ここは王家の別荘です。カリーナお嬢様は馬車の事故で怪我をなされて意識を失っていたのですよ。
こちらにいるハンナさんがカリーナお嬢様を治療してくださったのです。
フローラ姫様がハンナさんと一緒におられてこの別荘の部屋を提供してくださったのですよ。」
「まあ、そうですの。
ハンナさん、助けてくださって有り難うございました。
わたしと同じくらいの歳に見えるのに凄い治癒術師なのですね。」
カリーナちゃんはハンナちゃんに向かってきちんとお礼を言った、礼儀正しく躾けられているみたいだね。
「どういたしまして。それで、もう痛いところはないかな?」
「ええ、どこも痛いところはありませんわ。」
「そう、よかった!」
カリーナちゃんの言葉を聞いたハンナちゃんは安心したように笑った。
ちょうどのその時フローラちゃんが部屋に入ってきた。
「あ、目が覚めたのね、よかったわ。
かなり酷い怪我だったみたいなので、ここでゆっくり休んでいけばいいわよ。」
話しぶりから、相手がフローラちゃんだとわかったのだろう。カリーナちゃんは姿勢を正して言った。
「フローラ姫様、この度は大変お世話になってしまったようで有り難うございました。
おかげさまですっかり体の具合も良くなりました。」
六歳なのにこんなにしっかりした話し方をするんだ。貴族の教育って凄い…。
「そう、それは良かったわ。
それと、そう緊張しなくていいから、ここはプライベートな場所なのでもっと気楽にして貰っていいわよ。」
結局このままカリーナちゃんはわたし達と一緒に別荘に滞在することになった。
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