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第13章 何も知らない子供に救いの手を
第356話【閑話】ネル達の聖女様
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その翌日、ネル達が精霊神殿の前で掃除をしてるとターニャお姉ちゃんがやってきた。
また遊びに来てくれたのかと思って、掃除が終ったらすぐにターニャお姉ちゃんの許に走ったの。
するとターニャお姉ちゃんは、今日はここで病気や怪我の人を治してあげるために来たので、ネル達と遊ぶ時間はないと言ったの。
そういえば、リリちゃんも怪我を治せる力を持っているって言っていたっけ。
遊んでもらえなくてもターニャお姉ちゃんの近くにいたいし、病気を治すってどうやるのかも見たかったので、ここにいちゃダメかって聞いてみたの。
ターニャお姉ちゃんは最初困った顔をしていたけど、見ていて良いって言ってくれたの。
で、天幕の隅っこでターニャお姉ちゃんを見ていることにしたんだけど、隣には色の黒い男の子がいた。
今日も来たんだザイヒトお兄ちゃん、なんか悪い人でもなさそうなんで、心の中で呼び捨てからお兄ちゃんに格上げしたんだ。
ネルが、「おはよう」って朝の挨拶をすると、
「ああ、おはよう。」
って、ちゃんと挨拶を返してくれた。なんか渋い顔をしているけど…。
**********
今日はターニャおねえちゃんの他にミーナお姉ちゃんという人もいて、二人でどんどん病気や怪我を治していくの。
怪我をした場所がぼんやり青く光ったと思ったら大きな怪我があっという間に治っている。
すごく不思議な出来事だった、だって怪我なんか元からなかったみたいにキレイに治るんだもの。
あんな力があれば、あの時病気のお姉ちゃんを助けて上げられたのに……。
ザイヒトお兄ちゃんの話だと、治癒の魔法を使える人は少なくて、治癒の魔法で怪我や病気を治してもらうにはいっぱいお金が必要なんだって。
それを、ターニャお姉ちゃん達はお金のない人にタダで治してあげているんだって。
診療所を訪れる人が途絶えてターニャお姉ちゃんが休憩に入ったので、ネルは聞いてみたの。
「ねえ、ターニャお姉ちゃん、リリちゃんも治癒術が使えるようになったんだよね。
ネルも、治癒術を使えるようになれないかな?」
ターニャお姉ちゃんは言い難そうな顔になって、ネルにゴメンって謝った。
ネルには治癒術を使う力は備わっていないって、本当に申し訳なさそうに言ったの。
そして、ターニャお姉ちゃんは、なんでネルが治癒術を使えるようになりたいのかを尋ねてきたの。
ネルは、スラムで大好きだったお姉ちゃんが病気でいなくなっちゃったことを話した。
それで、もうあんな悲しい思いはしたくないので治癒術が使えるようになりたかったと言ったの。
そうしたら、ターニャお姉ちゃんは教えてくれた。
今ミルトおばさんが魔法に頼らないで病気や怪我を治す方法を広めようとしているんだって。
魔法による治癒術は、今ネルが言われたように特別な力を持たない人は使えない。
でもそれだと、病気や怪我で苦しむ人に対して治せる人が少なすぎるんだって。
魔法に頼らない方法であれば特別な力は必要ないから病気を治せる人を増やせるんだって。
その代わりにすごい難しい勉強をしないといけなくて、誰にでもなれると言う訳じゃないみたい。
今、ミルトおばさんが魔法に頼らないで病気や怪我を治す方法を教える学校を創る準備をしているだって。
ネルが大きくなる頃にはその学校が出来ている予定だとターニャお姉ちゃんは言うの。
だから、本当に病気や怪我が治せるようになりたいのなら、がんばって勉強しなさいって言ってくれた。
ネルは、治癒術の力がない自分でも病気を治せる様になるかも知れないと分かりすごく嬉しくなった。
がんばって勉強して絶対にその学校に入って見せるって思ったの。
もう、あんな悲しい思いはしたくないから。
**********
それから、何日か経った日のこと。
いつもミルトおばさんの後ろに控えている大人の女の人に、孤児院の二階のテラスに集まるように言われた。
孤児院のみんながテラスに集まると、リタさんと名乗ったその女の人が言った。
「みなさん、今からここを『黒の使徒』という悪い人の集団が襲ってきます。
そう、みなさんが住んでいた町で悪いことばかりしていた『色の黒い人』の仲間です。
なにも、怖がる必要はありませんよ。
あいつらは、弱いもの虐めしかできないダメな大人です。
これから、ターニャちゃん一人でそのダメな大人を懲らしめるのでここから見物しましょうね。」
その言葉にみんなが怯えてしまったの、あいつらの集団が襲ってくるって言われて安心なんか出来ないとみんな思ったんだ。
だって、今でもあいつらが襲ってくるかもしれないって不安で眠れなくなる子もいるんだよ。
そして、リタさんが言ったとおり『色の黒い人』がたくさん孤児院に向かってきたの。
テラスから見ているとミルトおばさんとターニャお姉ちゃんが立ち塞がった。
ここからは聞こえないけど、ミルトさんが『色の黒い人』と何か言い争っていた。
そして『色の黒い人』が襲い掛かろうとした時、一歩前に踏み出たターニャお姉ちゃんが何か言った。
すると、『色の黒い人』が柔らかな光に包まれたの、光が収まると『色の黒い人』が倒れていた。
本当に一瞬だった、ネル達があんなに恐れていた『色の黒い人』がターニャお姉ちゃんに手も足も出なかった。
「みましたか。『色の黒い人』なんて三十人がかりでも、ターニャちゃん一人に勝てないのです。
あいつらは、スラムで自分達より弱い者を見つけては虐めて楽しんでいるだけの人間の屑です。
実際にはあんなに弱いんですよ。
ここはターニャちゃん以外にも、あんな奴らに負けない人が守っていますのでもう怯える必要ないですよ。」
ああ、そうか、今でも孤児院のみんなが『色の黒い人』に怯えているんで、ターニャお姉ちゃん達が守っているから安心していいよって教えてくれたんだ。
悪い人が来たらみんなを守ってくれるって、前にネルと約束したことを覚えていたんだね。
そう思ったらすごく嬉しくなって、ネルはテラスから駆け出した。
そして、ターニャお姉ちゃんに抱きついて言ったの。
「ターニャお姉ちゃん、約束通り『色の黒い人』を退治してくれたんだね。
本当に孤児院のみんなを悪い人から守ってくれてありがとう。
ネル、ターニャお姉ちゃん達が守ってくれるからもう『色の黒い人』も怖くないよ。」
ターニャお姉ちゃんは、ネル達をスラムから連れ出してくれて、温かいごはん、きれいな服、きれいな寝床を与えてくれた。
でもそれだけじゃなくて、生きる希望や将来の夢も与えてくれたし、心の傷まで治してくれたんだ。
リリちゃんが言っていた、ターニャお姉ちゃんは一部の人から『白い聖女様』って言われているんだって。
ターニャお姉ちゃんはそう呼ばれるのを嫌がっているって言ってたけど、ネル達にとっては本当に聖女様だと思ったの。
**********
その後、公爵様の兵隊さんが来て悪い人たちはみんな連れて行かれたの。
そして、そこには暗い顔でしゃがみ込んでいるザイヒトお兄ちゃんが残っていた。
「吾はあんな奴らに良い様に操られていたのだな。
吾は愚かだった、全てターニャという娘の言う通りだったのに。
あんな奴等の方を信じきっていたんだ。」
ザイヒトお兄ちゃんはそんな独り言をもらして落ち込んでいた。
ステラおばあちゃんが言っていたの、塞ぎこんでいる子供がいたら頭を撫でてあげなさいって。
ネルは、ザイヒトお兄ちゃんが何で落ち込んでいるのか知らないので、かける言葉がわからない。
だから、ステラおばあちゃんに言われたとおり頭を撫でてあげることにしたの。
しかたないなあ、年長のお兄さんなのに……。
また遊びに来てくれたのかと思って、掃除が終ったらすぐにターニャお姉ちゃんの許に走ったの。
するとターニャお姉ちゃんは、今日はここで病気や怪我の人を治してあげるために来たので、ネル達と遊ぶ時間はないと言ったの。
そういえば、リリちゃんも怪我を治せる力を持っているって言っていたっけ。
遊んでもらえなくてもターニャお姉ちゃんの近くにいたいし、病気を治すってどうやるのかも見たかったので、ここにいちゃダメかって聞いてみたの。
ターニャお姉ちゃんは最初困った顔をしていたけど、見ていて良いって言ってくれたの。
で、天幕の隅っこでターニャお姉ちゃんを見ていることにしたんだけど、隣には色の黒い男の子がいた。
今日も来たんだザイヒトお兄ちゃん、なんか悪い人でもなさそうなんで、心の中で呼び捨てからお兄ちゃんに格上げしたんだ。
ネルが、「おはよう」って朝の挨拶をすると、
「ああ、おはよう。」
って、ちゃんと挨拶を返してくれた。なんか渋い顔をしているけど…。
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今日はターニャおねえちゃんの他にミーナお姉ちゃんという人もいて、二人でどんどん病気や怪我を治していくの。
怪我をした場所がぼんやり青く光ったと思ったら大きな怪我があっという間に治っている。
すごく不思議な出来事だった、だって怪我なんか元からなかったみたいにキレイに治るんだもの。
あんな力があれば、あの時病気のお姉ちゃんを助けて上げられたのに……。
ザイヒトお兄ちゃんの話だと、治癒の魔法を使える人は少なくて、治癒の魔法で怪我や病気を治してもらうにはいっぱいお金が必要なんだって。
それを、ターニャお姉ちゃん達はお金のない人にタダで治してあげているんだって。
診療所を訪れる人が途絶えてターニャお姉ちゃんが休憩に入ったので、ネルは聞いてみたの。
「ねえ、ターニャお姉ちゃん、リリちゃんも治癒術が使えるようになったんだよね。
ネルも、治癒術を使えるようになれないかな?」
ターニャお姉ちゃんは言い難そうな顔になって、ネルにゴメンって謝った。
ネルには治癒術を使う力は備わっていないって、本当に申し訳なさそうに言ったの。
そして、ターニャお姉ちゃんは、なんでネルが治癒術を使えるようになりたいのかを尋ねてきたの。
ネルは、スラムで大好きだったお姉ちゃんが病気でいなくなっちゃったことを話した。
それで、もうあんな悲しい思いはしたくないので治癒術が使えるようになりたかったと言ったの。
そうしたら、ターニャお姉ちゃんは教えてくれた。
今ミルトおばさんが魔法に頼らないで病気や怪我を治す方法を広めようとしているんだって。
魔法による治癒術は、今ネルが言われたように特別な力を持たない人は使えない。
でもそれだと、病気や怪我で苦しむ人に対して治せる人が少なすぎるんだって。
魔法に頼らない方法であれば特別な力は必要ないから病気を治せる人を増やせるんだって。
その代わりにすごい難しい勉強をしないといけなくて、誰にでもなれると言う訳じゃないみたい。
今、ミルトおばさんが魔法に頼らないで病気や怪我を治す方法を教える学校を創る準備をしているだって。
ネルが大きくなる頃にはその学校が出来ている予定だとターニャお姉ちゃんは言うの。
だから、本当に病気や怪我が治せるようになりたいのなら、がんばって勉強しなさいって言ってくれた。
ネルは、治癒術の力がない自分でも病気を治せる様になるかも知れないと分かりすごく嬉しくなった。
がんばって勉強して絶対にその学校に入って見せるって思ったの。
もう、あんな悲しい思いはしたくないから。
**********
それから、何日か経った日のこと。
いつもミルトおばさんの後ろに控えている大人の女の人に、孤児院の二階のテラスに集まるように言われた。
孤児院のみんながテラスに集まると、リタさんと名乗ったその女の人が言った。
「みなさん、今からここを『黒の使徒』という悪い人の集団が襲ってきます。
そう、みなさんが住んでいた町で悪いことばかりしていた『色の黒い人』の仲間です。
なにも、怖がる必要はありませんよ。
あいつらは、弱いもの虐めしかできないダメな大人です。
これから、ターニャちゃん一人でそのダメな大人を懲らしめるのでここから見物しましょうね。」
その言葉にみんなが怯えてしまったの、あいつらの集団が襲ってくるって言われて安心なんか出来ないとみんな思ったんだ。
だって、今でもあいつらが襲ってくるかもしれないって不安で眠れなくなる子もいるんだよ。
そして、リタさんが言ったとおり『色の黒い人』がたくさん孤児院に向かってきたの。
テラスから見ているとミルトおばさんとターニャお姉ちゃんが立ち塞がった。
ここからは聞こえないけど、ミルトさんが『色の黒い人』と何か言い争っていた。
そして『色の黒い人』が襲い掛かろうとした時、一歩前に踏み出たターニャお姉ちゃんが何か言った。
すると、『色の黒い人』が柔らかな光に包まれたの、光が収まると『色の黒い人』が倒れていた。
本当に一瞬だった、ネル達があんなに恐れていた『色の黒い人』がターニャお姉ちゃんに手も足も出なかった。
「みましたか。『色の黒い人』なんて三十人がかりでも、ターニャちゃん一人に勝てないのです。
あいつらは、スラムで自分達より弱い者を見つけては虐めて楽しんでいるだけの人間の屑です。
実際にはあんなに弱いんですよ。
ここはターニャちゃん以外にも、あんな奴らに負けない人が守っていますのでもう怯える必要ないですよ。」
ああ、そうか、今でも孤児院のみんなが『色の黒い人』に怯えているんで、ターニャお姉ちゃん達が守っているから安心していいよって教えてくれたんだ。
悪い人が来たらみんなを守ってくれるって、前にネルと約束したことを覚えていたんだね。
そう思ったらすごく嬉しくなって、ネルはテラスから駆け出した。
そして、ターニャお姉ちゃんに抱きついて言ったの。
「ターニャお姉ちゃん、約束通り『色の黒い人』を退治してくれたんだね。
本当に孤児院のみんなを悪い人から守ってくれてありがとう。
ネル、ターニャお姉ちゃん達が守ってくれるからもう『色の黒い人』も怖くないよ。」
ターニャお姉ちゃんは、ネル達をスラムから連れ出してくれて、温かいごはん、きれいな服、きれいな寝床を与えてくれた。
でもそれだけじゃなくて、生きる希望や将来の夢も与えてくれたし、心の傷まで治してくれたんだ。
リリちゃんが言っていた、ターニャお姉ちゃんは一部の人から『白い聖女様』って言われているんだって。
ターニャお姉ちゃんはそう呼ばれるのを嫌がっているって言ってたけど、ネル達にとっては本当に聖女様だと思ったの。
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その後、公爵様の兵隊さんが来て悪い人たちはみんな連れて行かれたの。
そして、そこには暗い顔でしゃがみ込んでいるザイヒトお兄ちゃんが残っていた。
「吾はあんな奴らに良い様に操られていたのだな。
吾は愚かだった、全てターニャという娘の言う通りだったのに。
あんな奴等の方を信じきっていたんだ。」
ザイヒトお兄ちゃんはそんな独り言をもらして落ち込んでいた。
ステラおばあちゃんが言っていたの、塞ぎこんでいる子供がいたら頭を撫でてあげなさいって。
ネルは、ザイヒトお兄ちゃんが何で落ち込んでいるのか知らないので、かける言葉がわからない。
だから、ステラおばあちゃんに言われたとおり頭を撫でてあげることにしたの。
しかたないなあ、年長のお兄さんなのに……。
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