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第二章

二人の誓い

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 私が目覚めて、数日が経過した。

 「団長‼︎」

 「え、えぇーと⁇どうした?」

 「どうしたもこうしたもないですよ。ずっと待ってたんですからね?」

 「そうか」

 「......」

 「え、なに?」

 「団長が無表情⁉︎」

 「は、はあ?」

 「いつもあの笑顔でキラキラとした団長から笑顔を奪った赤き同盟団許さん!」

 「皆殺しだ!」

 「その前にお前たちは鍛錬しろ」

 「ぐっ!」

 「私がいない間に、春、夏、秋の騎士団にうちの副団長以外は誰一人も勝ててないと聞いたが?」

 「す、すみません」

 「全く、これからビシバシ鍛え直してやる」
  
 「はい!」

 「じゃあまずはグランドを五十周して来い!」

 「む、無理です⁉︎」

 「そんなにしたら死ぬ!」

 「団長が鬼化した‼︎」

 「貴様らは私と一対一で戦いたいみたいだね?いいぞ、かかってこい」

 「グランド五十週行ってきます‼︎」

 「はぁー、最初から素直に聞けばいいものを......」

 「ね、ねぇ、なんで俺だけ残ってるの?」

 「そんなの決まっている。模擬戦やる」

 「え?」

 そして、スペアと半ば強引に模擬戦をやることになった。

 「本当に本気でやっていいの?」

 「当たり前だ。じゃないと鍛錬にもならん。それに鈍った体にはちょうどいい」

 「そ、そうなの?」

 「早くしろ」

 「うん」

 模擬戦開始

 「ファイヤボール!」

 「シールド」

 ドーン

 「おいおいおいおい⁉︎」

 「夏の騎士団エリアまで魔法の爆風が来るぞ⁉︎」

 「嘘だろ?」

 「あれって、模擬戦⁇」

 「もはやこれはもう模擬戦じゃない⁉︎」

 「やっほーい!私も混ぜて!」

 「団長⁉︎」

 「ウリエル団長⁉︎あんたなにやってるんですか?死にたいんですか?」

 「まだまだ、魔物の研究するから死なない」

 数分後

 「スペア、流石に疲れてきたんじゃないか⁇」

 「団長もでしょ⁇」

 「前に比べればそうだな」

 「......アリス」

 ビクッ

 「えっ?団長⁇」

 「こっち。お願い。私の話を聞いて」

 「ま、待って‼︎」

 「え、ちょっ!アリス⁉︎どこに行くの?ねぇ、アリス‼︎」

 とある崖

 「はぁはぁ」
    
 「ありがとう。私のお願いに答えてくれて」

 「本当にアリスハートなの?」

 「そうだよ」

 「どういうこと?一度もこんなふうに話したことはない」

 「今、私はメリヤスは眠っているから自由に魔法が使えるの」

 「意味がわからない」

 「私はアリスハートの善な部分」

 「善な部分⁇」

 「うん。私が死んだ時に願ったことはひとつだけ。愛されたい」

 「......っ!」

 「誰にも愛してもらえずに父親に殺された私は自由に生きて愛された人生を送りたかった」

 「......」

 「でも心のどこかでは愛してもらっている人が憎い。羨ましい。妬ましい。そう思ってしまった。だから今の私がアリスを襲っているの」

 「つ、つまりは善と悪なアリス......いや、メリヤスがいるってことなの?」

 「うん。私はメリヤスの人生を奪い、剰え人格を殺した」

 「そんなことできるの?」

 「本人が望み、それを叶えることで代償に体を手に入れることができる。私はその方法を使って、メリヤスの体を、ううん。人生を奪った。だからこれは私の罪」

 「......アリスハート」

 「お願い。私を止めて」

 「えっ......」

 「私はこんなことを望んだんじゃない。幸せになりたかっただけ。だからケルベロスを私を止めて」

 「私にできるかなぁ?」

 「アリス。私の記憶をあなたにあげる」

 「え、えぇっ⁉︎」

 「大丈夫。あなたならこの辛い記憶を乗り越えられる。私は信じる。あなたが貫いた正義を信じる」

 「アリスハート」

 ズキッ

 「......っ⁉︎」

 「ごめんなさい‼︎ごめんなさい‼︎許してください」

 この記憶はアリスハートの記憶。本来のアリスハートの人生

 ドサッ

 「ごめん。でもこの記憶を見ないと、きっと私を止められない」

 「なにをしておる?早く立つのだ。貴様にはその赤い目がある。その力で世界を支配するのだ」

 「は、はい」

 バシッ

 「ゔっ!」

 「この程度で倒れたらまた、鞭千回じゃぞ」

 「わ、わかりました。頑張ります」

 ガサガサ

 「アリス!」

 「おい、そこのチビ」

 「え、秋の団長!」

 「こんなところでなにをしている?」

 「アリス、団長が飛び出して行ったから追いかけて来ました」

 「そうかよ」

 「ほら!早くしろ!このノロマ!」

 「ああああ⁉︎」

 「腕を捻られたぐらいで叫ぶな!」

 ゴキッ

 「あ、アアアアアア⁉︎いやああ!痛いよ。痛いよー。もう許してください。なんでもしますから。もう許して」

 「......」

 痛い。苦しい。怖い。辛い。いろんな感情がごちゃ混ぜになる。もう嫌。助けて。

 「アリス!」

 「こんな崖でなにしてやがる」

 「......」

 「アリス⁇」

 「いや。いやああああ⁉︎」

 「アリス‼︎」

 「おい、どうした⁇」

 「こ、来ないで!」

 「アリス!落ち着きなさい‼︎あなたの味方よ」

 駄目だ。今のアリスは二つの記憶がごちゃ混ぜになっていて、現実の区別ができてない。

 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

 「アリスどうしたの?」

 死ぬ直前

 「もうなにもかも壊してしまえばいい。そうすればもう苦しまなくて済む」

 愛されたかった。家族に会いたかった。

 「アリスハート⁇お前、アリスハートなのか?」

 「......」

 お父様なの?お父様!会いたかった。

 ブスッ

 「えっ......」

 どうして⁉︎私はあなたに会いたかった。それだけなのにどうして殺されなければならないの?

 ドサッ

 「すまない。アリスハート。お前に気づけなかった。そして、お前の罪は俺の罪。だからせめて安からに」

 「......」

 ああ、結局なにも言えずに死ぬんだ。でも死んだら楽になれる。そうすればもうなにも感じない。そう思った。

 だけど、私に付けられた赤い目はそれを許してはくれなかった。死んだ後もずっと、意識はあったしいつも言われるのはお前なんて死んで当然だって言われることだけ。

 そして、殺された時の痛みがずっと付き纏う。

 「......」

 そんな時、あなたに出会った。

 「おお!これはなんか熱い展開!」

 熱い展開?これが?

 「ここからどうなるの?アリスハートはどうなるの?」

 そのあと死ぬんだよ?

 「実の父親、モンゴル.レイトンによってその場で処刑された彼女は最後に父親を見て少しだけ救われたのであった」

 まぁ、なにを見ても同じ反応しか出ない......。

 「は?はあああああ⁉︎何これ⁉︎最後クソじゃん!この漫画の作家は何を考えているのよ⁉︎」

 怒ってるの?自分のところじゃないのにまるで、自分がやられたかのように怒ってるの?

 「アリスハートは結構エキストラだったのになぁ......」

 この人なら自分の願いを叶えてくれるかも。

 「私の願いはみんなを不幸にすることよ」

 違う!そんなこと望んでない!

 そう思っても悪のアリスハートは表に出てきてしまった。もう止められない。止まらない。誰か止めて。

 「......」

 「アリス!」

 「俺のことはわかるか?」

 「私はなにもわかってなかった」

 「は?」

 「あなたのことなにも知らないで責めて、酷いこと言っちゃった」

 「もういいよ。だから......」

 「誓うから!」

 「えっ?」

 「アリス⁇」

 「アリスハート⁇」

 「必ずあなたを救ってみせる。どんなに時間がかかろうと絶対に私はアリスハート!あなたを救ってみせる!」

 「自分の名前を言ってどうした?」

 「ありがとう」

 「だからお願い。私に、ううん。私たちに協力して」

 「いいよ。ケルベロス復活まで、あと二ヶ月」

 「え、そんなに早いの?」

 「うん。頑張って。アリスにならできる。信じているから。私も誓うわ。アリスを信じるって誓う。だから諦めないで」

 「うん」

 「どうか、ケルベロスを私を倒してね」

 そう言って、アリスハートは消えていった。

 「必ず止めてみせるからね」

 そう心に誓い、ケルベロス復活までに更なる特訓をするのであった。

 「あと少し。あともう少しで、ケルベロスを復活できる!」

 世界を渦巻く脅威はすぐそこ。
 
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