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第二章

殺戮の団長

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 何も感じない。誰かを殺したりしたら心が痛むはずなのに、何も思わない。

 「お願い。殺さないで。ほ、本拠地なんて知らないの!私は西エリアの担当なのよ!だから殺さないでよ」

 「それはできない。なぜならあなたたちを許すことができないから」 

 ザクッ

 「ぎゃああああああああああ⁉︎」

 「死んで?」

 ドサッ

 「次は当たりかなぁ⁇」
  
 どんどん心が冷たくなっていく。ネスが死んだあの日から喜びも悲しみも痛みも感じない。ただ感じるのが憎しみだけ。

 「ネス。あなたに会いたいよ」

 会いたいのに会えない。ママが死んだ時よりもずっと心を抉る。

 「なんで、みんなは私の目の前から消えて無くなるの?行かないでよ」

 そう願っても変わらない。変えられない。それが現実なのだから。

 「次はここか......」

 「来たぞ!」

 「片目の悪魔!」

 「私らが倒す!」

 「ここはシュシュするぞ」

 「いいから早く死んで?」

 グサッザクッドーン

 「こ、この......悪魔‼︎」

 ブスッ

 「......が」

 「ここもハズレ」

 早く見つけて殺す。メリヤスとケルベロス!

 「メリヤス様!もう三十人の赤き同盟団が失踪、消息不明‼︎」

 ドンッ

 「くそ!もうこんなにも人を殺すだなんて、アリスハート。お前の罪は一生消えないぞ」

 「メリヤスよ。俺様が直々に殺しに行ってもいいか?」

 「まだ駄目よ」

 「なぜだ?」

 「供物が足りない。だから封印が解けきれない」

 「早く殺したい。アリスハート.レイトン!」

 数日後

 「ほ、本部は中央区の時計台の下だ!だから殺さないでよ‼︎」

 「ありがとう。そしてさよなら」

 ブスッ

 「あ、アガっ!......うぐぅ」

 「これで何人目だろ?」

 もう何もかもどうでもいい。私なんで、こんなに赤き同盟団を憎んでいたんだっけ⁇それすら思い出せない。

 中央区

 「......」

 ここが赤き同盟団の本拠地か?

 「アリスさん?」

 「......ステファニー⁇」

 「やっと......やっと見つけました!どこに行っていたんですか?」

 「......」

 「何か喋ってください」

 「何しに来たの⁇」

 「あなたを連れ戻すために来ました」

 「だったら帰って」

 「いやです」

 「帰りなさい」

 「いやです!」

 シュッ

 「......」

 「次は当てる」

 「アリスさん?どうしてそんなに自分を責めるんですか?あなたひとりのせいではありませんよ?」

 「......」

 「アリスさん?何を唱えているんですか?」

 「元の居場所に戻りなさい」

 「ま、待って⁉︎」

 「もう二度と誰も巻き込まない」

 「あ、アリスさん⁉︎」

 ステファニーの叫びは虚しく送り返された。

 「さてと、早く始末しなきゃね」

 もう私はただ、誰かを殺す殺戮の団長。
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