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第9章 王都の冬
第231話 精霊の森へご招待
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「ルール?」
「そう、ルール。
ルーナちゃんを精霊の森にあるわたし達の屋敷へ招待しようと思うの。
でも、そこは本来人が立ち入ることはできない場所なの。
だから、ルールを守れないのなら連れて行けないのよ。
それと、わたし達が寮生であることの制約から生じるルールもあるの。」
ミルトさんと新しい精霊の森に館を確認に行った翌日、わたしは遊びに来たルーナちゃんにルールを守れるなら精霊の森に招待すると伝えた。
ルールと言ってもたいしたものではないよ。
一つ、草木を手折らない。
一つ、動物を狩らない、虐めない。
一つ、森にゴミを捨てない。
一つ、泉に入らない、汚さない。
一つ、精霊の森のことを他人に言わない。
一つ、当面は昼食後に行って夕食前に帰ってくる。
これだけだよ、頭の四つは精霊の機嫌を損ねることをしないことを約束させるもの。
その次はわたしが選んだ人だけを連れて行くので、無闇矢鱈に吹聴されたら拙いのね。
連れて行く予定のない子に行きたいと言われても困るから。
最後のひとつは、寮監に心配をかけないため。
冬休みは寮生が減るので寮監の目が届きやすくなる。
食事に来なければ心配して様子を見に来る。
そのとき、外出届も出さずにいなくなっていると大騒ぎになってしまう。
だから、夕食前にはきちんと帰る、約束させておかないと絶対に向こうで泊まると言い出すもんね、ルーナちゃんは。
「大丈夫だよ、ターニャちゃん。このくらいのルールなら絶対守れるよ!
だから、ボクも精霊の森につれて行って!」
軽い調子で返事をするルーナちゃん、本当に大丈夫かな、この子…。
一年以上付き合って悪い子じゃないのはわかっている、でもなんか危なっかしいんだよね。
「絶対だよ、破ったらもう連れて行かないよ。
特に最後のルール、夕食までには必ず帰るからね。」
きつく念押しした後、わたし達はルーナちゃんを連れて浴室へ行く。
「えっ、お風呂から行くの?」
「そう、浴槽の水から精霊の泉の水へフェイさんとミツハさんの力で『精霊の道』を通って渡るの。
絶対にフェイさんから手を離さないでね、もし手を離したら帰ってこれなくなるよ。」
フェイさんにルーナちゃんとハンナちゃん、ミツハさんにわたしとミーナちゃんの手を取ってもらって精霊の森に渡る。
**********
「ビックリした!急に目の前が真っ暗になったと思ってら別の場所にいるんだもん。
もうついたの?ここが精霊の森なの?」
館の前庭に設けた精霊の泉の横に出たルーナちゃんが辺りを見回しながら言った。
「そうだよ、ようこそ精霊の森へ!」
「雪がない…、本当に暖かいんだ。わーい!これなら外で遊べるね。」
と、いきなり駆け出そうとするルーナちゃん、あたしは慌ててその手を取った。
「ちょっと待って、先に屋敷の中を案内するよ。
外で遊ぶのはその後にして。」
「はーい!ゴメンね、久し振りに雪から開放されたんでついはしゃいじゃって。」
みんな揃って屋敷へ向かい、正面エントランス前で立ち止まる。わたし以外はここへ来るのは初めてだ。
みんな一様に屋敷を見上げて言葉を失っている、わかるよ前回わたしもそうだったから。
「ターニャちゃん、なんかすごいね。これ、周りの森も含めて三日で出来たんだよね。」
ミーナちゃんが呆れ顔で言う、さすがに精霊の力の底知れなさを感じたようだ。
「ねえ、ターニャちゃん、これターニャちゃんのものなの?
なんか、ボクの家より立派なんだけど…。」
正確には『わたし達』のものだね、わたしとミーナちゃんとハンナちゃん。
でも、ルーナちゃんみたいに言う人が出てくると思っていたよ。
ポルトに行ったときとかに泊めて貰った領主の館の幾つかよりもこの屋敷の方が立派だと思ったもの。
そして、エントランスからホールへ入いると…。
「ターニャおねえちゃん、ひろいねー!ここで追いかけっこが出来るよ!」
そう言っていきなり走り出そうとしたハンナちゃんを慌ててミーナちゃんが押さえた。
「ハンナちゃん、家の中で走ったらいけません。」
「えへへへ、ミーナおねえちゃん、ごめんなさい。」
なんか、ハンナちゃんの行動がルーナちゃんの行動とダブって見えたよ…。
ルーナちゃんとハンナちゃんの精神年齢が変わらないような気がするのは気のせいだろうか。
メインリビングに行くと、ソファーにはテーブルに書類を積み上げて仕事をしているミルトさんの姿があった。
「あ、ターニャちゃん達、今来たの?悪いわね、先に使わせていただいているわ。」
書類仕事は王宮にいるよりこちらの方が捗るんだって。
王宮にいると不意な来客が多く仕事が中断されるらしい、特に新年のこの時期は挨拶に訪れる人が多くて書類に集中できないそうだ。
「フローラはヒカリ達と一緒に森の方へ散歩に行ったのよ。
空気がきれいで気持ちが良いからみんなも行って来れば良いわよ。
良い気分転換になるわ。」
ミルトさんに勧められて森へ散歩に出かけようとしたら何故かわたしだけ呼び止められた。
「ターニャちゃん、これプッペ一味の捜査報告書、やっと上がってきたのよ。読む?」
そう言ってミルトさんが指差したのは書類の山に見えたものだった。
これが一つの報告書なの?少なくとも子供に読ませる量じゃないよね…。
わたしが丁重にお断りするとミルトさんが言った。
「そうよね、実は私もまだ読み終わっていないもの。
いいわ、私が最後まで読んだら内容を説明してあげるわね。
次の精霊神殿での奉仕活動の後にでも時間を取って話しましょう。
ゴメンね、引き止めて。みんなのところへ行ってくるといいわ。」
ハイ、よろしくお願いします。
そして、わたしはみんなの後を追った。
「そう、ルール。
ルーナちゃんを精霊の森にあるわたし達の屋敷へ招待しようと思うの。
でも、そこは本来人が立ち入ることはできない場所なの。
だから、ルールを守れないのなら連れて行けないのよ。
それと、わたし達が寮生であることの制約から生じるルールもあるの。」
ミルトさんと新しい精霊の森に館を確認に行った翌日、わたしは遊びに来たルーナちゃんにルールを守れるなら精霊の森に招待すると伝えた。
ルールと言ってもたいしたものではないよ。
一つ、草木を手折らない。
一つ、動物を狩らない、虐めない。
一つ、森にゴミを捨てない。
一つ、泉に入らない、汚さない。
一つ、精霊の森のことを他人に言わない。
一つ、当面は昼食後に行って夕食前に帰ってくる。
これだけだよ、頭の四つは精霊の機嫌を損ねることをしないことを約束させるもの。
その次はわたしが選んだ人だけを連れて行くので、無闇矢鱈に吹聴されたら拙いのね。
連れて行く予定のない子に行きたいと言われても困るから。
最後のひとつは、寮監に心配をかけないため。
冬休みは寮生が減るので寮監の目が届きやすくなる。
食事に来なければ心配して様子を見に来る。
そのとき、外出届も出さずにいなくなっていると大騒ぎになってしまう。
だから、夕食前にはきちんと帰る、約束させておかないと絶対に向こうで泊まると言い出すもんね、ルーナちゃんは。
「大丈夫だよ、ターニャちゃん。このくらいのルールなら絶対守れるよ!
だから、ボクも精霊の森につれて行って!」
軽い調子で返事をするルーナちゃん、本当に大丈夫かな、この子…。
一年以上付き合って悪い子じゃないのはわかっている、でもなんか危なっかしいんだよね。
「絶対だよ、破ったらもう連れて行かないよ。
特に最後のルール、夕食までには必ず帰るからね。」
きつく念押しした後、わたし達はルーナちゃんを連れて浴室へ行く。
「えっ、お風呂から行くの?」
「そう、浴槽の水から精霊の泉の水へフェイさんとミツハさんの力で『精霊の道』を通って渡るの。
絶対にフェイさんから手を離さないでね、もし手を離したら帰ってこれなくなるよ。」
フェイさんにルーナちゃんとハンナちゃん、ミツハさんにわたしとミーナちゃんの手を取ってもらって精霊の森に渡る。
**********
「ビックリした!急に目の前が真っ暗になったと思ってら別の場所にいるんだもん。
もうついたの?ここが精霊の森なの?」
館の前庭に設けた精霊の泉の横に出たルーナちゃんが辺りを見回しながら言った。
「そうだよ、ようこそ精霊の森へ!」
「雪がない…、本当に暖かいんだ。わーい!これなら外で遊べるね。」
と、いきなり駆け出そうとするルーナちゃん、あたしは慌ててその手を取った。
「ちょっと待って、先に屋敷の中を案内するよ。
外で遊ぶのはその後にして。」
「はーい!ゴメンね、久し振りに雪から開放されたんでついはしゃいじゃって。」
みんな揃って屋敷へ向かい、正面エントランス前で立ち止まる。わたし以外はここへ来るのは初めてだ。
みんな一様に屋敷を見上げて言葉を失っている、わかるよ前回わたしもそうだったから。
「ターニャちゃん、なんかすごいね。これ、周りの森も含めて三日で出来たんだよね。」
ミーナちゃんが呆れ顔で言う、さすがに精霊の力の底知れなさを感じたようだ。
「ねえ、ターニャちゃん、これターニャちゃんのものなの?
なんか、ボクの家より立派なんだけど…。」
正確には『わたし達』のものだね、わたしとミーナちゃんとハンナちゃん。
でも、ルーナちゃんみたいに言う人が出てくると思っていたよ。
ポルトに行ったときとかに泊めて貰った領主の館の幾つかよりもこの屋敷の方が立派だと思ったもの。
そして、エントランスからホールへ入いると…。
「ターニャおねえちゃん、ひろいねー!ここで追いかけっこが出来るよ!」
そう言っていきなり走り出そうとしたハンナちゃんを慌ててミーナちゃんが押さえた。
「ハンナちゃん、家の中で走ったらいけません。」
「えへへへ、ミーナおねえちゃん、ごめんなさい。」
なんか、ハンナちゃんの行動がルーナちゃんの行動とダブって見えたよ…。
ルーナちゃんとハンナちゃんの精神年齢が変わらないような気がするのは気のせいだろうか。
メインリビングに行くと、ソファーにはテーブルに書類を積み上げて仕事をしているミルトさんの姿があった。
「あ、ターニャちゃん達、今来たの?悪いわね、先に使わせていただいているわ。」
書類仕事は王宮にいるよりこちらの方が捗るんだって。
王宮にいると不意な来客が多く仕事が中断されるらしい、特に新年のこの時期は挨拶に訪れる人が多くて書類に集中できないそうだ。
「フローラはヒカリ達と一緒に森の方へ散歩に行ったのよ。
空気がきれいで気持ちが良いからみんなも行って来れば良いわよ。
良い気分転換になるわ。」
ミルトさんに勧められて森へ散歩に出かけようとしたら何故かわたしだけ呼び止められた。
「ターニャちゃん、これプッペ一味の捜査報告書、やっと上がってきたのよ。読む?」
そう言ってミルトさんが指差したのは書類の山に見えたものだった。
これが一つの報告書なの?少なくとも子供に読ませる量じゃないよね…。
わたしが丁重にお断りするとミルトさんが言った。
「そうよね、実は私もまだ読み終わっていないもの。
いいわ、私が最後まで読んだら内容を説明してあげるわね。
次の精霊神殿での奉仕活動の後にでも時間を取って話しましょう。
ゴメンね、引き止めて。みんなのところへ行ってくるといいわ。」
ハイ、よろしくお願いします。
そして、わたしはみんなの後を追った。
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